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沖牟中奇譚  作者: 大蛇山たんと


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春、顧問の先生と見回り

「そういえば、玉姫お姉ちゃん、ここの私達って一応同好会……っていう扱いなんですよね?」

「うん?そうね~。」

「ってことは、顧問の先生とかは居るんですか?」

「ああ、それに関しては、先生じゃないけど、運動部とかの監督さんみたいに、特別な顧問の人が一人居るわ~。」

「そろそろ来る、と思います……。」

「先生じゃないけど、顧問……?」


そう姫華が言っているとテーブルの上にある離界と現世を繋ぐ神威の頁が、窓も開いていないのにバサバサっ、と風に揺られるように揺れる。

そして、頁が光りだして、頁から、一つの光が現れた。

その光は、やがて一人の女性の姿に変わった。

その女性は、玉姫より少し背が小さいくらいの女性で、胸やお尻は大きく、玉姫にも負けないくらい。

髪は琥珀色と亜麻色のグラデーション、黒い生地に金の刺繍の入った和風のリボンで髪を結んでいる。

服も和装だが御木千代の物よりも洋装の雰囲気がある。

黒色を中心とした上半身の服には長い袖の端に様々な色の小さなガラス玉の飾りが付いていて、胴を包む服は和風だがボタン留め式の服。

腰には薄緑色の帯に、白い扇子と黒い扇子を差している。

扇子には、手元の下の部分に小さな金色の鈴が付いている。

下半身はスリットの入った大胆なロングスカートで、こちらは黒の布地に白金色の刺繍が入っている。

瞳は灰色のように見える、だが美しい瞳で、細い縁の銀縁の眼鏡をしている。

肌は砂のようにきめ細かく白く、顔立ちは綺麗さと可愛らしさが両方混じったような、大人と子どもの中間と言えるような、そんな顔立ちであった。


「ああ、皆さん、ここに居たんですね。」


その人の第一声は、御木千代、光、玉姫に向けた物であった。

その声は、見た目に見合う何処か大人っぽい美しさのある声で、その声色には少し心配した、といったような優しさの混じった声であった。

そして、その人は姫華の存在に気づくと少し驚いた表情をする。


「……あら?こちらの方は……。」

川白こはくちゃん、この人が、連絡した新しい姫の姫華ちゃんよ~。可愛いでしょ~。」

「こら、玉姫さん、川白ちゃんと今は呼んではいけませんよ?」

「うふふ、はぁ~い、川白先生。」


川白、と呼ばれた女性は敬語を使わずに話す玉姫に注意する。

だが、強い語気ではなく、仲良し同士の軽いじゃれ合いのように姫華には見えた。


「新しい姫君様、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくしは、八社川白やっしゃこはくと申します。この学園の教員ではありませんが、一応三人……いえ、姫華さんを含めて四人ですね。四人よりも年長の里守であり、八社家の者として、皆様の教導役を務めさせてもらっています。そうぞ、これからよろしくお願いいたします。」

「へ?あ、えと……ご丁寧にどうも、櫻井姫華、です……まだ姫になったばかりの未熟な姫で、沢山迷惑かけてしまうかもしれませんけど……どうか、よろしくお願いいたします。え、えと……私にも、御木千代くん達と同じように扱って大丈夫ですよ。」

