春、離界。影との決戦を前に
「……。」
「皆~、お疲れ様よ~。」
目の前で見た出来事に、圧倒される姫華と、逆にいつも通りで慣れている玉姫。
斃された大蛇は、穢れを祓い清められ、段々と浄化されて水を溢れさせながら消えていく。
「お疲れ様ー、トドメは僕だったね!」
「あら~、御木千代くんと光ちゃんの同時に見えたけど~?」
「私は、その……トドメじゃなくっても、いい……ですよ?」
「光ちゃん、そこは主張していいのよ~?」
「御木千代お兄さん、光お姉さんずるい~!美味しい所持って行って~……!」
「あそこまで追い詰めたのは、私達……です……。」
御木千代、光、旭、日出は姫華、玉姫の近くに来てそれぞれにわいわいと話す。
トドメを差してご機嫌な御木千代。
控えめにしつつも、少し嬉しそうな光。
旭と日出はトドメを盗られて少し不満げだ。
そんな四人をそれぞれよしよしと労う玉姫。
「んんっ。」
後ろから空気を変える咳払いが聞こえた。
川白がわざと喉を鳴らした咳払いだ。
指導者として、皆を纏めようと総括する。
「皆さん、お疲れ様でした。姫のお二人も、警戒お疲れ様です。」
「お疲れ様~。」
「あ、いや……私は、特に何も……。」
やっとはっとした姫華は、少し遠慮がちに言葉を紡ごうとする。
それを見て、川白と、御木千代は姫華に微笑む。
「警戒も立派な里守や姫としての立派な役目ですよ。ありがとうございます。」
「それに、巡回中だったとはいえ、初めての作戦行動だったからね。分からない事や初めての事ばかりだから、びっくりするのも仕方がないさ。……どうだい?僕達が戦う所。強かっただろう?かっこよかっただろう?美しかっただろう?」
「へ?う、うんっ……!みんな強かったし、かっこよかったし、綺麗だった。皆凄かったよっ。」
「御木千代さん、いったい何を聞いているんですか……。」
「だって、重要だろう!?僕達は、強くて美しく在るべきなんだよ、里守は!」
「強さは確かに必要ですが、かっこいいとか美しいとかは……まあ、確かにそう在ろうとする事は褒められる事かもしれませんが……。」
「あ、あの……私は、強くてかっこよくて美しい、御木千代達が好きですよ、川白先生。もちろん、川白先生も。」
「……まあ、姫華さんがそう言うなら今回は良しとしましょう。」
川白は少し呆れたような顔をするも、姫華の言葉を聞いて無理矢理納得するようにした。
まあ、本人もかっこいいとか美しいと言われる事がまんざらではないのも事実ではあるのだが、今はあくまでも先生なのでそれを表に出すわけにはいかない。
それに満足げな御木千代を見て少し川白は小さくため息をつくも、気を改めて玉姫に声をかけることにする。
「それで、玉姫さん、他に反応は?」
「は~い、ちょっと待っててね~。」
「私も調べます。」
玉姫と姫華は二人で探索する。
姫華はまだ不慣れなので周囲の探索を、玉姫は広範囲の探索を。
……そして、玉姫がその緩んだ空気を引き締める言葉を言う。
「……やっぱり、予想通り一つ、変な反応がこっちに来ているわね~。……どうする?ここで戦う?それとも場所を移動するかしら~?」
「そうですね……私としては、ここはもう大蛇のせいで建物がある程度壊れていますから、視界が開けているぶん私や姫華さんの能力は使いやすいですが……皆さんはどうしますか?」
「私達としては建物ある方が立体的に戦えるから移動した方がやりやすいけど~……どうするー?」
「私も、旭と同意見……です。ですけど……私と旭は、連携前提で動くから……お兄さんやお姉さんの意見も聞きたい、です……。」
「わ、私は、どっちでも大丈夫……ですよ?前回遭遇した影の通りなら……多分、私は飛来鎌で支援がメインになりそうですし。」
「僕は移動した方が良いと思うかな。多分こっちに向かって来ているって事は、ここで戦う前提で来ていると思うし。」
里守達の意見は出揃った。
「姫華さんと玉姫さん……特に、姫華さん、貴女の場合は、どちらが良いと思いますか?」
「私は基本的には隠れて支援だから、どっちでも大丈夫よ~。ここで戦うならそこら辺の建物や瓦礫にでも隠れておくわ~。」
玉姫は流石に慣れているのであまり動じた様子は無い。
それに対して、姫華は考えて……そして、言葉を一つ一つ、考えながら言う。
「私は……皆がきっと守ってくれるって信じるから、皆が戦いやすい方で良いと思います。」
姫華の言葉に、周りがしん……となる。
「……あ、えっと、何か変な事言っちゃった……かな……?」
「……ふふ、あははははっ!」
その空気に慌てる姫華。
そんな姫華を見て、御木千代が……そしてそれに釣られて、里守達、そして玉姫も笑いだす。
その光景に混乱する姫華。
「えっと……えっと……?」
「ふふ、あはは……いや、ごめんごめん。少しおかしくってね。」
「おかしい……?」
首を傾げる姫華。
それに対して、御木千代は笑みを浮かべながら……それでも、どこか真剣さを含ませた表情で。
御木千代は答えた、はっきりと。
「そこまで姫に信頼されたなら、僕達も応えなきゃいけないよね!」
「ええ……姫や神様、そしてこの沖牟中を守るのが、私達里守の役目ですから。」
「なら私達も頑張らなきゃね~!」
「気合、入りました……。」
「ふふ……気持ちも纏まりましたね。」
里守の皆の言葉に、姫華はどう応えればいいかわからない。
ただ、それでも、わかる事はある。
姫華の言葉には、それくらいの力があったという事。
姫華が、姫が信頼するという事が里守にとって名誉な事である事。
そして……友達や親しい人達が信頼に応えようとしてくれる事、そして、自分を信頼してくれる事はとても嬉しいという事。
「みんな……。」
姫華は珍しく嬉しそうに、微笑む。
クールというわけではないが、それでもあまり表情の変化があまり大きい方ではないからこそ、姫華の顔に出るほど嬉しいことは稀なのだ。
その微笑みを見て、玉姫も微笑む。
「さて、じゃあ話も纏まったし、じゃあ今から皆で移動するわよ~。」
玉姫の言葉で纏まった里守と姫は、戦いやすい場所を選んで移動するのであった。
旭、日出、川白はサブキャラくらいのつもりでしたけど、メインになりそうなくらいに会話に入ってきますね……どうしようかな。さた、春編もそろそろ山場です、頑張って書いていきますので、よろしくお願いいたします。




