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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、離界。里守達の集団戦闘

「私が防御に回ります、宮部従姉妹は攻撃に集中してください!」

「オッケー、任せたからね川白お姉さん!」

「失敗したら、アイス奢ってくださいね……。」

「奢りません!!」


軽口を叩きながらも、旭と日出が二人で左右から斬撃を繰り出す。

鋭い一撃、並大抵の蛇の影なら恐らくこの一撃であっさりと祓われるであろう。

だが、流石に大蛇の影、そう簡単にはいかない。

斬撃の傷がつき、浄化の水が噴き出るも、その身体を両断する事は出来ない。


「ガアアアア!!」


斬撃を今まで受けた怒りをぶつけるかのように、大蛇は尾を振り回す。

大蛇の大きさは、波の建物なんかよりも縦幅も横幅も大きい。

つまり、大蛇の尾の一薙ぎだけで、周囲の建物はあっさりと破壊される。

飛んでくる瓦礫、そしてなによりも最強の武器である大蛇そのものの巨体から繰り出されるシンプルな物理的な破壊の鞭のような尾の攻撃。

左から右へと行われるその動きは、その体躯から考えて、余裕で旭、日出、川白を巻き込むであろう。

だが、当然それを黙って食らうような里守は、ここには居ない。

瓦礫を、尾を、白い砂が包み込む。

瓦礫は飛んできた時の勢いをまるで時が止まったかのように無くして、その場に停滞すると、そのままゆっくりと力を無くしたように落下していく。

そして大蛇の尾も、急激な砂の抵抗を受けて一気にその勢いを失う。

それでも大蛇の力は強大だ。

すぐには止まらず、ゆっくりと、だが少しずつ確かに里守達に向かってくる。

……だが。

川白はパッ!と扇を舞うように動かす。

鈴の音がしゃらん、しゃらんと鳴ると、その扇の舞と鈴の音に呼応するように、瓦礫を覆っていた砂が更に大蛇の尾へと集中する。

そして、更なる抵抗を受けた大蛇の尾は……里守達を薙ぎ払う、その寸前で止まった。


「いっただき~!!」

「尻尾はもらいます……。」


動きが止まって無防備になった大蛇の尾を、ここぞとばかりに狙って突撃する宮部従姉妹。

だが。


「!止まってください!来ます!」

「グオウゥッ!!」


尾だけが大蛇の武器ではない。

その巨体故にその全身がある意味では物理的な凶器である。

大蛇は、ただでは終わらないとばかりに尾での攻撃を諦めたらしく敢えて尾を砂に固定されたまま、顔から突撃してくる。

大蛇は馬鹿ではないのだ。

おまけに、大蛇という物は、まるで龍の髭や角のように、普通の蛇と違って顔の周りに棘や角が生えている。

硬く鋭利なそれ自体が、自分にとって武器である、という事を大蛇は自覚しているのであろう。

その大蛇の牙の破壊力は言うまでもない。

身体強化している里守達でも、その噛みつきをまともに食らえばあっさりとその身体を噛み砕かれるであろう。

大蛇は突進と共に噛みついてくる。

狙いは旭の方だ。


「わあ!危ないなあっ!」

「旭さん!日出さん!足場を!」


川白が舞で砂を固めて、旭と日出の方に飛ばす。


「ナイス、です……お姉さん。」

「無くても避けれたけどね~っと!」

「無駄口を叩いていないで使いなさい!」

「えへへ、ごめんごめん~っ!」


軽口を言い合いながらも連携はしっかりと取る三人。

旭と日出は、飛んできた砂を足場にして、空中で立体機動する。

それによって、大蛇は大振りな攻撃故に隙を晒す。

攻撃を避けた宮部従姉妹は尾から首に狙いを変える。

首、特に……。


「日出!」

「わかってます……行きますよ。」

「「せーのっ!!」」


そうやって息を合わせると、首……首の、先程御木千代が斬撃を与えた所に二人で更なる斬撃を食らわせる。

当代最強の里守が与えた傷は当然ながら浅くはない。

そこに、里守の中でも屈指の強者である宮部従姉妹の斬撃を食らったのだ。

その二人による斬撃は強烈だった。

首という急所に重なった攻撃は、首を斬って落とす程ではないにしろほとんど致命傷に近い傷を受けた。


「グオオオオオオッッ!!!」


痛みに悶え、暴れようとする大蛇。

しかし、尾は砂で固定されてあまり動かせないせいか、その分上半身を不格好に、そしてそれ故に尚更暴れてのたうち回る。


「川白お姉さん!」

「今、です……!」


トドメの合図を送る宮部従姉妹。

それを受けてトドメを差そうとする川白。

だが、視界にある物が映った川白はその動きを止める。


「いいえ、どうやら私の必要は無いようです。」

「「???」」


宮部従姉妹がきょとん、としていると。


スパァン。


空から二つの斬撃が、大蛇を襲った。

致命傷だった首に。

そして砂で固定されていた尾に。

その二つの斬撃で、大蛇は三等分され、まるで血しぶきのように祓い清められた水を噴き出すと、大蛇は少し暴れたあと、力無く横たわった。


「……トドメは僕達がいただきだね。」

「間に合いました……遅れてすみません。」


そのトドメの斬撃を加えた二人は、もちろん。

当代最強の鎌使い、米山光と。

当代最強の里守、出雲御木千代だった。

本当はあと一話伸ばそうかとも思いましたが、流石に春だけで40話近く行きそうなのでちょっとテンポアップしました。川白先生の異能力は代えが利かない代わりに、ものすごく使いやすいので戦闘の幅が広がるので出して良かったのかもしれません。

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