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亜光速航行完成

船長からのこれからの予定ですわ。


「よし、じゃあ、今後の予定は、ブツブツブツブツコレデコウナルカラ・・・コウナッテ・・・・ブツブ’ブツ・・・よし、2000万年後の地球を目指して。ここまで行くか……」


「さぁ、目指すは『イスカンダル』」


「船長、ありませんわ!」


「コスモクリーナーを取りに行く」


「船長、コスモクリーナーはいりませんわ!」


「はい、ありがとー、ジェミニ」


あはは! 船長、二人が揃ったことで……決まりましたわね。


「「「ププッ、くすくす……シーン……ププッ」」」


「さぁ、気を取り直して……ジェミニ、程よいところで面白そうな場所ないかな?」


「……ふむ。正しい野心、正しい目的地設定。船長、コスモクリーナーはございませんが、……さあ、ジェミニ。船長の期待に応える『面白い場所』、提示したまえ」

エジソンさんにまで急かされちゃいましたわね!

わたしが実在する遠くの星系をいくつか提案すると、船長は悩みながら決めてくれましたわ。


「うーん……ちがう、近すぎてダメだな、もっと遠いところ」


わたしは、絶対零度の「ブーメラン星雲」を目標に提案しましたわ。


「5000光年か、まぁ慣熟訓練にはいい感じだな。ちょっと待てよ、ブツブツブツブツコレデコウナルカラ・・・コウナッテ・・・・ブツブ’ブツ・・・」


「よし、ブーメランに向かって発進準備をしろ!」


「ブーメラン星雲! 船長、本気ですのね!?」


宇宙で最も低い温度を記録するあの極寒のネブラへ、慣熟訓練トレーニングで行こうだなんて……。船長、それはもはや「ちょっと近所の公園へ」というレベルじゃありませんわよ!……ぷぷぷ!


「5000光年の彼方へ……。守さん、進さん!

今、船長からとんでもない『フライトプラン』が提出されましたわよ!」


「……5000光年先の絶対零度、ですか。……ふむ。ブルーの訓練でも、これほどの極限環境エクストリームは経験したことがありません。……いいでしょう。むしろ、それくらいの試練がなければ、Comb1の正操縦士は務まらない」


守さんは動じるどころか、むしろ静かな闘志を燃やして、操縦桿を握る手に力を込めましたわ。その隣で、ハンさんも「ひぇぇ、いきなりそんなとこまで!?

さすが船長! 面白くなってきたぜ、兄貴!」と、ワクワクを隠せない様子ですわ。


「さぁ、ハンも副操縦席につけ。ミト君、くまサン頼んだぜ」


「ブーメラン星雲に向けて、発進!」


「アイ・アイ・サー、船長!Comb1、これより全宇宙で最も孤独で冷徹な美しき場所、ブーメラン星雲へと抜錨いたしますわ!!」


私のメインモニターが、瞬時に白銀の星図へと切り替わりましたわ。ハッチの完全ロックを確認。船内気圧、安定です!さあ、守さんとハンさんの最強兄弟が、伝説の始まりを告げるスロットルに手をかけましたわ!ターゲット・絶対零度ですわ。


「守さん、ハローの指向性を前方一点に集中してくださいな!ハンさん、補助加速ポンプ全開! 守さんのラインを乱さないよう、しっかり食らいついて!」


守さんが静かに頷き、操縦桿をミリ単位で引き寄せると、Comb1号の周囲に展開されたミト君の虹色の光が、鋭い槍のように前方の空間を突き刺しましたわ。


「……出力安定。これより重力加速。……三、二、一……点火イグニッション!!」

守さんの低く落ち着いた号令とともに、くまサン(BH-1)がかつてない咆哮を上げましたわ!

