第四話 最強の知育玩具(兵器)を開発せよ! 景綱のコストカット大作戦
「おにぎり、成実、宗実……。外堀は埋まった。だが、まだ決定的なピースが足りない」
米沢城の私邸で、俺は大量の木材と設計図を前に、鋭い目を光らせていた。
脳内仕様書(歴史知識)によれば、我が主君・梵天丸様は間もなく病を患い、右目の視力を失われる。部屋に閉じこもり、世界に絶望してしまうその暗黒の期間……ただでさえ辛いその時間を、少しでも忘れられる
「究極のエンタメ」
が必要不可欠だ。
(あのお方はのちに名城『仙台城』を築く建築マニア。ならば、部屋の中で指先を動かして城を組み立てる『立体木製からくり城パズル』しかねえ……!)
だが、ただの知育玩具で終わらせるつもりは毛頭ない。
俺の前世はプランナーだ。やるからには、この玩具開発そのものを「将来の戦(インフラ・兵糧確保)」の実験場にしてやる。
「宗実殿少しいいですか?米沢の職人方を集めてきてください。コンペティション(価格交渉)を始めましょう」
「こんぺ……? は、はいッ!」
俺は宗実を連れ、城下の名だたる木工職人や商人を一堂に集めた。
そして、設計図をドンと机に叩きつける。
「これより、我が伊達家の最高機密玩具のパーツ発注を始めます。条件は一つ。この図面にあるすべての凹凸、ハメ込み部分のサイズを『一寸五分(約4.5cm)』の共通規格で統一して量産してください」
「な、何ですかその無茶な注文は! そんな精巧なもの、職人の手仕事じゃ割に合いやせん!」
商人が顔をしかめる。だが、俺は前世で鍛え上げた圧の強いビジネススマイルを浮かべた。
「割に合わせるのがあなたがたの仕事です。規格を統一すれば、一度型を作れば誰でも量産できます。その代わり、今後3年で数万単位の定期発注を約束しましょう。……ただし、バルク買い(大量発注)です。単価は通常の4割引き(限界値切り)で手を打ってください。嫌なら隣の町の新田家にこの案件を持ち込みましょうか?」
「よ、4割引きぃ!? 景綱様、あんた鬼か! ……くそっ、分かりましたよ、やりゃあいいんでしょ!」
商人を完全にロジックで叩き伏せ、コストカットに成功。
この「パーツの規格化(ネジや部品のサイズを揃える技術)」は、将来、伊達軍が
「大量の矢や鉄砲の弾を、安く高速で現地調達する」ための軍事改革
にそのまま繋がる、エグい伏線である。
こうして安く買い叩いた精巧なパーツを、宗実たちプロデューサー・チームの道場へ持ち込んだ。
「よし、組み立てましょう。しかしこれは、ただのパズルではありません。『戦のシミュレーション(兵棋演習)』の盤面でもあります!」
城パズルの土台には、兵糧の備蓄量や、進軍ルートの障害物が仕込まれており、正しい戦略の手順を踏まないとお城が完成しない仕様になっていた。
「ちょっと宗実殿! そこの隠し通路のギミック、連動が甘いです! あのお方が『ここに伏兵を置けば勝てる!』と閃かれた瞬間に、からくりが滑らかに動かなかったらどうなるかわかってるんですか! 万死に値しますよ!」
「ひ、ひえぇ! 削ります! 梵天丸様の脳汁のために、命がけでヤスリがけしますッ!」
俺の放つ凄まじい覇気と激重な愛に気圧され、宗実たちは涙目でカンナを動かす。
だが、出来上がったおもちゃは、大人(プロの武士)である彼らですら
「これ、めちゃくちゃ面白くねえか!?」
「兵糧の計算を間違えると天守閣が建たねえ!」
と、交代で夢中になって遊ぶほどのクオリティに仕上がった。
俺は暗闇の中で不敵に微笑む。
(よし。引きこもり対策、建築マニアへの布石、戦術脳の育成、そして商人の調教。すべてが完璧に噛み合った!)
片目を失い、世界に絶望しかけた我が主君の手元に、この世で最も優しくて、最も冷徹な「未来の兵器(知育玩具)」が、出会いの3年前、早くも完成を迎えていた。
【システムメッセージ】
『引きこもり対策用・立体からくり城パズル(戦略シミュレーション版)』を開発しました!
※主君が引きこもっている間に、出会った瞬間の「初期好感度」および「将来の軍事生産力」の上昇バフがセットされました。
※米沢の商人との「値切り交渉スキル」が LV.5 に上昇しました。




