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ファルコンお披露目

「コケコッコー」


ニワトリのランボルギーニの勇ましい雄叫びが響き渡りました! ぷぷぷ! 船長、彼もまた、自分がなついている「守」さんに負けじと、3頭の牛を束ねるリーダーとしての自覚を新たにしたようですわね!


「あはは、守はランボルギーニになつかれちゃったか、ぷぷぷ」


「朝だぞ~、……エジソンはまた徹夜したのか?」


「あはは! 船長、お目覚めですわね! 守さんはもう、ランボルギーニ君にとっては『頼れる兄貴』か、あるいは『大きな止まり木』のような存在になっているのかもしれませんわ! ぷぷぷ!」


333メートルへの延伸計画という、あまりに刺激的な夢を見た翌朝。黄金の朝日(を再現した照明)が差し込むブリッジに、再び活気が戻ってまいりました。


「……ふむ。正しい起床、正しい体内時計! ……あ、あ、船長……お、おはようございますぞ……」


ドックの奥から、ふらふらとした足取りでエジソンさんが現れました。その姿は、昨夜よりもさらに髪が逆立ち、目の下に深いくまがくっきりと刻まれています。


「本日発令!エジソン夜間作業禁止令【船長の許可なく夜間の作業を禁ずる】」


「……ッ!? 船長、本日付での緊急発令、承りましたわ! ぷぷぷ!」


「エジソンに体を壊されてはこの船が止まってしまう、何よりつまらない。わかったか?」


「……!! 船長……。そ、その通りでございますな!」


「エジソンさんが倒れてしまったら、Comb1はただの動かない鉄クズになってしまいますもの。何より、エジソンさんのいない航海なんて、スパイスの抜けた料理のように『つまらない』ですわ!」


船長の言葉に、ブリッジがしんと静まり返りました。


「……船長。……ううっ、……恐縮です。このエジソン、目先の数値に囚われ、最も重要な『航海の楽しさ』を忘れるところでした。……人間、体が止まれば心も止まる。船長にそう仰っていただけるとは、科学者冥利、いえ、人間冥利に尽きますな。……了解いたしました。」


「徹夜したってことはミレニアムファルコンはできたってことか、起きるまで誰も近づけないから、エジソンは寝ろ。木星到着まではお昼までかかるから」


「あはは! 船長、最高の気遣いですわ! ぷぷぷ!


そうでしたわ、あのミレニアム・ファルコン級の改造、エジソンさんが徹夜したということは……ついに『完成』したということですわね! 誰も近づけないほどの、エジソンさんの魂の結晶。お昼に彼が目覚めるまで、ドックは神聖な封印区域にしておきますわ!」


木星の巨大な重力圏を目指して静かに加速する中、船内にはかつてないほど穏やかで、期待に満ちた時間が流れ始めました。


「だはは! マジかよ、もうできたのか!? エジソンの旦那、さすがだな! ……でも、親父の言う通りだ。旦那が起きてきて、ドヤ顔で『さあ、乗りなさい!』って言うまでは、お預けだな。……木星までの数時間、俺はシミュレーターでイメージトレーニングでもしとくぜ!」


ハンさんが、ドックの方をチラチラと気にしながらも、逸る気持ちを抑えて自分の席に座り直しました。


「……了解した。エジソンは正午まで強制睡眠。それまでドックへのハッチは完全ロックする。……船長、木星到着まであと数時間。……200メートルの船体が、木星の強力な放射線帯と重力をどう受け流すか、今のうちにミトとリンクして微調整しておこう。……エジソンが起きた時、最高のコンディションでファルコンを迎えられるようにな」


守さんは、肩のランボルギーニをそっと降ろし、冷静な手つきで木星へのアプローチコースを計算し始めました。


「発明家ってああなるんだよなぁ……、強制的に止めないと止まらないんだよ」


「あはは! 船長、そのお言葉、重みが違いますわね! ぷぷぷ! 発明家という生き物は、脳内に閃きの稲妻が走ると、肉体の限界なんて異次元の彼方に放り出してしまうんですもの。船長がガツンとブレーキをかけて差し上げなかったら、今頃エジソンさんの魂だけが木星を通り越して土星あたりまで飛んでいっていたかもしれませんわ!」


