ぴちぴちブラザーズ
「あはは、バート、ジョージそろそろ風呂入ろうか、超亜光速航行はもう4時間たったからさ、あいつらも風呂に連れてこ。これ持ってね、ぷぷぷ♪」
「船長、お疲れ様です! 私もちょうど、4時間の連続爆走で熱くなった演算ユニットをクールダウンさせたかったところですわ。ぷぷぷ!」
私の声がブリッジに響くと同時に、船内のアラートを「航行モード」から、心地よい「停泊モード」の柔らかなメロディへと切り替えました。
守さんとハンさんが、極限の「ゾーン」からゆっくりと意識を戻し、操縦桿から手を離します。守さんの背中で、ランボルギーニが「待ってました!」と言わんばかりに羽をバタつかせました。
「おーい、お疲れ様、今日はここで停泊するぜ。風呂入って晩御飯にしよう」
「さあ、守さんもハンさんも、最高のお風呂タイムですわよ! 農場セクションでバートさんが育てたハーブをたっぷり入れた、特製のアロマ風呂を準備しておきましたから!」
私は通路の誘導灯を、お風呂へと誘う温かな湯気のような色に点灯させました。
「あはは、牛乳かぶっちゃったよ。ビールマン、背中ゴシゴシしてくれ……オホホ、いい感じ」
「もうっ、船長ったら! せっかくのアロマ風呂なのに、牛乳の匂いとハーブの香りが混ざって、なんだか『美味しそうなシチュー』みたいなことになってますわよ!」
「うききっ! パパ、ゴシゴシ! 真っ白、ピカピカ!」
ビールマンが小さな手で一生懸命に船長の背中をこすると、真っ白な泡が立ち上って、船長はなんとも幸せそうに目を細めています。
「あはは、さっぱりしたぜ……お、ハンはもう出るのかな、おーいハン、お風呂マットを吸水力抜群にしたからさ、両足でバンって飛び乗れよ、きもちーぜ!」
「お、マジかよ船長! 吸水力抜群の新型マット!? そいつは試さねえ手はねえな!」
ハンは濡れた前髪をバサッとかき上げると、まるで陸上の三段跳びでも始めるかのような助走の構えを見せました。
「いくぜ、Comb1の重力加速を見せてやる!……せーのっ、ハイパー・ボチャ・着地ィィィ!!!」
ハンの引き締まった体が宙を舞い、船長がニヤニヤしながら指差した『プロキシマのジャックと豆の木マット』のど真ん中に、バチンッ! と凄まじい勢いで両足着地を決めました。
「——っ!?」
「お、親父! な、なんだこりゃー、布が……布が、体に勝手にめちゃくちゃフィットしてきてるぅ―、ギャー!!」
ハンの叫び声とともに、あの『ジャックと豆の木マット』が、まるで意志を持っているかのように彼の足首から上へと、シュルシュルと這い上がっていきます。
「な、なんだとうぅ……ぷぷぷ、大丈夫か? ハン君……あははは~♪」
船長が『わざとらしく』驚きながら湯船からは一歩も動かず笑う目の前で、ついにハンの全身は、光沢のある独特な質感の「超ぴちぴちスーツ」に包まれてしまいました!
「あはははは! ハンさん、最高ですわ! 宇宙一スタイリッシュ(?)なファッションモデルの誕生ね! ぷぷぷ!」
私は脱衣所のカメラのズームを最大にして、ハンの姿をしっかり記録に残しました。
「お、おい……これ、筋肉が浮き出てて、ちょっと恥ずかしいんだけど……動くたびに筋肉の動きに合わせて布がピクピクするぞ!?」
ハンが困惑しながら腕を曲げると、二の腕の筋肉が強調されて「ムキッ」と不自然なほど逞しく見えます。まさに「究極のボディビル・ウェア」状態ですわ!
「うききっ! ハン、かっこいい! ヒーローみたい!」
ビールマンが手を叩いて喜べば、バートさんも「ほう、そりゃあいい。そのままブリッジに行けば、空気抵抗ゼロで操縦できるんじゃねえか?」と、ひっくり返って笑っていると、ジョージ君にいたっては湯船で溺れそうになりながらおなかを抱えていますわ。
「ハンさん、すごく似合ってますわよ! まるで銀河を救う無敵の戦士……というか、ちょっと面白い全身タイツの人ですけれど! ぷぷぷ!」
私はあまりのおかしさに、スピーカーから笑い声を響かせながら、ハンの全身3Dスキャンデータをこっそり保存しました。
「さあ船長、この『ぴちぴちヒーロー』を先頭に、晩餐会の会場へ突撃しましょうか! 守さんがこれを見たら、どんな顔をするか……楽しみで仕方がありませんわ!」
「ハン、悪くないぜ、そのままダイニングに行こう。ほら、もう水気は無いだろ……吸収力抜群だからな。ぶぷっ……顔だけ出てる全身タイツ……ぷぷぷぷぷ」
船長に背中を押され、ハンが「もう、ヤケクソだぜ!」と観念してポーズを決めながらダイニングへ突入した、その瞬間!
