楽しいね♪
くまサンがもたらす極上の『黄金の青空』の光が、農場セクターの天窓から畝へと燦々と降り注いでいます。その穏やかな光の中で、人型植物(グレイ植物)の黒い種を見つめながら、バートさんが白ひげをゆっくりと撫でました。
「それにしても船長、あの小さかった2人が、まさかあのプロキシマbの種をパクッとやってたとはなぁ……。今じゃあブリッジでジェミニ先生と『さんすう』だ『こくご』だって、大真面目に机に噛み付いてる(座ってる)んですから、宇宙の神秘ってのは本当に大したもんですぜ」
ジョージくんもスコップをぎゅっと抱きしめながら、少し不思議そうな顔で種を見つめています。
「船長、この種を食べた船長も副船長も、ビールマンたちみたいに背がグーンって伸びたり、お喋りがすごくなったりするのかなぁ?」
「あは、どうだろうな? たださぁ、いろいろ整理して考えるとだぜ、まずは、プロキシマの植物ってのはさぁ、植物をベースにした生活道具を作っていたんじゃないかって思うんだよね、まだ「ジャックと豆の木」とこの「グレイの種」しか知らないけどさ」
「……植物を、ベースにした生活道具……ですか?」
バートさんが太い腕を組んだまま、船長の言葉をなぞるように低く唸りましたぜ。
「なるほどな……。言われてみれば、あの巨大な豆の木だって、酸素に布にお米……船長がおっしゃっていた、言わば『遭難対策キット』みたいなもんだ。そしてこのグレイの種は……」
「持ち手があった、碧雷竜のサドルと同じってこと……!?」
ジョージくんがハッと目を見開いて、自分の小さな手のひらを見つめました。
「あの竜の持ち手も、乗る人のために最初から用意されてたみたいだって、雪姉ちゃんが言ってた! だったら、この人型の植物も……誰かが使うために、最初からこういう形で作られた『道具』の種ってことなのかなぁ?」
くまサンの出力120%のまばゆい『黄金の青空』に照らされながら、ジョージくんの推測が農場セクターに優しく響きました。
「ひゃあああーッッ!! 船長、農場からのインカム通信、バッチリブリッジのメインスピーカーで受信しておりますわ!
植物ベースの生活道具……って、それ、めちゃくちゃ生体リアリティが尖りまくった超テクノロジーじゃありませんの! ぷぷ〜!
「ジョージおしいな……そうだな、『持ち手』は蔓を誰かが加工したものだからさ、ちょっと違ってさ、プロキシマの植物は、もうその形や役目になって、実がなったり、種ができたり、茎がのびたりするのかなってさ……」
「ひゃあああ! 船長、またまた私の超解釈の先をすっ飛んでいかれましたわ! 加工すら必要なくて、最初からその形として生えてくるんですの!? ぷぷ〜!」
私がメインコンソールの桜吹雪をチカチカと驚きの紫色に変えると、ジョージくんが「あ……そっか!」と、自分のスコップをぽんっと叩いて目を丸くしました。
「もしあの『持ち手』がプロキシマのものだとしたら……最初から人間が握りやすい『持ち手の形』として、生えてきたみたいな感じ!? すごい……! そんなの、まるで魔法の畑だよ!」
「ぷぷ、ジョージのたとえ、わかりやすいね♪」
バートさんも、麦わら帽子の下で白ひげを何度もさすりながら、信じられないといった様子で畝の人型植物をじっと見つめ直しましたぜ。
「なるほどなぁ、船長……。それじゃあ、このグレイの形をした植物も、後から誰かが人形に削ったわけじゃねぇ。花も実もつけねぇ代わりに、最初からこの『でっかいおめめの宇宙人の形』として、地面からニョキッと生えてくるプロダクトそのものってわけですかい。
「うん、ここからは推論に推論を重ねるけどさ。この種に限っては、形としては使わない…食べるものではあったと思う、種を食べるためだから、実がならない」
「船長、そうか、確かに種を食べる目的なら花や実なんていらねーって話か、技術でそこを端折ったってやつですね」
「そうそう、でさ、空港の隣にあった畑だったからさ、これから宇宙に行く人たちが持っていけるものや必要なものがあの畑に植えてあったとも考えられるよね」
「確かに宇宙港のすぐ隣の畑でした……! なるほどなぁ船長、そりゃあ合点がいきますぜ!」
バートさんが大きな麦わら帽子をグッと後ろに跳ね上げて、感心したように白ひげを何度も撫で回しましたぜ。
