第10話 11歳の花嫁と、完璧すぎるウェルカムプロデュース
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初陣の大勝利からしばらく経った天正7年(1579年)の冬。
米沢城は、三春城主・田村清顕様の娘である愛姫様をお迎えするおめでたい空気に包まれていた。
政宗様13歳、愛姫様11歳。
幼き二人の政略結婚である。
「景綱……田村からの姫か。俺は……どう接すれば良いのだ? 政治の都合でこんな見知らぬ土地に連れて来られて、怯えているのではないか……?」
自室でそわそわと落ち着かない政宗様。
右目を失い、初陣を飾って「独眼竜」の威厳を纏い始めた主君だが、年相応の初々しさに俺の心の中の「親バカメーター」が限界突破した。
(尊い……! 13歳のウブな主君、あまりにも尊い……!!)
俺は一切目の笑っていない完璧な営業スマイルで胸を張った。
「ご安心ください、政宗様。11歳の少女が実家を離れる孤独と不安……この片倉小十郎、前世の知見(ブライダル&心理ケア知識)を総動員して完璧な『ウェルカムプロデュース』を仕込んでおきましたから」
「仕込んだ……? お前、また裏で何かやったのか!?」
◇
米沢城に到着した愛姫様は、案の定、緊張で全身をガチガチに強張らせていた。
だが、宛がわれた部屋に入った瞬間、愛姫様と付き添いの侍女たちは息をのんだ。
部屋には、田村家の故郷・三春の家具を模した温かみのある木製インテリア、暖房効率を計算し尽くした特製の火鉢、そしてテーブルには湯気を立てる「田村風の郷土菓子(景綱特製)」が用意されていたのだ。
「これ……故郷の味覚……? なぜ米沢のお城に……?」
そこへ、すっと完璧な所作で前に出たのが俺である。
「お初にお目にかかります、愛姫様。片倉小十郎景綱と申します。我が主君・伊達政宗様より『愛姫様が少しでも心安らぐ部屋を用意せよ』との厳命を受け、整えさせていただきました」
(※半分以上は景綱の独断だが、すべて主君の功績としてクレジット(手柄譲渡)するのが優秀なプロデューサーの鉄則である)
「政宗様が……私に、このようなお心を……?」
愛姫様の瞳から緊張の色が消え、ポッと頬が赤らんだ。効果はバツグンだ。
◇
さらに、そこへ乱入してきたのが、我が伊達家の「ツンデレおかん」こと義姫様である。
「ちょっとそこをお退きなさい景綱!」
バサリと衣を翻して入ってきた義姫様は、かつて見知らぬ最上家から伊達家へと嫁いできた自分と、11歳の愛姫様を重ね合わせたらしい。
愛姫様の小さな手を両手でぎゅっと握りしめると、目元をうるませながら叫んだ。
「まあ可愛らしい! こんな小さな子が、寒く遠い米沢までよく頑張って来ましたね! 大丈夫ですよ、何かあったらこの私が政宗をぶん殴ってでも貴女を守りますからねッ!」
「あ、ありがとうございます、お義母様……!」
「な、なにを勘違いしているのですか! 別に可愛くて甘やかしたいわけではありませんよ! 伊達の家風を教え込むために側に置くだけです! 勘違いしないでちょうだい!」
(出たーーーッ! 期待通りの爆速ツンデレ!! これで愛姫様の『嫁姑問題』の予防接種も完全に完了した!!)
◇
そして、ついに執り行われた祝言(結婚式)の儀。
景綱の完璧すぎる事前プロデュースによって、完全に緊張の解けた愛姫様と、腹を括った政宗様が向かい合う。
「……愛姫。遠くからよく来てくれた。これからは、ここがお前の家だ。俺が……生涯をかけてお前を守る」
「はい、政宗様……! 私、どこまでもお供いたします!」
互いに手を取り合い、照れくさそうに微笑み合う13歳と11歳のピュアカップル。
そのあまりの尊さに、後ろで控えていた成実と宗実がボロボロと感涙を流していた。
「景綱の兄貴……っ! 愛姫様が可愛すぎて、政宗様が男前すぎて……俺、胸がいっぱいですッ!」
「お二人の未来に幸あれーーーッ!」
(よし……史実で起きた『田村家からの内応疑惑による暗闘』も、この愛姫様との完璧な信頼関係があれば一切発生しない! 伊達家の家庭環境、完全にハッピーエンド固定完了だ!!)
二人の眩しい笑顔を見つめながら、俺は暗闇の中で静かに眼鏡の奥の目を光らせた。
(さあ、家庭の基盤は完璧に整った。……次はいよいよ、政宗様を『大名(当主)』へと押し上げる【家督相続編】だ……!)
【システムメッセージ】
『愛姫様の輿入れ&祝言』が完了しました!
※政宗様と愛姫様の好感度が『完全相思相相愛』で固定されました!
※田村家との同盟関係が強固になり、内応フラグが完全に消滅しました。
※義姫様の『姑スキル(ツンデレ溺愛)』が発動しました!
ご視聴いただきありがとうございました。