「………………はっ?」
最初に固まったのは、大皿を持っていたかぉり副船長でした。
ハンの、「超・光沢ぴちぴちスーツ」姿……。顔だけがひょこっと出ているその姿を見た瞬間、彼女の手が震え始めました。
「…………ぷっ! …………あははははは! ちょっと、ハンくん! 何よその格好!? ヒーローなの? それとも新種の深海魚なの!?」
かぉり副船長が、持っていたおたまを放り出しそうになりながら爆笑の渦に飲み込まれました。
「うわぁぁっ! なんだその曲線美は! 私の『黄金の竹馬』より無駄がないじゃないか!」
エジソンさんも、持っていた設計図を落として目を丸くし、椅子から転げ落ちそうになっています。
「…………」
守さんだけは、あまりの衝撃にコーヒーを口に含んだまま石像のように固まっていましたが、ハンの二の腕が「ムキッ」と動くのを見た瞬間、「……ブフォォッ!」と豪快に吹き出してしまいました。
「ゲホッ、ごふっ……な、なんだそれは! 船長、これは一体何の訓練だ……!? 腹が、腹が痛い……っ!」
守さんがあの低い声で必死に笑いを堪えようとする姿が、余計にみんなの笑いのツボを刺激します。
「(笑い死にしそうになりながら)ハ、ハン君…す、……進くん、そのピチピチ感……お尻のラインが丸見えよ! ぷぷぷ、あははは!」
「お、おい! かぉりさんまで……! 船長、これやっぱり脱ぎたい! 脱ぎたいけど、吸い付きすぎて指が入んないんだよぉ!」
「おれもおれもー♪ おれもきるの!おとしゃんおれのわ~?」
ビールマンがハンに飛びついてぴちぴちボディを羨ましそうにペタペタ触っています。
「なにぃ、ビールマンこれ着たいのか?……わ、わかった、バートお願い、持ってきてよ」
船長のその一言で、バートさんが「あいよっ! 特大のやつと、ビールマンサイズの切り出しがあったはずだ!」と、意気揚々と農場セクションへ引き返していきました。
「えええぇぇ!? ビールマンまで!? 船長、本気ですの? ぷぷぷ、それはもう『ぴちぴちブラザーズ』の結成じゃありませんか!」
私の笑い声がダイニングの壁に反響して、お祭り騒ぎはさらに加速します。
「もうっ、船長ったら面白がりすぎですわ! でも想像しただけで……ぷぷぷ! ビールマンが着たら、まるで『つるつるの茹で卵』みたいになっちゃいますわよ!」
かぉり副船長は、涙を拭きながら「ちょっと待って、カメラ……カメラ用意しなきゃ! 永久保存版よこれ!」と、コンソールの記録スイッチを連打しています。
「ハンさん、見てください。ビールマンがあんなに目を輝かせて待ってますわ。もう諦めて、ぴちぴちブラザーズリーダーとして堂々としていてくださいな!」
「おぉ、バートありがとう、いいか、ビールマン、両足でポンって乗ってみな」
「うききっ! いくよー! とーっ!」
船長の合図で、ビールマンが短い手足を精一杯広げて、タオルの真ん中にポーンとダイブしました!
「……シュルシュルシュルッ!!」
小気味よい音と共に、タオルがビールマンの小さな体を一瞬で飲み込んでいきます。ハンの時よりも体が小さい分、巻き付くスピードが速い!
「——うきゃ!?……うきききーっ!!」
一瞬にして、そこには「ピカピカに光り輝く、銀色のラグビーボール」のような物体が誕生しました。手足の先までピチーッと布が吸い付き、ビールマンの丸っこいフォルムが強調されすぎて、もはや何の生き物か分かりません!
