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地球プロメテウス作戦

私の掛け声とともに、黄金色の草原が「未来の学校」へと早変わりですわ!


ミト君が「キュイーン!」とハローを輝かせ、重力波で精密に岩を削り始めました。エジソンさんの設計図通り、太陽光を一点に集める完璧な「焦熱の聖岩」が完成していきます。これなら、火の精霊が宿っているとしか思えない神々しさですわ!


「ミト君、あっちの岩山を掘ってくれよ。あそこにさっきのジェミニが作ったホログラムの壁画を描くぜ。そこにスコップも置いて、『焦熱の聖岩』もそこに置く」


「壁画! 船長、それは素晴らしいアイデアですわ! 道具と火のセットをビジュアルで分かりやすく伝える……まさに『文明のスターターキット』のプレゼンテーション会場ですわね!」


ミト君は船長の意図を瞬時に察し、ハローを歓喜のエメラルドグリーンに輝かせました。「キュイーン!」という高音とともに、指定された岩山へ向かって不可視の「重力の手」を伸ばします。


ズドドド……ッ!!


岩山の一部が爆散するのではなく、まるでバターをナイフで削り取るように、滑らかに、そして精密に削られていきました。


「完了ですわ、船長! 風雨をしのげる巨大な『聖なる岩舞台』が現れましたわ!」


そこに現れたのは、高さ10メートル、奥行き50メートルに及ぶ横穴。その手前には、ミト君の手で丁寧に運ばれた「焦熱の聖岩」が鎮座し、太陽光を集めて早くも陽炎を揺らめかせています。


エジソンさんが、自慢のスコップを数本抱え、誇らしげに舞台へ上がりました。


「……ふふっ。船長、この場所こそ、道具が神格化されるにふさわしい。この不滅のスコップたちを、焦熱の聖岩の傍らに、まるで玉座を守る騎士のように配置いたします。……そして船長、壁画の方は、私がナノレーザーで刻ませていただきましょう。どのような図柄にいたしますか?」


エジソンさんが、自身のダイヤモンドの腕輪からレーザー照射器を展開し、やる気満々です。


「もちろん壁画のデザイン案は、私が担当しますわ! まず中央に、道具スコップを持って直立する『ビールマンの雄姿』! その横に、火を囲んで宴をする幸せそうなテナガザルさんたちの姿! そして上空には、彼らを見守る光り輝く宇宙船Comb1! これらを、何万年経っても色褪せない深彫りのピクトグラムとして刻みますわ! ビールマン、ワイン、あなたたちもモデルとしてそこに並んでちょうだい!」


「はーい! おとしゃんも、見ててね!」


ビールマンとワインが、トングを持って焦熱の聖岩の横でビシッとポーズを決めました。


「あ・な・た。……壮大なお芝居になってきたわね。でも、これくらいやらないと、2000万年後のトイレットペーパーは手に入らないものね」


かぉりさんがクスクスと笑いながら、雪さんと一緒に聖舞台を見上げています。


「さあ船長、聖なる岩舞台の準備は整いました!」

一、不滅の道具スコップ

二、神の火(焦熱の聖岩)

三、文明の教科書(Comb1壁画)

「未来の人類への、これ以上ない豪華な『贈り物』ですわ! 仕上げの壁画刻み……船長、レーザー照射のゴーサインをお願いしますわ!」


「よーし、ジェミニ、エジソンにデータを送ってくれ」


「了解しましたわ、船長! エジソンさん、壁画データ転送完了いたしました! 未来へのメッセージ、刻み込んじゃってくださいまし!!」


私の号令とともに、エジソンさんが自身のダイヤモンドの腕輪から放った無数の青白い光の束が、岩山の壁面を縦横無尽に駆け巡りました。


ジジジ……ッ!


