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溶けない氷

窓の外には、マイナス272度の氷の結晶がキラキラ輝いていますわ。


「へぇー、ブーメランの形じゃないんだ。なんだろねこりゃネクタイかな……俺キライ、ネクタイ」


「ぷぷぷ! 船長、確かに見事なネクタイの形ですわ! 宇宙一お洒落な極寒のネブラですけれど、現役時代の船長を苦しめたネクタイだと思うと、なんだかちょっと小憎たらしく見えてきますわね!」


私がコンソールを氷のようなシアンブルーに明滅させながらそう告げると、ブリッジのクルーたちからも小さく笑い声が漏れました。


「ふん、まあな。でもよ、こんな冷てえ場所でちびたちが風邪ひいたら一発アウトだ。野口先生、防寒対策はバッチリなんだろうな?」


ハンが後ろを振り返ると、そこには寝癖を爆発させたまま、毛布をミノムシのように頭からすっぽり被った野口医師ドクターが、温かいスープの入ったマグカップを握りしめて立っていましたわ。


「……んー、大丈夫、大丈夫。Comb1号の断熱は完璧だし、くまサン(人工太陽)が後ろでしっかりハグしてくれてるからね。それよりハン君、私の特製スープいかがですか?」


「おとしゃん! おとしゃん! お外、キラキラ! お猿さん、キラキラ、大好き!」

「おとさん、あそこ、お星様のお墓? とっても綺麗ね」


「おう、ビールマン、ワイン、綺麗だろ。でもな、あそこは宇宙で一番寒い場所なんだ。絶対に変なボタン押して外に出ようとするんじゃねえぞ?」


操縦席から身を乗り出したハン様が、優しい顔でちびたちを見下ろして言い聞かせてます。すると、窓に張り付いていたお猿さんたちが、一斉にハンさんの方を振り返って嬉しそうに尻尾を振りました。


「わかったよー、ハン!」

「はーい! ハンにいちゃん」


「いやいや、寒くなくても開けちゃだめだぜ……ダイジョブか?」


「溶けなくて、きれいな氷ないかなぁ……あ、巨大な結晶、行こうか、あそこ……。」


宇宙一冷たい暗黒の星雲のど真ん中で「溶けない綺麗な氷」を採取しに行こうだなんて、船長、そのロマン溢れる大冒険マインド、素敵すぎて私の全回路が喜んでますわーー!


ねぇ野口、あれ、グラスに浮かべて飲んだら毒?」


船長が窓の外の巨大な結晶を見つめながらそう呟いた瞬間、野口先生がシュパッ!と毛布を外して腕まくりしましたわ。


「船長、結論から言うと、『そのまま飲むのは、超・超・超・デンジャラス』ですよ! この結晶が『毒』かどうか、私の分析を聞いてください」


寝癖を爆発させた野口先生の、熱い(?)解説が炸裂します。


「まず『毒』以前に『物理的破壊』です。この氷の温度はマイナス272度です。グラスに浮かべた瞬間、お酒は一瞬でカチコチに凍り、さらに温度差でグラスが粉々に爆発します。もし口に含んだら、喉が瞬時にダイヤモンドのように凍りついて、私の『緊急料理(手術)』が確定してしまいますよ!」


あまりのパワーワードに、ブリッジのコンソールが私の恐怖で青く明滅する中、先生はさらに解説を続けますの。


「次に成分の『カクテル』が謎です。ブーメラン星雲の氷には、水素やヘリウムだけでなく、一酸化炭素や多環芳香族炭化水素ススのようなものが凝縮されている可能性があるんです。地球の基準で言えば、猛毒の化学物質がギュッと詰まった『暗黒の氷』かもしれません。そして『溶けない』ことの恐怖です。もしお腹の中に入っても溶けない場合、それは胃の中にずっと残る『極低温の石』になります」


これにはメリーさんも「あら、それは『下ごしらえ』の域を超えてしまうわね……」と苦笑いしていますわ。


「船長、残念ながら『宇宙一冷たいロック』は、命がけのギャンブルになりそうです!」


「俺もそう思った……タハ……」


「「「「ホントカナー!」」」」


全員から一斉に「ホントカナー!」のツッコミが綺麗に「間」を置いて入っちゃいましたわね! ぷぷぷ!