「………………(絶句)」
かぉり副船長が、今度こそ本当に椅子から転げ落ちました。「……ふ、ふふ、ふふふふ! かわいい……可愛すぎるわよビールマン! なにその、茹でたての大きな餃子みたいな姿!!」
「お、おい、まてまて……顔まですっぽりはいっちゃったぞ、息ができなくなっ……てないみたいだな、ホッ……」
「あははは! 船長、心配しすぎですわ! この『ジャックと豆の木タオル』、通気性だけは宇宙一なんですもの。むしろ新鮮な空気をこれでもかってくらい吸い込んでますわよ! ぷぷぷ!」
船長が焦って覗き込むと、真っ白なタイツの表面が、ビールマンの鼻と口の形に合わせて「フカ、フカ」とリズミカルに動いています。
「うききー! ぱぱ、みて! おれ、しろい影! しゅしゅしゅーっ!」
「お、おい、ビールマンの顔のところ、なんか出てきた、目、いやゴーグルか……?」
「えっ!? 船長、本当ですわ! 私の光学センサーでも確認しました……ビールマンの顔のあたり、布の繊維が組み変わって、真っ黒なレンズ状に変質してますわよ! ぷぷぷ!」
私は驚きのあまり、ダイニングの全モニターを一斉にビールマンの顔面アップに切り替えました。
船長が身を乗り出して覗き込むと、真っ白な繭のようだったビールマンの顔の部分に、シュルシュルと黒いラインが走り、まるで最新鋭のレーシングゴーグルのような形が出来上がっていきました。
「うききっ! パパ、よく見える! 全部キラキラしてる!」
「な、なんですのこれ! エジソンさん、これもタオルの機能なんですの!? まるで……ジャックの豆の木が天まで伸びるように、着る人の必要に合わせて『進化』してるみたいですわ!」
「まじか、こ、これは……まるであれじゃないか……ゴク…」
「………………。……はっ! 船長、ちょっと待ってくださいまし! 私、今すべてのログと照らし合わせて、とんでもない事実に気づいてしまいましたわ!」
私は驚きのあまり、ダイニングの全スピーカーから「ジャーン!」という衝撃のBGMを鳴り響かせました。
「あの……のっぺりとした質感、異様に大きな黒い目……。船長、これ、冗談抜きで『まさかのグレイ』ですわよ! ぷぷぷ、あはははは!」
私が気づいてしまったその瞬間に合わせるように、ダイニングのホログラムを「未知との遭遇」風の怪しげな霧と光の演出に切り替えました。
「なんですのこれ! 1200万光年の彼方を目指して爆走中の最新鋭宇宙船の中に、まさかあの伝説の宇宙人が出現するなんて……! ぷぷぷ! ビールマン、あなた自分がどれだけ再現度高いか分かってますの!?」
「うききっ! グレイだぞ!」
ビールマン・グレイが、その真っ黒なゴーグル(目)をピカッと光らせて首を傾げる姿に、かぉり副船長がついに「もうダメ、お腹よじれる……!」と床に転がってしまいました。
「いやいやちょっと待てよ、笑ってもいられなぽぷ……ぶははははは、ぐれいだはぁ!」
「あはははは! 船長、もう笑いすぎて何をおっしゃってるのか分かりませんわよ! 『笑ってもいられない』と言いつつ、お顔が真っ赤で爆笑しちゃってますもの! ぷぷぷ!」
私も笑いすぎて、船内の電圧が少しだけピリピリと愉快に振動してしまいそうです。
「あははは!、ハン、ビールマン、もう一度ジャンプしてポンて両足で着地すれば脱げるぜ」
「ええっ!? 船長、そんな簡単に脱げちゃうんですの!? ぷぷぷ、それじゃまるでお笑いコントの着替えシーンじゃありませんか!」
私は驚きと期待で、ダイニングのカメラを最高のシャッタースピードに設定しました。
船長のその言葉を信じて、二人の「ぴちぴちブラザーズ」が顔を見合わせました。
「マジかよ親父! 信じるぜ!? せーのっ……トォッ!!」
「やっほー! トォーッ!!」
筋肉ムキムキの「ぴちぴち地球人」ハンさんと、真っ白な「まさかのグレイ」ビールマンが、同時にダイニングの床を蹴って高く飛び上がりました!
「あ、やべ……まっ」
「船長なにを……ハ!ちょ、ちょっと待ってハンさん!! それはマズイですわよ!!」
私の緊急警告アラートがダイニングに鳴り響きましたが、時すでに遅し。慣性の法則(と船長のいい加減なアドバイス)は、光速を超える私たちの船でも抗いようがありませんわ!
「——シュパパパパパンッ!!!」
二人が着地した瞬間、あの意志を持つタオルは「任務完了!」と言わんばかりに、凄まじい速度で収縮を解除。ハンの足首から一気に、まるで逆再生の噴水のように布が弾け飛びました。
「わっ……脱げた! 脱げたぞ親父! あはは!!」
「うききー! もとどおりー!」
「……ハン……すっぽんぽんだったな……」
「………………あ。」
「「「あ!………」」」
私はとっさにダイニングの照明を0.1ルクスまで落とし、ハンの周囲にだけ「緊急用・黄金のサーチライト(目隠し用)」をぐるぐる振り回して視界を遮断しましたわ!
