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第6話 『【悲報】伊達政宗の母上、ツンデレすぎて主人公の仕様書(歴史知識)が崩壊する

この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。本日は解釈違いがある方がいらっしゃるかもしれないので、嫌な方はまわれ右してください。

城下散策から戻り、すっかり前を向くようになった梵天丸様。

だが、米沢城の奥深く――本丸へ挨拶に向かったその先で、俺たちは凛とした空気を纏う女性と対面した。

梵天丸様の実の母親であり、最上家から嫁いできた美しき鬼蓮華――義姫よしひめ様だ。

(歴史の知識通りなら、義姫様は片目を失った梵天丸様を忌み嫌い、弟の小次郎様ばかりを可愛がって、最終的には毒殺しようとする毒親……。俺が命に代えても我が主君おしを庇わなければ……ッ!)

俺が「守護神」として全身の警戒メーターをMAXに上げた、その時だった。


「……遅い」


義姫様はピシャリと扇子を鳴らし、冷ややかな視線を梵天丸様に向けた。

 

「また部屋に引きこもっていたのですか、梵天丸。片目を失った程度でいつまでも塞ぎ込んで……伊達の跡取りがそのような軟弱でどうします」


「う、母上……」


身を縮こまらせる梵天丸様。

よし、来た! 予想通りの冷遇! 俺の出番だ!!

俺はすっと梵天丸様の前に立ち塞がり、前世の社畜スキルで鍛え上げた一切目の笑っていない完璧な営業スマイルを貼り付けた。


「――失礼いたします、義姫様。我が主君・梵天丸様は塞ぎ込んでなどおられません。本日も城下の視察をなさり、民の暮らしを慈しまれておられたのです。あのお方の内に秘められた輝きを『軟弱』などと評されるのは、少々先見の明に欠けるのでは……」


よし、完璧な防御&慇懃無礼な反撃!

……と思いきや。


「は? 何を言っているのです、この小姓は」


義姫様は眉をひそめ、心底呆れたように溜め息をついた。


「誰が『軟弱』と言いましたか。『片目くらいでいつまでもメソメソするな、お前はもっと強い子だろう』と言っているのです。……それから、城下へ出たのならなぜ私に土産の一品もないのですか。昔は『母上、お花です』と摘んできてくれたというのに……」


「……え?」


俺の脳内仕様書が、ガタガタと音を立てて崩れ去った。

(待て待て待て! なんだその『昔は可愛かったのに最近冷たくて寂しい反抗期の息子に拗ねてるおかん』みたいなニュアンスは!? 毒親じゃなくて、ただの不器用な激重ツンデレ親バカか!?)

よく見れば、義姫様の手元には、梵天丸様が幼少期に使っていたおもちゃや、丁寧に手入れされた小さな着物が大切そうに飾られている。

さらによく観察すると――義姫様の視線は、梵天丸様の「右目」ではなく、彼が履いている「薄汚れた草履」に注がれていた。


「……景綱と言いましたね。お前は守役でありながら、梵天丸にそのような履き古した草履を履かせているのですか。足元を冷やしたらどうするのです。……ほら、受け取りなさい」


義姫様がパンパンと手を叩くと、侍女が極上の絹で縫われた「特製の温かい足袋と頑丈な草履」をうやむやと運んできた。サイズも今の梵天丸様にピッタリの寸法だ。


「べ、別に梵天丸のために誂えたわけではありませんよ! たまたま余っていたから与えるだけです!勘違いしないでちょうだい!」


「……母上?」


梵天丸様がぽかんと目を丸くする。

(クーデレか!? 昭和のツンデレおかんか!? 毒殺どころか、我が子の健康と成長を裏でミリ単位で把握して心配しまくってる大炎上レベルの親バカじゃねえか!!)

前世の偏ったWebの知識(旧説)を鵜呑みにしていた俺は、あまりの「解釈違い(嬉しい誤算)」に脳汁が逆流しそうになった。


「な、何ですかその目は! 私は伊達と最上の架け橋! 甘い顔などしません! ……おい景綱! 梵天丸がまたおにぎりばかり食べて栄養が偏らないよう、ちゃんと野菜も食べさせなさい! 良いですねッ!」


「は、はいッ! 仰る通りにございます義姫様ッ!」


思わず体育会系の良い返事をしてしまう俺。

義姫様は「ふん!」と顔を背けると、耳まで真っ赤にしてバサリと衣を翻し、奥の部屋へと去っていった。

残されたのは、新しくて温かい足袋を抱えて、嬉しそうに鼻をすする梵天丸様と、膝から崩れ落ちそうになっている俺だった。


「……景綱。母上、俺のこと……嫌いじゃなかったのかな」


「嫌いなわけがありませんよ、梵天丸様……! あのお方は……あのお方は、あなたへの愛が重すぎて素直になれないだけの、極上のクーデレお母上です……ッ!」


(よし……! 歴史の悲劇(母による毒殺ルート)は、そもそも最初から存在しなかった! あるのはただの『愛のすれ違い』だけだ! だったら俺のやるべきことは一つ……我が主君と義姫様の『親子関係円満プロデュース』だ!!!)

主君への愛だけでなく、義姫様の不器用すぎる母性にも脳髄を焼かれた景綱。

「伊達家の家庭内バグ」は、景綱の手によって最高に温かいハッピーエンドへと書き換えられようとしていた。

















【システムメッセージ】

『解釈違い(義姫様の激重ツンデレ愛)』を発見しました!

※家庭内環境が『全肯定・和気あいあい』へとアップデートされました!

ご視聴いただきありがとうございました。



参考までに

【義姫(保春院)の新説・母愛説に関する研究】

・遠藤ゆり子『戦国時代の母と子――伊達政宗と母保春院』(吉川弘文館)

・遠藤ゆり子編『伊達政宗と戦国時代の仙台』(吉川弘文館)

・片桐繁雄『最上義光と伊達政宗』(みちのく書房)

※従来の「毒殺未遂・悪女説」に対する史料批判および、政宗と義姫(保春院)の間に交わされた書状等に基づく最新の母子関係再評価(愛憎・ツンデレ解釈のベース)として参照。


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