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紅翡翠  作者: 量産型ザコ
30/46

卑怯、インチキ、何それ美味しいの?

今日も1本投稿!

 ザコとあさぎの切磋が開始される。ザコの能力は黄月英、対するあさぎはハンニバルだ。レベル差は63も有る、どうやってもザコに勝ち目は無い。

 

「では審判はアフロが行います。ザコさん対あさぎさんの模擬戦、初め!」


「師匠を痛ぶるなんてわたしには出来ませんから、一瞬で終わらせます!」


 だがザコはあさぎが動く前に、何とゴキブリの玩具を投げつけた。雑貨屋に売って居た物を何故かこの男は購入した。どうせくだらない事を考えていたのだろう。


「ホラあさぎ君ゴキブリである!」


「え!? キャー!!」


 一瞬たじろぐあさぎの元に飛び込んだザコは、次にあさぎのロングスカートを捲り上げた。男の衣装は紅翡翠で男用にアレンジされた物になる。ところが女物の衣装は限りなくキャラに近い物になっていた。つまりあさぎはキャラの着ている衣装で有り、ロングスカートを履いているのだ。


「ちょ! 師匠!? 何やってるんですか!?」


「ふははははは!! そんな服を着てるからである!」


「汚ねえ! 流石ザコさん!」


「有り得ませんね? 何と言うアホな戦闘か…..」


 更にザコは追い討ちをかける様に、今度は懐から馬のフンを取り出しあさぎに向かって投げつけた。


「我が愛馬のフンである!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 怯んだあさぎに向かい、今度はガムテープを懐から出し、腕と身体をぐるぐると巻き出した。こうなってはあさぎは何も出来ない。


「さてあさぎ君、まだ続けるかね?」


 あさぎは半べそ状態になりザコを睨む。


「…….いや….非常に不本意ではあるが、これは審判として、ザコさんの勝利を告げなければならない…..」


「ふははははははは! どうだ皆の者、わかったか!」


「まあ…..かなり卑怯でインチキ的としか言えませんが…..」


「卑怯? インチキ? 何だそれは? 美味いのか?」


「え!? ……..」


「では聞くが、今から行おうとしているのはゲームか? それとも戦か?」


「え!?」


「ゲームならば定められたルール内で戦闘するしか無いであろうな? ならばどうひっくり返してもレベル上には勝つ事は出来ん。だが戦なら定められたルールと言うのはどんな手を使ってでも、最後まで立っていた者が勝利者となる。唯一それが、戦のたった一つのルールと言う物である」


「あ!?…….そうか……俺達は完全に勘違いをしていた、ザコさんの言う通りだ。これはゲームじゃない、ならどれだけ事前に策を弄して、どれだけ敵を罠に嵌めるか、それが勝負の別れ目になる! それが本来の戦という物だ」


「….そうか、ならばこっちには誰にも勝る軍略家が居るじゃないか!」


 皆は一斉にアフロを見た、つまりザコは、それを言いたかったのだ。これは戦だ、ゲームじゃない、ならば卑怯だろうが何だろうが、策を弄した者が勝つ。かの毛利元就も、謀毎を最も得意とした。元就は決して戦に強かった訳ではない。元就の最も得意とする物は、事前の謀毎だった。

 これを実践したのがザコ以外では、他でもないはるんだ。はるんは全体的な勝負には負けたが、はるん自身はエリンとの一騎討ちに勝利していた。


「師匠、わかりましたから、早く解いてくれません?」


「ん? ……すまん….」


 間一髪馬糞を避けたあさぎはその後もザコに文句を散々言っていて、ザコは平謝りをあさぎにしていた。だがあさぎも自身の勘違いをザコから教えられていた事に、表面上では文句をぶちぶちと言っていたが、実は感謝していたのである。


「共闘の申し出受けましょう。事情が有り今盟主はすみれさんですが、全権は林檎さんから俺が預かって居ます」


「猫に伝えるわ、では3日後洛陽で待ってるわね。師匠、次は負けませんからね?」


「馬糞如きにビビっておる様では無理であるな、今度は我が糞をもっこり用意しておこう!!」


「ゲ!?……再戦は遠慮します….」


「ブフォフォフォ! 我が強さを見習うが良い!」


 皆思った、見習いたく無いと。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 翡翠メンバー達が奮戦している頃、シャオリン達はブイへの旅路を進めて居た。現在シャオリン達は、晋陽まで歩をすすめて居た。晋陽とは、現在の中国で言うと、太原(たいげん)市を指す。