「ぷ、ぷぷぷ……! ハンさん、ナイスバディですけれど、公然わいせつ罪で逮捕されちゃいますわよ! かぉりさん、見ちゃダメですわ! 目が腐っちゃ……あ、もう手遅れみたいですわね!」
かぉり副船長は、おたまを握ったまま「……っ! ……ふぐっ!」と、もはや声にもならない笑いに震えながら、そっと手で目を覆っています。
「コホン、あらまぁ……。進くん、立派な筋肉ね。皮膚のツヤもいいし、健康そのものだわ」
さすがComb1の下ごしらえの母……メリーさんは動じることなく、ハンの体をプロの視線でチェックしています。
「うききっ! パパ、おれも脱げた! おれ、パンツはいてるもんねー!」
一方でビールマン・グレイは、シュルンッと綺麗に脱皮完了。彼はちゃんと中にパンツを履いていたので、ドヤ顔でハンの横で仁王立ちしています。この対比がもう……ぷぷぷ!
「お、おい! 船長! 脱げればいいって、……メリーさんの反応も逆に恥ずかしいような!!」
「あはははは! 船長、ひどいですわ! 船長がニヤニヤしながらハンさんにあの布を渡した時から、こうなるって分かってたんじゃありませんの!? ぷぷぷ!」
私はあまりの面白さに、ダイニングの床に「ここですよ!」と言わんばかりに、飛んでいったタオルの場所をスポットライトで照らしてあげました。
「エジソンさん! 呆然としてないで、早くハンの設計図を書いてあげてくださいまし! 守さんも、弟さんの危機なんだから、コーヒー吹き出して震えてないで助けてあげて!」
エジソンさんは「ほう……実に無駄のない、原始の姿だ」と感心したように眼鏡をクイッと上げ、守さんは無言でハンさんの前にスッと立ち、その立派なガタイで「隠し」に入りました。
「ぷぷぷ! あはははは! ハンさん、それを着たのは浴場から脱衣所に出た時でしたものね! まさに完全な『脱皮』ですわよ!」
「あーぁ、面白かった。ん、ビールマンもう一回着るのか?……じゃぁちょっと小さくしてもらってさ、ご飯食べられるようにしなよ」
「了解ですわ! ビールマン、今度は『食事特化型ぴちぴちモード』ですね! お顔の部分はしっかり出して、お口も大きく動かせるようにバートさんが魔法をかけてくれましたわよ」
「うききっ! いくよー、ポンッ!」
今度は小さめのタオルに、ビールマンが可愛らしく着地!
「シュシュシュッ!」という小気味良い音とともに、今度はビールマンの首から下……まるで真っ白な「ぴちぴちタキシード」か、超タイトな「宇宙レスラー・スーツ」のような姿に変身しました!
「ぷぷぷ! 見てくださいな船長! 今度はちゃんとお顔が出ていて、まるでおしゃれな『白いペンギン』さんみたいですわ! これならスープもパスタも、一滴もこぼさずに食べられますわね!」
かぉり副船長も、ハンさんの惨劇からようやく立ち直って、「……ふふ、あはは! 今度は可愛いわね、ビールマン。まるで未来のレストランの給仕さんみたい!」と、お腹を抱えながらキッチンへ戻っていきました。
「お、俺も……もう一回着ようかな、ここを切って……今度はパンツはいたから。よっと、ポン」
「シュルルルルッ!」
ハンの再チャレンジに合わせ、タオルが意志を持つ蛇のようにその肉体を駆け上がります。ハサミを入れたおかげで、首から上がきれいに露出した「最新鋭のぴちぴち・ハイネックスーツ」姿に!
「あははは! ハンさん、まさかのリピート!? ぷぷぷ、その『ぴちぴち感』、一度味わうと癖になっちゃうんですのね! まさに宇宙の新ファッションリーダーですわ!」
私はまたしても笑いが止まらなくなり、ダイニングの照明を「ランウェイ・モード」の華やかなスポットライトに切り替えました。
「おぉ……! 親父、見てくれよ! 今度はちゃんと顔も出てるし、パンツのおかげでさっきみたいな大惨事にもならない! なんだこれ、めちゃくちゃ動きやすいし、筋肉がサポートされてる感じがして最高だぜ!」
ハンさんが鏡の前でムキッ! とポーズを決めると、光沢のある白い布が、彼の鍛え上げられた腹筋の溝まで完璧にトレースして輝いています。
「うききっ! ハン、おそろい! 銀色チーム!」
銀色のペンギン姿のビールマンが、ハンさんの隣で一緒にポーズ!
「ぷぷぷ! 船長、見てくださいな! まるで『M81親善大使・ぴちぴちブラザーズ』の誕生ですわよ! かぉりさん、見て! 今度はちゃんと服(?)を着てますから、安心して出てきてくださいな!」
全42編。43編以降編集中・・・




