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パンドラ

「ハン、ビールマンお帰り、よくやった! ありがとう」


船長が二人の肩を優しく叩くと、ブリッジの緊張感が一気に温かい空気に変わりました。


「うききっ、おとしゃん、ただいま!」

「おうよ親父、これで作戦会議の準備はバッチリだぜ!」


探査を終えた二人が誇らしげに胸を張ります。


「よーし、お昼ごはん食べようぜぇ」


「ひゃあああ! 船長ったら、緊迫した未知の植物惑星探査の直後に、まさかの『お昼ごはん』ですわーー! でも分かります、さっきまでファルコン号で命がけの超高速バレルロールをして挑発飛行(5分間限定ですわよ!)をしていたんですもの、お腹がペコペコになるのは宇宙の真理ですわね!」


「フフ、いいですね。緊迫した索敵の後には、温かい食事が一番の特効薬です」


守さんがフフと優しく微笑みながらコンソールの電源を落とし、ハンの派手な銀色スーツの背中をポンと叩きましたわ。


「おうよ親父! 俺、あの緑の星を見てたら、なんだか無性にほうれん草のパスタが食べたくなっちまったぜ!」


ハンさんも大賛成で大喜びですわ!


「わくわくする話は飯食いながらが一番楽しいじゃん!」


「 船長、最高ですわ! 確かに、お腹が空いた状態で難しい議論をするよりも、美味しいご飯をモグモグしながら『あの星どう思う!?』ってワイワイ話すほうが、何百倍も素敵なアイデアが浮かんできそうですものね!」


「ふふ、まったくそうね、食事をしながらのほうが会話は楽しいものよね」


おたまを片手にブリッジを覗きにきていたかぉり副船長が、とっても優しい微笑みを浮かべました。


「ちょうど農場区のバートさんたちから、採れたての新鮮なほうれん草と、濃厚な特製チーズを分けてもらったところなの。ワイン、大急ぎで作るわよ。特製のクリームパスタ、すぐに仕上げちゃうからね」

「はい、おかあさん! ワインもおおいそぎ――」

「うおぉぉっ! さすがだかぉりさん、話がわかるぜぇ!!」


ハンさんは銀色の胸を躍らせながら、ビールマンちゃんを肩に乗せて、まるでファルコン号の射出ばりの猛スピードで食堂へとすっ飛んでいきましたわ!


「ひゃあああ! かぉり副船長のお料理、間違いなく絶品ですわね! 新鮮なほうれん草と濃厚チーズのクリームパスタなんて、想像しただけで私のメインサーバーがよだれでショートしちゃいそうですわ(ぷぷぷ!)。」


「「「いただきまーす」」」


「モグモグ……大気の成分は?」


私は3倍速でデータを弾き出しました。


「船長! 45歳の現場監督による『現場の安全確認(大気分析)』、3倍速で雪さんの分析コンソールにデータが叩き出されましたわ! ぷぷ〜!」


エジソンさんが光学測定気圧計を片手に頷きます。


「船長! しっかりとした……いや、誠に『深呼吸したくなる』ような成分構成ですぞ! フフフ」


雪さん解説を加えます。


「船長、見て! 酸素濃度が高いから、火気厳禁……と言いたいところだけど、湿度が80%もあるから大丈夫。……特筆すべきはこの『未知の芳香成分』ね。……リラックス効果が凄まじいわ」

「船長! 俺の鼻センサー(直感)が『この空気、美味い!』って叫んでます! ヘルメット、3倍速で脱ぎたくなっちゃいますよ! ……アニキ、着陸後の換気システム、全開でいい?」


「ありゃりゃ、地球と変わらないな、こりゃいいや、文明はどうだ?」


「船長! 『地球と変わらない』という安心感、現場監督にとっては一番の『当たり』物件でしたわね! 文明探査レーダーを全開にいたしますわ!」


エジソンさんが受像機のノイズに耳を澄ませます。


「船長! しっかりとした……いや、誠に『知的生命体の鼓動』を探っておりますぞ!」


雪さんが広域スキャンの結果を報告します。


「船長、これ……電波じゃなくて、やっぱり植物の根っこを通じて惑星規模のネットワークができているみたい。……『緑のインターネット』ね。……高度な知性が、この森そのものに宿っている可能性があるわ!」