 秦始皇帝が中華統一を果たした時、太原郡の州府が置かれたのがここで有る。つまり当時の晋陽は大都市の一つでもあった訳だ。


 放逐少女のゲームでは赤城だが、本来は青城でも良いくらいの都市で有る。マップによっては青になるのはこの辺りの関係だと思われる。


「デカい町だな?」


「まあな、ここは華北と洛陽を結ぶ街道が通る交通の要所でもある。北方民族が中原に出るにはここを取らなきゃならないから、重要拠点にもなってるんだ」


 華北って言えば確か今の北京だな? その先には万里の長城が有る。つまり北方民族とはモンゴルか。


 晋陽に入ると、町は虎牢関と同じくらいの広がりを見せて居た。さっそく俺達は先ず冒険者ギルドへと向かった。巨鹿から壺関、ここ晋陽と、道中無駄を省く為にそれぞれ依頼を受けながら来ていたので、その達成報告と換金をする為だ。セイヨ達は流石Aランクだけ有り、受けられる依頼も多岐に渡り、美味しい物ばかりだ。俺達はそれにあやかる形で依頼をこなして居た。


「明日は扶風まで行くんだが、何か受けられそうな依頼はあるか?」


「そうですね……討伐依頼は出てませんが、護衛ならあります」


「護衛? また物騒だな、傭兵ギルドだろう? 本来護衛依頼は」


「それが、扶風までの街道は山越えですよね?」


「そうだな、所々まだ雪も残ってるだろう」


「そうなんです、その山に最近盗賊団がアジトを構えたんですよ。それだけに傭兵ギルドは今深刻な人手不足になっています」


「人手不足? 確かにあの街道は道も狭いし険しいわ、中原に出るなら絶対に避けられない道だし、商隊も多い。盗賊としては格好の稼ぎ場所だけど、それだけにわからないわ」


「と言いますと?」


「山越えの道だからよ、魔物の数も多いし、商隊などが通るなら必ず護衛を雇う筈よ? だからそれなりに傭兵の質も良いだろうし、数もそれだけ居る筈。深刻な人手不足になると言う理屈がわからないのよ」


「言われてみればそうだ」


「そう言う事ですか、ミンメイさんの言われる通り、ここ晋陽も扶風も、傭兵ギルドの登録傭兵は質も良いし人数も多いです。そんな中で人手不足になる理由なんて1つしかありません」


「まさか? …..やられたのか!?」


「はい、もうかなりの傭兵達が盗賊達にやられてしまっています」


「面白え、その依頼受けようぜ、セイヨ」


「シャオリン?」


「どうせ俺達もその街道は抜けるんだろう? なら必ず盗賊団と出くわす筈だ」


「やめた方が良いと思いますよ? ミンメイさんはAランクなのでまだしも、そこのお嬢さんは盗賊団の格好の餌食になります」


「女まで攫うのか?」


「金品と女性を組織的に攫って居る様です」


「いいえ、私だってEランクとは言えこれでも冒険者です。そんな盗賊ども何て返り討ちです!」


「大丈夫よ林檎、私が林檎を守るからね」


「ああ、母さんと林檎は俺が守る、受けようぜセイヨ」


「まあ、どうせ俺達もその街道は通るんだから盗賊には出くわすか。わかった、詳細な情報をくれ」


 ギルドからの依頼で、護衛依頼を受ける事になった。依頼は商隊ではなく、この世界の巫女達を扶風まで送る依頼だった。この時代シャーマンと言うのは非常に重宝された存在だった。日本でもそうだが、特に当時の中国では陰陽五行節と言うのは大切な信仰であり、全てに神が宿ると思われて居る。

 そこで必ず行われるのが祭りだ。祭りというのは、今では夜店が出て踊ったり歌ったりなどの一部だけ行われて居るが、本来の祭りの姿はそうではない。季節の移り変わりや農作物の収穫時期などに、神に感謝して祈りを捧げるのが本来の祭りの姿だ。そこで必要なのが必ずシャーマン、つまり巫女の存在になる。

 また巫女はどの町にも居る訳では無い。要所要所に居て、近隣の小さな町などから依頼が有ればそこまで出向いて行事を行うと言う形になって居た。今回は扶風から巫女の派遣依頼があったのだが、盗賊の関係でもう半月近く扶風に出向けないでいると言う。

 


「扶風でも焦って居るだろうな…..」


「はい、収穫祭に巫女が居ない訳には行きませんからね。再三に渡り寺院には要請がかけられて居るそうですが、何と言っても盗賊団が居る以上巫女達は格好の餌食です。護衛も居ない状態で寺院も派遣は出来ません」


