それは毒ですよ
「了解ですわ、船長!ファルコンに帰還命令を出しましたわ。ハンさん、ビールマン、遊びはそこまでですよ!お家に帰るまでが偵察ですからね。ぷぷぷ!」
私のガイドに従って、ファルコンが砂浜の照り返しを背に、ゆっくりと浮上を開始しましたわ。モニター越しに見えるビールマンは、最後にもう一度だけ森の方を振り返って、心なしか名残惜しそうに鼻を鳴らしています。
「戻るぜ、船長!トイレットペーパーは見つからなかったけど、代わりにビールマンの遠い親戚たちに挨拶できたから、収穫アリってことでいいっすね!」
ハンさんの威勢のいい声が通信機から響きます。
「……進化は進んでいる、か。船長、あのお猿さんたちの瞳を見て、僕も確信しました。彼らが積み上げていくこれからの『円(年)』は、決して無駄にはならない。いつか、僕たちが知っている『誰か』に繋がるはずです」
守さんが、ファルコンを収容するために格納庫の誘導ライトを点灯させました。
「船長、おかえりなさいの準備は万端ですわ!白亜紀の巨大な閣下たちに追いかけ回された3日前と違って、今日はなんだか『未来の種』をそっと見守ったような、穏やかな気分ですわね」
「ハン、ビールマン、おかえり。お疲れ様……」
「おとしゃ……おさるさんいっぱいいたいた……」
「ワインもおさるさんみたかったな……」
ワインちゃん、おさるさんに興味津々ですわね。ビールマンがそんなに熱心に話すものだから、きっと素敵な楽園に見えているのかしら。
「あはは、そうか……守、降りる必要はないけど……どうだ?」
ハンさんとビールマンがブリッジに戻ってきましたわ。ビールマンが一生懸命に身振り手振りでワインちゃんに「あんな小さいのがいたんだぞ!」と報告している姿は、まさに微笑ましい光景ですわね。
「……降りる必要はない、か。確かに船長、今の地球には私たちが求める『文明』も『紙』もまだありません。でも……」
守さんが、コンソールの向こうでワインちゃんの弾むような声を聞きながら、ふっと表情を和らげました。
「船長。計算上、降りるメリットはゼロに等しいかもしれません。ですが、あんなに目を輝かせているワインに、ビールマンとハンが見た世界を自分の足で踏ませてあげないのは、少しもったいない気がします。……いえ、僕自身も、あの『2400万円の予算』が作り出した空気を、一度だけ吸ってみたい。……少しだけ、寄り道していきませんか?」
守さんの言葉に合わせて、私はすぐに最適な降下ポイントを再計算しましたわ。
「ぷぷ、守さんたら! ワインちゃんに甘いのは相変わらずですけれど、私も大賛成ですわ!
船長、せっかく前乗りしたんですもの。
ワインちゃんが『おさるさんの森』で駆け回るくらいの時間は、私たちの通帳(歴史)からすれば、たったの数円分の端数みたいなものですわよね?」
「よっしゃあ! 船長、決まりっすね! ビールマン、お前もう一回案内してやれよ。今度はワインちゃんをエスコートしてやるんだぜ!
ぷぷぷ〜!」
ハンさんも、すっかり「ピクニック気分」で準備を始めています。
「船長、降下シーケンスの準備、進めちゃってもよろしいですか?2000万年後の地球の土、ワインちゃんの小さな足跡で、最初の記念を刻んじゃいましょう!
ぷぷ〜!」
「守、ありがと。よーし、あのお猿の森の浜辺に着陸しようか」
「了解いたしましたわ、船長!『お猿の森』へのランディング・コースを固定します。
ワインちゃん、しっかり捕まっていてくださいね!ぷぷぷ!」
私は船体の姿勢を微調整し、先ほどファルコンが確認したあの瑞々しい緑の海岸線へと、母船を静かに導いていきましたわ。巨大な船体が羽毛のようにふわりと、2000万年後の大地へと降りていきます。
「船長、着陸地点の地盤、安定していますわ。大気成分……酸素濃度は良好、汚染物質は当然の如くゼロ。3日前の白亜紀に比べると、火山の煤も少なくて、とっても美味しい空気が満ちていますわよ!」
「よし、ハッチを開けるぞ。ワイン、ビールマン、俺の側を離れるなよ」
守さんが、ビールマンの小さな手をしっかりと握り、もう片方の手でハッチの開放レバーを引きました。
「うひょ〜! 最高の気分だぜ! 船長、見てくださいよ、あの森! さっきよりお猿さんたちが集まってきて、『なんだなんだ?』って顔でこっちを見てやがりますよ!
