第八話 独眼竜の誕生と、永遠の誓い
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天正5年(1577年)。
梵天丸様は11歳となられ、ついに元服の儀を迎えることとなった。
「これより、伊達藤次郎『政宗』と名乗るが良い」
父・輝宗様から賜ったその名は、かつて伊達家を中興させた名将・第9代当主と同じ「政宗」。
主君プロデュース計画の第一段階が、ついに実を結んだ瞬間だった。
(政宗様……! ついに『伊達政宗』という伝説の名前が爆誕した……! 尊すぎる、今日を祝日に制定しよう)
心の中で感涙の嵐を巻き起こしながら、俺は誰よりも深く、美しい所作で頭を下げた。
◇
だが――元服を終え、名実共に伊達家の跡取りとなった政宗様には、ひとつ大きな壁が立ちはだかっていた。
公の場に出る機会が増えたことで、家臣や他国の使者から「片目の大将」と心ない視線を向けられることが多くなったのだ。右目の病巣はすでに視力を失っているものの、黒く腫れ上がったまま残っていた。
「……景綱」
夜、自室で一人、右目を押さえる政宗様。
「この目は……やはり伊達の当主として、他国に隙を見せる要因になるのだろうか。俺がどれほど兵法を学び、城下を整えても……誰もがまず、この右目を気味悪そうに見る。切り落としたい。だが……」
苦悩する主君。
第6話で出会ったあの日のように自分を蔑むことはなくなったが、大名としての覚悟を持ったからこそ、己の身体的な傷が悔しくてたまらないのだ。
無理もない。当時の掟において「主君の身体に傷をつける=不敬罪で即・処刑か切腹」であるため、どれほど政宗様が望んでも、家臣の誰も恐怖で刀を握ろうとはしなかったのだ。
政宗様の葛藤を前に、俺の胸の奥で静かに腹が括られた。
(そうだ……史実の景綱も、この瞬間、己の命を完全に捨てる覚悟で刀を握ったんだ)
主君の肌に刃を立てれば、成功しても切腹を命じられるかもしれない。万が一感染症などで政宗様の身に何かあれば、その場で自害は免れない。
だが――俺の命(腹)一つで、我が主君が『独眼竜』として世界の頂点へ羽ばたけるなら、安いものだろ!!
俺は静かに歩み出ると、己の脇差を抜いて畳の上に置いた。
「政宗様。その右目……この片倉小十郎にお預けください」
「景綱……! しかし、そんな真似をさせれば主君を傷つけた罪で、お前は切腹になるのだぞ!?」
「お覚悟をお決めください。……私の手が狂い、あなた様に万一のことがあれば、私はその場でこの腹をかっ捌いてお追尾いたします。また、これによって切腹を命じられようとも、悔いは一切ございません。……私の命など、あなた様が輝くための踏み台に過ぎないのですから!」
その「狂気」と「命を懸けた覚悟」に、政宗様は息をのんだ。そして、覚悟を決めたように右目の包帯を引きちぎった。
「……頼む、景綱! 俺の命も、右目も、お前に預けるッ!」
「――御意!!」
俺は前世で培った応急手当と衛生管理の全知識を脳内に展開し、一瞬の迷いもなく刀を振るった。
(絶対に感染症など起こさせない……! 傷一つ残さず、世界で一番格好いい『独眼竜』に仕上げてみせる……ッ!!)
一瞬の静寂の後、手際完璧な処置によって病巣は正確に切除され、準備しておいた薬草と晒で瞬時に圧迫止血が施された。
床に転がる右目。
俺は血のついた小刀を収めると、そのまま畳に額を擦り付け、切腹の沙汰を待つ罪人のように、けれど誇り高く首を垂れた。
「……処置、完了いたしました。主君のお身体を傷つけた罪、どのような処罰(切腹)もお受けいたします」
静寂の中、包帯を巻いた政宗様が、ゆっくりと左目を開けた。
そこにあったのは、痛みを乗り越え、迷いを完全に捨て去った鋭く澄み切った『竜の目』だった。
「……バカ者が」
政宗様は荒い息を吐きながら、俺の肩を強く掴み、引き上げた。
「お前を死なせるために右目を預けたのではない! 俺の右目になったお前が死んでどうするッ! 切腹など絶対に許さん! 今この瞬間より、お前の命は俺のものだ! お前が俺の右目となり、俺の行く道すべてを照らせッ!」
「――はッ! 我が命、すべてあなた様に捧げます。……参りましょうか、我が主君(独眼竜)」
命を懸けた覚悟が、二人の絆を「主従」を超えた神話の領域へと昇華させた。
片倉景綱の命がけのプロデュースにより、ついに奥州の覇者・伊達政宗が完全覚醒したのだった。
【伊達政宗】と【片倉小十郎】。
歴史に名を残す最強の主従コンビが、ここに完全完成したのだった。
【システムメッセージ】
『右目の儀(独眼竜の覚醒)』が完了しました!
※政宗様の称号が『奥州の独眼竜』へ進化しました!
※景綱の固有スキル『竜の右目(絶対視界)』が解放されました!
※二人の絆が『神話級』に達しました!
ご視聴いただきありがとうございました。
今日の18時30分にももう1話出します。




