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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、離界。墜ちる大蛇

在明、静尾市付近は、商業地区だ。

ビル、という程ではないが、それなりに高さのある建物もある。

影の大蛇は、すぐには御木には向かわない事が多い。

ある程度の時間、何処かに留まって、その後御木に向かう事も多い。

その留まる時間に、高い建物があればそこに身体を絡み着かせる事もある。

その時間こそ、里守達にとっては好機だ。

加護によって高くなった身体能力や異能力を使って大蛇を攻撃する。

そうやって大蛇を御木に向かう前に討伐するというのは里守達の基本戦術だ。

前回の、移動ルートを狙って攻撃する、というのは優秀な里守である御木千代と光が居たから出来る作戦であり、本来はあまり望ましい作戦ではない。

そもそも御木に向かって移動し、御木の近くに来ている、という時点であまり状況が良くない状況なのだから。

なので、順序は逆になってしまったが、今回の作戦が姫華にとっては初めての本格的な作戦となるのだ。


「では、御木千代さん、光さん、まずは二人で大蛇を堕とすのを狙ってください。地上に墜ちてきたら、私、旭さん、日出さんで攻撃、御木千代さんと光さんも地上に戻ってきたら攻撃に加わってください!」

「りょーかい!」

「わ、わかりましたっ。」

「えーっ、御木千代お兄さんと光お姉さんだけずるーいっ!私も先陣切りたいよ~っ!」

「旭、私達は私達で、地上で頑張りましょう……御木千代お兄さんや光お姉さんが、戻ってくる前に倒しちゃえば、いい……。」

「あ、それいいね~っ!なら私と日出であっさり倒しちゃうもんね!」

「私も戦うのですが……まあいいでしょう。では、姫のお二人は警戒を。」

「は~い。」

「は、はいっ。」


こうして始まった作戦。

まずは作戦の通り、御木千代と光が建物の上に昇っていく。

一応離界で建物を破壊しても現世では問題は無い……というか、勝手に何故か再生するのだが。

ツガネ様とオロチ様曰く、御木の、過去の沖牟中の栄華の土地の人々の記憶を記録する力と、ツガネ様とオロチ様の神威の力によって離界で破壊された物なども再生される、と姫華は後に説明を受けた。

まあ、だからといって積極的な破壊行動は里守は行わない、というか、あまりメリットが無い事が多いのでしないという事が多いのだ。

例えば足場になるような場所を作らなくても、そもそも上がった身体能力のお陰で、沖牟中にあるビルくらいならひとっとびで屋上まで跳べる。

建物が破壊されるのは、大概大蛇が暴れたり攻撃した時である。

ある意味では、まさに大蛇は怪獣のような存在とも言えよう。

とまあ、そんなこんなで、二人は食事の店の屋上に着くと、配置に着いた。


『二人とも~?準備はいいかしら~?』


玉姫が伸ばした御木の蔦で連絡をしてくる。

御木結界とは違う、姫としての能力だ。

御木の蔦を伸ばす事で、通信機のような使い方もできる。

一応離界内で話す通信機もあるにはあるのだが、こうやって能力で話せるなら話すという事もある。


「ああ、僕は大丈夫だよ。」

「わ、私も大丈夫……ですっ。」

『じゃあ、タイミングは任せるわ~、お願いね、二人とも~。』


「じゃあ……3。」

「2……。」

「1……。」


二人は、それぞれの獲物を握る。

そして……。


「「……0!!」」


光と御木千代、二人の声が重なり……バッ、と二人は宙を浮いている大蛇に向かって跳び上がった。


「ガアアアァァッ!!!」

「遅いっ!」

「ですっ!」


二人の敵の存在を認識して、気を緩めていたのか大蛇は反応が遅れて大きく叫ぶ。

だが、大蛇が攻勢に移る前に、二人は上から大蛇に斬撃をおみまいする。

御木千代は首の近くを、光は尾の近くを。

前回のようにその一撃で大蛇を叩っ斬る事は出来なかったが、ドォォォォン!!と叩きつけられる大蛇。

斬撃は確かに重かったようで、嵐のような大雨の水とは違う、大蛇の身体から清められた水が身体から噴き出ている。


「ガアアアアァァァァ!!!」


だが、大蛇もただやられるだけではない。

ジタバタと暴れて、暴れる度にその巨体が路面の道路を捲って剥がして、ぶつかった建物を破壊する。

前回姫華が見た大蛇は炎を噴き出す大蛇だったが、今回の大蛇はひたすら暴れるだけだ。

だが、それでも大蛇の巨体が暴れるだけでその破壊力という物は凄まじい物だ。


「退避!!」

「言われなくっても当たんないよっ!!」

「川白先生の方こそ、お気をつけを……。」


川白の指示に軽口を叩きながら、宮部従姉妹は大蛇の暴れる身体を避ける。

当然、回避するなら周囲の建物も警戒しなくてはいけない。

破壊の一撃が、離界の花屋や金物屋を破壊し、倒壊してくる建物や飛んでくる瓦礫が地上部隊を襲う。


「おっと!!」

「当たりません……。」


飛んできた瓦礫をまるでバターのように刀で斬って落とす宮部従姉妹。

普通に考えたら物理的に不可能な斬撃の芸当が可能なのは、やはり里守の刀が特別であるという事の証明であろう。


「っと、行きますよ、旭さん、日出さん!」


瓦礫が飛んでこなかった川白が先に着地し、砂を操作しながら檄を飛ばす。


「言われなくともっ!」

「速攻で、仕留めます……。」


宮部従姉妹は、着地すると刀を構えた。


「ギャアアアアアアァァァ!!」


斬撃の痛みが多少なりとも引いたのか、川白と宮部従姉妹を今度はしっかりと見据えて暴れるのを止めた大蛇は怒りの咆哮を叫ぶ。

里守の戦いは、まだ始まったばかりだ。

沖牟中奇譚の更新は久しぶりになってしまいました……普段ファンタジーばかり書いているのは、ファンタジーのほうが書いていて楽、というのもありますので、つい、そちらの方が更新しやすくなってしまいます、反省です。沖牟中奇譚の方もしっかり更新できるように頑張って行きます。

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