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ロボと日記と終末世界  作者: 空戦型


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十一月七日~十日

 十一月七日


 昨日の場所で水や食べられるものを一通り探しながら午前を過ごして移動を開始したとき、火事で燃え尽きた地域を見かけた。

 落雷か戦闘か、或いはもっと別の理由で燃えたのかも知れないが、実際のところは不明だ。

 テレビで山火事のニュースを見てたときは何でさっさと消火しないのかと疑問に思っていたが、実際に燃え朽ちた木々を見ると「確かに無理だろうな」と実感した。燃えた範囲の広さを見るに、いくらガイストを所持していても消火用装備でもない限りは防ぐのは難しいと感じた。


 火事による焼失。

 全く考えなかった訳ではない。

 二年間の経験の中で、何度か火事によって燃え尽きた町を見たことはある。なんならガイストで戦闘中にプロパンガスのタンクに流れ弾を当てて爆発させ、それが火事になったこともある。でも、その頃はとにかく生きるのに必死でゆっくり物事を分析する余裕がなかった。


 今は違う。火事がどれだけこの世界において危険なのか、その実感の重みは今の方が遙かに感じられる。

 俺たち生存者が未だに食料にありつけるのは、この世界は人が消えただけで家屋や物資はそのまま残されているからだ。勿論、二年も経てばとても食べられなくなった代物も多い。物資を漁るほど蛆虫とは友達になっていって、今は食いものだとさえ感じているが、火事はそんな蛆虫諸共全てを焼き尽くしてしまう。


 この世界には消防隊も自衛隊もない。ヤエヤマ解放戦線も自分たちに差し迫った危機が無い限りは力を割くと思えない。自然は、世界は、人や文明が存在した痕跡に何ら想いを馳せることもなく、これからもただ自然現象の中に飲み込んでいくのだろう。


 残存食料、十八日(うち完全食料四日)。

 水、十二日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月八日


 ヤエヤマ解放戦線の偵察部隊らしきものと何度か接触しかけた。

 A級ガイスト『ロックハート』もいてかなりびびったが、装備は大したことが無く、偵察に適した装備もなかったのが幸いして乗り切れた。多分だが、ヤエヤマの後方拠点が近いものの侵攻作戦で主要な武器を持っていかれて装備の補給が間に合っていないと思われる。


 スズハラから聞いた話では、滋賀県は琵琶湖の付近にヤエヤマの後方拠点があるらしい。水が豊富で魚も安定して採れる訳だから、拠点にしない訳もないかと納得する。コンテナを横倒しにして簡易的な家を設営するやり方が発案されて以降、日々生活圏が拡大しているという。


 日記を見返してみると俺は約一年前の7月16日に滋賀県辺りに行ったことがあるのだが、ヤエヤマ解放戦線が纏まった戦力になったのはここ一年ほどのことらしいので当時はまだ拠点を構えていなかったのだろう。

 しかも、ヤエヤマ解放戦線の侵攻作戦が大失敗して間もないので警戒も相当だろう。これ以上の南下は諦めた方がいいのかもしれない。採掘型シルエットがあればまだ何とかなったかもしれないと考えてしまったものの、逆の可能性も全然あると言い聞かせて自分の説得に成功した。俺えらい。


 しかし、今年の冬を乗り越えるプランは未だに練りきれていない。俺えらくない。

 自分への罰としてクソまずい完全食料を食べた。


 残存食料、十七日(うち完全食料三日)。

 水、十一日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月九日


 コンテナを幾つか見つけたが、A級で開かないものもありめぼしいものはなし。

 ドローンを幾つか見つけはしたのだが、なんとスーサイドドローンだ。

 スーサイドとは自殺、すなわち特攻ドローンである。

 ないよりはいいが、はっきり言ってハズレだ。


 もう少し具体的に言うと、スーサイドドローンは敵と認識されるものを見つけると自動で勝手に突っ込んで爆発することに特化したドローンだ。一応はガイストに映像を送ったり遠隔操作もできるし、コストで言えば他のドローン達より安いのだが……なにぶん自爆特攻させるためにばら撒くのが使い方なのでお世辞にも操作性はよろしくないし、遠隔操作範囲もステルス性もレーダー機能も稼働時間も他ドローンより劣る。


 代わりに積載されているのがガイスト用グレネードと同等威力の爆薬だ。

 普通のドローンなら撃墜されてもせいぜい小爆発だが、スーサイドドローンは大爆発する。それはもう大目立ちするし、爆発した時点で近くに操縦者がいるとバレる。先述の通り遠隔操作できる範囲が狭いし、偶発的遭遇でも爆発が起きてしまえば相手も敵襲だと攻撃的になる。つまり、逃げるのに不都合しかない。


 思い出すのは以前の手痛い失敗だ。

 うっかり遠隔操作範囲の外に出てしまったスーサイドドローンが勝手に動き出し、本来の機能である「勝手に追尾して自爆」を実行。その爆音でターミネイターに居場所がバレて逃げたら、逃げた先にもターミネイターが……と、大惨事だった。

 そういえばカラステングに初めて遭遇したのもあのときだったか。

 忌々しいクソ天狗、稀に見かける飛行型ターミネイターだ。本当に滅多に見かけないが、何か法則性でもあるのだろうか。


 富山県付近にはターミネイターのたまり場があった。

 もしかしたら特殊なターミネイターには何かしらの法則性があるかもしれない。

 尤も、俺の日記に記されたデータじゃ殆ど何も分からないが……。


 それはそれとして、道外れにアウトドアショップを発見した。

 色々と興味深いものもあったがそれはさておき、食料以外の品が結構残っていた。

 食料がなくてガッカリする気持ちはなくはないが、冬を越えようと真面目に考えた際に役立ちそうなものはいろいろある。去年は残存する食料を漁りに漁って生き延びたが、今年はひと味違う越冬が出来るかも知れない。

 想像を膨らませるには明日にして、今日は寝よう。


 残存食料、十六日(うち完全食料三日)。

 水、十日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月十日


 サバイバルシェルター計画概要。

 早い話が、冬を乗り切るシェルターの設営だ。


 ガイストのコクピットは確かに上質なテント代わりにはなるが、幾らなんでも来年の春になるまであんな狭い場所で延々と寝ていては健康を害する。肉体的にもそうだが、経験則で言えば精神もキツイ。この娯楽の極めて少ない世界では退屈が人を殺しかねない。


 なので、ただ寝るだけでなく遊び心が必要だ。

 プラス、冬を乗り切る為に人一人が安定してサバイバル生活を送れる環境も。

 夏の秘密基地計画がダメだったのは俺が未だに文明にぬくぬく暖められて育った都会っ子の感覚が抜けなかったからだ。今回はもっと徹底的に秘密基地を作る。すなわちそれがサバイバルシェルターというわけだ。


 ターミネイターにさえ気をつければ、冬は他の危険な人間達も活動範囲を縮小している筈である。二年間ほぼ独力で生き抜いた俺の経験と本で得たサバイバル知識を総動員すれば、今度こそ作れる筈だ。

 というわけで、当面は冬を乗り切ることに注力してものを集める。と言っても、どうしても運が絡むことなので必要なものが充分手に入らなかった場合は残念ながら断念ということになる訳だが……。


 いや、今そういうネガティブさは必要ない。

 やると決めたからにはベストを尽くす、それだけだ。


 残存食料、十五日(うち完全食料三日)。

 水、九日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。

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