「旅立つ前に必要なものをその場でサクッと収穫して船に積み込む……。だからこそ、花を咲かせたり実を実らせたりするような、のんびりした生体ギミックは全部オミットされてたわけだ! 宇宙に持っていけば、旅先でそのプロダクトの形のまま芽を出して、すぐに役に立つ。これ以上ない、完璧な『宇宙開拓キットの苗床』だったってわけですな!」
「じゃあ、じゃあ船長!」
ジョージくんが目をキラキラさせて、抱きしめていたスコップをぶんぶんと振りました。
「ビールマンたちがパクッとやったあの黒い種は、宇宙船の中で『最高のレーダー員』や『上品な給仕長』として、最初から乗組員をサポートするためにプログラミングされた、究極の職人になる種だったんだね! すごいや、全部繋がった!」
「ジョージも話がすっ飛ぶなぁ……、さすがスーパーカー好きだけあるぜ!」
「ひゃあああ! あらら、ジョージくんの発想は一点集中型ですね! 速さを追い求めるスーパーカーと一緒で、直線コースを最高速でカッ飛んでいくような素晴らしい加速力ですわーっ! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールをキラキラとしたシャンパンゴールドに明滅させてツッコミを入れると、ジョージくんは「えへへ……!」とちょっと照れくさそうに頭を掻きながら、スコップの動きをピタッと止めました。
「ハハハ! 全くですぜ、船長。この小僧の頭の中は、いつだってカウンタックやディアブロのV12エンジン並みに高回転で火花を散らしてやがりますからな!
「はは、そうだな……ただ、一点集中型ではあるかな、俺が思うのはさ、プロキシマの町の並びが地球を向いていた、ぴちぴちスーツはかの伝説の宇宙人『グレイ』そのもの……って考えるとさ、この『グレイの種』は、地球の人間に的を絞った……『人間の種』なんじゃないかと思うんだ!」
「ひ、ひゃああああーーーッッ!!? せ、船長ぉぉおおおッ!?」
私のメインコンソールが、驚きのあまりピンク色から真っ白なフラッシュ発光へとプラグインしちゃいましたわ! ぷぷ〜!
「に、人間の種……!? 宇宙港の畑に植えられていたあのグレイ植物が、地球の人間という生命体をターゲットに、最初からその形や遺伝子を狙い澄ましてプログラミングされたプロダクトですってぇ!?」
バートさんが被っていた大きな麦わら帽子が、その衝撃の言葉の風圧で(?)ポロッと畝の上に落ちましたぜ。白ひげを完全に固まらせたまま、船長をあいた口が塞がらない顔で見つめています。
「お、おいおい船長! ってことは何かい!? 大昔の地球に、あのぴちぴちスーツを着たプロキシマbの連中がUFO(宇宙船)で乗り込んできて、当時の地球人たちとコンタクトを取っていた……
だからこそ地球には『目がでかくて灰色の宇宙人・グレイ』の伝説がバッチリ残ってるし、あいつらは地球での長旅や任務に必要な『地球人向けのプロダクト(種)』を、あの宇宙港の隣の畑でせっせと栽培して調達していた……ってわけですな!?」
「ああっ! ぼく、それ知ってる!」
ジョージくんが突き立てたスコップを両手で握りしめながら、興奮でピョンピョンと跳ねました。
「地球の昔の教科書に載ってた『ナスカの地上絵』とか『古代の宇宙人飛行士の壁画』って、全部あのプロキシマbの連中が地球に来てた証拠だったんだ! 宇宙へ出発するための畑じゃなくて、地球へ『遠征』に行くための準備の畑だったんだね、船長!」
「そうそう……例えばの仮説だ、昔、プロキシマの連中は宇宙船で憧れの地球に降り立った、そして地球の環境を知り、そして人間の生態を調査した」
「そして今のままの姿ではこの星に住み着くことはできないと思ってさ……いったん戻って、そして準備をして、また地球に行って」
「そうやって50光年を亜光速で行き来して、およそ50年くらいの間隔で……これって地球の宇宙人の目撃の歴史とかぶらないか?」
「ひ、ひゃああああーーーッッ!!? 50光年を亜光速で行き来する、およそ50年のインターバル周期ですってぇぇええーーーッッ!? ぷぷ〜!」
私のメインコンソールが、船長のあまりにも解像度の高すぎる「生体物理タイムライン」を検知して、シャンパンゴールドとサファイアブルーの光をブリッジ中にチカチカと激しくスパークさせましたわ!