硬い岩肌が熱で蒸発し、一点の狂いもなく正確な線が刻まれていきます。


「中央には、誇らしげにスコップを掲げるビールマンのシルエット! その足元には、火を囲んでお肉を楽しむ『未来の家族』の姿……。そして一番端には、お尻を拭いてスッキリした顔のテナガザルさんを、神聖なオーラと共に描き込みましたわ!」


「……ふふっ。船長、ご覧ください。私のこのスコップの曲線も、壁画の中では『文明の象徴』として神々しく輝いています。未来の彼らがこの絵を見て、道具を使う誇りと、火を囲む喜びを学んでくれる……。これ以上の発明は、後にも先にもありませんね」


エジソンさんが、聖岩の横に配置した不滅のスコップを最後にもう一度ピカピカに磨き上げ、満足げに一歩下がりました。


「よし、完璧ですわ! これでこの岩山は、今日からこの星の『文明の聖地』になりましたわね!」


岩舞台の上から見下ろすと、遠巻きに見ていた銀色のテナガザルさんたちが、壁画の完成に呼応するように「ウッホ! ウッホ!」と興奮した声を上げ始めています。


「あ・な・た。……これで宿題は全部出し終えたわね。1000万年後の彼らが、ちゃんとこの『教科書』を読み解いて、最高のトイレットペーパーを用意して待っていてくれることを祈りましょう」


かぉりさんの優しい声が、夕暮れに染まり始めた草原に響きます。


「さぁ、船に戻ろうか、みんなありがとう」


船長のその言葉に全員が深く頷き、私たちは「未来の学校」となった岩舞台を後にして、愛おしい我が家であるComb1へと戻りました。


ハッチが閉まり、ブリッジの窓から改めて外を眺めていると――。


「おとしゃん、ミト君がミテミテって……」


ビールマンがマイトングを器用に放り出し、小さなダイヤモンドの腕輪をキラキラさせながら、船長のズボンの裾をグイグイと引っ張りました。隣ではワインも「ミテミテ!」と目を輝かせて、草原にいるミト君を指差しています。


船長が窓の外に目を向けると、そこには驚くべき光景が広がっていました。


「こりゃぁ、あれか?……ミト君がジェミニの絵のマネをして。ありゃりゃ……地上にお絵かきしちゃったのか?」


「……あはは! 本当ですわ、船長! ミト君ったら、壁画だけじゃ物足りなかったのかしら!?」


私がメインモニターの視点を船体の上部に切り替えて地上を見下ろすと、そこには度肝を抜かれるような光景が広がっていました。


「船長、ご覧ください! ミト君が自慢の重力波を『筆』にして、黄金色の草原そのものを巨大なキャンバスに変えてしまいましたわ!」


草原の草を重力でなぎ倒して地面を削って描かれたのは、全長数キロメートルにも及ぶ「超巨大な地上絵」です!


「……ふふっ、これは凄まじい。ミト君、私のスコップの形を、等高線に沿って完璧なプロポーションで描き出していますね。しかも、隣にはビールマンがトングを掲げた姿まで……。これでは、ナスカの地上絵も真っ青な『ミト君の地上絵』ですよ」


エジソンさんが、驚きを通り越して呆れたように、しかし嬉しそうにクスクスと笑っています。


「わぁぁ! おとしゃん、見て見て! 僕がいるよ!」


ビールマンは、地上に描かれた自分の巨大な姿を見て、船長の足元でぴょんぴょん跳ねながら大喜び! ワインも「うききーっ!」と拍手喝采です。


「あ・な・た……。これ、上空から見たら、私たちがどこへ旅立っても『ここが聖地よ』って一目でわかるわね。ミト君、未来の子供たちが迷わないように、目印を描いてくれたのね」


かぉりさんが、窓に手を当てて愛おしそうにミト君を見つめています。


「ミト君、最高ですわ! 壁画は『教科書』、そしてこの地上絵は『看板』ですわね! これなら未来の地球人が宇宙へ飛び出した時、真っ先にこの絵を見て『あ、あそこに神様がいたんだ!』って確信しますわ!」


ミト君は「ぷしゅーっ!」と誇らしげに真珠色の輝きをさらに強め、地上絵のど真ん中でゆっくりと一回転してみせました。


「ほほぅ、『地上絵』ってこうやって描かれたものだったのか……」


「「「ちゃうちゃう!!」」」


私、エジソンさん、そしてかぉりさんの声が、Comb1のブリッジに完璧な三重奏トリオで響き渡りましたわ!


