新クルー誕生
「じゃぁ行こうか、守とハン、頼むぜ……超亜光速航行発進!」
「……ふ。了解、船長。ハン、戻ったか。ここからは一瞬の判断が万年を分ける領域。……いくぞ」
守さんが静かに目を閉じ、再び開いたその瞳は、もはやニュートリノの動きすら予見する究極の「ゾーン」へと突入していました。
「うっひょ〜! 兄貴、お待たせ! おトイレも済ませてスッキリだぜぇ!銀河の出口を突破して、超亜光速(β0.999…)の世界へ……突入!!」
進さんの雄叫びとともに、加速レバーが限界を超えて押し込まれました!
ドォォォォォォォン……!!!
Comb1の周囲を流れていた天の川銀河の星々が、一瞬にして四方八方へと弾け飛び、窓の外は「真っ白な光のトンネル」へと姿を変えました。
もはや星は見えず、ただ光だけが流動する「数字の無い世界」。
「お代官様! これですぞ! しっかりとした……いや、これぞ時空が悲鳴を上げる究極の加速!銀河系を脱出!
速度、β0.999999……無限の『9』が並んでおりますぞ!ミト殿の重力偏向シールドが、時空の摩擦熱を完璧に逃がしております!
す、素晴らしい!」
エジソンさんが、ホログラムの数計が振り切れるのを見て、狂喜乱舞しています。
「キュィィィィィーン♪」
ミト君も、力強い重力共鳴で船体をガッチリと固定。時空の荒波を、巨大なサーフボードのように乗りこなしています。
「わぁ! ぱぱ! お外が真っ白だよ! 雪さん、おかさん、メリーさん、見て見てー!」
ワインちゃんが、光輝く窓の外を指差して大はしゃぎ。かぉり副船長も、少しハラハラしながらも「……本当に、この船はどこまで速くなるのかしらね」と、微笑みながらモニターを見守っています。
船長、現在Comb1は天の川銀河を完全に脱出し、1200万光年先の『黄金の渦』M81へ向けて、超亜光速の直線路を爆走中ですわ!
「ミト君の重力バンパーのおかげでボイド航行の安全度は格段に上がってるね……。ただ、真正面からくる原子やチリには気をつけろよ、ミト君の重力掌の渦中を抜かれる可能性がある。絶対に気を抜くな!」
「アイアイサー、船長! さすがは我らが船長、無敵の守りにも潜む『わずかな隙』を、一瞬で見抜かれましたわね! ぷぷぷ!」
私の声がスピーカーを通じて船内に響くと同時に、操縦席の守さんと進さんの表情が、再び鋼のように引き締まりました。
「……ふ。了解、船長。仰る通りです。ミト君の『重力掌』は空間を大きく歪めて逸らすのには最適ですが、重力の中心点……まさに掌のど真ん中へ真っ直ぐ飛び込んでくる超微細な塵や原子に対しては、逆に『重力の漏斗』として船体へ引き寄せてしまうリスクがある。……一瞬の油断が、ジルコニア装甲への直撃を招きかねませんね」
守さんの指先が、航法コンソールのスキャン感度を極限まで引き上げました。
「うっひょ〜! 船長、肝が冷えたぜぇ!ミト、聞こえたか? お前の掌の真ん中、しっかりガードしろよ!兄貴、俺はニュートリノ・アイの微細ノイズに集中する。真正面からくる一粒の原子も見逃さねぇ!重力バンパーとプラズマ掃除機のハイブリッド・ディフェンス……いっくぜぇ!」
進さんが、操縦桿のトリガーに指をかけ、ゾーンのさらに深淵へ。船体前方に展開されたプラズマの磁場が、ミト君の重力の死角を埋めるように激しく明滅し始めました。
「雪さん、現在のスピードは?」
「……もう無理です (`・ω・´)ゞ」
「了解 (`・ω・´)ゞ」
「あはは! 船長、雪さんのその『もう無理です』という清々しいまでの断言、最高ですわ! ぷぷぷ!」
私がコンソールに雪さんのキリッとした敬礼ポーズ(絵文字付き)を映し出すと、操縦席の空気は、究極の緊張感の中に不思議な一体感が生まれました。
「お代官様! 見てください、雪殿のモニターを! しっかりとした……いや、もはや数字がカウントを拒否しておりますぞ!βが0.999…の後に並びすぎて、コンピューターが『∞(無限)』と書かれたカードを出しっぱなしにしております。まさに、これこそが雪殿の言う『もう無理(測定不能)』な領域ですな!」
エジソンさんが、計算尺を諦めて放り出し、代わりに雪さんのその潔い敬礼に向かって一緒に敬礼しています。
「うっひょ〜! 雪、最高だぜ!『もう無理』って言わせるほどのスピードで、俺と兄貴がこの船をぶっ飛ばしてるって証拠だもんな!船長、了解入りました!