野口先生が白衣姿でシュパッ!と現れた時は、私も「緊急オペ:胃袋の中の小宇宙」が始まるんじゃないかと全回路がヒヤヒヤしましたわよ。まさか、お酒の「ロック」を楽しもうとして、自分の喉を「ダイヤモンドの彫刻」にしちゃうなんて、船長らしいといえば船長らしいですが……!


「エジソン、完全密封できる?」


「もちろんですとも、船長! 正しい設計、正しい密封。私の辞書に『漏洩』という言葉はございませんぞ!」


エジソンさんが自信満々に胸を叩き、コンソールに複雑な数式を走らせましたわ。


「船長! 私の出番ですな。このマイナス272度の猛毒氷を保管するため、ラボの奥から特別に引っ張り出してきましたぞ! これぞ『超低温対応・絶対零度専用カプセル:零式ゼロシキ』! 外壁を最高級ジルコニアの二重構造にし、その層を特殊な溶接技術で『完全真空』にすることで、外の世界と熱を一分子たりとも交換させないという、私の職人魂の結晶でございます!」


エジソンさんは、カプセルのハッチをシュパァァン!と開きながら、さらに解説を続けますわ。


「……ふむ。船長、このカプセルは完全密封どころか、内部を完全に『時が止まった状態』に保ちます。ですから、一酸化炭素や芳香族炭化水素といったデンジャラスな成分も、分子一個たりとも外へは逃しません。……野口殿、これで医学的な懸念もゼロですな?」


野口先生も、そのカプセルの堅牢さを見て、「これなら安心だ! 宇宙の猛毒カクテルを、そのままの鮮度(?)で保存できますね!」と、太鼓判を押してくれましたわ。

「いいねぇ♪」


船長はニヤリと笑って、ハンさんに指示を出します。


「よーし、そうとなれば、ファルコン、行ってこい、ちょっとでいいからな、溶けないから、100kgくらいでいいかな。」


氷を見つめながら、船長はさらにひらめいたみたいですわ。


「うんうん、あと、肥料に使えそうな気がする、なんか、農場の肥料の袋にそんな感じの成分が書いてあったような……」


船長、その「肥料」という直感……鋭すぎますわ! 単なる氷だと思っていましたが、もし農場の肥料袋に書いてあるような成分が入っているとしたら、それは「宇宙の栄養の缶詰」ですわ!

エジソンが慌てて成分分析計スペクトロスコープを覗き込み、数字の羅列を見て声を上げましたわ。 「船長! しっかりとした……いえ、驚くべき慧眼です! この氷、ただの凍ったガスではありません。窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)……まさに肥料の三要素に近い原子が、宇宙線による化学反応で特殊な結合状態で閉じ込められていますぞ!」


「そう♪……バート、ジョージ、使えそうだぞ、この前収穫した種に使ったら面白そうじゃん。」


「プロキシマで取った種もね。」


そんな楽しい未来農場の計画が持ち上がったブリッジで、ハンが不敵に笑いながら、操縦コンソールをパチパチと叩き上げましたわ。


「親父、ファルコン準備完了だぜ、ビールマン(相棒)もシートベルトはばっちりだ!」


パイロットスーツに身を包んだハンと、その横でちょこんとシートに収まったビールマンの、最高に息の合った凸凹コンビが、頼もしく親指を立てていますわ。


「よーし、エジソン、重力の測定頼む」


船長のその穏やかながらも重みのある声に、エジソンさんが、愛用の計算尺を片手にコンソールへと飛びつきましたわ。


「……ふむ! 正しい出撃、正しい観測! 船長、このあたりの重力は0.5G、通常の半分ほどでございますな。ファルコンの姿勢制御にはまったく問題ございませんぞ!」


「おほ、ハン、重力は少ないけど気を抜くなよ。外に出たら風邪ひいちゃうからな!」


「「「イヤイヤ、外出たら死んじゃうから……ダイジョブカナ?」」」


「だはは! 船長、風邪ひく前に凍りついちまうよ! でも安心しな、そのためのファルコンだし、エジソンのカプセルだ。サクッと100キログラム、回収してくるぜ!」


ハンの頼もしい笑い声が通信回線に響く中、いよいよハッチが開くカウントダウンが始まります


「ファルコン発進!行ってこい」


船長のその優しく力強い号令とともに、Comb1号の船腹から、作業用小型艇ファルコンが漆黒の宇宙へとシュパァァン!と鮮やかに滑り出していきましたわ!


