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ロボと日記と終末世界  作者: 空戦型


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十一月二日~六日

 十一月二日


 銀杏の簡単な調理法を知っているだろうか。

 それは、封筒みたいな紙の袋に放り込んでレンジでチンだ。

 文明崩壊後に知ったが、電気がないので使えない。

 正確には出来ないことはない。ガイストのコクピットから多目的可変コードを取り出してコンセントと接続し、直接エネルギー供給をすればレンジを含め家電は動かせる。


 俺はやらない。

 何故なら、ガイストを寝そべらせてコクピットを開け放つというとんでもなく無防備な姿勢じゃないと使えないのが怖すぎるからだ。一時期やっていたこともあるのだが、この方法は使用後の後片付けにも手間がかかるし、家電は水食料よりストレージ容量を食う。メリットとデメリットを秤にかけた結果、俺はレンジを放り投げた。


 実際問題、ガイスト全損で荷物がパァになった際にレンジ無しでの生活が出来ないとお話にならないのがこの世界なので、今も判断自体は正解だったと思う。ただ、ヤエヤマやシャングリアは使ってるんじゃないかと思うと羨ましい。


 話を戻し、銀杏をゲットした。ついでに野草類もちまちまと。

 俺にとってはサバイバル初心者時代に腹痛を起こさせた因縁の食料だが、食べ過ぎさえしなければ栄養価は高い。加工の際の臭さについてはキーグローブの機能で遮断出来るし、それなりに保存が利く。食料に余裕があるとは言え、節約はした方が良いだろう。


 残存食料、二五日(うち完全食料四日)。

 水、十四日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月三日


 通りすがりの町のど真ん中に、まるで町全てを飲み込んでいくのではないかと思えるほどの大穴があった。推定でも100メートルはゆうに超えていた。


 最初はガイストの戦闘痕かと思ったが、どうも違う。地下鉄が通っているような都市ではないので前に見た地下鉄崩落とも違う。ガス管か水道管の老朽化によって空いた穴があれよあれよという間に広がったとかだろうか。

 そういえば何年も前にテレビでそういう話題が取り沙汰されていたことがあったが、まさか特集を組んだテレビ局もこういう形で実現するとは思っていなかっただろう。

 加速度的に滅んでいく生活圏の退廃的な光景は、来年にはもっと酷い有様になるだろう。

 一体いつまでコンクリートの足場を踏みしめられるのか。

 当然のように平らに舗装されていた足場が、地球という環境の中では驚くほどちっぽけであったことを思い知らされる。


 探索をしたい所だったが、ターミネイターがうろついているのが散見されたので迂回してスルーした。


 得られるものはなかったが、久々にかなり長距離を移動出来たのではないだろうか。ホルニッセの跳躍と滑空で結構な距離を稼いだと思う。滑空中の襲撃のみ怖いところだが、自在に飛べたところでこの間狙撃されたばかりなのである程度は仕方がないと割り切る。


 しかし、欲を言えばやはりAランクのキーグローブは欲しい。

 幾ら機動力が高まっても、所詮C級はC級止まりなのだから。


 残存食料、二四日(うち完全食料四日)。

 水、十四日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月四日


 敵を作らないことはやはり生きていく上で重要であることを再認識した。


 ヤエヤマ解放戦線A-5部隊との再会だ。

 とはいえ、感動的とまではいかなかった。

 理由は、A-5部隊が半壊状態だったからだ。


 たまたまオープン回線で聞き覚えのある声がして、暫く黙って盗み聞きしていたら食料が尽きているようだったから俺の方から声をかけた。そうして出くわした彼らのガイストはボロボロだった。最低限の損傷の修復くらいはしているが、見るからに疲弊し、激戦の後だったことが覗えた。


 食料五日分と周囲の食えるものをかき集めて盛大にカレーパーティを催した。これだけの食料を他人に振る舞うのは内心キツかったが、それくらい彼らが見てられなかったというのもある。一度戦場を共にした皆の顔には、希望もなく生気もなかった。後で事情を聞くにそれも無理らしからぬことだろう。


 あり合わせの食料と、道端にぽつんとあった中華料理天から拝借した中華鍋で煮込んだカレーを無心にがっつく彼らはその半数が嗚咽を漏らしながらで、冷静そうに見えた面子も腹が膨れて空を見上げながら泣いていた。

 多分、顔が見えない他の部隊員は……訊くのも野暮だし、怖いからやめておいた。


 隊長のスズハラからも色々な情報を得られたが、それを書き留める気分ではない。


 残存食料、十八日(うち完全食料四日)。

 水、十日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月五日


 昨日の記憶が鮮明なうちに書き留めておく。

 正確な時刻は不明だが、話を聞いた感じではつい数日前のこと――ヤエヤマ解放戦線はシャングリアと支配権を争う為に決戦に挑んだらしい。

 進軍した地域は元々両勢力にとって偵察不足の空白地帯だったが、それ故に前々から手つかずの『嘆きの塔』が無数存在しているのではと目され、どちらが先に辿り着くかを競っていた。ヤエヤマ解放戦線は大戦力で残りの地域を一気に占領し、勢いのままにシャングリアに大打撃を与える腹づもりだったらしい。


