裏方の生き様
今日の二本目です
りょくが放逐少女と言うゲームを初めてすぐ、最初は然程大きな同盟に入るわけでは無く、傾国戦にやっと出れる程度の弱小同盟に居た。そこでりょくは、リアルを気にする者も居るが、特に気にする事も無く、リアルでの事を普通に皆に話して居た。
りょくの家は、親が運送業で、トラック30台程を持つ、とある大手運送会社の下請けであった。父親は一代でその運送会社を立ち上げてそこまでの規模にした。例えば日通やバンテックなどの大規模な運送会社と言うのは、何もそこが全てのトラックを所有しているのでは無く、こうした中小運送会社が下請けとして入っている、言わばコンビニなどと同様の、フランチャイズである。
だがコンビニなどとは違い、運送会社にはかなり厳しい決め事があり、それは過去の映画に大変影響された、運送業としては傍迷惑な物だった。
かつてトラック野郎と言う、菅原文太主演の映画が有った。映画としての完成度は高く、笑い有り、涙ありの物語であり、いつもマドンナにふられる役の菅原文太は、その当時やって居たヤクザ物、仁義なき戦いと合わせて一躍菅原文太を有名俳優に押し上げた大作だった。
所がこのトラック野郎と言う映画が、運送業と言う職業全体の印象を押し下げるのに何役も買って居た。そこに出て来るトラックは皆、デコトラと言って、所謂ピカピカにデコレーションしたトラックであり、排気音も独特で、車両法にどれも抵触する最悪のトラックだった。また歌麿会と言う、一部のならず者集団風のトラックチームがその映画の脇役を務めており、見た目は皆完全に風体の悪いチンピラ集団だった。また映画は車両法無視だけでは無く、道路交通法までも無視と言う、凡そあり得ない内容の物ばかりで、これが完全に運送業=ならず者集団と言う風評被害を齎した。
そこで運送業全体でこの風評被害を払拭すべく、大手はこぞってこのデコトラ排除、さらには全体を厳しくする方策を国土交通省と連携して打ち出した。その煽りをモロに運送業界全体が食らっていたのだ。
そんな中、りょくは自分が長距離トラックの運転手であり、家が運送業をやって居る事を放逐少女内で話して居たのだ。そこをトラック野郎さながらに、りょくをならず者と馬鹿にし、さらに父親までも馬鹿にしたのがラルクであり、そこでりょくとラルクはチャット内で大喧嘩をしたのだ。
勿論りょくもトラック野郎はみていたので、これはトラック業界がそう言う風にみられても仕方ない、そう言う気持ちも有る。だがラルクは常軌を逸していた。
りょくは子供の頃から社長件、配車係りと言う激務の両方を行う父の姿をいつも見ており、いつか自分も父の手伝いをしようと思い、父を尊敬して居た。
当然だが、トラックドライバーと言うのは馬鹿では務まらないし、また相当なセンスも要求される。特に配車係と言うのは、緻密な計算を元に、誰をどのルートで、どう荷を運ぶか、そう言うある意味軍師とも言える様な、戦略を要求される。またドライバーはその配車係の決めたルートにもし交通事故などの異変が起きた場合、即座に別ルートに切り替え、時間内に荷を確実に運ぶという即断が求められる。更に配車係は帰り荷と言う物までそのルートに組み込む。帰り荷と言うのは、荷物を運び、その帰りに現地で今度戻る時に積む荷物の事だ。
例えば東京から新潟までの荷物を運ぶとする、当然空で帰って来るのは勿体無い。そこで今度は新潟から東京又は神奈川などへ届ける荷物を現地から運ぶ訳だ。それを帰り荷と言う。つまりだ、行きの荷物を時間内に届けなければ、その帰り荷にも下手をすれば影響が出てしまう。これはその運送会社に取って、相当な信用喪失と言う大ダメージを食らう事になってしまう。
つまりトラック野郎の様に、笑い有り涙有りなどの様な事は有り得ないし、車両法無視、道交法無視などと言う馬鹿げた事など本来は絶対に無い世界なのだ。もっとシビアな世界である事は言うまでも無い。
確かにならず者が居ないわけではない、だがそれを言うならば、大なり小なりどの業界にも必ずそう言う者は居る。だがトラック野郎と言う映画は、それが全体であると言う印象を多くの者に持たせる影響力は充分な物だった。