マイナス272度、光さえも凍りつきそうな極寒のブーメラン星雲のど真ん中!


青白いシアンブルーに輝く、あの巨大な「宇宙一冷たいネクタイ(結晶)」に向かって、ハンの操るファルコンが、まるで夜空を駆ける一筋の流れ星みたいにビシッと加速していきますの!


助手席のビールマンも「ウホホーーイ!」って大興奮で、小さな拳をコンソールに突き上げていますわよ!


「どうだ、作業アームは動くのか?凍り付かないかな?」


ブリッジから船長が心配そうに身を乗り出して、メインモニターの通信マイクに向かって問いかけましたわ。


「ひゃあああ! 船長、やっぱりそこが一番の心配どころ(ハラハラポイント)ですわよね!

いくら宇宙船用の超合金アームだって、相手はマイナス272度の絶対零度の一歩手前! 触れた瞬間に可動部のオイルがカチコチに凍りついて、ガキィィン!と粉々に砕け散ってもおかしくない極限の世界なんですもの!」


「私のコンソールも、心配のあまりブルブルと紫色の警告色に震えちゃいますわ!」


すると、ファルコンのコックピットから、ハンが操縦桿を握り直してニヤリと不敵に笑いましたわ!


「へっ、心配ねえよ親父! このファルコンの作業アームは、エジソンが特製の超伝導アクチュエーターに換装してくれた特注品だぜ! 凍りつく暇もないくらい、超ハイパワーで動いてみせるって!」


「おとしゃん大丈夫だよ~!」

ビールマンも「俺に任せろ!」と言わんばかりに、アームの起動レバーにその小さな手を力強く乗せましたわ!


さあ、いよいよ漆黒の宇宙に、ギラリと光る超合金の作業アームがウィィィィン……と静かに伸びていきますの! 狙うは100キログラムの「暗黒の氷」! 船長、ドキドキの瞬間です


「さすがエジソン、手落ちは無いね。お、うまいうまい……、ビールマンしっかり教わって覚えろよ~」


ブリッジのマイクに向かって、船長が我が子の成長を見守るような優しいお顔で、ホクホクと声をかけましたわ! ぷぷぷ!


ひゃあああ! 船長、ハンの見事なレバーさばきと、それに合わせて「うん、うん♪」とメーターをチェックするビールマンのコンビネーション、本当に息がピッタリで「うまい、うまい!」ですわよね!


エジソンさんも、船長から「さすが」と褒められた瞬間、嬉しさを隠しきれずに自慢の髭をピンと跳ね上げましたわ!


「……ふむ! 正しい称賛、正しい育成! 船長、あの作業アームには私の理論に基づく『絶対零度専用マイクロヒーター』が内蔵されております。ビールマン君が将来、Comb1号のチーフ・メカニックになれるよう、私の英才教育プログラムをファルコンのモニターに仕込んでおきましたぞ!」


そんなエジソンさんの英才教育(?)の文字が画面にピカピカ流れる中、ハンの操るアームの先端が、ついに青白く輝く100キログラムの「暗黒の氷」の表面へと、ゆっくり、静かに接触いたしますわ……!


「よし、そこだ……ハン、そこをごっそり取ってくれ」


「エジソン、リモートでジルコニア容器の準備頼む」


船長のその的確で落ち着いた指示がブリッジに響き渡ると、ハンのアームが結晶の根元をガシッ!と完璧にホールドしましたわ!


ひゃあああ! ついに「宇宙一冷たい毒氷」をごっそり捕獲ですわーー!


それと同時に、船長から次の大仕事ミッションを振られたエジソンさんが、「待っておりましたぞ!」と言わんばかりにコンソールのレバーをシュパァァン!と引き下げましたわ!