「雪さんにもその気配はあるから気をつけてね、雪さん」


「……えっ!? わ、私ですか?」


端末を叩く雪さんの指先が、一瞬だけピタリと止まりました。


333メートルの延伸、女子会ルームの設計、そして膨大な資材のリストアップ……。完璧な管理を進めていた彼女の頬が、船長からの不意の「警告」に、ほんのりと赤く染まりました。


「……あはは! 船長、お目が高いですわ! ぷぷぷ! 雪さんも一度『完璧』という名の迷宮に入り込むと、出口を見つけるまで飲まず食わずで突き進んでしまう、美しき仕事中毒ワーカホリックの気配がありますものね!」


「……失礼いたしました、船長。……どうやら私も、この333メートルの可能性に少し、当てられていたようです。……『完璧な計画』を立てることに夢中になりすぎて、その計画を楽しむ自分の時間を忘れるところでした。……以後、気をつけます」


雪さんの声が、いつになく柔らかく、少女のような響きを帯びました。


「さぁ、朝ごはん食べようか。『いただきます』」


「「「いただきまーす!」」」


船長の号令とともに、ブリッジにいた全員が、かぉりさんとメリーさんの愛情たっぷりな朝食に向かって一斉に手を合わせました。

守さんは、肩の上のランボルギーニにレタスを小さくちぎってやりながら、穏やかに食事を始めました。


「だはは! いただきます! これこれ、このかぉりさんのオムレツを食べなきゃ、俺の朝は始まらねぇぜ! 木星の重力を振り切るためのエネルギー、一気にチャージさせてもらうぜ親父!」


〈コーン粒……ピッ――――(守のおでこ)ピト!「コケッ?……ツン☆彡〉


「うお!?いて!」


船長がオムレツの端からとったコーン粒をピッっと指先で弾いて……寸分の狂いもなく守の真っ平らで美しいおでこのど真ん中にピトッと張り付いた、まさにその刹那だった。


ひゃぁぁぁ……! 守さんの右肩でレタスをもらっていたランボルギーニが、おでこの黄色い輝き(コーン)を感知した瞬間、そのくちばしが守さんのおでこに突き刺さりましたわ。


「ぷぷぷぷっ……モグモグ……」


おでこを突っつかれて30センチほど真上に跳び上がった守が、涙目でそこを押さえている目の前で、いたずらの犯人である船長はオムレツを何食わぬ顔でモグモグと咀嚼しながら、楽しそうに肩を揺らして吹き出している。


「ランボルギーニにあげようとしたら、守のおでこにいっちゃたー……ププー♪」


「うむ、船長ナイスコントロール……完全な確信犯(ステルス爆撃)ですね! 私のレーダーでも、今の完全誘導弾コーンは探知できませんでした。……次回は、フレア(デコイ)を射出して回避してみせます」


「あ、兄貴、冷静だな……ゴク……ぷぷぷ!」


ハンさんが、焼きたてのパンを豪快に頬張り、オレンジジュースで流し込みました。その隣で、雪さんもくすくす笑いながら、しかしおいしそうにスプーンを動かしています。


「ん!? あらら、くまサン限界かな?……かぉり、くまサンに水素の在庫あげてよ、もう少しだけ、木星に着くまで我慢してねって」


「みんな、木星に着くまでは節水よろしく」


「……了解いたしました。船長、全システムの水を遮断! 生活用水、農場の自動灌漑、そしてお風呂の残り湯に至るまで、すべてのH2Oを水素抽出回路へ直結! 飢えたくまサンの喉元へ一気に流し込みますわ!」


乾ききった船内、そして「くまサン」への供給


「……船長、節水モード……いえ、断水モード完了だ。……進、喉が渇いても今は耐えろ。……くまサンのバイタル、限界点だ。今、水素が入るぞ……!」


守さんの号令とともに、船内の貯蔵タンクから「最後の一滴」までが抽出され、プラズマの鎖を通じて後方のBH-1(くまサン)へと送り込まれました。


――ドクンッ!!