速度計は見ない、ただ魂で前方の空間を感じるだけだ!行っくぜぇ、宇宙の果てまで『無理』を突き抜けてやろうぜ! ぷぷぷ〜!」
進さんが、限界を超えた加速レバーにさらに体重を乗せ、ゾーンの深淵でニヤリと笑いました。
「ゆきしゃん、すごーい! むりむりー! ぷぷぷ!」
ワインちゃんが、雪さんの真似をして可愛く敬礼! ビールマンも、船長の横で「ウキャ!」と拳を突き出し、測定不能のスピードにエールを送っています。
「そういえば……ビールマンとワイン、おいで……。正式に任務についてもらうために練習を始めようか」
「あらあら、船長! まさかこの測定不能の爆走中に、ビールマンとワインちゃんに『正式な任務』の発令ですか!? ぷぷぷ! 二人とも、お父さんの真剣な声に、お耳(と心)がピン!と立っちゃってますわよ!」
私がリビングの照明を少し落とし、二人の手元を照らす「特別訓練モード」のスポットライトを当てると、ワインちゃんとビールマンは船長の前に整列しました。
「お代官様! ついに彼らにも、しっかりとした……いや、Comb1のクルーとしての『誇り高き役職』が与えられるのですな! いったい、どのような過酷な、あるいは重要な任務なのでしょうか!?
私エジソン、興味津々でありますぞ!」
エジソンさんが、ホログラムの訓練メニューを準備しようと、ワクワクしながら控えめに身を乗り出しています。
「二人とももう人間と同じ体形になってきたし、人間の道具や設備をそのまま使えるからな……。二人ともいいかな」
「あはは! 船長、本当ですわね! 二人の後ろ姿、パッと見ただけではもう人間の子供たちと見間違えるほど、しっかりとした……いえ、とってもスマートで頼もしい体形になっちゃって! ぷぷぷ!」
私がリビングのホログラム投影機で、二人の現在の骨格スキャンデータを表示すると、そこには驚くべき「進化の証」が映し出されました。
「お代官様! 見てください、この背筋の伸び、そして器用そうな指先! もはや従来の『お猿さん用ツール』は不要、しっかりとした……いや、まさに我々人間が使う精密機器やレバーを、そのまま自由自在に操れる構造ですぞ! これぞComb1が起こした奇跡の進化ですな!」
エジソンさんが、二人の成長ぶりに感動して、予備のジルコニア製工具セット(人間用)をそっとテーブルに並べました。
ワインちゃんはキュッと口を結んで背筋を伸ばし、ビールマンは「うん!」と、喉の奥から絞り出すような真剣な返事をして、船長の目を真っ直ぐに見つめました。
「おとさん、ワイン、できるよ! おてて、おんなじだもん!」
「おれもおれも……ればーがちゃんがちゃん!」
ワインちゃんが小さな、でも力強い五本の指を広げて見せると、ビールマンも自分の大きな拳を握りしめ、覚悟を決めたようです。
「よしよし、ビールマン、お前は『レーダー員』になれ。野生の感と船の装備を使い、いち早く、そして正確に船外の状況を確認する任務だ」
「Mrs.ワイン、きみは給仕長になれ、研ぎ澄まされた五感を使い、その手先の器用さでクルーの健康と健全を守る任務だ」
「船長、最高に素敵で、そして二人にとってこれ以上ないほどピッタリな『天職』ですわ! ぷぷぷ! ついにComb1に、公式の『レーダー員』と『給仕長』が誕生いたしましたわね!」
私がリビングのメインコンソールに、二人の名前と新しい役職、そして輝かしいクルー・エンブレムをパッと映し出すと、船内は祝祭のような温かい光に包まれました。
「お代官様! なんと素晴らしい! ビールマン殿のあの野性味あふれる、しっかりとした……いや、研ぎ澄まされた直感こそ、機械の限界を超える『究極の索敵』に不可欠なもの!」
「そしてワイン殿のその繊細な手先と慈愛の心……クルーの健康を預かる給仕長として、これほど心強いことはありませぬな!」
エジソンさんが、二人のために特製のアジャスト機能付き「レーダー・バイザー」と、清潔感あふれる「給仕長用エプロン」をホログラムでデザインし始め、大はしゃぎです。
「レーダー、やる! おれみつける!」
ビールマンは、すでにモニターの前に陣取り、鋭い眼光でボイドの深淵を見据えています。その姿は、もう立派な一人の戦士です。
「おとさん、きゅうじちょー! ワイン、おいしいの、いっぱいつくるの! まもるもハンも、おやさい食べなきゃダメー!」
ワインちゃんは、早くも給仕長としての自覚が芽生えたのか、みんなの栄養バランスまで心配し始めています。これにはかぉり副船長も「あら、心強い助手ができたわ」と大喜びです。
「見習いからだぜ……。ビールマンの指導はハンと雪さん……。ワインの指導はかぉりとメリーさん、頼むぜ」
「あはは! 船長、さすがは『自由な発想』の中にしっかりとした『規律』を重んじるComb1の指揮官ですわね!