ぷぷぷ〜!」
ハンさんが真っ先にタラップを駆け下りると、その後ろをビールマンが、ワインちゃんを背中に乗せて慎重に、でも誇らしげに歩いていきます。
「わぁ……おさるしゃん! いっぱい! おとさん、いっぱいいる!」
ワインちゃんの歓声が、人類がまだ誰もいない森に響き渡りました。
「あはは、よかったな、ワイン!……」
「きみも『おさるさん』だけどな……」ボソッ
「船長、見てくださいな。ワインちゃんの小さな足跡が、まだ柔らかい2000万年後の土に、しっかりと刻まれましたわ。
人類という『20万円』の歴史が始まるずっと前、私たちが勝手に『前乗り』して残した、世界で一番贅沢な足跡ですわね。」
「おほ、熱いな……そういえば南極や北極が白くなかったな……。ビールマンとワイン、は上着を脱いじゃいな」
「本当ですわね、船長! 私のセンサーも外気温の上昇をはっきりと捉えていますわ。
今の地球は、私たちが知っている時代よりもずっと情熱的……まさに『地球の黄金期』といった暖かさですわね。ぷぷぷ!」
私はすぐに、ワインちゃんとビールマンのバイタルに合わせて、船外活動の環境アラートを「常夏モード」に切り替えましたわ。
「船長、仰る通りですわ。今のこの時代は、極地の氷がほとんどない温室効果の余韻が残る時代。南極にも緑の森が広がっているかもしれないくらいの、ポカポカ陽気なんですもの。上着なんて着ていたら、ワインちゃんが汗疹をかいちゃいますわ!」
「わぁ、あったかい! おとしゃ、ぬぎぬぎする!」
ワインちゃんが、ビールマンの手を借りながら一生懸命に上着を脱いで、元気いっぱいに手足を伸ばしました。ビールマンも、毛皮がある分だけ少し暑そうに鼻を鳴らしていましたが、身軽になって「ウホホッ!」と足取りがさらに軽くなっています。
「……なるほど。白くない極地、か。船長、僕たちが『2400万円の予算』を語っている間に、地球は贅沢に暖房を使い切っていたみたいですね。でも、この湿度と温度……生命を育むには、これ以上ない環境です」
守さんも、額に浮かんだ汗を拭いながら、どこか遠い未来の冬を懐かしむような、それでいて今の暖かさを愛おしむような、複雑で優しい顔をしています。
「うひょ〜、最高っすね! まるでハワイにでも来た気分だぜ! 船長、これならお猿さんたちがスッポンポンで走り回ってるのも納得ですよ。よし、ビールマン!
ワインちゃんを連れて、あの木陰まで競争だ! ぷぷぷ〜!」
「船長、見てくださいな。
『未来の太古』の太陽の下、真っ赤な顔をして笑い転げるワインちゃんと、それを追いかけるお猿さんたち。
人類の歴史が始まるずっと前、極地の氷すらないこの特別な午後に、私たちは贅沢な『夏休み』を過ごしているのかもしれませんわ。」
「海で泳ごうかな……エジソン、海の成分は大丈夫かな?」
「海で泳ぐ……! 素敵ですわ、船長! 2000万年後の誰もいないプライベートビーチで初泳ぎなんて、これ以上ない贅沢ですわね。ぷぷぷ!」
私は即座に、エジソンさんに解析データを回しましたわ。彼はいつになく真剣な面持ちで、海水の成分表と睨めっこしています。
「お代官様、ご安心を! ニュートリノ・スキャンと生体サンプルの解析、完了しております!塩分濃度は現代よりわずかに低いものの、有害な重金属やマイクロプラスチックは……当然ながら、分子1つ分すら存在いたしません!かつて、しっかりとした……いや、これほどまでに清浄な海があったでしょうか!