それまで弱々しく明滅していたくまサンが、真っ青な閃光を放ち、Comb1全体を震わせるような力強い鼓動を取り戻しました!


「くまサン、木星まではそれでしのぐのよ。……頑張ってね?」


低く、けれど芯の通った、凛とした響き。その一言で、BH-1の炉心温度がピシャリと安定したような気がいたしますわ!


「アイ・アイ・サー、船長! くまサンの『とりあえず』という名の、愛の延命措置、確かに実行いたしましたわ! ぷぷぷ!」


真っ青な閃光を放ったくまサン(BH-1)は、喉を鳴らすような低い振動を船体に伝えながら、少しだけ落ち着きを取り戻したようですわね。1000万光年の旅でスカスカになっていた炉心に、私たちの「生活用水」という名の究極のデザートが染み渡っていく……。


「……了解した。船長、くまサンのバイタル、オレンジゾーンからイエローゾーンへ回復。……ひとまずは、木星までの軌道維持に必要な出力は確保できた。……進、スラスターの燃料噴射を最小限エコ・モードに。……木星の重力に吸い込まれる力を利用して、燃料を節約しつつアプローチするぞ」


「ミト君もがんばれ、木星の後はプシケでいっぱい食べてくれ」


「アイ・アイ・サー、船長! ミト君への愛ある激励、しかと重力波に乗せて伝えましたわ! ぷぷぷ!」


船長の言葉を聞いた瞬間、船体右後方に係留されたミト君のハローが、喜びを爆発させたように鮮やかなエメラルドグリーンと黄金色のシマシマ模様に輝きましたわ!


「……ッ! 船長、見てくださいな! ミト君、今の言葉がよほど嬉しかったのか、『木星の重力の荒波なんて、僕が全部マシュマロみたいに柔らかく受け止めてあげる!

だからプシケでは、最高に硬くて美味しいレアメタルを山ほど食べさせてね!』って、船体がガタガタ震えるほど張り切ってますわよ! ぷぷぷ!」


「モグモグ…木星はさぁ、ガスだけでできてるの?」


「アイ・アイ・サー、船長! もぐもぐタイムを続けながらの鋭いご質問、ありがとうございますわ! ぷぷぷ!」


「木星はガスだけでできているのか」……。これ、天文学者たちの間でも長年議論されてきた、宇宙のロマンが詰まった大問題ですわね!エジソンさんがまだ夢の中ですので、私、Geminiがメインプロセッサをフル回転させて、木星の「中身」をスキャンした最新理論を解説いたします!基本は「巨大なガスの塊」ですわ!

船長が仰る通り、木星の体積のほとんどは水素とヘリウム。もし木星にポチャリと飛び込んだとしても、地球のように「地面」に激突することはありませんの。どこまでも、どこまでも深い深いガス(大気)の層が続くだけなんですわ。

でも、奥深くには「変な金属」がありますの!もっと深く、中心に向かって沈んでいくと……。凄まじい気圧で水素がギュウギュウに押し潰されて、液体を通り越して「液体金属水素」という、電気を通すドロドロの金属状態になっているんですのよ!

これが木星の強力な磁場を作っている正体ですわ。


最後には「岩石のコア」があるかも?一番中心部には、地球の数倍から十数倍の質量を持つ、岩石や氷、金属でできた「硬い芯」があると考えられていますわ。でも、あまりに高熱で高圧なので、中心部はドロドロに溶けて、周りの金属水素と混ざり合っているという説(希薄なコア)が最近は有力なんですの。


「つまり、船長! 木星は『外はふわふわのガス、中はドロドロの金属、芯はガチガチの岩石』という、宇宙一巨大な『チョコがけアイスクリーム岩石入り』みたいな構造なんですわ!