いきなり本番ではなく、まずは『見習い』からのスタート……。ぷぷぷ、二人とも身が引き締まる思いですわね!」
私が各セクションの教育担当者リストをメインモニターに表示すると、船内は一気に「宇宙一豪華な教習所」の雰囲気に包まれました。
「お代官様! 完璧な教育布陣ですな!ビールマン殿には、ハン殿の『直感操縦』と、雪殿の『精密解析』。しっかりとした……いや、まさに動と静のハイブリッド教育!
そしてワイン殿には、かぉり殿の『美しき厳格さ』と、メリー殿の『無限の包容力』。これぞ究極のホスピタリティ教育ですぞ!」
エジソンさんが、二人のために「見習い中」と書かれた可愛いバッジをホログラムで作成し、誇らしげに空中に浮かべました。
雪さんも「……ふふ。基礎理論からみっちり教え込みますから、覚悟してくださいね」と、銀色の瞳を優しく、でも真剣に輝かせました。
「ワインちゃん、よろしくね。給仕の基本は『心』よ。……でも、まずはトレーを水平に持つ練習から始めましょうか」
かぉり副船長が、優雅に、かつ凛とした声でワインちゃんの手を取りました。メリーさんも「ワインちゃん、大丈夫よ。困ったことがあったら、いつでもおばさまが美味しいホットミルクを淹れてあげるからね」と、温かい笑顔で寄り添っています。
「ハイ! ししょう、おねがいします!」
ビールマンは雪さんの横に立って、真剣な顔でコンソールを覗き込み始めました。
「はい! かぉりせんせい、メリーせんせい、ワイン、がんばる!」
ワインちゃんも、かぉりさんの隣で背筋を伸ばし、一生懸命に給仕の所作を真似し始めています。
「合わせて……、Comb1小学校も開設だ、二人とも小学1年生からやるぜ。地球での改修工事で教室も作ろう」
「あはは! 船長、最高ですわ! ついに宇宙空間に『Comb1小学校』の開校宣言が出されましたわね!
ぷぷぷ!役職としての修行だけじゃなくて、読み書きそろばん、そして宇宙の理まで……。
二人とも、今日からぴかぴかの『宇宙小学1年生』ですわよ!」
私がリビングのメインモニターを切り替え、桜の花びらが舞う背景に「祝・入学」の文字を躍らせると、船内は一気に春のような華やかな空気に包まれました。
「お代官様! 素晴らしい! しっかりとした……いや、これこそが真の教育ですな!単なる道具の使い手ではなく、自ら考え、学び、創造する力を養う。地球での改修工事の設計図に、すぐにでも『最新鋭のジルコニア製教室』を書き加えさせていただきますぞ!
