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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、離界。集まった里守達

部室から出た景色は、学園の中とほとんど変わらない。

だが違いとして、まるで夕日のようなオレンジの日差しのような輝きが学園を包んでいた。

窓から日差しが差しているのかと姫華は勘違いするが、窓から見た景色はやはり空は真っ暗の空が広がっている。

やはり、里守や姫以外の人間は見当たらない。

姫華は、気になったので問いてみた。


「えっと……川白先生っ?」

「はい、なんでしょう、姫華さん。」

「前に離界に入った時も夕日の日差しと真っ暗な空ばかりだったんですけど、離界って変な天気な事が多いんですか?」

「そうですね……一応離界にも時間帯や天気はあるみたいですが、基本的には空は夜空か雨雲や雪雲に包まれていて、太陽や月は見えないと私は聞いています。あと、離界は現世の世界よりも夕日の時間が長いのも特徴でしょうか。」

「夕日の時間が長い?」

「ツガネ様曰く、離界は神や妖といった人ならざる者と人の世界の狭間のような位置、つまり、別の世界と人の世界の狭間に位置する世界だと聞いています。それ故に、太陽と月の狭間の時間……つまり、黄昏の時間が長くなっているのではないかと私は推測していますね。」

「つまり、離界以外にも神様の世界や、妖怪とかの世界もあるかもしれない……ってことなんですか?」

「正解です、花丸をあげましょう。」


「ふふ。」と川白は姫華の頭をそっと撫でた。


「わ……ふふ、少し照れます、川白先生。」

「うふふ、すいません、つい。……ツガネ様曰く、本来神様や妖怪と言った人ならざる者はそれぞれ、自分達の世界に居るそうです。科学が発達した現代では特にそうですね。ですが、時折何らかの理由でそこから出て活動する方も居るそうです。ツガネ様やオロチ様がそれにあたりますね。」

「そういうのって、何が理由かわかっているんですか?」

「いいえ、そこまで明確な事は……ただ、これはオロチ様からお聞きしましたが、神様にしろ妖怪にしろそれ以外の存在にしろ、理由は大概二つ。そこに居られなくなったか、そこから出たくなったか、だと。ツガネ様やオロチ様は、私達の為にこの現世と離界に留まってくれているそうです。」

「神様が確かにそこに居て、見守ってくれている、かぁ……そう聞くと、有難く感じますね。」

「ええ、本当に。だからこそ、私達もそれに応えなければなりませんね。それが里守にしろ、姫にしろ、私のように神職の人間ならば尚更に。」


ふふ、と小さく川白は微笑んだ。

その微笑みは、姫華には美しいと同時に、その瞳には責任に対する真剣さが見えるのであった。


離界の沖牟中学園校門。

当然ながら、学園前には路面電車が止まっているが、その列車はやはり古い型の物に見える。

やはり、離界にある電車は同じ炭鉱電車でも古い型の物になるらしい。


「ここで待っていればいいんですか?」

「ああ、旭も日出も中等部だから、ここで待っていれば来るのさ。」

「なるほど。」


沖牟中学園は、高等部と中等部に分かれたエスカレーター式の学園だ。

姫華は中学校は別の学校だった為外部からの受験でここに入ったが、旭と日出は沖牟中学園中等部に居るらしい。


「お・に・い・さ・ん~っ!」

「おっと、もう来ていたのかい、宮部シスターズ。」

「はい……御木千代お兄さんを、驚かせたかったので……。」

「はは、ならうっかり引っ掛かってしまったようだね。」

「えへへ……お姉さん達もやっほー!」


どうやら校門の木陰に隠れていたらしい旭と日出がぎゅっと御木千代に後ろから飛びついて抱きつく。

御木千代は驚いた、と言っているが、あまり驚いているようには見えず、むしろ予想通りと言った顔だが旭は気にせず姫華達に挨拶する。

日出はぺこり、と挨拶のつもりらしく光に挨拶する。


「今日は付き合ってくださって、ありがとう、ございます……。」

「い、いやいや、大丈夫ですよ!むしろ、誘ってくださってありがとうございます、旭さん、日出さん……!」

「ふふ……デートのお誘い、ですよ、光お姉さん……。」

「ふぇ……!?あ、あの、デートなんて、私に務まるか、その……!?」

「あはは!光お姉さん冗談だよ~!」

「へ!?あ、あうう……。」


光は相変わらず、年下の二人にも礼儀正しいが反応が面白いせいか、二人には相変わらずからかわれていた。


「あ、今日は川白お姉さんも居るんだね!久しぶりで嬉しいな~っ!」

「こら、旭さん、今は顧問として来ていますから、中等部のお二人も川白先生、と呼んでくださいっ。」

「すみません、川白先生……でも、そういう親しみやすさも、素敵だと……思いますよ?」

「……もう、仕方がありませんねっ。」


川白は旭にお姉さん、と呼ばれている事に叱りはするが、本気で怒ってはいないらしく、日出に褒められて微笑まれると、つい叱るのをやめてしまう。

どうやら、宮部シスターズも御木千代と同じく人たらしなのか、それとも川白は光とはまた違う方向でちょろい性格なのか。

もしかしたら両方なのかもしれないが。


「そして~……私達のお姫様二人~っ!今日は天才剣士の私、宮部旭とー……。」

「宮部、日出が、守ってみせます……私達の活躍、楽しみに、しておいて、ください……。」

「あらあら、お姉さん、こんなに可愛くて頼りがいのある子達に守られるなんて嬉しいわ~。よしよし、今日はお願いするわね~。」

「えっ、と……旭ちゃん、日出ちゃん、今日はよろしくね?」

「えへへ、任せてよっ!」

「どんとこい、ですっ……。」


そんなこんなで、合流した里守達は、校門の外。

学園の内と外の境界であり、守られた聖域と本格的な離界の境界を跨ぐのであった。




なんだか自分の想定よりも川白と宮部シスターズの出番が多くなりそうなので、進行はまた遅くなるかもです……。

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