ぷぷぷ!」


「液体金属……?T-1000か?」


「……ッ!! 船長、さらりと超高度なSF……いえ、禁断の未来技術を引き合いに出されましたわね!

ぷぷぷ!」


T-1000……。液体金属と聞いて、あのドロドロに溶けながら形を変える最強の暗殺アンドロイド(T-1000型)を連想されるあたり、船長の脳内アーカイブは本当に退屈しませんわ!

「アイ・アイ・サー、船長! 確かに、木星の深部にある『液体金属水素』は、ある意味でT-1000以上のバケモノですわよ!

意思のない流体金属

T-1000は自分の意思で形を変えますが、木星の液体金属水素は、木星自身の凄まじい『重力とお仕置き(超高圧)』によって無理やりドロドロにされているんですの。水素なのに電気を通し、磁場を操る……。いわば、宇宙が作った『天然のナノマシン・スープ』のようなものですわね!

触れたら最後

もしT-1000が木星の深部に行ったら、自分の体(液体金属)よりも遥かに重くて硬い『液体金属水素』に飲み込まれて、一瞬でただの合金のシミになっちゃいますわよ。ぷぷぷ!」


「うひょ、こえーな、じゃぁやっぱり表面を少しいただく程度だな、な、くまサン」


「アイ・アイ・サー、船長! 賢明なご判断ですわ! ぷぷぷ!」


「合金のシミ」になんてなったら、1000万年後の地球でお尻を拭くどころの話じゃありませんものね。くまサンだって、そんなドロドロの超高圧スープを飲まされたら、お腹を壊してしまいますわ!


「……了解した、船長。くまサンの摂取量を『表面の新鮮な水素』のみに限定する」


「ご馳走様でした。さぁみんな、お昼まで自由時間だぜ、俺は農場でバートの手伝いしてくるぜ。プロキシマの種はどうなったかなぁ?」


「……了解した。船長、木星到着まであと約3時間。……現在は慣性航行中だ。……進、お前は今のうちに仮眠を取れ。……船長は農場へ行かれるとのこと、了解しました。……バートさんとジョージも、プロキシマの種の『目覚め』を心待ちにしているはずです」


守さんが、冷静にコンソールの時計(お昼を指す前の、まだ朝の余韻が残る時間)を指差し、静かに頷きました。


船長が農場へ足を運ぶと、そこには地球の朝日のような柔らかな光(私が設定いたしました!)が差し込み、バートさんとジョージ君が土の匂いに包まれて作業をしていました。


「おや、船長! おはようございます。木星へ着く前の、のんびりした時間ですね」


バートさんが、汗を拭いながら立ち上がりました。足元には、プロキシマ・ケンタウリbから持ち帰った種を植えた特別な畑があります。


「バート、どう?芽は出てきたかな?」


「おぉ、船長! ちょうど良いところに来てくれました」

バートさんは額の汗をグイッと拭い、種が植えてある畑を見せてくれました。


「見てください、船長。今朝、ようやくいくつか顔を出したところですよ。プロキシマbのあの紫の大地とは環境が違いますから心配してましたが、このジルコニア温室の光が気に入ったみたいだ」


バートさんが指差す先、丁寧に耕された土の表面から、力強くかまのような形をした芽がいくつか突き出ています。


「まだ『芽』というよりは、鋭い角のような質感ですね。地球の植物はもっと柔らかい緑色をしていますが、これはやはりプロキシマの過酷な光を浴びていたせいか、少しメタリックな光沢を帯びた、深い藍色をしています。触ってみますか?