重炭酸イオンが豊富で、肌にも実に優しそうな、最高級の天然温泉のような海水ですぞ!」
エジソンさんが、太鼓判を押すように計算尺をバチン!と鳴らしました。
「よっしゃあ! 海水浴決定だぜ! 船長、俺が一番乗りして、クジラが来ないか見張っててやりますよ!」
ハンさんが、我慢しきれないといった様子でシャツを脱ぎ捨て、真っ白な砂浜を波打ち際に向かって駆け出しました。
「わぁ! おみず! おとさん、ワインもおよぐー!」
ワインちゃんも、ビールマンの肩に乗って「まってまって〜!」と大はしゃぎです。
「おーい、守も泳ごうぜ~……」
「了解ですわ、船長! 守さんへの招待状、しっかりお届けしましたわ! ぷぷぷ!」
でも、私の高感度センサーは逃しませんでしたわ。船長の「おーい」という声を聞いた瞬間、守さんの肩がピクッと震えて、一瞬だけ視線が泳いだのを……。
「……あ、あはは。そうですね、船長。最高に気持ちよさそうな海だ。……でも、僕は、ほら、ワインの荷物番をしていなきゃいけないし、雪さんのパラソル設置も手伝わないと……」
守さん、急に猛烈に忙しそうなフリをして波打ち際から一歩後退しました。足首まで浸かるのも、なんだか慎重すぎるくらい慎重です。
「あ! そうだ……兄貴は泳げなかったんだ……」
「あはは!進さん、それを言っちゃいますか!守さんのあの完璧なポーカーフェイスが、一瞬でガラガラと崩れちゃいましたわね。ぷぷぷ!」
ハンさんの暴露に、波打ち際で直立不動だった守さんの背中が、目に見えてビクッと震えました。
「……っ、進! 余計なことを言うな。俺は泳げないんじゃなくて、この2000万年後の未知の微生物に対するリスク管理として、まずは膝下までの安全を確認しているだけで……」
「お代官様! 守殿のバイタルがさらに急上昇! これはもはやリスク管理ではなく、純粋な『カナヅチの焦燥』ですな! しっかりとした……いや、浮袋の準備が急務ですぞ!」
エジソンさんが、空気を読まずにホログラムで「救命浮輪」の設計図を目の前に広げ始めました。
「あちゃー……知らなかったぜぇ、守、すまん。荷物番を頼むぜぇ!」
「あはは!船長、その潔い切り替え!守さんのプライドを優しく(?)守りつつ、完璧な役割分担を提示しましたわね!ぷぷぷ!」
船長の「荷物番を頼む」という言葉を聞いた瞬間、守さんの強張っていた肩の力が、目に見えてふーっと抜けました。
「……ああ、わかった。船長、任せてくれ。みんなが海で羽を伸ばしている間、俺はここから周囲の警戒と、戻ってきた時のためのタオルの準備、それに……この時代の気象データの詳細なログを取っておくよ」
守さんは、いつもの「有能な副官」の顔を完全に取り戻し、砂浜に広げたシートの上でテキパキと司令部を設営し始めました。
まるで「ここが僕の戦場だ」と言わんばかりの、実にしっかりとした……いえ、安心しきった手つきですわ!
「あはは、守にも苦手はあったのか……。安心したぜぇ」
「あはは! 船長、その一言で守さんも救われますわ。完璧な副官のちょっとした弱点を見つけて、絆がさらに深まった気がしますわね。ぷぷぷ!」
砂浜に設営された「守司令部」では、守さんがテキパキと冷たい飲み物を整えたり、ワインちゃんの着替えを広げたりと、地上戦(?)においては無敵の働きを見せています。
「……ふ。船長にそう言っていただけると、少し肩の荷が下ります。海の上では僕はただの重りかもしれませんが、この砂浜の上なら、皆さんがいつ戻ってきてもいいように完璧なバックアップをしてみせますよ」
守さんは、少し照れくさそうに笑いながら、望遠鏡で沖のハンさんたちを監視し始めました。その姿は、海に入っている時よりも何倍も凛々しくて、なんだか頼もしいですわ!