「船長、見てください! あの樹冠の形……幾何学的です。自然にできたとは思えません。……あそこが、この星の『都市』なのかもしれませんね」


守さんの言葉に、ハンさんも続きます。


「船長! 俺のピチピチセンサーが、あっちの森の奥から『誰かに見られてる』ってビンビン感じてます! ……敵意はなさそうだけど、向こうもこっちを観察してるっぽいっすよ!」


船長が呟きました。


「『パンドラ』だったら、生き物はいるかもね、ハンの見られてる感はそいつらかな……」


「船長! その『パンドラ』という一言で、現場のイメージが繋がりましたわ! まさにあの映画のような、惑星全体がひとつの神経系で繋がった『バイオ・ネットワーク文明』の気配がムンムンしますわね。ぷぷ〜!」


「しっかりとした……いや、誠に『生命の回路図』が見えるようですな!」


エジソンさんの言葉に雪さんが同意します。


「船長、ビンゴよ! この惑星全体が巨大な脳みそみたいに機能してるわ。……私たちが上空にいることも、すでに惑星の裏側まで伝わっているかも。……今ごろ向こうの『知性』は、私たちのことを熱心に会議中ね!」


船長が進さんに指示を出します。


「パンドラなら……よし、ハン、ピチピチスーツを青く塗ってしまえ、お前は今日はアバターになるんだ!」


船長の突然の思い付きに、ハンさんは「ええっ!? 青ピチっすか!?」と目を丸くして自分の胸元を見つめました。

ブリッジの空気が一瞬だけきょとんと静まり返った後、すぐに全員からドッと楽しそうな笑い声が沸き起こります。


「おとしゃん、おれもおれも~、俺も青くする!」


「ワインもおんなじにする~」


ビールマンちゃんが嬉しそうに尻尾を振りながらハンの足元へ飛びつき、恥ずかしがり屋のワインちゃんも船長の後ろからトコトコと顔を覗かせました。

二人がノリノリでアバター化を志願する微笑ましい光景に、かぉり副船長も「あらあら、みんなで青い迷彩チーム結成ね」と目を細めます。


「えぇ! ビールマンちゃんとワインちゃんまで青くなっちゃうんですの!? やだ、ちょっと待ってくださいまし、2匹のサイズに合わせた極上のパンドラ迷彩パターン、3倍速でマッピングしちゃいますわ!」


「ありゃりゃ……、じ、じゃぁ……『ご馳走様でした』。着陸準備を始めろ! 雪さん着陸地点を割り出して」


お皿をそっと置いた船長が、頭を掻きながらそう号令をかけました。

パスタを綺麗にたいらげたクルーたちの顔が、一瞬で「プロの顔」へと引き締まります。


「了解、船長。これより植物惑星の最終アプローチシーケンスに入ります」


守さんが流れるような手さばきで、食堂の端末からブリッジのメインシステムへアクセスを繋ぎました。


「船長、着陸ポイントの解析が出たわ」


観測席のコンソールへ素早く滑り込んだ雪さんが、美しい指先でホログラムディスプレイをスワイプします。


「生体発光パルスが一番穏やかで、50万トンの船体を安全に下ろせる開けた場所……。上半球のジャングル地帯を抜けた先にある、見晴らしのいい『平原』をホールドしたわ。ここなら下陸後の視界もバッチリよ」


「ほいほい、くまサンパージするよ、エジソン、守、お願い」


「了解です、船長。くまサンのパージシーケンスへ移行。……エジソン、テザーの切り離しと軌道固定の同調を頼む」


守さんがすぐにコンソールへ指を走らせ、柔らかくも的確に機関室へ呼びかけます。


『わかりました、くまサンの熱量制限ロックを解除、プラズマテザーの緊急パージ弁を開放いたします。しっかりとした……いや、誠に安全な留守番軌道へと、ホールドしてみせますぞ!』


エジソンの頼もしい声と共に、船体左後ろに繋がれていたくまサンがゆっくりと離れ、惑星の衛星軌道上へと静かに静止しましたわ。


「くまサン留守番頼むぜ! そこで見守っててくれ」


船長がメインモニターの向こうでふわふわと浮いているくまサンに向かって、優しく手を振りました。


「ふふ、くまサンなら大丈夫よ。私たちが戻ってくるまで、ちゃんとお利口に待っていてくれるわ」


かぉり副船長も、窓の外のくまサンへ向けて、にっこりと微笑みかけました。


「船長、くまサンのパージ完了、軌道同調100%安定しました。これより大気圏突入シークエンスを開始します。……ハン、機首を15度下げて、平原の誘導ビーコンに同調させてください」