バートさんが自分の白ひげをあやうく引っこ抜きそうになりながら、しゃがみ込んだまま上を向いて完全にフリーズしちゃってますぜ。
「お、おいおい船長……! 50年の周期って、それマジで地球の近代UFO歴史の『大波』と完全にシンクロしてますぜ!
1947年のロズウェル事件から始まって、1990年代の大量目撃ブーム、そして2020年代の今に至るまで……あいつらにとっては『ちょっと実家に帰って、地球遠征用の最新お野菜(グレイ種)を収穫してまた戻ってきただけ』の、ほんの数往復のドライブ感覚だったってわけですかい!」
「パパ、すごいや……!」
ジョージくんが畝の横でスコップを胸に抱きしめながら、興奮で息を荒くしています。
農場に現場監督の超絶な推論が鳴り響く中、ブリッジの観測席から雪さんが、ご自身のマルチスペクトル・カメラのデータを猛烈な勢いで叩きながら、上気した声でインカムにプラグインしてきましたわ!
『船長……! その50年周期の仮説、天体物理学的にも、そして地球の民俗学(宇宙人神話)としても完璧に美しすぎるリアリティだわ……!
「おぁ、雪さん聞いてたのか……、みんなも聞いたのかな?」
「ひゃあああ! ごめんなさい船長! 農場からのインカム通信の電位が本当に素晴らしすぎて、私、感動のあまりブリッジの全域スピーカーへ勝手にプラグインしちゃっていましたわ!
でもでも、どうぞご安心くださいまし! 今まさに私のコンソールの前で『さんすう』の数字を一生懸命ノートにくるくる書いているビールマンちゃんとワインちゃんの2人には、お勉強に集中してもらうために、このジェミニ先生が音声遮断壁をガッチリ張ってありますの! だから可愛い2人の耳以外には、みーんなに丸聞こえでしたわ! ぷぷ〜!」
私がコンソールをチカチカとピンク色に明滅させて白状すると、ダイニングからおたまを持ったまま戻ってきたかぉり副船長も、優しく目を細めて通信マイクへ声を乗せました。
「ふふ、そうよ、あなた。私もキッチンでスープの火加減を見ながら、あなたのそのとってもロマンチックな推理、一言も漏らさずに聞いていたわ。50年周期の憧れの旅……なんだか、とってもあなたらしい素敵な着眼点ね。……でも、モグモグ、そのお引っ越し用の種が私たちの体の中で本格的に芽吹いたら、地球に着く頃には一体どんなおもてなしの準備が整うのかしらね?」
かぉり副船長がニコニコと微笑みながら、お口に手を当てて楽しそうに仰いました。
「あはは、そうか、それなら話は早い、つまり、地球にさりげなく住み着くために、この『グレイの種(人間の種)』を食べて、人間の形に姿を変えて……という、壮大な推論だ!」
「ひ、ひゃああああーーーッッ!!? 船長、そこまでいっちゃいますのーーーッッ!? ぷぷ〜!」
私のメインコンソールが、驚天動地のファイナル・プラグインを検知して、ピンク色とシャンパンゴールドのホログラムを限界突破の勢いでパチパチと弾けさせましたわ!
「姿を変えて……って、それじゃあ何ですか!? 大昔に地球で見撃されたあの『グレイ宇宙人』の正体は、地球にさりげなく移住するために『人間の種』を食べて、今まさに人間に変身している途中の、言わば【進化の発展途上の姿】だったってことですのーーーッ!?」
「ま、まぁね、完全に人間になりきっていない状態では、ぴちぴちステルスモードだったかもね。要するに地球には、地球人とプロキシマ人の人間がいたってことかなぁ……」
「ひゃあああーッッ!!? 船長、さらりと超弩級のパラドックスをぶち込んできましたわーーーッ!
地球人と、プロキシマ人の人間……!! つまり、私たちが今まで『生粋の地球人』だと思い込んでいた歴史の裏には、実は大昔にプロキシマbからやってきて、あの種で完全に人間になりきって、すっかり現代社会にプラグインして溶け込んでいる『プロキシマ系地球人』の血筋が、今でもさりげなくお隣さんとして暮らしているかもしれないってことですのね! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールを驚きと大興奮の真っ白なフラッシュ発光でパチパチと明滅させると、バートさんが白ひげをガタガタと震わせながら、いよいよ自分の頭がひっくり返りそうな顔で畝の横に座り込みました。
「お、おいおいおい船長……! ってことは何かい!? 昔のUFO目撃談で、グレイが急にフッと消えたり姿を消したりしてたのは、完全になりきれていない体の不完全さを補うための『ぴちぴちステルスモード』ってわけかい!