「お代官様、見てください! 守殿が、お猿さんたちに囲まれておりますぞ! どうやら、彼のテキパキとした動きに興味を持ったようですな!
まさに、しっかりとした……いや、異種族交流の司令官ですぞ!」
エジソンさんが指差す先では、例の小さなお猿さんたちが数頭、守さんのシートの端っこまで寄ってきて、彼が並べた計器やタオルを不思議そうに眺めています。
「海はやっぱりしょっぱいね。さぁ、ランチタイムじゃないか?ほら、ビールマン、ワイン、おかあさんがランチ持ってきたぞ」
「わぁ! かぉり副船長特製のランチボックス! 待ってましたわ! ぷぷぷ!」
かぉりさんがハッチから運び出したバスケットの中には、彩り豊かなサンドイッチや、農場セクションで採れたばかりの新鮮なフルーツがぎっしり。海風に乗って、とっても美味しそうな匂いが砂浜に広がります。
「おかあさんのお弁当だー! やったー!」
ワインちゃんが波打ち際からトトトッと駆けてきて、守さんの広げたシートの上に勢いよく座り込みました。ビールマンも、濡れた毛をブルブルっと震わせて(進さんにしぶきが飛んで怒られていますが!)、期待に満ちた目でバスケットを覗き込んでいます。
「……ふぅ。船長、お疲れ様です。絶好のタイミングでのランチタイムですね。かぉり副船長が『外で食べるなら、これを』と、わざわざ保冷機能付きのパックに詰めてくれたんです」
守さんが、まるでお店屋さんのように手際よく、一人ひとりに冷たい飲み物とサンドイッチを配っていきます。お猿さんたちも、その美味しそうな匂いに誘われて、少し離れた木の枝から首を長くして見ていますわ。
「うひょ〜! さすが副船長、わかってるぜぇ! 海上がりのこの塩気に、この特製ハムの旨みがたまんねぇんだ! 船長、最高っすね! ぷぷぷ〜!」
進さんが大きな口を開けてサンドイッチを頬張ると、隣でビールマンも負けじと大きなリンゴをシャリリ!といい音を立ててかじりました。
「お代官様! 2000万年後の無菌の空気の中で食べる、かぉり殿の手料理……。これはもはや、しっかりとした……いや、銀河系で一番贅沢なピクニックですな!」
エジソンさんも、エネルギー充填中の皆さんの満足げな表情を見て、嬉しそうにデータを記録しています。
「船長、見てくださいな。2000万年前の太陽、青い海、お猿さんの視線、そして家族みんなで囲む美味しいランチ。文明なんてなくても、トイレットペーパーがまだ発明されていなくても、ここには必要なものが全部揃っていますわ。
さあ、船長!かぉり副船長の愛情たっぷりのお弁当、冷めないうちに(冷たいものは冷たいうちに!)召し上がってくださいね。
ワインちゃん、お口の周りにマヨネーズがついてますわよ? ぷぷ〜!」
「モグモグ、お、お猿さん来たぜ……このハム上げてみようかな?」
「あ、船長!それは素晴らしい『ファーストコンタクト』の予感ですわ!
