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紅翡翠  作者: 量産型ザコ
3/46

家族

象の動きは遅い象…….

 ゲームの中に入り込んだ俺とアフロは、その中で同じ同盟員のガッキーさんと出会う事が出来た。それはつまり、インして居たメンバーが、同じ様にこの世界に入り込んでいる可能性が高くなったと言う事。俺達とガッキーさんは、同盟員を探す事にした。

 

 そして城の城門が見え始めた頃、突然戦闘音が聞こえて来て、ガッキーさんはその様子を確認しに行った。


「悪い…..俺完全に足手纏いだよな…..」


「くだらねえ事気にするな、何か理由があるんだろう。そんな事よりとにかく帰るんだ、何時迄もこんなふざけた世界に居られるか」


「…..ああ、そうだな….」





 


 城の城門付近では、女性2人が兵隊の様な格好をした者達複数に囲まれて居た。


「母….リリィさん、右!」


「え? キャア!」


「リリィさんしっかりして! そのキャラならそんな雑兵軽くあしらえるわ!」


「でもしず…….林檎、私戦闘なんて」


「こんなところで私死にたく無い! リリィさんにも死んで欲しくない!」


「林檎…..そうね、帰ってお兄ちゃんにご飯作ってあげないとね」


 リリィは林檎に諭され、意を決した様に、背中に背負う矢を引き抜いた。その矢数はなんと8本、弓を構えると矢からメラメラと炎が立ち昇る。それはMRキャラ、李広のスキル、炎の飛矢だった。


「お前たち、私の娘に触れるな!」


 高速で激しく飛ぶ弓は、林檎の周りに群がる敵を次々と射抜いて行った。その矢は一瞬で敵を蒸発させてしまうほどの強烈な威力が有った。


「大丈夫!? 林檎」


「うん、兎に角ここから離れ……..しつこい」


「私の背後に!」


「待ってリリィ」


 林檎がラッパの様な物を口に咥えると、そこから何とシャボン玉がぷかぷかと飛び出し、リリィを包み込む。


「これは?」


「多分聖護美夢、それと砥直がかかって居る筈だよ」


「わかったわ、有り難う。兎に角ここから離れないと、私の背後からついて来て!」


 リリィが次々と矢を放ち、開いた空間に滑り込む様に走る。林檎もその後ろからついて来るが、やはり多勢に無勢、囲まれてしまった。更にリリィが幾らMRキャラの実力を持って居ても、それは弓将で有り、武将では無い。接近戦では明らかに部が悪い。


「どうしよう?」


「何とか一角でも開けられれば…..」


 林檎に諭されたリリィだが、母の強さにも限界があった。やはり戦闘など経験した事が無い、それは確実にリリィのメンタルを削って行った。

 ジリジリと近づいて来る敵兵に心が折れそうになる。何とか林檎を自らの背後に隠す事が、今のリリィが出来る精一杯になって居た。

 その時だった。いきなり目の前の敵数名が両断された。そしてエフェクトを残し消えて行く敵兵の向こうには、刀を持った武士が居た。


「私は同盟翡翠のガッキーZZ、助太刀する! 見たところ其方のお嬢さんは綺夢(あやめ)の能力を持って居る様、容姿チェンジは出来ないのか?」


「嘘? ガッキーさん! でも容姿チェンジって…....は!」


 林檎がいきなり派手な和服から、甚平の様な水色の服に変わり、そして……..デパートの100円を入れて遊ぶ象に乗りながらぷかぷか浮いて居た。

 MRキャラの綺夢は、あくまでもUR閃のアバターである。本来のUR閃キャラ綺夢は、この象の風船に跨る姿なのだった。


「リリィ! これに乗って!」


 リリィがそれに飛び乗り、象は前進を始める….が


「ねえ林檎…….」


「何?」


「もっと早く進めないの?」


「………..五月蝿いわ!」


 とりあえず上空に浮かんでいるので敵兵は手が出せないが、その移動速度はカタツムリ並みだった。

 下ではガッキーが激しい戦闘を繰り広げて居る。


「ガッキーさんの援護を、林檎、敵兵の方に方向転換して」


「わかった」


 リリィは上空から敵兵めがけて援護射撃を繰り出す、林檎もガッキーに美夢のバフをかけるが、容姿チェンジすると、ゲームと違い、聖護美夢はかけられなかった。だがこの美夢と言うバフは非常に優秀なバフで有り、ダメージカット能力では他を圧倒する程の威力が有る。これだけでも十分にガッキーは助かって居た。


