ハッキング
今日はこの1本だけです
ザコが示した位置に気がついたヨウヘイは、急遽全員をモニター室へと移動させた。そして恐ろしい事に気付く、王都圏ではこの虎牢館へと続く道は、洛陽に向かうか、魯陽へと向かう2通りの道しか無い。そして、そこを不思議に思ったザコは、洛陽とは逆、魯陽の方角から謎の軍が来て居るのではと考えた。そして傾国マップでは、何と魯陽が落城して居て、勢力が一日一食から、魯陽守備軍へと代わって居たのだ。
「魯陽が……落とされて居る」
「魯陽だけでは有りません! 見てください!!」
「はんじょう、えんじょう、かだいもよ!?」
「かだいで……遂に死人が出た様だな」
傾国マップでは、ビックリマークマークを押すと最後に戦闘した者同士が表示される機能が有る。そこには、珍肉同盟のモフリンが負けた事を意味する表示が出されて居た。そして他の城の駐屯者にモフリンが居ない。つまりこれは戦線離脱、死を意味して居た。
「モフリンさんて、確か珍肉の准主力じゃなかったのでは?」
「レベルもかなり高い、つまりかだいを襲った奴等はかなりハイレベルな奴だと思って良い」
「傾国は13時からでしょう? どうなって居るの?」
「今は兎に角この城を防衛する事に全力を上げましょう。皆兎に角ありったけの元宝を使って兵を購入してください。今は一兵でも多く必要です」
「手分けして町中のショップへ行きましょう」
「ふむ、では俺はちょっと矢塔の方を見に行って来る!!」
「ザコさん危ないですよ!?」
「問題ない!」
謎の敵、それは運営ですら意図して居なかった者達だった。
「間違い有りません! ハッキング元特定しました!」
「何処だ!?」
「……ペンタゴンです!」
「米軍だと!? すぐに政府へ知らせなさい! 永田町経由でことの詳細を確認するのです!」
放逐少女サーバーへ、何と米軍からのハッキングがなされて居た。これはホワイトハウスですら捉えて居ない事だった。そしてこれは、アメリカと言う国が真っ二つになって居る事を示す。つまり軍事クーデターとでも言える内容になって居た。またこれは米国だけでは無い。日本を含む、世界中で、米国の影響下に有る西側の国で、同様な事が起きて居た。様々なサイバーテロが、軍によって起こされて居た。その影響を強く受けて居たのが銀行である。
「みずほ銀行でまたか!?」
「資金が抑えられました!」
「システムをダウンさせろ!」
「先日金融庁からの査察が入ったばかりです!」
「構わん!」
これは日本の銀行だけでは無く、世界中の凡ゆる銀行で同じ事が起きて居た。銀行は現在スイフトシステムと言う金融決済を使用している。これらが異常をきたしていたのだ。また、資金だけではなく、株価の暴落、仮想通貨の暴落など、明らかなサイバー戦争が世界中で、軍により国家に対して起こされて居たのだ。
株式会社内閣府 法人番号 2000012010019
小泉政権時代、郵政民営化が行われ、その裏では国民の知らない所でこの内閣府の株式会社化が行われて居た。郵政民営化は表のニュースであり、この事実から国民の目を逸らすカモフラージュであった。
これは内閣府だけでは無く、有りとあらゆる公的機関が法人化され、巧みに隠されて居るが、株式会社には株主が居る。その株主とは、ウォール凱の金融マフィア等である。この時に、日本は国民主権国家から、株式会社に変わり、株主の者へと政府が売られたのだ。つまりそれは、主権国家では無くなった事を意味する。
これは日本だけでは無く、世界中で行われて居た事である。西側国家はウォール凱へと主権が集約され、全てが彼等の支配下となった。またワシントンD.C.も同様に彼等の支配下にあり、その筆頭株主は、ロンドンシティである。つまり、英国に全ての権限が移譲された事を意味して居る。
これらクーデターは、米国に有る、NSA (国家安全保障局) により起こされて居た、実質上の軍事クーデターであった。国連を中心とした、腐り切った世界を根本から掃除する目的で行われており、そこに各国の軍隊の一部が同調した物だった。
エドワード スノーデン、彼はこの動きを加速させた。スノーデンは、ロシアにこの一連の動きへ参加を促して居たのだ。彼は米国を裏切ったのでは無く、NSAの指示で動いて居た。彼もまた、優秀なハッカーなのである。