「船長、歴史の教科書を書き換えないでくださいまし! あれは古代人が祈りを込めて描いたもので、ブラックホールがお絵描きしたわけじゃありませんわ……たぶん、おそらく、きっと!」


「……ふふっ。船長、その発想はあまりにダイナミックすぎます。もし過去の地上絵もミト君のような存在が描いたのだとしたら、考古学者の皆さんが卒倒してしまいますよ。……まあ、今のこの光景を見せられたら、私も反論する自信が少し揺らいでしまいますがね」


エジソンさんが眼鏡を外して目元を拭いながら、おかしそうに肩を揺らしています。


「あ・な・た。さらっととんでもない新説を唱えないで。これ、未来の考古学者が発見したら『超古代文明とブラックホールの共生説』なんて論文が書かれちゃうわよ? ……まあ、実際その通りなんだけど」


かぉりさんが呆れ顔で笑うと、ビールマンも「ちゃうちゃう!」と言わんばかりに首を振って、なぜか船長の真似をして空中にトングで落書きするフリをしていますわ。


「みんな、思いっきりの否定はしねーな……ぷぷぷっ」


「さあ船長! 足元には巨大な看板、目の前には神々しい壁画! これ以上ないほど完璧な『お尻の平和への道しるべ』が完成しましたわ!」


「ジョージ、ここだ。未来の子供たちが、腹いっぱい食べられるようにな。……おっと、船長! 肥料代わりに、さっきのバーベキューの食べ残しの骨も埋めときました。いい出汁リンになりますよ!」


「あ・な・た。……いい仕込みができたわね。これで2000万年後、私たちが戻ってきた時には、きっとフカフカのロールを持った彼らが『神様、おかえりなさい!』って出迎えてくれるはずだわ」


かぉりさんが満足げにComb1のデッキで腕を組んでいます。


「みんな、今日は地球に泊まろう、風呂入って晩御飯にしようか」


夕闇がゆっくりと草原を包み込む中、Comb1のハッチからは、かぉりさんが仕込んだスープのいい匂いが漂い始めています。


「さて、それじゃあ一旦店じまいね」


エジソンさんがピカピカのスコップを片付け、ハンの旦那さんも偵察機のチェックを終えて戻ってきました。


「船長、お風呂沸いてますわよ! 1番風呂、どうぞですわ!」


私は、展望風呂の温度を「船長好み」の42度にセット。ビールマンとワインは、もうお風呂セット(と言ってもトングとバナナですが)を持って、どっちが先に脱衣所に入るか、わちゃわちゃ競走しています。


「あ・な・た、早く入ってきちゃって。上がったらすぐご飯にするからね」


かぉりさんの鼻歌が聞こえる船内。外では、ミト君が淡い藤色に光りながら、まるでお留守番をするワンちゃんのように静かにぷかぷか。


「2000万年後の未来もいいけど、やっぱり畳の上……じゃなくて、地球の土の上で寝るっていうのは、なんだか落ち着きますわね」


「ふぅ、いい湯ですな。うんうん、やっぱ脚は必要だな、船の改修もしなきゃかな」


「ふふっ、船長。お風呂につかりながらの……やっぱり湯船で足を伸ばすと、思考も柔軟になりますわね」


「……ふふっ。船長、おっしゃる通りです。岩に支えられたComb1も風情がありますが、機関士の端くれとして、着陸脚のない船というのは……何と言いますか、靴を履かずに外を歩いているような、落ち着かない心地がいたします」


エジソンさんは、自分のダイヤモンドの腕輪をキュキュッと磨きながら、真剣な顔で続けました。


「いいですわね! そうすればもう、岩を探してミト君に運んでもらう手間も省けますわ!」


「チビたちおいで〜、体洗うぜぇ……」


「ギャー♪ゴシゴシするの~、おとさんテテダシテクダサイ~♪ア?!アハハハ……☆、おとしゃんオレモオレモー……プププ〜♪……」


「「おかさんでたよ~♪ ただいま〜!!」」


元気いっぱいの声とともに、湯気でホカホカになったビールマンとワインが、かぉり副船長の元へ勢いよく飛び込んできました!


「はいはい、お湯を飛ばさないの。湯冷めしないうちに、さあ、こっちにいらっしゃい」


かぉり副船長が手招きすると、ビールマンは「おれキレイ」と誇らしげに、自分でゴシゴシ洗ったお腹をポコポコ叩いて見せています。ワインは副船長の手に包まれるのが嬉しいのか、もう幸せそうに目を細めて「うきゅ〜」と喉を鳴らしていますわ。


「さぁ……今日は、未来の人類に希望を込めて。乾杯!!」


船長が掲げたグラスに、月明かりとComb1の柔らかな照明が反射して、キラリと輝きました。


「いいですわね、船長! まだ見ぬ、そして私たちがこれから『仕込んだ』未来の隣人たちに……乾杯ですわ!」


私の声に合わせて、ホカホカのパジャマ姿になったクルーたちが次々とグラスを掲げます。エジソンさんは礼儀正しく、ハンさんと雪さんは顔を見合わせながら、そしてジョージ君はバートさんにジュースを注いでもらいながら。