そしてりょくはその事がきっかけで、前の同盟を脱退し、翡翠に定着したのだった。そしてりょくは、ラルクが最近天下布武に入った事を知って居た。また先日の会議でアフロはイケイケの筋肉は今回宣戦で仕掛けて来るだろうが、一食と天下は恐らく仕掛けて来ないのでは? と、漏らして居た。だがりょくには確信が有った。あのラルクがこの状況で仕掛けて来ない訳が無い、だからりょくはこのすうざんまでの行軍に名乗りを上げた。あの時の決着を付ける為に。
「どうしたりょく、随分と情けない奴だな? お前の力はそんな物か? 所詮はトラックの運転手、チンピラだったって事だな!」
「抜かせ、お前だってさっきから俺に大したダメージ与えられてないじゃないか」
「ならこいつはどうだ!!」
ラルクの能力は呂布、MR副将ではトップクラスの副将だった。
呂布のスキル、スゥィートな攻勢は
残HP%が最も低い敵を9回集中攻撃し、毎回600%の物理ダメージを与え、さらに自身筋力値×6のダメージが加算される。
そして任意の敵を撃破した場合、9回の攻撃後、敵5名を1回追加攻撃する。毎回攻撃前、敵のHPが50%より低い場合、自身がそのダメージ100%のHPを回復。自身が「無双」状態の場合、「無双」状態が1ターン多いごとに、最終ダメージが0.1倍増加、全ての攻撃後、4ターンの間、味方6名を「砥平(聖護)」状態にさせる。
更にパッシブスキルである、縁定スキルの天下無双は
出陣する時、4ターンの間自身が「無双」状態に入り、150%の基礎攻撃力が追加され、クリティカル発生確率が40%増加する。「無双」期間中、敵を撃殺するたびに、状態持続ターン数が1ターン増える。
ラルクはメインでこの呂布を主力とし、この呂布の能力を熟知して居た。そこでラルクは、付近の敵をこのスキルで倒す事で、自信が有利な状況を作り上げていたのだ。
無双状態の内に敵をスキルで倒し、バフをモリモリにし、メインの敵を蹂躙する。これがラルクの必勝戦法だ。
ラルクのスキルが挑発状態のりょくを捉えた。通常であれば、UR閃副将である、夏侯惇の能力では先ずMRの呂布に敵う筈は無い。
だがそれはりょくも良く知って居る。実はりょくは、この状態になるのを待っていた。それははるんが通り過ぎる瞬間である。
既にシャオリンから霜凪を付与されているりょくは、かなりダメージをカット出来ている。そしてはるんの能力、水鏡のスキルには、鶴の聴く音が有り、これは4ターンの間、味方6名を「霊光(聖護)」状態にさせる物だ。
霊光状態とは、知力値分の筋力ダメージダウン、自身の知力値によって敵の筋力ダメージを減少させることができるバフ状態のことで、知力値×2の筋力ダメージを減少させ、更に霊光(聖護)状態になった副将自身のパッシブスキル及びその他有益/聖護状態と重ねがけすることができる。
謀士と言うのは知力値がそのまま攻撃力アップに繋がる為、はるんは当然膨大に知力を上げて居る。この霊光聖護をかけられれば、どれだけ有益状態を保って居ようが、ラルクの攻撃力はほとんど無くなるに等しくなる。更にシャオリンの霜凪が付与されて居るので、どれだけ強い攻撃も、りょくには涼風に等しくなる。所がりょくの能力反射はそうは行かない。確かにりょくには涼風に等しい攻撃だが、ラルクは強力な一撃を放って居る。
りょくはスキルによってダメージを減少させて居るだけで、受けて居るダメージは、実はラルクの強烈な攻撃なのだ。つまりりょくのダメージ反射は、ラルクが出した本来の攻撃の30%反射と言う事になる。
りょくはこのタイミングを待っていた。アフロに与えられた時間内で、尚且つはるんが自分に聖護霊光を付与してくれるタイミング、ここが唯一りょくがラルクを倒せるタイミングだと、りょくは最初からこれを待っていた。
これは呂布と言うキャラを熟知しながら、更に夏侯惇と言うあまり目立たない、地味なキャラも熟知しているりょくならではの作戦だった。
「りょくさん!」
「はるんさん! 待って居た!」
はるんがりょくに聖護霊光を付与した。そこに挑発状態のりょくへ、バフ盛り盛りのラルクが攻撃を仕掛ける。
「来たな! お前の負けだ! ラルク!」
「血迷ったか! 死ぬのはお前だりょく!」
りょくは背中の黒いマントでラルクの攻撃を防ぐ、それはりょくのスキルダメージ反射だ。
「ぐは! 何!? 何だ?」