軍の配備を急がせたリリィは、迫り来る謎の軍を矢塔から見て居た。明らかに異様なその軍は、凡そ放逐少女の軍とは思えない。着ている服は、明らかに現代の軍服であり、アーミーカラー。だが不思議と銃は持って居らず、盾とサーベル、片手剣、または巨大な騎士剣などを装備している。またこの世界には無い筈の、モーニングスター、メイスなど、明らかに別ゲーだろう!? と言われる様な装備をしている。更に厄介な事に、何と魔道杖まで装備している部隊が有る。これは明確に、魔法による攻撃が来る事を暗示して居た。
「冗談じゃ無いわ、反則でしょう!?」
「防げるのですか? 我々の装備で魔法を」
「わからないわ、だけどこの拠点を失う訳には行かない。兎に角、魔法と言っても、謀士と考えれば良い。あれって魔法みたいな物でしょう?」
「確かに、あれは魔法だと思って差し支え無いだろう」
「では手筈通り、私はこの正門、フジさんは西門、ヨウヘイさんは裏門、リリィは東門でそれぞれ指示を」
「わかりました」
「急ごう」
「軍が前進を始めました!」
「思ったより早いな! くそう! 急ごう」
謎の軍隊の動きは速かった。前進を開始したと思ったら、然程時間もかからず即座に城の周囲を包囲し、攻撃をかけて来た。またその軍は、一兵一兵の練度が異常に高く、放逐少女のキャラで言うならUR閃レベルの攻撃力が有った。
「矢を! 兎に角せいらんを焼き払って!」
「ダメです! せいらんは大量に水を含んで居る様で、火矢では引火しません!」
「そんな!?」
「せいらんその物を燃やせないのならば、梯子を燃やせば良いであろう!!」
「!? ザコさん…..そうだわ! 梯子に火矢を集中して! 大量に打てば水分は蒸発します! ザコさんありがとう! すみませんが他の門の様子を見て来て頂けませんか? 出来ればこの様なアドバイスも」
「良いであろう!! 任せておけ」
西門では、せいらんではなく、亀甲車とカタパルトが猛威を振るって居た。亀甲車とは言わば屋根の付いた破城槌で、破城槌とは巨大な木を城門に何人かでゴスゴスぶつけて開けようと言うあれだ。
亀甲車はあの破城槌を車に取り付け、台車で勢いよく動かして、城門にぶつけて開けようと言う物だ。そこに屋根を付ければ矢の的にならない。
またカタパルトとは、巨大投石機である。
だがここではフジが冷静に対処して居た。フジの能力は座敷童子である。座敷童子はバッファーとして特に優秀なキャラで有り、その中でもスキルで幸運を付与する事が出来た。
幸運とはクリティカル発生率と状態異常耐性を増加することができる有益状態だ。クリティカルが発生すれば火力を大きく上げることができる為、本来は強力な主力にかける事で、味方の火力を上げる事に使われるが、今回フジは、特に味方の弓隊と投石隊にばら撒いた。
「カタパルト自体は水分を多量に含んで居る為、蒸発熱を利用します。敵は熱くて近寄れなくなるので、火矢を中心に一点集中でカタパルトへ打ち込んでください。また石を装着するのに合わせてその兵を狙い撃ち! 投石部隊は亀甲車に集中攻撃を! 幸運のバフで会心率が上がっています。破壊出来る筈です!」
西門は安定した戦線が保たれて居た。ザコは続いてヨウヘイの居る裏門へと行った。
裏門でもせいらんが使われて居たが、何とヨウヘイは、持ち前のアウグストゥスの能力で、態と敵の攻撃を受け聖護援護状態になり、単身で片っ端からせいらんを叩き壊して居た。
「そう簡単に俺にダメージは与えられないぞ!」
ザコは思った、何ちゅう戦い方しとんねん!!
アウグスは一度倒されてからのゾンビ復活が強烈なのだ。パッシブスキルの正解の方向と、ゾンビ復活後のダイヤの王城が合わさる事により、無類の硬さ、つまり防御力を得る。更にこのダイヤの王城にはダメージ反射が有り、この事からアウグス自体が難攻不落と言うに相応しいキャラとなる。
ヨウヘイはこの状態に態と自ら持って行き、単身せいらんを叩き壊すと言う荒技に出たのだ。
そして最後にリリィの方へと足を運んだ。だがザコが付いた頃には全ての攻城兵器が既に壊されて居た。
「攻城兵器が壊れているな」
「ザコさん忘れました? 李広のスキル」
「成る程、リリィ君は攻城兵器に取っては完全なキラーとなるな!」
「そう言う事です、他は大丈夫そうですか?」
「問題無い様であった!」
李広は確かに攻城兵器のキラーとも言える存在だった。
スキル石稜白羽
出陣時、5ターンの間自身が「残影 聖護」状態になり、回避率が50%増加、受ダメージが40%減少、回避するたびに、受ダメージがさらに5%減少する。
つまり出陣時に李広を直ぐに倒す事はかなり難しい。
スキル炎の飛矢
残HP%が最も高い敵を8回集中攻撃し、毎回500%の物理ダメージを与え、さらに自身敏捷値×8のダメージが加算される。防御力と物理防御力を無視、更に会心攻撃可能。