「それで? 肝心な盗賊団に関して何か情報は有るか?」


「はい、先ず盗賊団の数は少なくとも1000人以上は確認出来ています」


「1000人以上!?」


「ちょっと、それもう盗賊団とは言えないんじゃないの!? 立派な軍隊じゃない!」


「はい、ですがそれだけでは有りません。盗賊団は皆まるで軍隊の様な統一した甲冑を身につけて居るそうです。それがまるで異国の軍隊の甲冑の様だと言う報告が入っています」


「異国の軍隊?」


「全身金属で覆われた甲冑だったそうです」


「まさか!? フルプレートメイルか!?」


「知ってるのか? シャオリン」


「実際その盗賊団を見て見ないとわからないが、西洋の騎士の甲冑はフルプレートメイル、つまり全身金属の甲冑だ」


「おいおい、ヨーロッパの軍隊がこっちで盗賊団かよ?」



 この後も色々話を聞いたが、どうにも違和感しか浮かんで来ない。この世界でいきなりヨーロッパが攻めて来るだろうか? そもそもこの世界が確立されたのはそんな昔の話では無い筈だ。

 確かに地球の一つのグリッドになったとは言え、そのまま地球の歴史を辿るとも思えないし、また歴史を辿ったとしても、ヨーロッパが攻めるのでは無い、逆だ。ヨーロッパがアジアに攻めるとすれば、それは中国では明の時代になる筈だ、少なくともこの三国志の時代では無い。

 ならば考えられる事は一つだ。俺達の様な者が新たに召喚された、こう考えるのが一番しっくり来る。



「シャオリン….」


「ああ、母さんも気がついたか、多分それで間違い無いと俺も思う」


「盗賊団は私達の同類ね」


 俺達は宿を取り、明日の護衛依頼について話して居た。



「じゃあ、リリィ達と同じ異界から来た奴等って事か?」


「確証は無いわ、だけど話を聞く限りではその線が一番濃い事は事実よ。先ず本来無い筈のフルプレートメイル、これはヨーロッパが攻めて来たとも考えられるけど、突如として現れたと言うなら、A.I兵と言う線が非常に濃いわ」


「確かにそうね、急にここで被害者が出た事もおかしいわ。本来ならその前にもっと西の町などから情報が入って来なければおかしい」


「ええ、それと奇跡の様な力を持つ者の話し、私達の様な存在と考えたなら辻褄が合う」


「異界の奴らが既に紛れ込んで居たって事か」


「そこでセイヨ、相談があるの」


「なんだ?」


「冒険者じゃなくても良いわ、腕の立つ人を何人か私達で雇えないかしら?」


「冒険者じゃなくて良いってんなら、あてはない事もないが、何故だ?」


「奇跡の様な力を持つ者、2人目撃されて居るのよね? そいつらの相手は私達がするわ。だけど誰かを守りながらと言うのは正直キツイのよ。理由は、ぶっちゃけて言うと、多分そいつら私達より強いわ」



「おいおいマジか、冗談じゃ無えぞ?」


「母さん、そりゃ一体どう言う意味だ? 相手があさぎさんだって言うならわかるが、俺は破竹でもそう簡単に負けねえぞ?」


「シャオリン、よく考えて、良い? 私達が購入出来るAI兵にフルプレートメイルは居た?」


「いや…..居ないな」


「そう、居ないのよ。そして他同盟の城でも見た?」


「そうだわ!? つまり自衛隊の様な新たな召喚者!?」


「その線が一番濃いのよ。そしてこの世界で悪さをしていると言うなら、アライアンス軍と言う事は考えられない。つまり運営側が恐らくアライアンス軍に対抗する為に入れた召喚者。なら運営側が私達より弱い者をよこすと思う?」


「…..有り得ねえな、下手をすればもっと古い鯖から格上を入れて来る可能性だって考えられるか…..」


「だから私達は見かけたら全力でそいつらを抑え、場合によっては巫女さん達を逃しながら撤退すると言うのも視野に入れる必要があるのよ」


「つまりそのフルプレートメイルってのを着ている兵隊達の相手を私とセイヨだけでしなければならないって事ね?」


「そうよミンメイさん、私達親子は召喚者の相手だけで精一杯になる可能性があるから、巫女さん達を守るのはセイヨとミンメイさんになるわね」


「そいつはかなりヘビーだな、わかった。出発は2日待ってくれ。その間に心当たりに声をかけて来る」


「問題無いわ、私達ももう少し情報を集めたいから」


 翌日俺達は手分けして情報収集、そしてセイヨとミンメイは何処かに出かけてしまった。ある程度情報が纏まり、ほぼ新たな召喚者で間違い無いとの結論に俺たちは至った。そして出発当日、何とセイヨとミンメイが現れたが、2人は完全に別人になって居た。



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