 俺の予想通り、ヤエヤマ解放戦線は巨大ターミネイターを改造して鋳造された巨大陸上戦艦を投入し、他にも自衛以外で回せる全勢力をかき集めた。どうやらスーパーホエール以外にもいくつかの巨大陸上戦艦を用意していたらしいヤエヤマは最初こそまばらな敵機やターミネイターを圧倒して快進撃を続けていたという。


 しかし、その地域に解放戦線が乗り込んできたことを遅ればせながら知ったシャングリアは得意の機甲天使隊を総動員し、空の機動力を活かしてなりふり構わず戦力を逐次投入。彼らはヤエヤマの空中戦力を集中的に狙いつつ空からミサイルや長距離砲で地上を攻撃し、空の優位を確保。奇襲の優位性は間もなく失われ、両者は壮絶な全面衝突に発展した。


 それでも、ヤエヤマは巨大陸上戦艦がある分少しばかり優位だったという。

 俺からすればどっちが優位でも殺し合いなので最悪な話だったのだが、更なる最悪で地獄は上書きされる。


 戦場に、第三勢力として無数のターミネイトDが乱入してきたのだ。


 爆炎、閃光、悲鳴、撤退命令――殿しんがりに残るヤエヤマのブレイヴァン。

 そこからは、もはやスズハラも周囲の状況を気にする余裕はなくなった。

 とにかく周囲の部下に撤退を呼びかけながら戦場を離脱し、猛追してくるターミネイターや一部のターミネイトDを迎撃しながら敵も味方も数を減らしていき、シャングリラの支配地域でもターミネイターの追撃の可能性も低い山の向こうを死に物狂いで目指した。

 その果てに俺に会ってのカレーパーティだったそうだ。


 ヤエヤマ解放戦線もシャングリアも、一応ターミネイトDの情報はあったものの遭遇者の少なさから重視されていなかったという。というか、ターミネイトDって俺がつけた名前がそのまま使われてたのに内心ビックリした。てことは、前に手助けしてやったときに俺が説明した内容がそのまま伝わったのか。連中、あのあと生きて帰ったんだな。

 いかん、脱線した。


 重要なのは、その地域が誰も知らない超ターミネイター密集地帯であったということだ。

 何故そんな場所にターミネイターが密集していたのかと疑問に思ったが、解放戦線の生き残りの一人が推察を口にしたことで納得した。


 彼らが激突したのは富山県付近。

 富山とその近隣のいくつかの県は、冬の間、日本で最も落雷が多発する地域らしい。

 落雷あるところにターミネイターは集まってオベリスクを形成し、そこからターミネイトDが産まれ出でる。誰も知らないその土地には、俺たちの想像を絶する数の悪魔達が生まれ出でていたのだ。


 偵察不足、ターミネイトDへの認識不足、『嘆きの塔』確保への焦り、そして進軍ルートが偶然にも落雷多発地帯とギリギリで被らなかったために夥しいターミネイター達に気付かなかったこと。

 解放戦線内部でもこの作戦は性急すぎると異論の声が上がっていたが、主戦派が押しきった末に発生した……これは人災だ。


 だからって、俺が口出し出来る話でもない。

 ただ悲しくて、相争って欲しくないと思うだけだ。


 彼らには十月末頃に俺が見つけた、まだ漁られてない一帯の座標を教えておいた。

 でなければ多分彼らは拠点に辿り着く前に飢え死にしそうだったからだ。


 残存食料、十八日(うち完全食料四日)。

 水、十日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。





 十一月六日


 終末世界前は観光地というのは行けばそれなりに楽しいものだったが、今現在はそうでもない。建物や人の多い観光地は大体が生存者に漁られるか既に食べ物が腐りきっているし、風景が自慢の場所は管理が行き届かず荒れ放題な上に食べ物もない。


 季節の風景として素晴らしい場所ならせめて見応えはあるが、季節的にそんなでもない。


 雑草の隙間から辛うじて見える「遺産」の二文字からして本来は大した価値があるのだろうが、今はただ虚しいだけだ。おまけに俺にはそこまで深い教養が無いので、この古臭い建物群に一体なんの価値があるのか分からない。木造建築でかやぶき屋根だというのは分かるが、流石に建築知識はゼロだ。


 それでも、いつかは自分で家を建てなければならない時が来るだろう。

 そのときにはより古い建築物の方が参考になるかも知れないと思い、軽くメモしておくことにした。


(以下、上手いとは言えない建物の骨組みや土台、かやぶき屋根の特徴のスケッチがいくつか書き込まれている)


 残存食料、十八日(うち完全食料四日)。

 水、十二日。

 ハンドガン残弾十二発。

 キーグローブC所持。


 ヘビが建物内に住んでたので食べさせて貰った。

 水もちょっと補充に成功。

 意外と悪くないのかこの場所?

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― 新着の感想 ―
巨大陸上戦艦のとこで「うわぁ」と思いましたが、無数のターミネーターDが出てきて「うわぁ……」となりました。 そら無理よ。 終末世界の中でもDは加速度的にヤバい要素ですが、どうすんすかねアレ。
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