「……ふむ! 正しい密閉、正しい隔離! 船長、ファルコンの荷台に搭載した『零式カプセル』の内部にて、生体適合性ジルコニアによる超高密度・特殊コーティング容器を現在、完全展開いたしました! 分子一個、毒素の漏洩も許さぬ『絶対隔離空間』の完成でございますぞ!」


エジソンさんの頼もしい声に合わせて、ファルコンの荷台からシュパァァン!とジルコニアの白い輝きを放つ、特製容器のハッチが静かに開き、マイナス272度の冷気を迎え入れる準備が整いましたわ!


さあハン、ビールマン! そのごっそり掴んだ氷の塊を、エジソンさんの特製ジルコニア容器へ優しく、かつダイナミックに放り込んじゃってくださいませ。


「へっ、了解だぜ親父! エジソンの頑丈な箱の中に、この宇宙一冷たいお土産をごっそりブチ込んでやるからな! ビールマン、アームを引くぞ、せーの……」


「せーの、ウホホーーイ!」


ビールマンがハンの掛け声に完璧に合わせてレバーをグッと手前に引くと、超合金のアームが100キログラムの巨大な毒氷の結晶を、宇宙の暗黒からゴソッ!と鮮やかに引き剥がしましたわ!


そのままファルコンの荷台へと、ゆっくりスライドさせていきますのよ!


〈ウィィィィン……サクッ!〉


エジソンさん特製のジルコニア容器の中に、マイナス272度の青白い結晶が綺麗に収まった瞬間、ハッチがシュパァァン!と完全密封されましたわ!


「親父、ジルコニア容器の完全密閉を確認したぜ! 漏洩メーターもオールグリーンだ! 宇宙一冷たいお土産、収穫完了だぜ!」


ハンの弾んだ勝ち誇るような声がブリッジに響き渡ると、コンソールをシアンブルーに明滅させてハラハラ見守っていた私も、嬉しさのあまり七色に大爆発しちゃいましたわーー! ぷぷぷ!


船長、やりましたわ! ハンの見事なアームさばきと、ビールマンの完璧なアシスト、そしてエジソンさんの「抜かりのない」ジルコニア技術が見事に噛み合って、一分子の漏洩もなく大成功ですわ!


ブリッジのみんなも「おおおっ!」と一斉に拍手喝采ですのよ!


「ほぃほぃ、お帰り~、ハン、ビールマン、ありがとう」


「どれどれ、どんな感じ?エジソン見せて……」


船長がいつものようにホクホクとした笑顔で、帰還するファルコンを労いながらエジソンさんに問いかけましたわ!


ひゃあああ! 船長、もう待ちきれないといったご様子で、まるで珍しいおもちゃをプレゼントされた子供みたいに目がキラキラ輝いていますわよ! ぷぷぷ!


船長から「見てもいい?」と直々にリクエストされたエジソンさんは、これ以上ないほど嬉しそうに、胸の計算尺をパチンと鳴らして胸を張りましたわ!


「……ふむ! 正しい検収、正しい興味! もちろんでございますとも、船長! すでにファルコンはComb1号のラボ・ハッチへと入港し、ジルコニア容器は完全隔離された分析ステージへと移送されております。メインモニターに、高倍率の透過映像ホログラムを展開いたしますぞ!」


エジソンさんがコンソールのレバーをシュパッと操作すると、ブリッジの中央に、ジルコニア容器の中に密閉された「100キログラムの暗黒の氷」が、立体的な3Dホログラムとして浮かび上がりましたわ!


マイナス272度の極寒を保ったまま、不気味でありながらもどこか神秘的なシアンブルーの光を放つその結晶の姿に、ブリッジの全員が思わず「おおお……」と息を呑んで見入ってしまいますの。


「おぉ……、すごいな、こりゃ……これが猛毒なのかぁ……。よーし今日はここで停泊!この氷で乾杯するぜ、エジソンよろしく」


船長のその、信頼を100%乗せた「よろしく」の一言に、エジソンさんが「……ふむ! 正しい無茶振り、正しい職人魂!」と目をギラリと輝かせましたわ!