 カタツムリがようやく敵兵から逃れた位置に来ると、流石にガッキーもその場から引くことにし、リリィ達と合流した。


「有り難うございますガッキーさん、私はリリィ、この子は林檎です」


「ガッキーさん有り難うございます、本当に助かりました」


「例には及びません、同じ同盟の仲間じゃないですか。しかし盟主がまさかこんなに可愛らしいお嬢さんとはビックリしました。それに…..」


「はい、私もここに来て初めて知ったのですけど、林檎は私の娘だったんです」


「偶然とは恐ろしい物ですね、まさか親子でやって居たとは。向こうにアフロさんとシャオリンさんが居ます。合流しましょう」


「シャオリンさんとアフロさんも!」


「じゃあやっぱり…..皆この変な世界に飛ばされたんですね?」


「インして居た同盟員は恐らく、行きましょう」




 


 そしてガッキーさんが戻り、2人の女性を連れてきたが、俺はそこで固まった。そう、ガッキーさんが連れて来たのは、母さんと妹の静香だった。


「嘘でしょう?」


「え!? ……..」


「うわ、おばさんと、しず….」


「これはまた……..」


「はい、母親と、妹です…….」


 兎に角俺はガッキーさんとアフロからはなれ、母さんと静香と話す事にした。




「人には勉強勉強言って置いて、自分はゲームかよ?」


「そう言うつもりでは無いの、ただやるべき事はちゃんと」

「冗談言うなって、そう言うつもりも何も、実際遊んでたからここに居るんだろう?」


「お兄…シャオリン、それを言うなら自分だってそうでしょう? 自分は良くて母、リリィはダメなの? それって自分勝手過ぎない? 母、リリィはやるべき事を先ずちゃんとやりなさいって言ってるの、シャオリンは何時もそう、宿題もうちの仕事も全部後回し、だから怒られるんだよ!」


「お前は黙ってろよ優等生!」


「何よそれ? お兄、シャオリンだって!……..もう良いよ! リリィ、行こう!」


「待って林檎、ねえか、シャオリン、黙ってた事は謝るわ、だけどね? 私は何も貴方に遊ぶな何て言って居る訳じゃ無い、遊んで良いの、だけど成すべき事を先ずして欲しい、貴方は本当はとても優秀な子なの。それは私が誰よりも知って居るわ」


「…….はあ、もう良いよ、とりあえずここで喧嘩しててもガッキーさんやアフロに迷惑だ、とりあえず帰る事を考えよう」


 イマイチスッキリしない、だけど静香の言う事は結構堪えた。確かに何故俺は母さんがゲームをやって居た事に腹を立てたのだろう? 別に母さんだってゲームやっても良いじゃ無いか。何故俺は怒った? それが今の俺にはわからなかった。


「じゃあ軍師殿、今後の方針を決めて欲しい」


「いや、この場合はやっぱりガッキーさんが決めるべきではと思いますが?」


「何を言って居るんだい? アフロさんは優秀な翡翠の軍師だ。君が決めずに誰が決めるんだい? 私は何時も君の采配に感心して居たんだよ?」


「私もそうです、ここはやっぱりアフロさんの方針で動くべきだと思います」


「林檎ちゃん、シャオリンとの話はもう良いのか?」


 林檎は黙って頷いた。そして俺も…….


「ああ、とりあえず今は帰る事だけを考える、アフロ、方針を決めてくれ」



「….そうか…わかった、では先ず最初に話した通り、この城の付近で同盟員を探す。この攻城戦に参加して居たのはあと2人居る、すみれさんと青熊さんだ。リリィさんと林檎ちゃんが居た事で、もう間違い無い、2人も恐らくここに居る」