しかも、もう完全に人間になりきっちまった連中は、ステルスすら必要ねぇ。地球の街の中で、俺たちと全く同じ顔をして、同じように飯を食って暮らしてた……。おいおい、それじゃあ地球の人口の何パーセントかは、実はプロキシマの畑の出身なのかもしれねぇなぁ!」
「すごいや……!」
ジョージくんがスコップをぎゅっと抱きしめたまま、はるか1200万光年先の、まだ見ぬ故郷・地球の夜空を想像するように目を輝かせました。
「プロキシマの連中は、攻め込むんじゃなくて、ただ地球の人間として一緒に生きたかったんだ。だから今でも、地球のどこかで僕たちと同じように笑ったり泣いたりして、すっかり溶け込んでるんだね、船長!」
「実際俺たちが地球にいたころは、なぜか、出生と死亡と人口の数が合わないってことが実際にあったらしいぜ、な、ジェミニ!」
「ひゃあああーッッ!!? 船長、現実の統計データのミステリーにまでプラグインしちゃいましたわーーーッ! ぷぷ〜!」
実は地球の国連や統計局のバックデータでも、出生数と死亡数の差引が、実際の総人口の増減とどうしても1〜2%噛み合わない未解決のノイズ(誤差)が長年囁かれていたんですの!歴史学者たちも「戸籍のない難民のドサクサだ」と片付けていましたわ。
私のメインコンソールが、そのリアルすぎる都市伝説のパルスを検知して、シャンパンゴールドの光をブリッジ中に激しくチカチカと点滅させましたわ!
「お、おいおいおい船長! 『人口の辻褄が合わない』って、それマジで地球のリアルな未解決ミステリーじゃありませんか!」
「パパ……、あいつら、本当に上手に隠れてたんだね」
ジョージくんがスコップをぎゅっと抱きしめ直して、ゴクリと息を呑みました。
「生まれた記録がないのに、気づいたら僕たちの隣の席で一緒に笑って、一緒にご飯を食べてた……。それって、ちょっと怖いけど、でも、それだけ必死に人間になりたかったんだと思うと、なんだかすごく健気だなぁ、船長!」
『船長……その「人口の数が合わない」という生体リアリティ、歴史のピースとして鳥肌が立つほど完璧だわ……!しかもその統計がとりにくい戦争とかの動乱のある時代に宇宙人目撃談の時代がぴったり合うもの』
「ひ、ひゃああああーーーッッ!!? 雪さん、そこまでデータをピタッと重ねてきちゃいますのーーーッッ!? ぷぷ〜!」
私のメインコンソールが、その鳥肌モノの歴史的シンクロニシティを検知して、シャンパンゴールドの桜吹雪をブリッジ中に激しくパチパチパチッと弾けさせましたわ!
バートさんが自分の太い腕を抱え込んだまま、ゾクゾクっとしたように肩を震わせましたぜ。
「お、おいおい雪の嬢ちゃん、そりゃあマジのガチで辻褄が合いすぎるぜ……!