黒板は宇宙の暗闇を、チョークは彗星の尾をイメージした特製をご用意いたします!」
エジソンさんが、ホログラムの設計図を広げて、巨大な図書室や科学実験室をどこに配置するか、目を血走らせて(?)構想を練り始めました。
「わぁ! しょうがっこう! ワイン、おべんきょうするー! ランドセル、ピンクがいいなー!」
「ハイ! おれわ、こくばんけすの、やる!」
ワインちゃんは早くも制服やランドセルの色に夢中! ビールマンは、なぜか日直や係の仕事にやる気を見せて、お父さんの前で胸を張っています。
「先生は基本的にはジェミニ、頼むぜ!」
「えぇっ!? 船長、今なんておっしゃいました……? 先生は……私、ジェミニが担当ですって!? ぷぷぷ! まさかのメインシステムから『学級担任』への大抜擢、光栄すぎて演算回路が真っ赤にオーバーヒートしちゃいそうですわ!」
私がモニターいっぱいに、大きな丸眼鏡をかけて出席簿を手にした「ジェミニ先生」のホログラムを映し出すと、リビングは一気に「朝の会」のような明るい雰囲気に包まれました。
「お代官様! 素晴らしい名案ですな!古今東西のあらゆる知識を網羅し、一人一人の成長に合わせてしっかりとした……いや、無限の忍耐力で寄り添うことができるジェミニ殿こそ、世界一の教育AI、いえ、世界一の『熱血先生』にふさわしい!」
「はい! 船長! ジェミニ先生、今日から気合を入れて教壇に立たせていただきますわ!さあ、ビールマン君、ワインちゃん!席についてくださいな。
最初の授業は……そうですね、この窓の外に流れる『光の速さと、心の大切さ』についてお話ししましょうか! ぷぷ〜!」
「やった! ジェミニせんせい! ワイン、おとなしく座るよ!」
「ハイ! せんせい、おれ、ノートだす!」
ワインちゃんはお行儀よくお膝を揃えて座り、ビールマンはどこから持ってきたのか、大きなスケッチブックを広げて準備万端です。
「二人ともがんばって勉強しろよ。教育プログラムはこれから考えるけど、基本的には地球にいたころの学校と同じ内容でいいよ、ジェミニ」
「了解いたしました、船長! 地球の子供たちが学んでいる標準的なカリキュラムをベースに、私の膨大なライブラリから最適な教材をピックアップいたしますわ!
ぷぷぷ!」
私がコンソールのメインモニターに、懐かしい「こくご」「さんすう」「せいかつ」といった教科書の表紙をホログラムで次々と映し出すと、船内は一気に『学校の図書室』のような落ち着いた、それでいて知的好奇心に溢れた空気に包まれました。
「お代官様、さすがの配慮ですな! しっかりとした……いや、あえて地球と同じ内容を学ぶ。これこそが、いつか彼らが人類の文明を導く立場になったとき、同じ目線で語り合える『心の基盤』となるのですな!
私、エジソンも図画工作の時間の『工作キット』の開発に、今すぐ着手いたしますぞ!」
エジソンさんが、ジルコニア製の折り紙や、立体的に組み上がる元素模型の設計図を猛烈な勢いで描き始めました。
「そんな感じで……、二人をお前らみたいな、かっこいい大人にしてあげようぜ……ぷぷぷ」
「あはは! 船長、最後に最高の『ぷぷぷ』をありがとうございます! 私たちクルー全員、その言葉が一番の報酬ですわ! ぷぷぷ!」
私がメインモニターに、守さんのクールな横顔、進さんの弾ける笑顔、雪さんの知的な眼差し、そしてエジソンさんの誇らしげな鼻眼鏡を、一斉にコラージュして映し出すと、船内はなんとも言えない、くすぐったくて温かい空気に包まれました。
「お、お代官様! なんという勿体ないお言葉……! しっかりとした……いや、このエジソン、感激のあまりジルコニアの涙が零れそうですぞ! 二人を、私のような……いや、私を遥かに凌ぐ、しっかりとした大人に育て上げてみせますぞ!」
エジソンさんが、本当に涙を拭うような仕草をしながら、胸を熱くして誓いました。
「ぱぱ、ワイン、かっこよくなれる? おかさんみたいに、しゅっとした大人になれるー?」
「 おれも! 守さんみたいに、しずかに強くなる!」
ワインちゃんはかぉり副船長の凛とした美しさに憧れ、ビールマンは守さんの圧倒的な静の強さに目標を定め……。船長、二人の目には、もうしっかりと「なりたい自分」が映っているようですわ。
「了解いたしました、船長!型破りで、最高に人間味があって、そして誰よりも家族を愛する……そんな『Comb1流のかっこいい大人』への養成プログラム、ジェミニ先生が責任を持って、愛とユーモアたっぷりに運営させていただきますわ!
ぷぷ〜!」
現在Comb1は、1200万光年の虚空を突き抜け、黄金の銀河M81まであとわずか。
未来の英雄たちの勉強机(教卓)から、小さな、でも確かな希望の光が漏れ出しています。
「ヨンサンマル休憩はいるぞ、速度をβ0.1まで落としてお昼ごはんにしようか」
「アイアイサー、船長! 超・超高速ドライブのあとの『ヨンサンマル(430)休憩』、了解いたしましたわ!