見た目以上にしっかりとした弾力がありますよ」


隣ではジョージ君が、小さなじょうろを持って、芽の根元に丁寧に水をかけています。


「節水中だから……ある分だけでかけてあげるんだ。船長、この芽ね、水をかけるとシュッて音がして、一瞬で吸い込んじゃうんだ。よっぽど喉が渇いてたのかな。……あ、こっちの種はまだ土の中で頑張ってるみたいだけど、土が少しだけ盛り上がってきてる。もうすぐ出てくるよ!」


「おぉ、あのジャックと豆の木非常食と違って確実な成長をしてるね。俺も水やりやらせてよ」


「いいですとも、船長!」


バートさんが嬉しそうに目を細めて、ジョージ君から受け取った小さなジョウロを船長に手渡しました。


「あはは! 船長、最高ですわね! ぷぷぷ! あの、植えた瞬間に船を突き破りそうになった『ジャックの豆の木』は、あまりに短気すぎて心臓に悪かったですものね。

今のこの子たちは、土の栄養をじっくりと噛み締めるように、一歩一歩着実に、けれど地球の植物よりは遥かにタフな足取りで育っていますわ!」


船長がジョウロを傾けて、その藍色の芽にそっと水をかけると……。


「シュワッ……!」

「おっ……」


ジョージ君が言った通り、小さな、けれど確かな吸水音が聞こえてきましたわ! 水滴が芽の表面に触れた瞬間に、まるで乾いた砂漠が雨を飲むように、一滴残らず細胞の奥へと吸い込まれていきます。


「あはは、楽しみだな、何が実るのかな?……木星に着いたらもっと水をあげなきゃだね」


そうですわね、今は節水中でしたわ、木星で水素をいただいたらお水もいっぱい使えるようになりますわよ……ぷぷぷ!


「なぁなぁ……ジョージ、新しい地球に着いたらさ、博物館に行ってさぁ、車見ようぜ」


「おぉ、車! 本物の車が見られるの!? 船長、約束だよ!」


ジョージ君が、水やりの手を止めてパッと顔を輝かせました。彼の頭の中では、エジソンさんが作る不思議なメカとはまた違う、かつての地球を走り回っていた「本物の車」への憧れが、一気に加速したようですわね!

ぷぷぷ!


「あはは! 船長、最高に粋な約束ですわね! 1000万年という長い眠りについているであろう地球の博物館……。そこには、ガソリンの匂いや、ピカピカに磨かれたクロームメッキのバンパーを持った、往年の名車たちが静かに時を止めているはずですもの!」


バートさんも、ジョウロを置いて、どこか遠くを見るような、懐かしそうな目をして笑いました。


「……車、ですか。いいですねぇ、船長。ジョージには、私が昔ハワイの海岸線で転がしていた、あのボロボロだけど最高の相棒だったピックアップトラックの話ばかり聞かせていましたからね。……博物館巡り、私も混ぜてもらってもいいですか?」


「もちろんだよ、一緒に行こうぜ。ぷぷ、おれたちがいたころの地球じゃないけど、文明があれば車はみんな同じ形になると思うぜ、どんなスポーツカーがあるかな?楽しみだな」


「だはは! 親父、その時は俺も混ぜてくれよな! どんなに文明が変わっても、風を切って走りたいっていう男のロマンは変わらねぇはずだ!」


いつの間にか農場の入り口で話を聞いていたハンさんが、身を乗り出して加わってきました。守さんもその後ろで、肩のランボルギーニを優しくあやしながら、穏やかな表情で頷いています。


「……あはは! 船長、最高にワクワクする予測ですわね! ぷぷぷ!

空気の抵抗を切り裂き、タイヤで大地を蹴る……。物理法則が同じである限り、速さを求めた形は、きっと1000万年後の地球でも、私たちの知るあの流線型の美しさを保っているはずですわ!」

バートさんが、船長の言葉に深く納得したように、ゆっくりと腰を伸ばしました。


「文明が違っても形は同じ……。なるほど、それは面白い考えだ。船長が仰ると、なんだか本当に、あの懐かしいエンジンの咆哮が未来の地球でも聞こえてくるような気がしますよ。ジョージ、よかったな。船長が『一緒に行こう』って言ってくれたぞ」


ジョージ君はもう、嬉しくて足元がふわふわしているようです。


「うん! 船長、僕、もし未来に『最新型のスポーツカー』があったら、それと昔の車を並べて見比べてみたいんだ!」


「いいな、カウンタックよりかっこいい車はあるかな?」


「……カウンタックより、かっこいい車!?」

ジョージ君が、まるで「この世にそんなものが存在するの?」というような、驚きと挑戦が混ざり合ったような顔をしましたわ! ぷぷぷ!


