第三話 仕込みは3年前から。未来の優秀な実務派(白石宗実)を先行ゲットせよ
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「時宗丸(成実)様の胃袋とメンタルのセーブデータは確保しました。……ですが、まだ足りませんね」
大類城からの帰り道、俺は馬の背に揺られながら、脳内の仕様書(歴史知識)を猛スピードで更新していた。
成実という「生涯の相棒」のフラグは建てた。しかし、あのお方が背負う伊達家の未来はあまりにも重く、過酷。俺一人の手札や、成実という個人だけの力では、どうしてもカバーしきれない内政の泥臭いコスト(実務)や、戦の盤面が必ずやってくる。
なにより、俺はあのお方より10歳年上で、そして先に死ぬ。
(俺が死んだ後、成実一人にすべてを背負わせるわけにはいきません。俺がいなくなった後の世界でも、システムとして、組織としてあのお方を完璧にバックアップし、全肯定し続ける『プロデューサー・チーム』が絶対に必要不可欠です……!)
立ち上げるなら今、このタイミングだ。3年後、梵天丸様が表舞台に立たれた瞬間に、全自動であのお方を全肯定して爆速で動く最強の裏方組織を、今のうちから俺が私兵として育成しておこう。
ターゲットは決まっている。
のちに伊達三傑の一人に数えられ、地味ながらも完璧な実務で伊達家を支え続ける最強の仕事人――白石宗実をはじめとする、若手で骨のある優秀な連中だ。
「よお、景綱! 今日もお役目ご苦労さん!」
「景綱の兄貴、これから道場ですか?」
米沢城に戻ると、ちょうど手隙の若手侍たちが何人かたむろしていた。前世の限界社会人スキルをフル活用し、ここ数ヶ月で「仕事ができて面倒見のいい最高の兄貴分」としてのポジションは確立済み。
俺は、すっと獲物を見定めた敏腕プロデューサーの笑顔を浮かべた。もちろん、目は一切笑っていない。
「皆さん、ちょうどいいところに。新しく美味しい飯の試作ができたのです。少し、私の私邸へ寄っていかれませんか?」
「えっ、兄貴の飯!? 行きます行きます!」
食いしん坊な若手たちを「特製・特濃クルミ味噌おにぎり」の匂いで釣り、一網打尽に俺の部屋へと連れ込みます。
囲炉裏を囲み、焼き立てのおにぎりを頬張った若手たちは、成実と同じように
「旨すぎる……っ!」
と涙目を浮かべて感動していた。よし、第一段階(胃袋の掌握)は完璧だ。
彼らの咀嚼が落ち着いたタイミングを見計らい、俺は部屋の灯りを少し落とした。
一気に真剣な、それこそ国家機密でも語るかのような重々しいディストピア的空気を演出する。
「皆さん。本日集まってもらったのは、他でもありません。お前たちに、我が命に代えても守り、輝かせねばならない『伊達家の絶対的至宝』についてお話があるのです」
「し、至宝……? 輝宗様の秘蔵の茶器か何かですか?」
宗実が首を傾げます。俺はゆっくりと、冷徹に首を振った。
「違います。……3年後、御披露目される予定の、輝宗様の第一子――梵天丸様です」
若手たちが一瞬、静まり返った。
今の城内での梵天丸様の噂は決して良いものではない。病で片目を失い、引きこもりがちで、実の母である義姫様からも疎まれている……そんな「可哀想な子供」というのが、現在の評価だ。
だが、俺の目は暗闇の中でギラギラと狂気の光を放ち始める。
「いいですか、よく聞きなさい。あのお方は、この伊達家を、いやこの日ノ本すべてを未曾有の輝きで照らす、唯一無二の太陽となられるお方なのです。今はただ、その偉大すぎる才能の準備期間として、ほんの少しだけ片目を患われているに過ぎません!」
「は、はあ……?」
「あのお方はとても繊細で、不器用で、けれど誰よりも気高く、美しい。ですが、周囲の凡俗どもはその価値に気づかず、あのお方を孤独の闇に突き落とそうとしています。……そんなことが、許されてたまるはずがないでしょう?」
ドンッ! と、俺は畳を強く叩いた。
凄まじい覇気と激重な愛のオーラ(精神圧)に、宗実たちが「ひぇっ」と露骨に肩を揺らす。
「俺たちが、あのお方の盾となるのです。あのお方がどんなに孤独を抱えようと、俺たち裏方が城内に最強の『全肯定環境』を用意する。あのお方が『前を向きたい』と思われた瞬間に、世界で一番甘くて戦いやすい舞台を、命がけでセッティングして差し上げるのです。例え数十年後、この景綱が先立ってあのお方の側を離れる日が来ても……お前たちが、あのお方の歩む道を支え続けなさい。分かりましたね?」
まだ見ぬ主君をまるで絶対神か何かのように丁寧な口調で熱弁し、未来の死まで見据えた俺の圧倒的な狂気に、若手たちは完全に脳を揺さぶられていた。
「か、景綱の兄貴がそこまで言うなら……梵天丸様って、俺たちが命を賭けるに値する、とんでもねえお方なんだな……!?」
「ええ。世界一、尊いお方ですよ」
「俺、兄貴についていくっす! 3年後、その太陽ってお方を、俺たちの手で最高の舞台に押し上げましょう!」
「ふふ、よし、いい返事です」
俺は満足げに頷き、暗闇の中でフフフと美しく微笑みをうかべた。
美味しい飯の幸福感と、景綱直伝の熱狂的な洗脳によって、会ったこともない主君への忠誠心が早くもカンストした「プロデューサー・チーム初期メンバー」がここに爆誕した。
(よし。これで俺が死んだ後の、組織としての『セーフティネット』も構築完了です……!)
すべては、俺がいなくなった後の世界でも、我が主君がずっと笑顔で輝き続けるため。
本尊(政宗様)がまだ登場していないにもかかわらず、城内は片倉景綱の手によって、確実に「独眼竜ガチ勢の巣窟」へと改造されつつあった。
【システムメッセージ】
『将来の優秀な実務派・白石宗実(およびプロデューサー・チーム初期メン)』をゲットしました!
※主君が引きこもっている間に、周囲のガチ勢化が 15% 進行しました。
ご視聴いただきありがとうございました。