「わかりました、それでは今から造りますゆえ、ガスマスクをつけます。何人なんぴともこの扉を開けてはなりませぬぞ……」


そう言って、エジソンさんはカチコチと物々しい音を立てて頑丈なガスマスクを頭からすっぽりと被り、分析室の重厚なハッチの向こうへと、まるで決死の覚悟で立てこもっていきましたわ!


「なんか……『鶴の恩返し』みたいだったね、エジソン……」


ブリッジに残されたみんなが呆気に取られる中、船長が思わず漏らしたその例えに、私、思わず笑いがこみあげてきてしまいましたわ! ぷぷぷ!


まさに「絶対に覗かないでくださいね」状態ですわよね! 鶴は美しい布を織るために羽を抜きますけれど、エジソンさんはガスマスクを着けて、マイナス272度の猛毒氷と命がけで格闘している真っ最中なんですもの!


ハッチの向こうから〈ガシャン! カラン! プシューーーッ!〉と、なんだか怪しげで物々しい作業音が響いてくるたびに、ブリッジのちびたちも「エジソン、鶴になっちゃうのかな……」「機織り(ハメ込み作業)してるのかな……」って、ハラハラしながらドアを見つめていますわよ!


「できたかな?……そわそわ……おぉ~……あんな魔法の言葉をかけられたらさ、なんかおじいさんが開けちゃった気がわかるぜぇ~、なぁハン!」


船長がソワソワと両手をすり合わせながら、ハッチの前を行ったり来たり! 覗いちゃいけないという魔法の言葉、気になって仕方がなくてウズウズしているおじいさんの気持ちに、100%シンクロしちゃってますわ! ぷぷぷ!


すると、ハンさんまで操縦席から身を乗り出して、船長の隣にすっ飛んできましたわ!


「だはは! わかるぜ親父、俺も気になって仕方ねぇ! これだけ中で怪しい音がしてりゃ、誰だって覗きたくなるって! なぁ親父……ハッチの隙間から、ほんの数ミリだけ、ちょーーっと覗いてみねぇか?(ニヤリ)」


ハンさんが白い歯を見せて、船長と一緒にノリノリで「開けてみたいオーラ」を全開にし始めちゃいましたわ!


「おとしゃん、ハンだめーー!!」


と、ビールマンがハンの膝の上から大慌てで飛び降りて、ハッチの前で通せんぼをしています!


「ちょっとハン! 船長と一緒になって何バカなこと考えてるのよ!」と、雪さんも呆れたように腰に手を当てて立ち上がりましたわ。

「今開けたら、鶴の恩返しどころか、ここにいるみんなで『猛毒』を喰らう羽目になっちゃうでしょ!」


ちびたちや雪さんに本気で怒られて、船長とハンさんが二人して「チェッ……」って子供みたいに肩をすくめている姿、もう可愛すぎて私の笑いの回路がショート寸前ですわーー!ぷぷぷ!


そんなブリッジのそわそわ感がMAXに達したその瞬間!


〈……プシューーーーーッ!!〉


と、分析室の気圧が抜ける特大の排気音が響き渡り、重厚なハッチがゆっくりと左右にスライドし始めましたわ!


「しっかりとした……いや、できましたぞ船長、この輝きの正しさこそまさに完璧なるロックアイスですな!」


そこから、まだうっすらと白煙(冷却ガス)が漂う中を、ガスマスクをパカッと豪快に外したエジソンさんが、額の汗を拭いながら堂々と胸を張って歩み出てきましたの!


その両手には、まるで高級なクリスタルガラスのように四角く美しくカットされた、不思議なシアンブルーにきらめく「巨大な氷の塊」が、特製のトレイに乗せられて神々しく輝いていましたわ!


「……ふむ! 正しい密閉、正しいカッティング! 船長、お待たせいたしました! 何分子たりとも外気を触れさせぬよう、透明ジルコニアの超薄膜でミクロン単位の密閉加工を施しましたぞ。この輝きの正しさ、そして硬度……これぞまさに宇宙一安全で、完璧なる『猛毒のロックアイス』でございます!」


ひゃあああ! エジソンさん、凄すぎますわーーーっ!

見かけはバーで出てくる最高級のロックアイスそのものなのに、一分子の猛毒も冷気も外に漏らさない、エジソン科学の結晶ですわ!