毎回攻撃前、命中率と会心率が10%増加。会心攻撃が発生した場合、自身がそのダメージ100%のHPを回復。このスキル発動中、自身が撃破されないで必ずHPが最小1になる。
全ての攻撃後、4ターンの間、味方6名を「旭光 聖護」状態にさせる。
つまり、せいらんなどの攻城兵器に対して、これを目標とすれば、李広は確実に破壊出来る能力がある。せいらんからすれば、最悪の相性となる存在な訳だ。
「では林檎君の所へ報告に戻ろう!!」
「ザコさん、こちらは大丈夫です、出来ればあの子の所にいてあげてください」
「了解である!」
戦力的には戦力外通告真っ先なのだが、不思議とザコには皆を安心させる能力が有った。
ザコは林檎の元へ戻り、あらかた攻城兵器が破壊された事を報告した。
「良かった、これでひとまず城への侵入は回避出来ますね」
「うむ! ヨウヘイさんとフジさんに打って出る様に頼んだ方が良いのではないか? 城は君とリリィ君だけでどうにか対処できるであろう。他メンバーの戦力も有る」
「そうですね、ザコさん、ヨウヘイさんとフジさんに、騎馬隊500を率いて打って出るように伝えて来てくれますか?」
「了解である!」
粗方攻城兵器が破壊された事により、林檎は攻勢に転じる方針を取った。ザコはそれをヨウヘイとフジに伝え、ヨウヘイとフジは、即座に周囲の兵を集め、正門の前に集結させた。
「目標は敵本陣、それ以外は目をくれるな! 出陣だ!」
ヨウヘイの号令で、騎馬隊200が先ず怒涛の如く打って出た。
「我々はヨウヘイ隊の援護です、ヨウヘイ隊が本陣へ突入するのに背後を抑える役です! フジ隊出陣!」
フジ率いる騎馬隊300は、ヨウヘイ隊の後方支援と撹乱だ。フジ隊が出た後、再び門は硬く閉じられた。矢塔から見た本陣は、集結して居た小高い丘に布陣されている事がわかって居た。
ヨウヘイは真っ直ぐ一直線にその丘を目指して突入して行った。フジはその後方に少し離れて付き、ヨウヘイ隊の突入を防ごうと後方から追いかける敵を蹴散らして居た。
「見えたぞ! 敵本陣だ!! 突撃!」
だがヨウヘイが敵本陣に差し掛かった時、ヨウヘイはあり得ない物を見た。それは狩野永徳、つまり天下布武同盟のムールだった。ムールは今洛陽にいる筈、だが狩野永徳の衣装を纏ったムールがそこに居たのだ。
「どう言う事だ? 何故君がここに居て、宣戦もせずに虎牢館を攻めて居る? そしてあの兵は何だ!」
「…….貴方達の力を試させて頂きました、そしてどうやら合格の様ですですね、ここまで来れたのはあなた方が初めてです」
「何を言って居る? 意味がわからない」
「ここでは何ですね、兵を引きます、虎牢館でお話をしましょう。宣戦をして居ないので、私は盟主が許可すれば中に入れます。全軍撤退です、兵はこの場に待機」
「は! 全軍撤退!」
ヨウヘイは一応警戒しながらも、ムールを城まで案内した。あれだけ居た敵兵は、皆撤退してその場には居なかった。俊敏な鮮やかな撤退だった。
そして林檎に今までの事を話し、ムールを虎牢館へと招き入れたのだ。兵達は確かに襲わなかった。
「ムールさん、説明をお願い出来ますか? これは一体どう言う事なのでしょう」
「どこから話しましょうか? ……..そうですね、先ず私は母に、放逐少女の運営に携わる仕事をして居る人がいます。そして父は塾を経営して居る人です」
「おい! ちょっと待て、それは一体!」
「そして私は母から生まれた存在では有りません。私はとある方の遺伝子操作で造られた、クローンです」
「まさか、ベビーインキュベーター……..」
「詳しいですね、フジ霊鬼さん、そうです。私はその技術で造られた存在です。そして母の名は、川田 恭子、父の名は、川田 太一、私のコピー元、オリジナルの名は、川田 遥」
「ちょっと待ちなさい! 冗談で言ってるんじゃ……..」
「冗談で何故ゲーム内プレイヤーのリアルの事を知って居るんですか? 運営でなければこんなリアル情報知る訳ないでしょう? 運営でもここまで知る事は不可能ですよ? それに似てません? 私はるんさんに」
確かにそうだった。言われてみると、ムールの顔は、はるんを幼くした感じの顔だった。ここに、はるんのはクローンが居た、それは多くの者に衝撃を与えた。
体外受精で生まれた子供をかつて試験官ベイビーと呼んだ。だがそれは表向きの話で、実はクローンの実験をして居たと言うのが真相だった。そしてベビーインキュベーターとは、つまり人工子宮、それを試験官と呼んで居た。このムールは、その完全なる成功体の一人だったのだ。




