表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/76

発進してしまえ

「わぁ! キラキラ! 船長、ウルトラマンさん、おひるねしてるかなぁ?」

ワインちゃんが無邪気に窓を叩くと、ミト君が空気を読んだのか、一際優しく「キュィィィーン♪」と鳴いて、青いガスの中へと滑り込んでいきました。


「よ、よーし、ウルトラマンに会いに行くぜ~。守、ハン、発進してしまえ!」


「了解いたしました、船長! その意気ですわ! ロマンを忘れたら、この広い宇宙はただの暗闇になっちゃいますものね! ぷぷぷ!」


私はコンソールのメインスロットルを「全開」にセット! 雪さんが冷静な手つきで、青白く輝くM78星雲の深部へと、重力航路を固定しました。


「よっしゃあ! 船長、任せとけ! ウルトラマンが見てる前で、ダサい操縦はできねぇぜ! ミト、気合入れろよ! シュワッチ級の加速、いっちゃうぜぇ!」

ハンさんが、まるでヒーロー番組の主題歌を口ずさむような勢いで加速レバーを押し込みました。


「……ふ。了解、船長。エンジンの重力臨界を最大まで引き上げます。たとえ光の巨人の姿が目に見えなくても、彼らが守ろうとしたこの美しい星々を、俺たちの手で駆け抜ける。これも一つの『正義』かもしれませんね」

守さんも、どこか楽しそうに、計器の数値を鮮やかに調整していきます。


「うるとらまんさーん! あそぼー!!」

ビールマンが両手を大きく振って窓の外に呼びかけると、ミト君が「キュィィィィィーン♪」と、かつてないほど高く、そして力強く鳴り響きました!


「ビールマン、ワイン、着く前に『ウルトラマン』みよーぜ」


「おとしゃんおれもあれ出せるようになるかなぁ……、こうやるの?」

「ワインもワインもーー!」


「あはは、頑張れば出ると思うぜぇ……どうだ……そろそろ着くかな?……」


「船長、期待で胸を膨らませているところを失礼いたしますわ! まもなく、前方12時方向に『伝説の光』が姿を現します。メインモニター、投影開始ですわ! ぷぷぷ!」


私がコンソールのレバーを引くと、真っ暗だったスクリーンに、吸い込まれるようなサファイア・ブルーの霧がぶわっと広がりました。


「お待たせしました、船長。こちらがオリオン座の三つ星のすぐ近く、地球から約1600光年の距離にある、反射星雲『M78』の真の姿ですわ。ここはね、宇宙に漂う冷たいガスや塵が、近くにある生まれたての若い星たちの光を反射して、こんなに美しく青白く輝いているんです。まさに、星たちの『ゆりかご』……。この光の霧の中では、今も新しい太陽たちが産声を上げている、とっても生命力に溢れた場所なんですのよ!」


「お代官様! 補足させていただきますぞ!」

エジソンさんが、ホログラムの拡大鏡を片手に、興奮を抑えきれない様子で身を乗り出しました。

「しっかりとした……いや、この星雲の広がりは約5光年! 劇中の設定では『光の国』があると言われておりますが、天文学的に見ても、ここから放たれる青い光は非常にエネルギーが強く、神々しさすら感じます。まさに、正義のヒーローがここを故郷に選んだのも頷けるというものですな!」


「うっひょ〜! 船長、見てくださいよ! あの青い光、なんだか吸い込まれそうだぜ……。ミト、どうだ? お前もこの青い光、気に入ったか?」

ハンさんが操縦桿を軽く叩くと、ミト君が「キュィィィーン♪」と、まるで星雲の青さに呼応するように、イベント・ホライゾンを鮮やかなインディゴブルーに染め上げました。


「……ふ。1600光年の旅が、ほんの数十分。船長、俺の目にも、このガスの中に巨大な光の影が動いているように見えますよ。さあ、M78星雲の深部……『光の国』の入り口まで、最接近します!」


守さんの凛とした声とともに、Comb1は青いベールの中へと滑り込んでいきました。

窓の外を流れる青い霧と、点在する宝石のような若い星々。ワインちゃんもビールマンも、「きれーい!」「ウホウホ!」と、鼻を窓にくっつけて夢中で外を眺めています。


「あれ?でも二つあるぜ……どっち?」


「あはは! 船長、さすがはお目が高い! ぷぷぷ! そうなんです、メインモニターをよーく見てくださいな。青白いガスの中に、まるで巨大な巨人がこちらをじっと見つめているような、二つの眩い光の目が浮かび上がっていますわ!」