「私もそう思うわ」


「右に同じだね」


「そこで問題が1つ有る」


「何だ? 問題って」


「魯陽を攻めて居たメンバーと、虎牢関を防衛して居たメンバーだ」


「あ!……」


「この洛陽付近のメンバーだけがこっちに来たのか、それともインして居たメンバー全員がきたのか、現時点でそれが全くわからない」


「確かにもし、魯陽や虎牢関に居たメンバーまで全員が来たとすれば、これは大変な事だね。魯陽を攻めていたのは、確かはるんさんだったか」


「はい、俺が指示を出しました。ですが、更にもっと逼迫した問題も有ります」


「それは何?」


「さっき俺はそこで立ちションしました」


「…….おい、ふざけてるのか? アフロ」


「アフロさん……良くこの状況でそんな馬鹿な事」

「違うよ林檎さん、そうじゃ無い、今アフロさんはとても大切な事を言って居る」


「え? ガッキーさん?」


「良いかい? 排泄現象が起こると言う事は?」


「!? ….まさか、食事!!」


「そう、リリィさん、俺たちはここでも食って行かなければならないって事です」



 今まで気づかなかったが、これはアフロの言う様に、本当に逼迫した問題だった。目の前の城には入れない、更に永遠と先の見えない荒野、右も左もわからないこの地で俺達は飲み水や食料の確保をしなければならない訳だ。


「そこで部隊を2つに分けます、先ず今のところ戦力的には含められないシャオリンと、林檎ちゃんに食料と飲み水の確保をお願いしたい」


「戦力的には含められないって、どう言う事ですか? おに、シャオリンは紅翡翠は持って無いんですか?」


「悪い…..持ってるのは持ってるんだけど、何故か変化出来ないんだ」


「…わかったわ、じゃあ私とシャオリンで、でもどうやって?」


 そこでアフロは上空を指差した。


「成る程、速度は遅いが林檎さんは空を飛べる、なら遠くまで見渡せる筈だ、オアシスか何かを見つけられれば、と言う事だね?」


「そうです、次に俺はここを仮の本部として、双方の指揮をとります。リリィさんとガッキーさんはすみれさんと青熊さんの捜索をお願いします。何か異変があった場合は必ずそこで対処せず、ここで報告をお願いします」


「わかったわ」


「了解、じゃあ行こう、林檎」


「うん、じゃあ乗って!」


 俺は林檎の出した象さんの後ろに乗った、乗ったが………


「なあ、林檎…….」


「五月蝿い!」


「すまん…..」


 上空には確かに上がれた、だが、歩った方が遥かに速かった。





「かなり上まで上がれるんだな? ここが限界か?」


「うん、これ以上は上がれないみたい」



「……なあ、林檎」


「何よ!!」


「いや、遅い事を言うつもりは無くてだな、怒るなよ。そうじゃ無くて、この象って風船だよな?」


「多分そうだと思う、あやめの虹キャラの絵のまんまだし」


「風船てさ? 風で飛ばされるよな?」


「そうだけど、今は無風だからどうにもならないわ」


「あそこに見える、あれは何に見える?」


「ん? ……..扇? ……..扇!!」


 


 俺はさっきガッキーさんが倒した敵兵の武器、つまりドロップアイテムを見つけた。そこには敵兵の謀士が使っていた扇があった。

 直ぐにそれを拾い、俺が後ろ向きに乗り、扇を扇ぐと、象の速度が一応上がった。


「頑張れ〜♪ 頑張れ〜♪」


「はあ……はあ…….ま、まだ、何も見えないか?」


「見えないよ〜」


「くそう、マジで疲れて来た」


「何も見えない〜……見えた!」


「マジか! どれ?」


 オアシス、確かにかなり遠いが、緑がしっかりと見える。


「行ってみる?」


「いや、まずはアフロに報告しよう。象の速度アップの方法がわかったんだ、あいつなら何か良い方法が思い付くかもしれない」


「そうだね、じゃあ降りるよ」




 アフロの所に戻り、ひとまず俺はオアシスらしい物を見つけた事、そして象の速度アップが出来る事を報告した。


「成る程、確かに風船なら風で速度アップが出来る」


「だけど扇じゃあ大変だし、そこまで速度は上がらないんだよ」


「いや、何も風だけで動かさなくても良いだろう?」


 アフロがニヤリと笑った、やはり何か策を思いついたのだろう。


 一先ずの定時連絡で母さんとガッキーさんが戻って来た。まだすみれさんと青熊さんは見つかって居ない様だった。

 

「私と林檎でオアシスの調査?」


「はい、そこに飲み水が有るか、そして何か食べられそうな物があるかの調査をお願いします。もしあれば、そのオアシスを本部に捜索をしようと思います」


「でもここからかなり遠いぞ?」


「頑張れば象には3人乗れそうだ、見た目はあれだけど、かなり大きいからな」


「あれって何ですか! あれって!」


「そうよ? 可愛いじゃない、ねえ? ガッキーさん」


「か、可愛いですね……」


「ま、まあつまりだ、林檎ちゃんとリリィさんの他に、もう一人乗れれば、俺の考えではかなり全員の移動が早く行える筈だ」


「本当か!?」


「やってみよう」


 アフロは先ず母さんの矢と、自分の武器である鞭を結び、鞭の先の輪っかを象に被せた。ここでやっとアフロの考えがわかった。


「ではリリィさん、先ずは軽く、その矢をオアシスの方向に向けて射ってみてください」


「わかったわ、じゃあ行くわよ、林檎」


「うん、大丈夫!」


 ビシュ!