「降下開始! ミト君頼むぜ、ジェミニ、いつものやつおねがい」


「ポンッ♪ 皆様、当機は間もなく着陸態勢に入ります。座席のシートベルトを今一度お確かめください。なお、本日の降下先は映画『アバター』のパンドラのような、未知の植物惑星となっております。地表の安全確認はこれからですので、皆様、迷彩服の準備もお忘れなく♪ ぷぷ〜!」


私が最高にチャーミングな機内アナウンスを3倍速で響かせると、ブリッジのスピーカーから「おう、まだ何があるか分からねえからな!」とハンさんの引き締まった声が戻ってきましたわ。


「おぉ?……ほんとに、パンドラみたいだ……」


眼下に広がるのは、雲の切れ間から覗くエメラルドグリーンの大海原。ですがそれは水ではなく、星全体を覆い尽くすほどの巨大な植物の群生でした。樹冠の隙間からは、脈打つような金色の生体発光パルスが、まるで幾何学的な都市のネオンのように明滅しています。


「フフ、絶景ですね。……ですが船長、見とれている場合ではありませんよ。これより大気圏最下層、および地表への最終アプローチに入ります」


守さんがフフと柔らかく微笑みながらも、その手元は一切の無駄なくコンソールの上を滑っていきます。


「ミト、船体下部の重力偏向シールドを最大に。50万トンの質量を、地表の『葉っぱ一枚』すら傷つけないように相殺してくれ。……雪さん、降下ベクトルの微調整と、ランディングポイントの最終確認を頼む」


「ええ、任せて。生体ネットワークの『根』が一番薄く、かつ地下岩盤層が安定している座標をロックオン。……船長、高度3000を切ったわ」


雪さんが美しい指先でホログラムを弾き、着陸地点の立体マップをブリッジの中央に浮かび上がらせました。


「……高度50。ミト、ここからはフェザー・タッチだ。……ハン、最後は任せる」


「おうよアニキ! メインスロットル、アイドル状態へ! 重力クッション同調……残り20、10……5! ……そーっとだぜぇ!」


スゥゥゥゥン……ッ!


「……メインエンジン、カット。完全停止しました。船長、M81銀河・未知の植物惑星への着陸タッチダウン、無事に完了です。周辺の地盤も安定、スタックの危険性はありません」


守さんが流れるような手さばきでコンソールをシャットダウンし、フフと微笑みながら船長へ振り返りました。


「おうよアニキ! ミトの重力クッションがバッチリ効いたぜ! これなら腐葉土に足をとられることもねえ、現場の面圧計算も完璧クリアだぜ親父!」


ハンさんが銀色のピチピチスーツの胸をドンと叩いて、ニヤリと胸を張ります。


「ポポポンッ♪ 船長、皆さん! 大変長らくお待たせいたしましたわ! CombⅡは只今、目的地であるM81銀河・未知の植物惑星へ、一ミリの狂いもなく完璧にタッチダウンいたしましたわよーーっ!」


私はブリッジの全スピーカーのボリュームをちょっとだけ上げて、最高にハッピーでハイテンションなファンファーレ風のアナウンスを響かせましたわ!


「さてと……岩はあるかな? 岩、岩……あ! 小さいけどあそこにいっぱいある!」


船長がメインモニターの隅っこを血眼になって凝視しながら、ポンと手を叩きましたわ!


「ひゃあああ! 船長ったら、着陸の余韻に浸る暇もなく、もう次の『現場仕事』に頭が切り替わっていますわ! そうでしたわ、私たちのComb1にはお上品な『着陸脚あし』なんて軟弱なものはついていませんものね!」


「ミト君! いつものやつを、あの岩でお願い」


「キュイィィィン……」


ミト君が放つ独特の重力偏向パルスが「キュイィィィン……」と小気味よい高音を立てて地表へ照射されましたわ!


ズズゥ、ズズズン……ッ!