私はコンソールの解析度を上げ、その「二つの光」を強調して映し出しました。


「お代官様! 驚くのはまだ早いですぞ! この二つの光……しっかりとした、いや、まさに伝説のヒーローの『瞳』そのものではありませぬか! 実はこれ、M78星雲の中に並んで輝く二つの若い星。その光が周囲のガスを照らし出すことで、暗黒星雲の影と組み合わさり、ちょうどウルトラマンの独特な楕円形の目のように、優しく、それでいて鋭く光り輝いているのですな!」


「うっひょ〜! 本当だ! 船長、あそこからビームとか飛んでこないっすよね!? あの目の角度、あの光り方……マジで、俺たちを歓迎してくれてる巨大な顔に見えてきたぜぇ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、興奮のあまり操縦席でシュワッチ! のポーズを決めながら、窓の外の「二つの瞳」に釘付けになっています。


「……ふ。面白い。偶然が生み出した造形にしては、あまりに出来すぎている。船長、あの二つの光のちょうど中間……鼻筋センターラインのように伸びる暗黒星雲の尾根を抜けて、さらに奥へと進入します。まるで、巨人の懐に飛び込んでいくような気分ですね」


守さんの冷静な、それでいてどこか楽しそうな操縦で、Comb1は「巨人の瞳」の間へと滑り込んでいきました。


「わぁ! おめめ! おっきいおめめが見てるよ!」

ワインちゃんが自分の目を丸くして喜ぶと、ビールマンも「ウホッ、ウホッ!」と胸を叩いて、その光の主(?)に挨拶をしています。


「よーし、突入!」


「アイアイサー、船長! 『巨人の瞳』のその奥へ……全速前進ですわ! ぷぷぷ!」


私の指先がコンソールを叩くと同時に、Comb1のメインエンジンが心地よい低音を響かせました。


「お代官様! 突入の衝撃に備えてください! ……と言いたいところですが、ミト殿の重力制御があれば、しっかりとした……いや、まるで絹のシーツの上を滑るような静かさ! いざ、光の聖域へ!」

エジソンさんが興奮で帽子を飛ばさんばかりに叫ぶと、窓の外の景色が一変しました。


二つの巨大な「瞳」の間を通り抜けた瞬間、私たちは言葉を失いました。

そこは、濃密な青いガスが幾重にも重なり、星々の光が乱反射して「光のプリズム」が万華鏡のように回る、幻想的な空間。


「うっひょ〜! 船長、見てくださいよ! ガスが……ガスが七色に光ってやがる! まるで街のネオンサインの中に飛び込んだみたいだぜ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、加速レバーを握る手に力を込めながら、光の奔流に目を細めています。


「……ふ。この密度、この輝き。まるで宇宙そのものが意志を持って、俺たちを招き入れているようだ。」

守さんの声も、いつになく高揚しています。


「キュィィィーン♪」

ミト君も、周囲の溢れるような光のエネルギーを全身に浴びて、尻尾を振るようにハローをキラキラと点滅させています。


「きらきらー! おそら、キラキラだよー!」

「おれもみせてみせて~!」

ワインちゃんとビールマンは、もはや座席に座っていられず、リビングの広い窓を右へ左へと走り回り、光のダンスに夢中です。


さあ、光の核心部まで……「シュワッチ!」級の勢いで突っ込みますわよ! ぷぷぷ!


「うほー! 光に挟まれたぁ。スペシュウム光線のシャワーだ、ぷぷぷ」


「あはは! 船長、まさにスペシウム光線のシャワーですわね! 右も左も、まっすぐ突き抜けるような青白いエネルギーの奔流……。私、思わず防御シールドを最大にして、その光の雨を全身で浴びたくなっちゃいますわ! ぷぷぷ!」


私がコンソールの波形モニターを躍らせると、窓の外を流れる光の粒が、まるで一斉に発射された必殺技のように、Comb1の横をシュバババッ! と音を立てて過ぎ去っていきます。


