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第ニ話 主君(おし)を一生一人にさせないための、幼き右腕への先行投資します

城下町のロケハンを終え、俺は自室に引きこもって食材と向き合っていた。

丁寧にすり潰したクルミに味噌と蜂蜜を練り合わせ、焼き上げた白米に塗る――「特製・特濃クルミ味噌焼きおにぎり」の完成だ。味のベース構築は完璧。3年後の食育環境、セーブデータその1は確保した。

だが、俺の脳内仕様書には、もう一つ絶対に放置できない「特大の致命的バグ(歴史の悲劇)」が刻まれていた。

伊達成実。

のちに我が主君・政宗様の「一歩も引かぬ不退転の右腕」として伊達家最強を誇る武闘派の天才武将。しかし彼は有能で、優しすぎるがゆえに、将来の泥沼の戦いの中でメンタルを摩耗させ、政宗様と一時的に決裂して出奔(家出)してしまうのだ。

(歴史の通りなら、俺はあのお方より10歳年上で……そして、あのお方よりもずっと先に死ぬ)

俺が死んだ後、片目を失い、孤独な戦いを続ける我が主君(政宗様)の隣に、もし誰もいなかったら?

成実が出奔してしまっていたら、あのお方はどれほど心を痛め、どれほど寂しい思いをされるだろうか。

(俺が死んでも、あのお方を絶対に一人にはさせない。俺がいなくなった後の世界でも、あのお方が安心して前を向けるように……成実、お前を『生涯隣で笑って支え続ける最強の相棒』に、俺が今から育て上げてみせる!)

すべては我が主君の未来のため。俺の激重な決意を爽やかな笑みで隠す。


「景綱! 大類城の実元さねもと様(成実の父)へ書状を届けるようお言いつけだ!」


姉・喜多の声に、俺は心の中でガッツポーズを作った。公式からの神イベント発生である。

俺は焼き立てのクルミ味噌おにぎりを竹皮に包み、大類城へと爆走した。

用件を完璧に済ませた後、城の庭園で、一人で木刀を振り回している「標的」を発見した。年の頃は5歳か6歳。まだちんちくりんで、ほっぺたを赤くした幼き日の伊達成実――のちの最強武将、今は幼名の時宗丸ときむねまる。めちゃくちゃ可愛い。


「おい、そこのお前! 見慣れん顔だな!」


小さな体で一生懸命に木刀を構える時宗丸。俺は限界まで爽やかなお兄さんの笑みを貼り付けた。


「これは時宗丸様。よろしければ、これをお召し上がりになりませんか?」


差し出したおにぎりに、時宗丸はガブッと一頭身の体で飛びついた。


「――っ!? な, なんだこれ……っ! 旨い、旨すぎるぞ景綱!」


お口のまわりを味噌だらけにしながら目を輝かせる時宗丸。胃袋のバックアップ、100%完了!

俺はその場に膝をつき、時宗丸の小さな肩にそっと手を置いた。


「時宗丸様。あなたは将来、伊達家で最も強く、最も優しく、誰よりも輝く『あるお方』を一番近くで支える最強の武将になられます。……(中略)……この景綱が、あのお方の側を離れて先立つ日が来ても、あなただけは絶対にその右腕として、隣で支えて差し上げるのです」


「かげつな……」


未来の死まで見据えた俺の言葉に、幼い時宗丸は完全に圧倒され、顔を真っ赤にしてコクコクと頷いた。


「うん……っ! 俺、その凄いお方のために、お前と一緒に強い武将になる! お前が死んでも、俺がちゃんと守る!」


「はい、お約束です、時宗丸様」


成実の手を握りながら、俺はフッと満足げな笑みを浮かべた。これで将来、俺が死んだ後の我が主君の『セーフティネット(成実)』は完全に確保した。

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