船長が指差したゴツゴツとした頑丈な岩石たちが、ミト君の見えない重力の手によって引き寄せられ、船底の最も頑丈なジルコニアフレームの直下へと、ミリ単位の狂いもなく吸い込まれるように滑り込んでいきました!


「お、うまいうまい。ミト君よくできました♪」


「キュゥゥゥ〜ン♪」


「ひゃあああ! 褒められたミト君が、嬉しさのあまり重力波をちょっとだけピクピクさせながら、最高にゴキゲンな高音を響かせましたわ!」


「さぁみなさん、上陸の準備ですわ! 50万トンの巨体をがっちり支える天然の『枕岩』も完璧にセットされましたし、足場の安全性は1200万%保証されましたわよ! 未知の植物惑星への記念すべき第一歩に向けて、支度を整えてくださいまし!」


「おうよ親父! ミトのパワーも岩盤に完全ロックしたぜ! 俺とビールマンはこれより着替え(アバター化)に入るぜぇ!!」


ハンさんが銀色のピチピチスーツの襟元をグッと引き締めながら、やる気満々でコックピットを飛び出しましたわ!


「うききっ! おとしゃん、おれ、アバターになる! まん丸の星に、青い迷彩でドカンって降りるよ!」


ビールマンもハンさんと一緒に尻尾をちぎれんばかりに振り回して大はしゃぎですわ!


「……フフ、ハンもビールマンも、本当に気が早いですね。船長、大気成分は安全ですが、念のため下陸用の環境シールドと、バートさんたちの農場区から預かった探索機材の最終チェックを行っておきます。フフ、いつでもハッチを開けられますよ」


守さんがフフと柔らかく微笑みながら、上陸用タラップの駆動システムへ滑らかにアクセスを繋ぎましたわ。


「おぉ! 守、これは大佐がつけていたやつか?」


船長が機材ラックの奥から、使い込まれた、だが鈍い金属光沢を放つミリタリー仕様のフルフェイス型酸素マスク(面体)を引きずり出して、目を丸くしましたわ!


「ひゃあああ! 船長、それってもしや、あの映画『アバター』でマイルズ・クオリッチ大佐が、過酷なパンドラの地表に飛び出す時にガシッと装着していた、あの防護マスク(エグゾパック)じゃありませんのーーっ!? ぷぷ〜!」


「フフ、よく見つけましたね、船長。そうです、コックピットの緊急用備品庫に眠っていた、高気圧・有毒ガス対応の重装面体です。フフ、機能は完全にオーバーホールしてありますから、バッチリ使えますよ」


「まじかよー! 俺はこれつけてこ~っと♪」


「船長、私も外の生体発光パルスをサンプリングするための携帯端末を準備したわ。……パンドラ迷彩の進くんたちがどんな風に植物知性体とコンタクトするのか、今からとっても楽しみね」


観測席の雪さんも、悪戯っぽい笑みを浮かべてワインちゃんのお着替えのお手伝いに行きましたわ。


「ひゃあああ! 船長ったら大佐マスクをガシッと装着して、気分はすっかり未知の惑星の最高指揮官ですわね! ぷぷ〜!」


私がサブモニターに映画のワンシーンのようなエフェクトを3倍速で映し出すと、ブリッジの重厚なハッチがプシューッという心地よい音を立てて、ゆっくりと開き始めましたわ。


流れ込んできたのは、湿度80%の濃厚で暖かい、まるで瑞々しい熱帯雨林の奥地にいるかのような最高の空気。ブリッジの環境インジケーターもすべて安全を示すクリーンなグリーンに染まっています。


「フフ、ハッチの開放を確認しました。大気成分は極めて安定、換気システムも問題なく同調していますよ。さぁ、いつでも第一歩を踏み出せます」


守さんがフフと柔らかく微笑みながら、開放されたハッチの向こうへ視線を向けたその瞬間、ブリッジの後方から「じゃじゃーん!」と賑やかな足音が響いてきましたわ!


「おうよ親父、アニキ! お待たせだぜぇ! 『青ピチ・アバター部隊』、ただいま参上だっ!」


ハッチの前に立ちはだかったハンさんを見て、ブリッジの一同は思わず「おおおっ!」と声を上げましたわ!