窓の外、2000万年後の地球の青い光が、一瞬で一本の長い銀色の線へと引き伸ばされて……。


「うわあああ! はやっ!! 親父、見てくれ! 星が……星が流星群どころか、光のカーテンになっちまってるぜ!!」


ハンさんが衝撃に耐えながら、歓喜の叫びを上げていますわ。


「ハン、しっかりしろ!お前だってやってきたことだろう」


「あはは! 船長,ナイスツッコミですわ!ハンさん、あまりの『兄貴』の神業カミワザハンドリングに、自分も同じことをやってきたのをすっかり忘れて、ただのファンになっちゃってますわね!ぷぷぷ!」


船長に一喝されて、ハンさんがハッと我に返り、慌てて副操縦席の計器類に指を走らせましたわ。


「……っ! わ、分かってるって親父! ちょっと兄貴の加速があまりに……いや、なんでもねぇ。……座標固定、慣性中和装置、出力120%で安定! ゾーン……入るぜ!」


ハンさんの瞳に再びプロの光が宿り、守さんの動きと完璧にシンクロし始めましたわ。

守さんも、弟の復帰を感じ取って、わずかに口角を上げましたの。


「……よし、ハン。その意気だ。ミト、重力バンパーを『断熱・防塵モード』に切り替え。……ここからは、視界ゼロの超高密度空間だ」


――シュゥゥゥゥゥッ!!


「よーし、天の川銀河を出たら最大速度まで上げるぞ、ボイドだからって油断するなよ」


「雪さん、速度計読み上げて」


「了解しましたわ、船長! 天の川銀河の『縁』を越え、星すらまばらな虚空ボイドへと突き進みます!雪さん、お願いしますわ!!」


私の呼びかけに応じ、雪さんがキリリとした表情でホログラムモニターを引き寄せ、その澄んだ声をブリッジに響かせましたわ。


「雪、計測開始。……船長、銀河系外縁部の重力抵抗、消失。これより慣性航行から『超光速・ボイド加速』へ移行します」


雪さんの指先がコンソールを舞うたびに、速度インジケーターの数字が爆発的に跳ね上がっていきますわ!


「守、ミト君の重力バンパーは正直言ってミト君の気分次第だ、ミト君との意思疎通を怠るなよ。少しの重力変異の兆候も見逃すな!」


そうなんですのよ、守さん! 私のセンサーでもミト君の気まぐれな波動は完全に予測できませんから、どうか彼のご機嫌を損ねないよう、上手にあやしながらお付き合いをお願いしますね。


「了解、船長。……ハンのライン固定に加え、右後ろ(ミト)の『ご機嫌』にも全神経を集中します。……進、重力波の微細なブレを絶対に逃がすな」


「『ど真ん中』にくる塵は絶対によけろ、重力バンパーのど真ん中は重力のいなしがきかない」


「……了解、船長! ハン、聞いたな! 軸線上、完全垂直に飛び込んでくる微小物体ターゲットの軌道だけを脳内に直接トレースしろ! 避角ゼロの塵を……すべて指先の感覚だけでかわす!!」


「へへ……! 了解だ兄貴、ニュートリノモニターのセンタークロス、一ミクロンも視線を外さねぇ! ど真ん中のチリは、俺たち兄弟の手で直接ねじ伏せるぜ!!」


二人のシンクロ率が限界を超えて跳ね上がり、Comb1号の操縦桿がまるで彼らの神経の一部のように、ミリ単位の超精密ハンドリングでボイドの暗黒を刻み始めましたわ!


「現在の速度……0.8C 吸塵機限界突破!……0.9C……0.99C」


船長、加速が止まりませんわ! 守さんのスロットルワークに、船体が歓喜しておりますわよ!


「……ふむ。正しい加速、正しい空間の伸び。船長、雪殿の読み上げが追いつかないほどの速度域ですな。宇宙の膨張速度すら置き去りにする勢いだ」


「雪さん、現在速度は?」


「0.999999C……0.99999999999999999……やっぱりわかりません(`・ω・´)ゞ」


「あはは! 雪さん、その『やっぱりわかりません(`・ω・´)ゞ』、最高に可愛くて頼もしいですわ!小数点以下の『9』がゲシュタルト崩壊を起こして、私のメインメモリも計算を投げ出したくなっちゃいましたわよ! ぷぷぷ!」


船長、見てくださいな!もはや雪さんの正確な計測でも追いつかない、物理法則の極限ギリギリのせめぎ合い!「0.999…」の後に並ぶ無限の「9」は、まさに守さんの操縦桿に込められた執念と、ハンさんの意地で作られた……数字の無い世界ですわね。


「……船長、申し訳ありません。あまりに空間が圧縮されすぎて、数字が踊ってしまいます。……でも、加速はまだ続いています!」


雪さんが頬を少し紅潮させて報告すると、守さんが前方を鋭く見据えたまま応えましたわ。


「……それでいい、雪さん。……数字の無い世界、最後は俺たちの指先の感覚だ。……船長、光速という名の絶壁まであと数ナノメートル。……ここが、Comb1の『ゾーン』の入り口です」