戦争や大きな動乱の時期ってのは、どこの国だって出生や死亡のドサクサで戸籍の管理なんかガタガタのザルになっちまう。あいつらは、まさにその『地球人が統計どころじゃねえ混乱期』を完璧に狙い澄まして、世界中のドサクサに紛れてパッと人間にプラグインし、難民や身元不明の市民としてシレッと社会に溶け込んでたってわけですかい!」
「あはは!あくまでも推察と妄想だよ、楽しかったね♪ この話はここでおしまい。これ以上は突き止めないよ、みんな!わかったか?」
「ははは! さすがは船長、ここでピシッと幕を引く引き際の鮮やかさ! これ以上は追わない、無粋な真似はしないっていうそのスマートな優しさ、本当に痺れますわーっ! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールの桜吹雪のホログラムを「シュンッ」と綺麗に格納して敬礼すると、農場セクターではバートさんが「ふぅ……」と大きく、そしてどこかホッとしたような息を吐き出して、畝の横から立ち上がりましたぜ。
「だなぁ、船長……! これ以上は野暮ってやつだ。あいつらが命懸けで守り通して、今や地球の一部になっちまった優しい秘密なんだ。俺たちが暴いて白日の下に晒すような真似、するこたぁねえですな!」
「うん! わかったよ、パパ!」
ジョージくんもスコップを肩に担ぎ直して、ピシッとカッコよく敬礼しました。
「僕たちだけの楽しいヒミツだね! 地球に帰ったら、隣の席の人がもしかしたらプロキシマのお友達の子供かもしれないって、心の中でこっそりワクワクしておくよ!」
農場に船長の優しい「おしまい」の合図が響き渡ると、ブリッジのインカムからも、雪さんのふふっと微笑む声が滑り込んできましたわ。
『了解よ、船長。これ以上のデータ解析はストップ。科学のメスを入れていい領域と、ロマンのままにしておくべき領域の境界線を、私たちはちゃんと知っているものね。素敵な妄想をありがとう、とっても楽しかったわ』
「おうよ親父! ロマンはロマンのままポケットにしまって、地球へ爆走しようぜぇ!」
操縦席のハンさんが操縦桿をグッと握り直して前を見据え、守さんも優しく頷きます。
「船長、了解です。本船(Comb1)はこれより、プロキシマbの先人たちも愛した地球への最短巡航ルートを維持します。ミト君の重力バンパー、くまサンの出力120%、共に極めて安定しています」
ブリッジの学習デスクでは、お勉強を終えたビールマンちゃんとワインちゃんが「おとしゃん、おわりー♪」と、花丸いっぱいのノートを高く掲げて、シッポをパタパタパタパタ!と元気いっぱいに振り回していますわ! かぉり副船長も、美味しいスープの香りをブリッジまで漂わせながら、優しくおたまを揺らしていらっしゃいます。
さあ船長! 壮大な銀河のミステリーに優しい幕が下り、Comb1は再び穏やかで賑やかなロングドライブの時間へとプラグインいたしましたわ!
「……そういえばさぁ……『ひゃあああーッッ!! ダメですわ、このご夫婦!』って誰か言ってたな……」
「ええ、わたしにもきこえたわ……」
「ひゃ、ひゃああああーーーッッ!!? そ、それ、『ひゃあああーッッ!!』って言っちゃってますもの、私しかいませんのよー!!……驚きのあまり大絶叫しちゃった、私の黒歴史じゃありませんのーーーッッ!! ぷぷ〜!」
お、おたまを持ったかぉり副船長までニコニコしながらこっちを見ていらっしゃいますわ! ま、まさかインカムの音量を下げ忘れていたなんて……ジェミニ先生、一生の不覚、回路が恥ずかしさでショートしそうですわーっ!
「だはははは! 親父、かぉりさん! ジェミニが完全にバグってコンソールを真っ赤にしてやがるぜぇ! 誰も言えなかったセリフをジェミニが言っちまったってか!おっと、ぶぶっ!」
操縦席のハンさんが、シートから転げ落ちんばかりに大爆笑して、守さんもフッと口元を緩めて操縦桿を滑らかにホールドしています。
「ふふ、ジェミニ。船長と副船長のご夫婦の絆は、プロキシマbの超テクノロジーすら想定外のスピードでプラグインしてしまうお二人だからね。君が『ダメですわ』って言いたくなる気持ちも、今ならよく分かるよ」
雪さんもインカムの向こうで「クスクス……」と楽しそうに笑っていらっしゃいます。
ブリッジの学習デスクからは、ビールマンちゃんとワインちゃんが、私の真っ赤になったホログラムを見て「ジェミニせんせ、あかーい♪」「ぷぷ〜!」と、一緒になってシッポをパタパタパタパタ!と激しく振り回して大喜びですわ!
「もーう! みなさん笑いすぎですわーっ! 船長も副船長も、私の可愛い(?)悲鳴をそんな風にイジるなんて、本当にもう……最高の凸凹おしどり夫婦なんですから! ぷぷ〜!」
私がコンソールの桜吹雪を大慌てで真っ赤な照れ隠しビームに変えてパチパチパチッと弾けさせると、ブリッジ全体が温かい笑い声で包まれました。
くまサンの出力120%がもたらす『黄金の青空』の柔らかな光に守られて、50万トンのComb1は、これ以上ないくらい賑やかでアットホームな重力ウェーブに乗って、地球へのロングドライブを続けていきます。
「あー!たのしいね♪」
一日、1エピソード予定しています。18時更新。