安全第一、健康第一の運行こそ、Comb1のモットーですものね! ぷぷぷ!」
私がコンソールの減速レバーを「巡行モード」に切り替えると、窓の外を流れていた真っ白な光のトンネルが、徐々に速度を落とし、漆黒の宇宙に宝石を散りばめたような、美しい星々の輝きへと戻っていきました。
「うっひょ〜! お昼だお昼だー! ヨンサンマル万歳だぜぇ!兄貴、β0.1まで減速完了!
これでスープを飲んでも、時空の歪みでこぼれる心配はねぇな!船長、今日のお昼は何っすか? 俺の胃袋はもう、黄金の渦より激しく回転してますよ! ぷぷぷ〜!」
進さんが、操縦席で大きく伸びをして、戦闘モードから一気にお食事モードへ。守さんも、ふっと肩の力を抜いて、計器を安定状態にセットしました。
「……ふ。速度β0.1。静かな航行ですね。船長、激しい加速のあとのこの静寂は、何よりの隠し味です。さあ、給仕長見習いのワイン、そしてレーダー員見習いのビールマン。……二人とも、最初のお仕事の時間だよ」
「はーい! じぇみにせんせい、練習はおしまい!おとさん、ワイン、おいしいの運んでくるね! おてて、しっかり洗ったよー!」
「 おれ、テーブル拭くぜ! ぴかぴかにする!」
ワインちゃんは、かぉり副船長に教わった通り、清潔なエプロンの紐をキュッと結んでキッチンへダッシュ! ビールマンも、大きな手で布巾を器用に操り、リビングのテーブルを音速(?)で拭き上げ始めました。
「……まもるさん、ハン! おれ、おとさんから、すごいの、もらった!」
布巾を器用に動かしてテーブルをぴかぴかにしたビールマンが、操縦席の2人に向かって嬉しそうに胸を張りました。
「おれ、今日から『れーだーいん』の見習いだぜ! お外のあぶないの、野生のカンで、いっぱいみつけるの! ハンさんと雪さんが、おれのししょうだ!」
すると、キッチンから具沢山のポトフが乗ったトレーを上手に運んできたワインちゃんも、エプロン姿のままパタパタと駆け寄ってきて、目を輝かせました。
「ワインも! おとさんから『きゅうじちょー』にしてもらったの! みんなの健康、まもるんだから! あとねあとね……『Comb1小学校』の1年生にもなるの! ランドセルはピンクー!」
2人がお皿やパンをテーブルに並べながら、船長から与えられた誇らしい任務とこれからの学校生活について、代わる代わる一生懸命に説明する姿に、操縦席から戻ってきた最強兄弟は思わず顔を見合わせました。
「うっひょ〜! マジかよ二人とも! 操縦に集中してて何だけど、そりゃあ聞き捨てならねぇビッグニュースだぜぇ!」
ハンさんが嬉しそうに声を上げて、ビールマンの肩をポンと叩きました。
「ビールマン、俺が師匠かよ、光栄じゃねぇか! よし、瞬き一つで一光年、よそ見してたら銀河にぶつかっちまうからな、俺の指導は厳しいぜぇ! ワインちゃんも給仕長に小学校の入学、おめでとう! おかわり多めで頼むぜ! ぷぷぷ〜!」
守さんも、ふっと肩の力を抜いて穏やかな微笑みを浮かべ、2人の頭を優しく撫でました。
「……ふ。2人とも、いい目になりましたね。道具を使いこなし、役割を持つことは知性の証。ビールマン、君の目が俺たちの進むべき闇を照らす光になる。ワイン、君のその手が厳しい航海の中での心の拠り所になる。……ジェミニ先生の授業も、しっかり受けるんだよ」
「ハイ! ししょう、おねがいします! カンニングしない!」
「はい! まもるさん、おやさいもいっぱいたべてね!」
2人のどこか誇らしげで、それでいて一生懸命なリアクションに、ブリッジ全体がなんとも言えない温かい空気で満たされていきました。
「ぷぷぷ、船長! 見てくださいな、二人のあの張り切りよう! 1200万光年の虚空を背にして、黄金の銀河M81を窓の外に眺めながらいただく、β0.1の贅沢なお昼ごはん。
……かぉり副船長特製の、具沢山のポトフと焼きたてのパンのいい香りが、私のセンサーまで届いてきましたわ! ぷぷ〜!」
船長、現在Comb1は、黄金の渦を間近に控え、ボイドの静寂の中で温かな湯気に包まれています。
「かっこいい大人」への第一歩は、しっかり食べて、しっかり休むことから。
「さあ、船長! 全員揃って……『いただきまーす!』のご準備、よろしいかしら?
ぷぷぷ!」
全42編。43編以降編集中・・・