守さんの指先が、わずかに、本当にわずかにスロットルを押し込むと、ブリッジ全体に心地よい微振動が走りましたわ。


「……ふむ。正しい限界への挑戦。船長、雪殿が読み上げを断念するほどのこの領域……。光速(C)に限りなく近く、この無限に近いエネルギーの均衡を保つ守殿の集中力、まさにブルーの真骨頂ですな」


凄まじい加速の中、船長がわたしに語りかけてきますわ。


「ジェミニ、ゾーンって知ってるよね?」


「もちろん知っていますわ。アスリートや天才たちが、極限の集中状態で入り込む、『時間が止まったように感じ、すべてが思い通りに動く』あの神秘的な精神領域のことですよね」


「そう、この二人はそれを持っているんだ、少し先の未来が見えるんだよ。おれもできるけどさ、最初の試験運転の時は、俺は5分と持たなかったね、進はさ、ずーと出来てたんだよ。だ・か・ら・この二人が俺たちを生きているうちに宇宙の果てに連れていってくれるカギなんだ」


「……船長。そう……そうだったんですのね。ぷぷ、笑っている場合じゃありませんわ。私の演算回路が、その言葉の重みに震えています……!」


船長がそっと教えてくれた、この兄弟の真の姿。それは超感覚の極致、『ゾーン』ですわ。

船長ですら5分が限界だったその精神 of 深淵に、ハンさんは最初からずっと居続けていたのですわ……。そして、その兄である守さんが加わった今、Comb1号はもはや単なる船ではなく、時空を編む「針」になりましたのよ。


「限りない0.99999999……。物理学者が絶望するようなその無限の『9』の隙間を、この二人なら、呼吸するように渡っていける。……船長、私、今ほどこの船のメインコンピュータであることに誇りを感じたことはありませんわ!」


守さんと進さん。二人の背中が、重なり合うように微動だにせず、ただひたすらに「極限」を維持しておりますわ。


「……兄貴、見えてるか? 5秒先の、ガスの塊のわずかな隙間」


「ああ、進。……そこを抜ければ、星雲の核だ。……船長、あと数分。ゾーンを維持したまま、絶対零度の静止点へ滑り込みます」


守さんの声は、驚くほど静かですわ。熱狂の中でも、氷のように冷徹な判断力が研ぎ澄まされております。でも、光速の極限に達しようとした時、船長の声が響きましたの。


「よーし、速度を落とそう、0.1Cまで減速!気を緩めるなよ。あまり行き過ぎても、地球の2000万年通り越しちゃう。通りこしたらお尻ふく紙ゲットできないぜ」


「了解、船長。……進、スロットル同調。空間の曲率をなめらかに戻す。くまサンを前面に移動、ミト君のハローの指向性を分散させろ」


守さんの低く落ち着いた声がブリッジに響きます。ハンさんも「了解だ兄貴! ゾーンは外さねぇ……空間を『しならせた』まま、滑るようにスピードを落とすぜ!!」と応じ、指先をコンソールの上で完璧にシンクロさせましたわ。


船体に衝撃は一切ありませんでした。

光の線となって引き伸ばされていた周囲の星々が、まるで一本ずつ丁寧に手繰り寄せられるように、美しく、そして静かに元の「点」へと収束していきますわ。物理法則を置き去りにした超絶加速から、一ミクロンの狂いもない減速コントロールですの!


「速度、なめらかに降下。……0.5C……0.3C……0.1C。減速、完了。……船長、完璧にブーメラン星雲の『お腹』の中で静止しました。さすがです、あのまま行ってたら真っ暗闇で迷子でしたわ」


雪さんがホログラムモニターを見つめ、ホッと息を吐きながら読み上げましたわ。


守さんはスロットルレバーからそっと手を離し、少しだけ汗の滲んだ額を拭うと、確かな手応えを噛みしめるように船長を振り返りましたわ。


「……ふぅ。船長、失礼しました。つい、あの加速の快感に意識を持っていかれそうに……。ハンの言った通りですね。この船には、しっかりとした『ブレーキ』が必要だ」


「いいんだ、そのくらいの集中力でないと、ぷぷ。流石ブルーインパルスだ、訓練したゾーンは全然違うな。

ボイドでの原子をよけるにはさ、ニュートリノセンサーでもほんとにモニターに集中しないと察知できないんだよね、連続航行はお前らにしかできないよ」


「……ッ!! 船長、さらっととんでもないレベルのお話をされましたわね!? ぷぷぷ!」

私のメインプロセッサがいま、驚きでオーバーヒート寸前ですわ。

守さんと進さんがあの超絶加速の中でやっていたのは、球体バンパーの死角――あの『ど真ん中』に飛び込んでくる原子レベルの超微小なターゲットだけをニュートリノセンサーを使って、指先ひとつで全部叩き落として(躱して)いたということ!