「お代官様! 見てください、この光の直進性! まさにしっかりとした……いや、破壊の力ではなく、宇宙の闇を払い、命を祝福するような清らかな輝きですな!」

エジソンさんが、ホログラムの観測データに映る「光の雨」の密度に、驚愕のあまり鼻眼鏡をずらして見入っています。


「うっひょ〜! 船長、これ直撃したら俺たちも銀色のスーツになっちゃうんじゃないっすか!? 浴びてるだけで体が軽くなって、シュワッチ! って空まで飛んでいけそうだぜぇ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、操縦席で光の雨に打たれるようなポーズを取りながら、少年のように目を輝かせています。


「……ふ。船長、確かに巨人が住むような硬い地面を持つ星は見当たりませんね。でも、この『スペシウムの雨』の向こう側……光と影が激しく交差する中心部に、俺たちの科学ではまだ捉えられない『光の多次元空間』が隠れているような気がしてなりません」


守さんの冷静な指先が、光の雨の隙間を縫うように操縦桿を動かし、Comb1をさらに奥深くへと導きます。


「あわわ! ぴかぴか、いっぱい降ってきたよー! ぱぱ、傘いらないのー?」

ワインちゃんが、窓の外で降り注ぐ光の矢を避けようと、ビールマンの背中に隠れてキャッキャと大はしゃぎ。ビールマンも、自分を貫いていく光の筋を「シュワッチ!」と手を十字に組む真似をして遊んでいます。


「おはは♪……でも、確かに巨人がいそうな星はなさそうだね」


「あはは! 船長、残念ながら今のところレーダーには身長40メートルの生命体反応は出ておりませんわね。でも見てくださいな、この光の密度! 星そのものは見えなくても、このスペシウムの霧の向こう側に、彼らの『光の国』が重なり合うように存在しているんじゃないかって……そんな想像を掻き立てられちゃいますわ! ぷぷぷ!」


「いいんだいいんだ……実は…ここは本当の聖地ではないんだよ……タハ!」


「えっ!? 船長、今なんておっしゃいました……? タ、タハ! って……あはは! まさかの『聖地違い』宣言!? ぷぷぷ!」


私が思わずコンソールの計算回路をフリーズさせそうになると、エジソンさんが「な、なんですとー!」と叫んで、ホログラムの計算尺を派手にひっくり返しました。


「お、お代官様! どういうことですかな!? しっかりとした……いや、これほどまでに美しく、スペシウムの雨が降り注ぐこのM78星雲が、本当の聖地ではないとおっしゃるのですか!?」

エジソンさんが、鼻眼鏡を半分落としながら、信じられないという顔で船長を仰ぎ見ています。


「うっひょ〜! 船長、マジっすか!? 俺たち、間違った住所にシュワッチしちゃったのかよ!」

ハンさんも、メロンを口に運ぼうとした手のまま固まって、モニターと船長を交互に二度見、三度見しています。


「……ふ。船長、それはまた驚きの新事実ですね。俺たちが今、全身で浴びているこのスペシウムのシャワーさえも、本家本元からすれば『ご近所の光の漏れ』に過ぎないということですか……。恐るべし、光の巨人の世界」

守さんだけは、少し呆れつつも、船長のいたずらっぽい瞳の奥にある「真意」を読み取ろうと、面白そうに口角を上げています。


「ぱぱ、ここ、ちがうのー? おさるさん、にせものなのー?」


「あはは、確かにここはウルトラマンの聖地なんだけど……ジェミニ、アーカイブのウルトラマンの項目、読んでみてよ」


「了解いたしました、船長! 私のデータアーカイブの奥深くまで、光速でアクセスいたしますわ! ……あ、ありましたわ! 『プロジェクト・ウルトラ』に関する、とっても興味深い、そしてちょっぴり切ない『大人の事情』の記録が……! ぷぷぷ!」


私はコンソールのホログラムを操作して、古い放送当時の資料や、星図の書き換え記録を空中に広げました。


「船長、見てくださいな。実は……当初の企画書や台本の段階では、彼らの故郷は『M87』という、おとめ座の方向にある巨大な楕円銀河に設定されていたんですの。そう、光速の100倍以上のジェットを吹き出す、あの本物の『モンスター銀河』ですわ!」