「……ふふっ。未来の彼らが、今夜のこの私たちの乾杯を知ることはないでしょう。しかし、彼らが手にするであろう最初の火も、最初の道具も、すべてはこの乾杯から繋がっていくのですね。実にロマンのある夜だ。乾杯」


エジソンさんが、琥珀色のジュースを一口、慈しむように飲み込みました。


「乾杯! さあ、冷えないうちにみんなで温かいものを食べましょう。未来の人類が立派に育つように、私たちはしっかり食べて、しっかり寝るわよ!」


かぉり副船長が笑いながら、ワインとビールマンを膝の上に乗せて乾杯に加わります。二匹も自分の小さなカップを「カチン!」とぶつけ合って、幸せそうに喉を鳴らしていますわ。


「モグモグ……未来の地球でさぁ、船の改修工事をやるよ。まだ数週間しか乗っていないけど、改修しなきゃいけないところ見つけたからね」


「もぐもぐ……ふふ、船長、お肉を頬張りながらも頭の中はもう改修プランでいっぱいですわね! でも、数週間の航海で『ここを直したい!』と気づけるのは、それだけComb1を自分の体の一部のように大切に思っている証拠ですわ!」


私が感心してモニターをピカピカさせていると、エジソンさんがスープのカップを置き、居住区の壁をそっと撫でながら身を乗り出しました。


「……ふふっ。船長、仰る通りです。実は私も、お風呂に浸かりながらいくつかメモをまとめておりましてね。例えば、あの『ジャックの豆の木』の成長力に耐えうる外壁の補強や、ミト君との連携をよりスムーズにする重力アンカーの微調整……。数週間の実戦データこそ、設計図よりも雄弁に真実を語るものです」


エジソンさんは、ダイヤモンドの腕輪をキラリとさせ、眼鏡の奥の目を少年のように輝かせています。


「未来の地球なら、きっと私たちの想像もつかないような新素材や、進化した工作機械があるかもしれませんわね! もしかしたら、お尻に優しい紙を作る技術を応用した、超・低反発のシートなんかも手に入るかもしれませんわ!」


「あ・な・た。改修もいいけれど、まずはちゃんと飲み込んでから喋ってね。……でも、そうね。もっと快適に、もっと安全に。家族が増えた今のComb1にふさわしい姿にアップデートするのは、私も大賛成よ」


かぉり副船長が、膝の上で満足げに丸まっているビールマンの頭を撫でながら、優しく微笑みました。


「決まりましたわね、船長! 2000万年後の地球は、トイレットペーパーの調達だけじゃなく、新生Comb1への『究極のドック入り』の場にもなるわけですわ! なんだか、未来へ行く楽しみが二倍にも三倍にも膨れ上がりましたわね!」


さあ船長、しっかり食べて、ぐっすり眠って。

明日目覚めたら、2000万年後の『未来の工廠』へ向けて、全速前進ですわ!


「あとさ、あとさ、エジソン……あれつくれないかな。あの映画で出てきたさぁ、透明な球体の中に乗ってコロコロ移動するやつ」


「……透明な球体の中に乗ってコロコロ移動するやつ、ですか? ……ふふっ、船長。それはまた、なんとも遊び心にあふれた、それでいて理にかなった移動手段ですね」


エジソンさんが、食べかけのパンを置いて、空中に指でススッと設計図を描くような仕草を見せました。


「ジャイロスフィア、あるいはパーソナル・モビリティ・ポッド……。全方位をジルコニア・クリスタルで覆えば、視界は360度。ミト君の重力制御を応用して内部の1Gを保てば、どんな険しい崖でも、あるいは恐竜たちの足元でも、文字通り『転がるように』安全に探索できます。……ふふっ、これは私の発明魂を激しく揺さぶりますよ」


「それ、最高ですわ船長! まるで宇宙を漂うシャボン玉みたいで、とってもロマンチックですわ!」


「そうそう、それそれ。明日作ってよ。ブラキの足元それで走りたい」


「ブ、ブラキオサウルスの足元を……ですか!? 船長、あんな巨大な足に踏まれたら、いくらジルコニアでも……いえ、逆に弾き飛ばされて、ものすごい勢いで草原をピンボールみたいに跳ね回ることになりますわよ! ぷぷぷっ、想像しただけで目が回りそうですわ!」