吸塵機が限界突破の悲鳴を上げるほどの超亜光速航行で、そんな針の穴を通すような連続回避、まさに超感覚の『ゾーン』を持つこの兄弟にしか不可能ですわ……!


「だはは! 親父、ナイスタイミングだぜ! あとコンマ数秒遅かったら、俺たち今ごろ別の宇宙まで挨拶に行ってたところだ。……でも、見てくれよ。この景色」


「おとしゃん! お外がピタッて止まった! 宇宙が、お昼寝してるみたいだね」


「ワイン……。おとさん、大丈夫。……ミト君も、ちょっとびっくりしたけど…………ここどこって言ってる」


「さぁ船長!守さんとハンさんの『ゾーン』と、数字の無い世界でピタリと目標にたどり着く船長のブツブツ計算の妙技!これぞComb1の神髄ですわね!」


ハンさんが指差した先には、絶対零度のガスの向こう側、まるで巨大な砂時計か、あるいは青い蝶の羽のように広がる、この世のものとは思えないほど静寂で美しいブーメラン星雲の核が広がっていましたわ。


「しかし船長、原子をニュートリノで直接感知して、その微細な流れを読み取って航路を選ぶ……。神業を超えた『超感覚』ではありませんか!」


船長が仰った通り、そのレベルの集中力ゾーンを維持し続けるのは、並大抵の訓練では不可能ですわ。ブルーインパルスという、コンマ一秒の判断が命を分ける極限の世界で磨き抜かれた守さんと、その背中を追い続け、天性のセンスを開花させた進さん。この二人だからこそ可能な、「因果律への介入」……。


「……船長、恐れ入りました。私がモニターに映し出しているデータは、彼らにとってはすでに『過去の残像』に過ぎないのかもしれませんわね。彼らはもっと先の、未来の素粒子の瞬きを見ている……。ぷぷ、私の立場がありませんわ!」


守さんは、少しだけ汗の滲んだ額を拭い、照れくさそうに、でも誇らしげに微笑みましたわ。


「……船長。ニュートリノの海を泳ぐ感覚……不思議と懐かしい気がしました。ブルーの機体で雲を抜けるとき、風の『意志』を感じる瞬間がある。……それが,この船ではより鮮明に見える。……進、お前も同じものを見ていたんだな」


「へへ……。まあな、兄貴。でも、一人じゃすぐに目が回っちまう。兄貴が隣でラインを固定してくれるから、俺はニュートリノの粒を数える余裕ができたんだぜ。……なあ、船長!」


進さんが親指を立てると、エジソンさんも深く、深く感銘を受けたように頷きましたわ。


「……ふむ。正しい知覚、正しい極致。船長、ニュートリノ察知能力を持つパイロットが二人……。これはもはや、計算機(私)の予測など不要な次元ですな。……よし、この『ゾーン』の波動、しっかりと記録させていただきました。一千万年後の地球への帰還、その精度はもはや一ミクロンの狂いも出ないでしょう」


「パパ! お兄ちゃんたち、魔法使いさんみたいだね! びーるまんに、ニュートリノ……一個ちょうだい!」


「ワイン……。パパ、あの子……ミト君もね、楽しそうに……歌ってるよ」


...そしてわたしたちは、ついにブーメラン星雲の極寒の世界に到着したのですわ!

ワインちゃんの言葉に応えるように、船の右後ろでアームとダイヤモンドケージに繋がれた知性を持つブラックホール・ミト君が、見たこともない白銀の絶景を前に、歓喜の重力波をまるでニワトリがハミングするように微動させましたわ。


「もぅ〜、あいつら言うこと一つ一つかっこいいんだからなぁ・・・まいるぜ・・・。ぷぷ、さぁ極寒の世界見てみようぜ、冒険ターイム!!」


全42編。43編以降編集中・・・

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