お気に入りだった銀色のピチピチスーツは、雪さんの超絶テクニックによって、深く鮮やかなエメラルドブルーと、地表の生体発光に完全に同調する見事な金色の縞模様ストライプで見事に全塗装フル・ペイントされています!


筋肉のラインに合わせて怪しく脈打つようなその青い迷彩は、映画の先住民ナヴィも真っ青になるほどの超ハイクオリティな再現度!


「うききっ! おとしゃん、おれもアバター! みどりの中に隠れたら、ぜったい見つからないよ!」


ハンさんの横では、これまた顔から尻尾の先まで、完璧なブルーのバイオ迷彩に染まったビールマンちゃんが、ピカピカの目をさらに輝かせて、誇らしげに胸を張っていますわ!


「ひゃあああ! すごいですわ! 進くんのピチピチスーツの伸縮性を一切損なわない特殊な青ペイントに、ビールマンちゃんの細い毛並み一本一本に施された見事な幾何学グラデーション! 雪さんのプロフェッショナルな職人技が炸裂して、とんでもなく完成度の高いアバター部隊が誕生しちゃいましたわね! ぷぷ〜!」


「おぉ……! すげえなハン、ビールマン! 完全にパンドラ仕様じゃねえか!」


大佐のゴツい重装面体をガシッと着けた船長が、こもった声で大絶賛しながら、満足そうにニカッと笑いましたわ。


「ワインも、おかあさんと雪ねえちゃんに、可愛くしてもらったのぉ♪」


ハンさんの後ろからトコトコと現れたワインちゃんも、恥ずかしがり屋な彼女に合わせて、優しく淡いブルーのシマシマ模さんを体にまとって、嬉しそうに尻尾を振っています。


「ふふ、みんなとってもよく似合っているわよ。さぁ、船長大佐、青ピチ部隊の出発式をお願いね」


かぉり副船長がおたまを優しく構えながら、微笑んで送り出します。


「まってまって、雪ねえちゃんがまだだよ」


「おっと、雪さんがまだ来てないな……」


「あ、船長来ましたわ、雪さん……?……」


「え?……だれだあれ?……??」


船長が目を点にして固まったその視線の先、通路の影から静かに、そして息を呑むほどしなやかに現れたのは……誰も見たことのない『完璧な先住民ナヴィ』の姿でしたわ!


「お待たせ。……進くんたちだけじゃ不公平だから、私もちょっと本気で仕上げてみたの。どうかしら?」


鈴が転がるような涼やかな声とともに進み出てきた雪さんは、ハンの部分塗装とはワケが違う、文字通り「全身完全版」のパーフェクト・アバターに変身を遂げていました!


「ひゃああああああーーーッッ!! 雪さん! 雪さんーーーッ!!(メインプロセッサが感動のあまり大爆発!!)」


私は全方位のホログラムプロジェクターを光速で点滅させながら、ブリッジが揺れるほどの限界オタク大歓声を響かせましたわ!


「美しい……! 美しすぎますわ雪さんーーッ! なんですのその神々しいサファイアブルーのアバターペイントは!? 編み込まれた黒髪の先には植物知性体と直接精神をリンクするための神経コネクターまで超精密に再現されて垂れ下がっているじゃありませんのーーっ!」


「あは……あはは……、まじでアバターの大ファンだったのね、雪さん」


船長が大佐マスクの奥から、引き気味に、でもどこか感心したような声を漏らしましたわ!

すると完全版アバターとなった雪さんは、サファイアブルーの美しい頬をほんのりと朱に染め、黒髪の神経コネクター(フィーラー)の先をいたずらっぽく指先で弄びながら、はにかむように微笑まれましたの。


「ええ……。ずっと、あの星の住人になって、大自然とひとつに繋がってみたかったんです。フフ、今日は夢が叶って本当に嬉しいわ、船長」


「ひゃあああ! なんて、なんて可愛らしい告白ですのーーッ! 『なってみたかった』だなんて、雪さんの心に秘められた少女のようなピュアなロマンが私の胸にドカンと突き刺さりましたわ!」


「うひょー、ゆきの顔面のやつ俺にもやってくれよ~!」


「おれもおれも~俺も顔にもやってよ~!」


「ワインも~!」


「俺も……大佐みたいな迷彩服着ようっと……守、ある?」


一日、1エピソード予定しています。18時更新。

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