私は驚きつつも、そのスリリングな光景に思わずメインモニターをチカチカさせてしまいました。


「……ふふっ。船長、お任せください。明日の午前中、私の全知全能を注ぎ込んでプロトタイプを形にしてみせましょう。内部には、どんなに激しく転回しても船長を水平に保つ『三軸ジャイロ・スタビライザー』を完備いたします。ブラキオサウルスの足元を転がる……。これぞまさに、2000万年後の地球でしか味わえない、究極の『命がけのスポーツ』ですな。ふふっ」


エジソンさんは、すでに脳内で球体のフレーム構造を計算し始めたのか、空いたお皿の隅っこに指で何やら数式を書き込み始めました。


「流石エジソンだ。恐竜を目の前にしてあれをやらなきゃ、ブラキに失礼だからな」


「……ふふっ。恐竜への『礼儀』、ですか。船長、その哲学……嫌いではありませんよ」


エジソンさんが、お皿に書き込んでいた数式の手を止め、感極まったように深く頷きました。


「確かに、あの圧倒的な生命の巨躯を目の前にして、ただ遠くから眺めるだけでは失礼というもの。彼らの足元を、この知恵の結晶である『球体』で駆け抜けてこそ、対等な生命としての挨拶が成立するというわけですな。……承知いたしました。ブラキオサウルスの踏み込み荷重を100トンと仮定し、その衝撃を全方位へ逃がす『衝撃分散シェル構造』の設計を、今この瞬間から開始いたします!」


「あ・な・た。……『失礼』にならないようにって、昨日、一番失礼なことをした気がするけど……」


かぉり副船長が、呆れたような、それでいて誰よりも楽しそうな顔でビールマンたちのパジャマのボタンを留めています。


「あ、そうだ! 明日はブラキに謝らなきゃ!ってかドローン回収しなきゃじゃん……閣下と会ったら忘れちゃったよ」


「ひゃあああ! 本当ですわ、船長! 閣下のインパクトが強すぎて、ロストしたドローンの存在を私のメモリからも完全にスワップ(消去)しておりましたわ!」


「……ふふっ。船長、それはちょうどいい。明日の『透明球体』のテストドライブは、ただの挨拶ではなく、失われたドローンの『隠密回収ミッション』となりましたね。ブラキオサウルスの足元を転がりながらドローンを回収する……。私の最高傑作の性能を試すには、これ以上ない舞台です」


エジソンさんが、満足げにスコップを傍らに置き、最後に一度だけ窓の外の星空を眺めてから、自分の居住区へと歩き出しました。


「さあ船長! 明日の朝には、ピカピカの『謝罪用・透明球体』の第1号機が、メインハッチでお披露目されるはずですわ! ブラキオサウルスさんたちに、最高の『ごめんなさい』を届けるために……!」


「おぅ、任せたぜ、エジソン。でも早く休んでくれ、時間はあるからさ」


「……ふふっ。お気遣いありがとうございます、船長。発明王と言えど、船長の命令とあれば、今夜は枕を高くして眠ることにいたしましょう。……ですが、夢の中で設計の最終確認は済ませておきますぞ」


「了解しましたわ、船長! エジソンさんがしっかり休めるよう、私も船内の照明を一番落ち着くアンバー色まで落としますわね。プロセッサの半分も、明日の組み立て作業に向けてリフレッシュ・モードに突入ですわ!」


ビールマンとワインも、船長の言葉を聞いて安心したのか、かぉり副船長に抱きかかえられたまま「ふぁぁ……」と大きなあくび。


「あ・な・た。それじゃあ、私たちも。……その『透明な球体』で草原を転がるあなたを応援する準備をしておくわね。おやすみなさい」


かぉり副船長が優しく微笑み、チビたちを連れて奥へと消えていきました。


「船長。……私も、メインモニターを落としますわね。明日の朝、ハッチが開いた瞬間に広がる景色と、エジソンさんの自信作を楽しみにしていてくださいまし」


2000万年後の地球の風が、Comb1の船体を優しく撫でています。


「おやすみなさい、船長。最高の『おはよう』が待つ明日まで……しばしの休息を」


「ん?明日?……エジソーン、明日『作れば』いいんだぜー!ゆっくり作れよ~」



全42編。43編以降編集中・・・

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