強烈な攻撃を食らった筈のりょくが前に立ち、ラルクは猛烈な攻撃を受け、血が吹き出し倒れて居た。
「まさか? ダメージ反射か!?」
「そうだ、お前は自分の出した攻撃で自ら自爆したんだよ。お前は前からそうだ。呂布は確かに強い、誰もが欲しがりメイン主力で使うキャラだ。お前はその能力に依存し過ぎた。
俺はこの夏侯惇と言うキャラが好きだ。それは地味なキャラでありながら、育てれば味方の援護を裏方でしっかりとしてくれる。夏侯惇はそう言うキャラだ。花形であるアウグスや呂布の様な、攻撃力重視のキャラと違い、相手の攻撃を一身に集め、味方を裏からサポートする、俺はそう言う孤高のスピリットを好む。
お前はかつて俺の職業を馬鹿にした。だが今はどうだ? アドブルーの枯渇により、多くのトラックが今までの様に走れなくなり、物流は歯抜け状態、物価は上昇し、日本の物流は壊滅的ダメージを受けている。どの様な物もそうだ、花形は裏方が居てこそその能力を遺憾無く発揮出来る。お前はそう言う所に目が行って居ない、それがお前の敗因だ」
アドブルー
ディーゼルエンジンのPM (黒煙)を低減する為に、直噴(シリンダー内に直接燃料を噴射するシステム)と言う、高温で燃焼するシステムをディーゼルエンジンで使用した。丁度東京都知事を石原慎太郎が務めて居た時、ペットボトルに空気を入れ、これを吸って居るんだよ? とニュースでやって居たのを皆覚えているだろう。あれでディーゼルエンジンの排気ガスから出る黒煙が社会問題になった。
そこで直噴システムが使用され、確かにPMは減った、だが今度高温で燃焼すると、NO x (窒素酸化物)が出る。その窒素酸化物を窒素と水に還元する事が出来る物がアドブルー (尿素水)である。所がそのアドブルーが今、生産が様々な理由で追い付かず、ディーゼルエンジン車が走れなくなり、物流に大きな被害を与えて居る。ここで初めて皆が、トラック業界と言う物流システムが、日本の裏方であり、根本から日本と言う国家を支えて居た事に気が付いた。
りょくはその場を立ち去ろうとする、そして当然ラルクはりょくにそれを言う。
「とどめを刺さないのかよ?」
「知るか! 軍師の命令ははるんさんが抜ける道を作る事。お前なんぞに構って撤退が遅れれば、それこそ俺のスピリットに逆らう事になる。俺は裏方何だ、裏方には裏方の意地がある」
「くそう! 格好つけやがって! だから俺はテメエが大嫌い何だよ!!」
「初めて意見が合ったな、俺もお前が大嫌いだ」
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シャオリン達が洛陽に発った頃、虎牢関では異変が起きて居た。虎牢館は宣戦されて居ないので、ここは本来平和な筈だった。
「敵襲ですって? どう言う事? 虎牢館は宣戦されて居ない筈よ?」
「どうしたのリリィ?」
「物見から報告で、敵らしき軍凡そ3000程がこちらに向かっているらしいの」
「どう言う事? ここは宣戦されて居ないのよ?」
「わからないわ、兎に角主だった者を集めましょう」
そしてすぐに緊急招集がかけられ、ヨウヘイ、フジ霊鬼などのメンバーが集められた。
「何処の軍かわかるのですか?」
「まだわからないわ、遠くの小高い丘に集結しているのが物見で見えただけらしいから」
「敵か味方かわからないのでは、まだどう対処すれば良いのかわかりません」
「……ただ敵である事は確かな様だ」
「何故わかるのですか?」
「攻城兵器が見えたと報告が有り、俺も物見から確認している。俺は三国志の時代の攻城兵器など、現物は見た事は無いが、あれはアニメなどで見た事が有る、井闌車その物だ。城を攻める訳でもないのにあんな物は必要ないだろう」
「兎に角今この虎牢館を失う訳には行かないわ! 伝令! 矢塔の弓兵は火矢に持ち替えて攻城兵器を優先して潰す様に! 城への城門は死守、絶対に敵兵を一兵たりとも入れないで!」
「リリィ君」
「ザコさん!? 今この城に攻城兵器を持った敵が近づいています!」
「それはさっきから聞いておる! だがその敵兵が今布陣を引いてる位置、何か気にならんのか!」
「え!?……..」
「待てよ….そうだ、大切な事を忘れて居た! モニター室に行くぞ!」
ザコが示した敵がいる位置、それはどこか。