「え? ヒィィィィィ!」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 二人の盛大な悲鳴がドップラー効果を聴かせながら木霊した。瞬く間に象と2人は小さくなり、やがて豆粒の様になった。


「軽くって言ったのに!?」


「まあ、確かに速度は相当な改善が見られたな…..俺は乗りたくないけど」



 暫く待って居ると、またもやドップラー効果を効かせた悲鳴が段々と今度は大きくなって来た。


「はあ!………はあ!……リリィ、もっと加減出来ないの!?」


「軽く打ったわよ! だけど威力がありすぎて」


「初歩的な事を言いますね、リリィさん」


「何!?」


「別に敵がいるわけでは無いんです」


「それで?」


「スキル使う必要ありますか?」


「……………無いわね」



 これで移動速度が完全に改善された。変化出来ない俺があんな威力に晒されれば軽く死ねる。

 


「それでどうでした?」


「先ず飲み水は間違いなく有りました」


「本当ですか?」


「間違い無いって、飲めるかどうかわかったのか?」


「わかったも何も……ねえ?」


「うん、これ……」


 静香が出して来た物、それは三矢サイダーだった。


「はい?」



 正直俺もアフロも、ガッキーさんも皆が固まった。


「何でこんなのが?」


「セブンで買ってきた?」


「はあ!? なんだそりゃ?」


「知らないわよ、だってセブンが有ったんだもん」


 この世界にはコンビニが有る、先ずそこに俺は驚いたが、更に驚く事を俺達は聞いた。


「リリィさんも林檎さんも、お金は持っていたんですか?」


「じゃなくて、勿論お金はここに来た時に消えたんだけど、元宝で買えるのよ」


「「「元宝で!?」」」


「でもどうやって元宝なんか」


「説明するより現物を見た方が早いわ、とりあえず行きましょう」


 俺達は順番ずつ、3人乗りでオアシスへと向かった。そこには確かにセブンイレブンがあった。完全にコンビニだ。勿論店員などは居ない、所謂無人レジみたいな物が有る。母さんが商品をスキャンすると、おにぎり1個3元宝と金額が表示される。そしてそこの画面には、チャージして支払い、支払い、と表示が2つ出る。そして支払いを母さんが押すと、現在の母さんの所持元宝、53200元宝が表示され、ピヨピヨ! と音がして支払いが完了した。

 そこで俺は、これなら万引き出来るんじゃね? と思い商品を強奪して逃げようと試みた。するとサイレンがけたたましく鳴り響き、どこからともなく電撃が襲って来て、俺は一撃でノックダウンした。


「馬鹿じゃ無いの本当に」


「は、早く回復して! 体中痛え」


「いい気味だわ!」


「それが兄に対する態度か!」


「くだらない事考えるからよ」


 まあ何だかんだ言ってしっかりと回復してくれた。流石は綺夢の能力だ。

 元宝と言うのはゲーム内通貨の事で、インするだけでも、デイリー活動をするだけでも取り敢えず少額だが入手出来る。勿論課金して元宝を購入する事も可能だが、今俺たちにリアルマネーは無い。

 だがこのコンビニの金額設定を見るからに、とりあえずデイリー活動をしていれば、食って行くだけなら困る事は無さそうだ。またこのコンビニにはトイレもあるし、しっかりと水も使える。つまりこの近くに居れば、生活には困らないと言う事になる。


「あとは寝る場所の確保だな、林檎ちゃん、申し訳ないがもう一働きして貰えるか?」


「良いわ、何をすれば良いの?」


「このオアシス全体を見れる位置まで上がり、小屋か何か、まあ寝る場所になりそうな場所が無いかを確認して貰いたいんだ。コンビニが有るくらいだから、何かコテージ的な物ももしかしてあるかもしれない」



 そしてアフロの予想はドンピシャだった。林の少し奥にコテージが数件並んでいた。一ヶ所一泊10元宝、またもやデイリーで貰える元宝で一晩泊まれる価格設定だった。





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