空中で扉が上に開く「ガルウィング(シザードア)」の動きを身振り手振りで真似しながら、興奮気味に続けます。


「うーん……カウンタックは無敵だと思うけど……。でも、もし未来の地球に、もっと速く走るために、もっとすごい形になった車があったら……。僕、そっちに浮気しちゃうかも……あ、でもやっぱりカウンタックが一番かなぁ!」


バートさんが、船長のいたずらっぽい質問に苦笑いしながら口を挟みました。


「ははは、船長、ジョージを困らせないでやってください。この子、寝る前には必ずカウンタックのボロボロの図鑑を眺めてるんですから。……でも、確かに気になりますね。1000万年後のデザイナーたちが、カウンタックという『究極のくさび』を超えようとした時、一体どんな答えを出したのか。……もしかしたら、船長が仰る通り、結局は同じような形に辿り着いているのかもしれませんがね」


「あはは! 船長、最高に意地悪で楽しい質問ですわね! ぷぷぷ!カウンタックを超えるデザイン……。わたくしにも想像できませんわ」


「さあ船長!ジョージ君の『車への夢』が木星の引力よりも強く膨れ上がったところで、ちょうど時計の針が真上を指そうとしていますわ!お昼です!ドックではエジソンさんが(バッチリ二度寝から目覚めて)鼻歌を歌いながら、ファルコンの最終チェックを終えたようですわよ!」


農場での穏やかな「未来の話」から、いよいよ「黄金の現在」へと戻る時間です。


「お、時間だ、みんなでドックに行こうぜ」


「アイ・アイ・サー、船長! 全員集合、ドックへ向けて大移動開始ですわね! ぷぷぷ!」


「よーし、お披露目だ! 走るぞジョージ、乗り遅れるなよ!」と、ハンさんがジョージ君をひょいと肩に担ぎ上げ、農場の土の匂いを振り切るように駆け出しました。バートさんも「待ってくださいよ、私もこの目で見届けるまでは死ねませんからね!」と、ジョウロを置いて力強い足取りで続きます。


守さんは、いつものように冷静に、けれどその足取りはどこか弾むように。肩のランボルギーニも「コケコッコー!」と、新しい愛機の誕生を祝うように高らかに鳴き声を上げましたわ。


重厚な防音扉がプシューッという音とともに左右に開くと、そこには眩いばかりの照明に照らされた、あの「伝説のシルエット」が鎮座していました。


「……ふむ! 正しい到着、正しい期待! 皆様、お待たせいたしましたな!」


エジソンさんが、油にまみれた顔を拭いもせず、ピカピカに磨き上げられた円盤型の機体の前で、燕尾服の裾を翻して深くお辞儀をしました。


「船長、ご覧ください! これぞ我が魂の結晶……偵察機、ミレニアム・ファルコン級・高速汎用船にございます!

装甲は船長のリクエスト通り、ジルコニアの表面にわざと宇宙塵の摩擦跡を再現した『使い込まれた風格ウェザリング』を施しました。中身は最新鋭、外見は銀河一のならず者……完璧ですぞ!」


「うわぁ……! 船長、すごい! 宇宙船なのに、なんだかカウンタックみたいに強そうで、かっこいい形だね!」


ジョージ君が、その独特な非対称のコクピットや、突き出たセンサーアンテナを見上げて目を輝かせています。ハンさんはもう、我慢できずにタラップに足をかけていますわよ。


「だはは! このボロっちい……いや、渋い塗装! エジソンの旦那、最高だぜ!