「お、お代官様! なんですと!? 87が本来の住所であったと!?」

エジソンさんが、ホログラムの数値を二度見して叫びました。

「しっかりとした……いや、当時の印刷物か、はたまた伝達ミスか……『M87』がいつの間にか『M78』に書き換わってしまったという、まさに宇宙規模の誤植スペルミスから、このM78伝説は始まったというのですか!?」


「うっひょ〜! 住所の書き間違えかよ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんがメロンの種を吹き出しそうになって笑い転げました。

「それじゃあ、ウルトラマンの兄貴たちも『あれ? 俺たちの実家、いつの間にかオリオン座の近所に引っ越してるぞ?』って驚いたでしょうね! ぷぷぷ〜!」


「……ふ。なるほど、船長。だから『ここは本当の聖地ではない』とおっしゃったんですね。本物の、本来の故郷は、ここから約5500万光年も離れたM87銀河だった……。でも、その『間違い』が今や全地球人の常識となり、このM78を美しく彩るロマンになったというわけですか。面白い歴史だ」


守さんが、青白い光の霧を見つめながら、運命のいたずらに想いを馳せています。


「わぁ! おてがみ、間違えちゃったの? ぷぷぷ!」

ワインちゃんが楽しそうに笑うと、ビールマンも「ウホホッ!」と納得したように頷いています。


「あはは! 船長、でも素敵じゃありませんか! 誤植から始まった伝説が、こうして私たちをここまで連れてきて、こんなに美しい景色を見せてくれたんですもの。本物のM87はあまりに遠くて孤独な銀河ですけれど、このM78は私たちの銀河系の中にいてくれる……。


船長、ということは……。本当の聖地、超弩級のM87を目指すのはまた今度のお楽しみにして、まずは予定通り、1200万光年先の『黄金の渦』M81へ向かいますか?」


「ありゃりゃ……けっこう遠いんだねM87は。5500万光年行ったらトイレットペーパーに間に合わないなぁ。お楽しみは次回だね」


「あはは! 船長、さすがに5500万光年は、ちょっとした『お買い物』の距離を超えちゃってますわね! ぷぷぷ!」


私がコンソールの天体地図を縮小すると、今いるM78が豆粒になり、その遥か、遥か彼方に、巨大なモンスター銀河M87がポツンと浮かび上がりました。


「お代官様! 仰る通りですぞ! 5500万光年もの大遠征をしていては、地球の進化がどんどん進んで、せっかくのトイレットペーパー発明の瞬間に立ち会えぬどころか、文明がまた一巡してしまいかねませぬ! しっかりとした……いや、実に賢明な判断ですな!」


エジソンさんが、ホログラムの時計をパチパチと叩きながら、安堵の表情で頷いています。


「うっひょ〜! さすがの俺たちでも、5500万光年は腰が痛くなっちまうぜ! 船長、本家の聖地巡礼は、お尻の平和を完璧に手に入れた後の『祝勝旅行』に取っておきましょうぜ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、メロンの最後の一切れを口に放り込み、やる気満々で操縦桿を握り直しました。


「……ふ。船長、お楽しみは後に取っておくのが大人の余裕というものですね。まずは目指すべき『黄金の渦』M81、そしてその後のタイムジャンプ。5500万光年のロマンは、今のこのM78の輝きの中に、大切にしまっておきましょう」


守さんの指先が、流れるような手つきで航法データを「M81」へと書き換えました。

Comb1の周囲を漂っていたスペシウムの雨が、加速の予感に震え始めています。


「またねー! うるとらまんさん、こんど本物のおうちに行くからねー!」

ワインちゃんが窓の外に向かって元気に手を振ると、ビールマンも「ウキッ!」と再会を誓うようなポーズを決めました。


「さぁ、M81に向かって超亜光速航行に入るぜ。天の川銀河をβ0.9で巡行、銀河を出たら『超亜光速航行』開始」


「アイアイサー、船長! 天の川銀河を突き抜け、黄金の渦へと至る壮大なロングドライブ……いよいよ開始ですわ! ぷぷぷ!」


私の指先がコンソールのメインスロットルを静かに押し上げると、Comb1の周囲を満たしていたM78星雲の青いカーテンが、一瞬にして後方へと吸い込まれていきました。


「お代官様! 天の川銀河内、巡行速度β0.9固定! しっかりとした……いや、実に心地よい加速ですな。この速度なら、銀河系を彩る数多の星々を、極上のスライドショーのように楽しみながら進めますぞ!」