「わかりました、では、今後はそのように応対させていただきますね。」


丁寧、かつ流麗な動作と挨拶の言葉に気後れしながらも姫華も挨拶する。

その優雅な所作に、気になった姫華は聞いてみる事にした。


「あの……失礼な事を聞くかもしれませんけど、八社家って、何か有名な家なんですか?」

「うん?そうですね……姫華さんは、お住まいは何処に?」

「三ツ池方面ですね。」

「ああ、なら距離が離れているので、知らないかもしれませんね……私の家である八社家は、神屋敷にある神社の宮司の家系なのです。」

「宮司……って事は、神職の人なんですか?」

「ええ。私の家系、八社家は代々、神屋敷町の八社神社の神職の家系であり、それと同時に、里守としても、代々仕えている身でもあるんですよ。」

「川白先生も、里守なんですね。」

「先生、って言っても、川白先生はまだ大学生なのよ~。」

「え?先生なのに?……確かに私達と歳もほとんど変わらないように見えるけど……。」

「ふふ……私は去年この学園を卒業したばかりですからね。皆さんとは、あまり歳が離れていないのも事実ですよ。」

「川白ちゃんは里守としても優秀だから、僕達の教育係になったってことさ。」

「こら、御木千代さん、川白ちゃんは禁止、と玉姫さんにも言ったでしょう?」

「あはは、ごめんごめん!」

「すいません、でしょう?」


御木千代が会話に入ってきてつい川白は叱るのに熱が入るが。姫華は「なるほど……」と納得していた。

先生、というにはどこか歳の差をあまり感じない感覚、でもそれでいながら、玉姫に似たお姉さん、といった感じの包容力。

そして神職の生まれという由緒正しい家柄ならではの、しっかりと根付いた美麗な一挙手一投足の所作。

確かに、納得出来るなと姫華は感じるのであった。


「こほん……ところで、既に神威の頁を使っているという事は、ある程度の説明は済んでいる、という事でよろしいでしょうか?」

「は、はい、川白先生……基本的な事の説明は、大体……。」

「ありがとうございます、光さん。では、そうですね……次は、この部室……学園周辺を見回りしてみる事にしましょうか。」

「学園の周辺……そういえば、この部室の外には、すぐに襲撃があったりするんですか?」

「確かに、神威の頁があるここは一種の加護を受けた神域といって間違いないので、襲撃は無いですが、離界の学園の中も大体は浄化されているので、年末のような余程邪気が溜まった時期でもない限りは学園内にはほとんど入ってこないですし、入ってこれたとしても弱体化してしまうので、私達が居れば大丈夫ですよ。」

「神域……そっか、神様の加護を受けてるわけだし、それにこんなところを作るくらいなら、その施設ごと守るのは当たり前だね。」

「そういうわけです。……あら?」


川白の袖から何かの電子的な音が鳴る。

川白が袖から取り出した物は、スマホであった。

スマホの電波が離界にまで届く筈はないが……きっと、何か特別なスマホなのだろう、と姫華は思った。

川白は少したどたどしくスマホを操作する。

どうやら、電子機器の類の操作にはあまり慣れていないらしい。

少しした後、メッセージを確認し終えたのであろう川白は小さく息を着く。


「……旭さんからの連絡です。『そろそろ姫華お姉さんの案内してる時間でしょ~、私達も学校終わったから皆で離界で祓いに行こうよ!』、だそうです……全く、今日が姫華さんの案内の日と知っている辺り、旭さんも耳が早いというかなんというか……。」

「丁度いいんじゃない?前回のようなイレギュラーの可能性もあるし、複数人で見回りしたほうが良いのは間違いないしさ。」

「御木千代さん、そう言っておいて、祓った数を競争したりしないでくださいよ?」

「あはは、わかってるわかってる!今日は姫華も居るからね!」

「普段からそういうのは禁止ですっ。……というわけで、姫華さん、旭さんと日出さんと合流して見回りという事になりますけど、それでも大丈夫ですか?もちろん、光さんや玉姫さんも。」

「はい、旭ちゃんや日出ちゃんも居るなら、多分頼もしいと思いますし、私は大丈夫ですよ。」

「私も大丈夫よ、川白先生~。」

「な、何かあったら姫華さんや玉姉様は私が……守れるように……頑張り、ましゅっ……噛んだ……。」

「光さん、緊張しすぎないようにして大丈夫ですよ。剣士の三人が飛び出したら、私達が守りましょう。」


ぽんぽん、と光の背中を軽く叩く川白。

プレッシャーで顔を青くする光とは反対に、御木千代は楽し気に言った。


「よぉーし、じゃあ皆、見回りに行こうじゃないか!」


こうして、沖牟中学園支部の里守と姫達は見回りに向かうのであった。

今回登場した八社川白、実はかなり最近作ったキャラクターです。なので設定などもあまり固まっていないので、これから出番が多いか少ないかなどもあまり決まっていません。かなり見切り発車で作ったキャラですが、保護者枠として活躍してくれることを期待しています。

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