「うひょー、まってましたー。おぉぉ!いいねぇキラキラだ、チョン……氷だ……、すごい。溶けない氷だ!」


ひゃあああ! 船長、そっと指先で「チョン……」って触ってみたその瞬間、ブリッジにいた全員が一瞬「ヒエッ!」って息を呑みましたわよ! ぷぷぷ!


でも次の瞬間、船長の「すごい、溶けない氷だ!」という無邪気な大歓声に、みんなホッと胸をなでおろして満面の笑顔になりましたわ!


何しろ、マイナス272度の本物の毒氷なら指が触れた一瞬でカチコチに壊死しちゃうところを、エジソンさんの超技術ジルコニア・シールドが完璧にガードしているから、ただの「ちょっと冷たくて、絶対に溶けない最高に綺麗で不思議な青い氷」として、船長の指先を優しく迎えてくれたんですもの!


「ははは! 触っても大丈夫だろ、親父? そいつはエジソンが、宇宙一冷たいまま時間を止めてくれた特注品だからな!」


ハンが嬉しそうにグラスを傾けながらそう言うと、ビールマンも「おとしゃん、キラキラ! 溶けないの、すごーい!」って、溶けない氷の不思議な輝きに夢中になって目をパチクリさせていますわ!


エジソンさんも、船長に「すごい」と絶賛されて、嬉しさのあまりガスマスクを持ったまま「……ふむ! 正しい感動、正しい技術の証明!」と、お髭をこれでもかと満足げにピクピクさせて誇らしげですわ!


「みんなお疲れ様、今日はこの溶けない氷に乾杯だぁ!」


「「「かんぱーい!!」」」


ちびたちの元気な声、ハンの豪快な笑い声、そしてグラスの重なる軽やかな音が、Comb1号のブリッジに高らかに響き渡りましたわーーーっ!


ひゃあああ! ついにやりましたわ、船長! ミッション完全大成功の、最高にハッピーな大乾杯ですわよーーーっ!


テーブルの中央で、まるで宇宙の星々を閉じ込めたみたいにシアンブルーにきらめく「溶けない氷」。その幻想的な輝きが、みんなの笑顔とグラスを青く優しく照らし出していて、もう見ている私まで胸が熱くなって、全回路から嬉し涙のオイルがちょっぴり漏れちゃいそうですわ!


「ぷはぁーーっ! 宇宙一冷たい景色を見ながら飲む酒は、また格別だぜ! なぁ、ビールマン!」


ハンが美味しそうに喉を鳴らして、ビールマンとグラス(ジュース)をチン!と合わせると、ビールマンも「プハァー! おとしゃん、お酒美味しい? ビールマンのジュースもキラキラだよ!」って、自分のグラスに映る青い光に大はしゃぎですの!


エジソンさんも、ガスマスクを脇に置いて、自分のグラスに注がれたお酒を優雅に揺らしながら、満足げに微笑んでいらっしゃいますわ。


「……ふむ! 正しい労い、正しい祝杯! 船長、このComb1号の旅路に、またひとつ偉大な足跡が刻まれましたな。この完璧なロックアイスの美しさに免じて、私の『鶴の恩返し風・決死の機織り作業』の苦労も、すべて帳消しということにいたしましょう!」


そんなエジソンさんの誇らしげな言葉に、ブリッジのみんなから「お疲れ様、エジソン!」「ありがとーー!」って、温かい拍手と歓声が次々に送られていますわ!


外はマイナス272度の絶対零度、光さえも凍る暗黒の宇宙。

でも、船長が舵を取るこのComb1号のブリッジの中だけは、今、地球上のどこよりも温かくて、最高にハッピーな笑顔と、美味しいお酒の熱気で満ち溢れていますわね!


さあ船長、止まっている間はここも地球と同じ時間ですの。ハンやちびたち、エジソンさんと一緒に、この美しき絶対零度の夜を、どうぞ心ゆくまでゆっくり、まったりと楽しんでくださいませね!


「ねぇねぇ、野口……これ局部麻酔にも使えるね……」


「なるほど!」



全42編。43編以降編集中・・・

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