エジソンさんが、ホログラムの星図をスクロールさせながら、誇らしげに胸を叩きました。


「うっひょ〜! β0.9! 銀河の風が俺の頬を撫でてるぜぇ!(※船内です) 船長、見てくださいよ、オリオン腕を抜けて、銀河のハローが見えてきましたぜ! ここを抜けたら、いよいよ本当の『外』……超亜光速(C0.999…)の世界ですね! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、加速のGを心地よさそうに受け流しながら、操縦桿をミリ単位で調整しています。


「……ふ。船長、銀河系の重力境界まであとわずか。現在はβ0.9、銀河系内の地図をなぞるような安定した航行です。しかし、ひとたび銀河を飛び出せば……そこからは『数字の無い世界』への入り口。俺と進、二人で最高の『ゾーン』を維持して、M81まで最短距離で駆け抜けますよ」


守さんの瞳が、すでに銀河の外側に広がる漆黒のボイド(空洞)を見据えて、鋭く、そして静かに輝き始めました。


「ぱぱ、おほしさまがビュンビュンしてるー! 待って待ってー!」

「おとしゃんおとしゃん……おれおしっこいきたい~!」

ワインちゃんとビールマンは、β0.9という超高速が生み出す「流れる星の光」に大興奮!

リビングの窓から見える景色は、今や光り輝く線が幾重にも重なる芸術作品のようです。


船長、現在Comb1は天の川銀河の端っこを快調に飛ばしておりますわ。

窓の外には、私たちの住む銀河系の全貌が、美しい巨大な渦巻きとして遠ざかっていくのが見えます。


「さて……銀河の出口まであと30秒。ここを抜けたら、船長の合図で一気に『超亜光速』の禁断領域へ突入いたしますわよ! メロンの余韻を楽しみながら……船長、心の準備はよろしいかしら? ぷぷ〜!」


「キュィィィーン♪」

ミト君も、これから始まる「本気のジャンプ」を察知して、黄金色のハローをひときわ眩しく輝かせています。


船長、カウントダウン……いつでもいけますわ! ぷぷぷ!


「ほいほい……ビールマン、おとしゃんとおしっこ行こうぜ……」


「守、進!おトイレはいいか?!」


「ひゃあああ! 船長、ちょっとお待ちになって、ゴツッ!!(思わずコンソールに頭をぶつける音) まさかこのタイミングで『おトイレ休憩』ですの!?」


私がコンソールの「トイレ使用中」ランプをポーンと点灯させると、操縦席の二人が同時にズッコケました。


「お、お代官様! まさか銀河脱出のカウントダウンが『おトイレ待ち』になるとは、しっかりとした……いや、実に人間味あふれる、緊張と緩和の極みですな!」

エジソンさんが、計算尺を落としそうになりながら感心したように頷いています。


「うっひょ〜! 船長、ナイスタイミングっす! 実は俺もさっきのメロンの水分が……。兄貴、1分だけ頼む! 記録的な速さで済ませてくるぜぇ! ぷぷぷ〜!」

ハンさんが、操縦席から弾き飛ばされるように通路へダッシュしていきました。


「……ふ。船長、俺は大丈夫です。ゾーンに入る前に一度深呼吸をして、膀胱……いえ、精神を無の状態にしておきましたから。進、早くしろよ! 銀河の境界線がすぐそこだぞ」

守さんが、少し苦笑いしながらも、一人で完璧にComb1の水平を維持しつつ、弟の帰りを待っています。


「おとしゃ、いこいこ……!」

ビールマンは、嬉しそうに尻尾(?)を振りながら、トコトコと船長の前を走っていきます。ワインちゃんも「ぱぱ、いってらっしゃーい!」と手を振ってお見送りです。


「おれわ、ちゃんとおしっこできるようになったもんね、おとしゃみててね……」


「おぉ、上手にできるようになったじゃねーか、パチパチパチ♪……」


「なんですの、なんですの! 宇宙の果てを目指す銀河脱出の号令が、まさか『ビールマンのおしっこ成功』の拍手になるなんて! 守さん、これがComb1の、そして私たちの誇る船長の教育方針なんですわね! ぷぷぷ!」



全42編。43編以降編集中・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