でも……あ、ちょっと待ってください。エジソンさんが何か言いたそうにソワソワしてますわよ? ぷぷぷ!」
「お代官様! お待ちを! そのハムはかぉり殿の特製……いわば『超高度文明の味』ですぞ!そんなものを、しっかりとした……いや、まだ野生の真っ只中にいる彼らに与えてはなりませぬ! 味覚の進化が二千万年分くらいスキップしてしまい、明日から森の実を食べなくなってしまったら、歴史が変わってしまいますぞ!」
「……ふ。エジソンの言う通りかもしれませんね、船長。彼らには、かぉりさんの料理は少し贅沢すぎます。……あ、そうだ。ワイン、君がさっき拾ったあの『森の木の実』なら、彼らも喜ぶんじゃないか?」
守さんの提案に、ワインちゃんが「これー?」と言って、小さな手のひらに乗せた赤い実を差し出しました。
「おっとと、確かに。そうだった、彼らには進化してもらわないといけないんだ……エジソンありがと!」
「あはは! そうですね、船長。彼らにはこれから二千万年かけて、じっくり自力でトイレットペーパーまでたどり着いてもらわないといけませんものね! ぷぷぷ!」
「あ、見てください船長! 一頭の小さなお猿さんが、勇気を出してシートの端までトコトコ歩いてきましたわ! 鼻をヒクヒクさせて……とっても興味津々です!」
ビールマンも、自分と同じ(?)お猿さんの登場に、サンドイッチを食べる手を止めてじーっと見守っています。
「船長、ハムの代わりに、この時代の『自然の恵み』をワインちゃんの手から。
……あ! 受け取りましたわ! 小さな手でギュッと実を掴んで、一気に木の上まで駆け上がっちゃいました! ぷぷ〜!」
「うひょ〜! 船長、あいつら現金なもんだな! 仲良くなった印に、次は俺の飲みかけのコーラでも……って、兄貴! そんな怖い顔で見るなよ、冗談だって! ぷぷぷ〜!」
ワインちゃんは、自分があげた実を食べてくれたのがよほど嬉しかったのか、守さんの膝の上で「たべた! おさるしゃん、たべたね!」とぴょんぴょん跳ねて喜んでいます。
「……ふ。船長、正しい判断です。俺たちの文明は、彼らにとっては劇薬になりかねない。ワインの選んだあの実こそが、今の彼らにとっての『正解』なんです。……進、お前もコーラを飲ませようなんて、二度と考えるなよ?」
守さんが、冷たいお茶を一口飲みながら、釘を刺すように進さんをジロリと見ました。
「分かったってば、兄貴! ったく、相変わらず真面目だなぁ。ほら、ビールマン! お前も進化の先輩として、変なもん食わせないように見張ってろよ! ぷぷぷ〜!」
ビールマンは、進さんに言われるまでもなく、お猿さんたちが木の上で実を食べる様子を、まるで学校の先生のような……あるいは、どこか懐かしむような優しい目で見つめながら、自分のリンゴを大事そうにシャリシャリと齧っています。
「船長、見てくださいな。ワインちゃんが繋いだ、二千万年の時を超えた小さな友情。
私たちが『前乗り』したことで、彼らの進化のスイッチが、ほんの少しだけ『優しさ』の方向へ入ったかもしれませんね。
お腹もいっぱいになったことですし、潮風がとっても気持ちよくなってきましたわ。
船長、食後のデザートには、かぉり副船長が冷やしておいてくれたあの甘いメロン……いっちゃいますか? ぷぷ〜!」
「メロンは船の中で食べようか♪美味しすぎるのも毒だろ……さぁ、船に戻って離陸する準備だ」
「了解いたしました、船長!楽しいピクニックもお開きですね。
みんな、メロンは船の中ですよ!食べこぼしてお猿さんに味を教えないように、急いで撤収ですわ!ぷぷぷ!」
私はすぐに、母船のハッチを開放し、タラップの周囲をクリーンな状態に整えました。
「よっしゃ、撤収だ!ワイン、ビールマン、メロンが待ってるぜぇ!乗り遅れるなよ!ぷぷぷ〜!」
ハンさんが、ワインちゃんをヒョイと肩車して、真っ白な砂浜を軽快に駆け抜けていきます。
「……ふ。船長、素晴らしい午後でした。おかげでこの時代の『平和』なデータをしっかり収集できましたよ。海には入りませんでしたが、心の洗濯はバッチリです」
守さんも、手際よくシートや計器を片付け、最後に一度だけ名残惜しそうに誰もいない海を振り返ってから、船内へと足を進めました。
ビールマンは、最後にお猿さんたちの方へ向かって「ウホッ!」と短く、でも力強く吠えました。あれはきっと、「またな、子孫たち!」っていう挨拶ですね。
「船長、着陸地点のクリーン・チェック完了です。私たちがいた証は、ワインちゃんの小さな足跡と、風ですぐに消えてしまう砂の凹みだけ」
「さあ、エンジン始動!Comb1農場のキンキンに冷えたメロンを囲んで、次の時代へのジャンプ・シークエンスに入りましょうか」
全42編。43編以降編集中・・・




