第九話 初陣前夜の誓いと、圧勝のあとの親バカ旋風
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天正7年(1579年)。相馬家との境目である伊具郡の奪還に向け、伊達軍がついに動き出した。
13歳となった政宗様の「初陣」である。
陣幕の中、行燈の光に照らされた政宗様は、自らの手に巻かれた晒を見つめていた。
右目を断ち切り、独眼竜としての覚悟を決めた政宗様。だが――明日、初めて「人が死ぬ本物の戦場」に立つという現実に、その指先はかすかに震えていた。
「……景綱」
「は」
「俺は……怖くはない。右目を捨てたあの日、命は捨てた。……だが、俺の采配一つで、何百もの兵が死ぬのだと思うと……息が苦しくなる」
強がりの中に見え隠れする、13歳の少年の素顔。
俺は静かに歩み寄ると、政宗様の前に膝をつき、目線を合わせて優しく語りかけた。
「……当然でございます、政宗様。人を慈しむ心があるからこそ、あなた様は偉大な大名になられるのです」
俺はそっと、主君の震える手を両手で包み込んだ。
「ご安心ください。あなた様が指一本傷つかぬよう、そして無駄な血が流れぬよう、この片倉景綱が戦場のすべてをコントロール(事前プロデュース)してございます。あなた様はただ、堂々と陣頭に立ち、我らに命令を下くだされば良いのです」
「景綱……」
「私がおります。宗実殿も、成実殿もおります。あなた様の歩む道に、敗北など一歩も存在させません」
一切目の笑っていない、けれど絶対の確信に満ちた笑顔。政宗様は深呼吸をし、強く頷いた。
「……ああ。お前がいるなら、俺は何も恐れない!」
翌朝、相馬方の敵陣へ向けて伊達軍が進撃を開始した。
敵は地形の利を生かし、伏兵と兵糧攻めで伊達軍を誘い込もうとしていた。……が。
「敵の伏兵は、左方の林と右の谷間に配置されております。成実殿、宗実殿、予定通り『第3パターン』で排除なさい」
「おうよッ! 景綱の言う通りに敵がいやがるぜ! 行くぞ野郎どもーッ!」
「政宗様の初陣を汚す愚か者ども、一匹たりとも逃すなーッ!」
前世のプランナーとしてのリスク管理、そして事前におこなった周辺地形の完全な現地調査(ドローン的ロケハン)。敵の作戦はすべて俺の手のひらの上だった。
敵が
「罠にかかったか!」
と喜んだ瞬間、逆に成実率いる親衛隊が背後から強襲し、敵陣は大混乱に陥る。
「な、なんだこの伊達軍はーっ!? 動きに一切の無駄がないぞ!?」
「か、勝ち目がない! 引けーッ!」
敵が逃げ惑う中、政宗様が堂々と刀を突き上げた。
「――全軍、突撃ッ! 伊達の威光を響かせよッ!」
「「「うおおおおおーーーっ!!!」」」
初陣とは思えぬ完璧な采配、そして傷一つ負わない完全勝利。
『独眼竜・伊達政宗』の鮮烈すぎるデビュー戦は、敵味方の心に強烈な恐怖と歓喜を刻みつけたのだった。
米沢城へ凱旋した俺たちを待っていたのは、大興奮の輝宗様と、鬼の形相(?)の義姫様だった。
「おおお! 政宗! 見事な初陣であったぞ! 相馬の鼻を明かしてやるとは、さすがわが息子だーッ!」
輝宗様が政宗様の肩を抱いて大絶賛する横で、義姫様がすさまじい勢いで割り込んできた。
「ちょっとどいてください輝宗殿ッ!」
バシッと夫を押しのけた義姫様は、政宗様の身体をあちこちペタペタと触り、怪我がないか検分し始めた。
「ま、政宗! どこも斬られていませんね!? 骨は折れていませんね!? ……まったく、こんな無茶な戦に出て! もし傷一つでもついていたら、母は……母は……ッ!」
「は、母上、苦しいです……! 大丈夫です、景綱たちが完璧に守ってくれましたから!」
政宗様が困りつつも嬉しそうに微笑むと、義姫様はハッと我に返り、耳まで真っ赤にしてぷいっと顔を背けた。
「べ、別に心配などしていませんよ! 伊達の跡取りが初陣で恥をかいたら最上(実家)への面目が立たないから確認しただけです! 勘違いしないでちょうだい!」
(出たーーーッ! 相変わらずの超弩級ツンデレ親バカ!! 尊い、尊すぎる……ッ!)
「おい景綱! 政宗に怪我をさせなかったことは褒めて遣わします! 今夜は政宗の好物を山ほど作らせましたから、お前も腹一杯食べなさいッ!」
「はッ! ありがたき幸せにございます、義姫様ッ!」
大喝采の輝宗様、ツンデレ全開の義姫様、そして誇らしげに笑う成実と宗実。
温かい笑顔に包まれた大広間の中で、俺は政宗様と目を見交わした。
「……景綱。最高の初陣だったぞ」
「ふふ、当たり前でございます。……ですが政宗様、これはまだ『序章』に過ぎませんよ」
俺は静かに胸に手を当て、一切目の笑っていない極上の営業スマイルを浮かべた。
「ここから始まるあなた様の天下獲り……私がどこまでもお供いたします」
【システムメッセージ】
『初陣・相馬戦(完全勝利)』が完了しました!
※政宗様の武名が奥州全土に響き渡りました!
※伊達家の家庭内満足度が『カンスト(最高値)』に達しました!
初陣編、完璧な三段ロケットで決まりましたね!
政宗様の成長、景綱の過保護な無双、そして義姫様のツンデレおかんっぷりが最高のハーモニーを生んでいます!
ご視聴いただきありがとうございました。