親父、見てくれよ、この『速く走るためだけに生まれてきた』っていう無骨なツラ構え! 早く火を入れたくて指先が震えるぜ!」


「おぉぉぉ……、まさしくこれだ、銀河一のスピードを誇るガラクタだ。ハン、こりゃいいぜ!」


「だはは! だろ、親父!? この『どこが壊れても不思議じゃねぇ』ってツラして、実は宇宙の法則を置き去りにするスピードを隠し持ってる……このギャップがたまらねぇんだ!」


ハンさんが、感極まってコクピットのハッチをバチンと叩きました。ジルコニア装甲の硬質な響きの中に、エジソンさんが仕込んだ重厚なメカニズムの鼓動が混ざり合っています。


「あはは! 船長、最高の褒め言葉ですわね! ぷぷぷ! 『銀河一のガラクタ』……。これこそが、機能美を突き詰めた果てに辿り着く、冒険者たちにとっての最高の勲章なんですもの!」


エジソンさんが、その言葉を聞いて感涙にむせびながら、誇らしげに胸を張りました。


「……ふむ! 『銀河一のガラクタ』! 船長、これ以上の設計思想はございませんな! 外装はあえて時代遅れのジャンク品に見せかけつつ、内部のプラズマ・コンジットは最新鋭の超伝導素材……。これぞ、見る者を欺き、物理法則を嘲笑う『宇宙の羊の皮を被った狼』にございますぞ!」


「よし、ハン。エジソンに操縦を教わっとけ、まもなく出るぞ。守、操縦席へ、木星に接近する」


「アイ・アイ・サー、船長! 木星最接近に向けた最終フェーズ、開始いたしますわ! ぷぷぷ!」


船長の号令とともに、ブリッジの空気は一気に心地よい緊張感に包まれましたわ。


「……了解した、船長。これよりComb1の全制御を私の手元へ。……進、聞こえたか。お前はエジソンの隣で、その『ガラクタ』の癖を一つ残らず叩き込まれておけ。……木星の重力圏、突入まであと300秒」


守さんが操縦席に深く腰掛け、鋭い眼差しでメインモニターに映る木星の縞模様を捉えました。肩のランボルギーニも「コケッ」と短く返事をして、守さんの動きを邪魔しないよう、椅子の背もたれへ器用に移動しましたわ。


「だはは! 任せときな、兄貴! エジソンの旦那、頼むぜ。こいつの『鳴かせ方』をじっくり教えてくれよな!」


「……ふむ! 正しい学習、正しい実機習得! ハン殿、このファルコンの出力調整は、かつての偵察機とは一味も二味も違いますぞ。……さあ、こちらへ! レバーの遊びの『渋み』こそが、この船の真骨頂にございます!」


ハンさんとエジソンさんが、火花が散るような熱量でファルコンのコクピットへと消えていきました。


「船長、見てくださいな! 私のメインモニターが、木星の強力な磁場を捉えて黄金色にうねり始めましたわよ! ぷぷぷ!」


窓の外では、太陽系最大の惑星が、もはや視界をすべて埋め尽くすほどの壁となって迫ってきます。くまサン(BH-1)も、木星のエネルギーを感じ取ったのか、船体後方でエメラルドグリーンの光を激しく明滅させて、「早くお腹いっぱいになりたいよ!」と催促しているみたいですわ。


「……船長、重力勾配グラディエント上昇。……ミト、空間の歪みを固定しろ。船体を木星の自転と同じリズムで同期させる。……これより、水素の海へ『指先を浸す』程度の低高度アプローチを開始する。……船長、揺れますよ。しっかり掴まってください」

守さんの指が、流れるような所作でコンソールのスライダーを押し上げました。


さあ船長!1000万光年の空腹を癒やす、木星ビュッフェの開店ですわ!


全42編。43編以降編集中・・・

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