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第6話 帰ってきた姉

 この世界に来てから6日ほど経ったのだろうか。思えば怖い思いも沢山したし、それに負けないくらい恥ずかしい思いも沢山した。


 アルシアが俺を助けてくれなかったら今頃俺はきっと死んでいただろうし、助けてくれたのがアルシアでは無かったのなら、アンズーにも出会えなかっただろう。


 そんな俺は今アンズーのバーで雑用の真っ最中。


「ちょっとツカサそんなに動いてお尻は大丈夫なの?」


「アルシアちゃん。多少痛くてもこれくらい動かさないと、歩けるようにならねぇぜ?」


 そう。お尻の痛みは健在だ。だが、以前に比べて治りかけているのは確かだ。もう肩を貸してもらわなくても自分で立つことができる。


「お尻のことは心配しないでいいよアルシア。大丈夫だから。それよりも文字だよ文字。少しは読めるようになったけど、まだまだだから。」


 俺のリハビリも兼ねて店の雑用をやらされているからか、初めて入った時のようにホコリまみれなんてことはない。ボロボロなことに変わりはないが…


「そう言えばアルシアはいつ家に帰るつもりなの?」


 アルシアがきょとんとした顔でこちらに目線を移すと、こう答えた。


「しばらくはここにいるつもりよ。あの家のドアは壊されちゃったし……少ししたら荷物を取りに行くわ。それに、どんな怖い人が来てもアンズーさんといれば安心よ!」


 アンズーは得意気な顔をしてアルシアの方を見る。俺の荷物も置いてきてしまったから今度取りに行こう。そう思っていると、なにかを思い出したようにアルシアが口を開いた。


「そういえばお姉ちゃん全然帰ってこないね。アンズーさん、どこ行ったか知ってる?」


「どこって言ってもフローリアにはいると思うんだよなぁ…あいつ迷子になってんじゃないのか?」


 アンズーはいつも通り掃除もせずカウンターでダラダラしている。それに対してアルシアは働き者だ。家が荒らされていてそれどころじゃ無いだろうに…

 そんな話をしているとバンッ!と強い衝撃音とともにドアが勢いよく開く。


「お客さんなんて本当に来るんだ…」


 そこには男子高校生の俺の目にはあまりにも刺激の強すぎる女性がいた。胸元や太ももが大胆に露出している深紅に包まれた踊り子衣装、それもかなり際どい。その上から濃い茶色のマントを羽織っている。


「あ、い、いらっしゃいま…」


 突然の出来事に俺が困惑していると


「たっだいまぁーーー!!」


 と、その女性はカウンターにへたりこんだ。


「お姉ちゃん!?」


「セレアお帰りぃ!」



* * * * * * * * * * * *


 俺がなにより驚いたのはその髪色だ。確かに際どい服装や身体にはまだ慣れない。

 アルシアは美しい肩まで伸びる金髪のロングヘアーに今にも吸い込まれそうな深緑の瞳をしている。強引だが優しい目付きが特徴的だ。

 一方お姉さん、セレアはアルシアと同じく美人なのだが、黒くウェーブの巻かれた首もとまで伸びた髪。その瞳もアルシアと違い深紅に染め上げられいる。

 なによりアルシアとは違う大人の色気が漂っている。


「いやぁ困ったわよ本当。ちょーっとお酒飲むと止まらなくって。フローリアの南側まで行ってしまったわ。帰りが遅くなってごめんね。許してくれる?アンズー…?」


「許すもなにもセレアはいつも美しいだろ…?」


 まったく俺はなにを見せられているんだ。男子高校生の前であまり惚気ないで欲しい。少なくとも俺はモテたことが一度もない。


「…ってそこの男の子はだれ?アンズー従業員でも雇ったの?」


「は、はじめまして…。怪我が治るまでい、居候させて貰ってます…。小崎 司です…。」


 緊張して言葉があまりでない。それに刺激が強すぎて直視できない…。


「ーーツカサくん…よね?なぁに顔そらしてるのよ。もしかして緊張してるの?そんな緊張することないわよ。私はセレア。よろしくねツカサくん。」


セレアはそう言うとカウンター越しに身を乗り出し俺の顔を覗き込んできた。

 格好があまりにも際ど過ぎて直視できない。ただ黙って顔をそらすことしかできない。


「ちょっとお姉ちゃん!あんまりツカサをからかわないでよね!ツカサ困ってるでしょ!」


「別にからかってなんかいないわよぉ。ねーツカサくん」


 セレアさんの距離が近すぎて困る。こういうときこそアンズーがどうにかするべきだろう。

 俺はアンズーにヘルプの視線を送るがアンズーはニヤニヤしてこの状況を楽しんでいる。

 

「痛っー」


 少し距離を取ろうと椅子を直したとき少し尻の傷に響いてしまった。もちろん大したことではないし、尻が痛いのにも慣れてきたが突然来るとびっくりするものだ。


「ツカサくんどこか怪我をしているの?お姉さんに見せてみなさい。」


 完全にカウンターに身をのりだしてきた。そのせいでセレアの胸がより一層強調されてとても見ていられない。


「お姉ちゃん!ツカサ困ってるんだからやめてあげて!あとちゃんと服着て!風邪引くよ!?」


 アルシアがここまでお姉さんに世話焼きだったとは少し驚きだ。確かによく世話を焼いてくれるがお姉さんには一層厳しい気がする。


「数日間外にいたんだから着替えてこいよセレア。それに、俺とツカサにはやることがあるから。な、ツカサ。」


「なになに~?もう2人仲良しなのぉ?私も混ぜて欲しいなぁ~。」


「お姉ちゃんは早く着替えてきて!」


 アルシアに背中を押されながら、セレアは少し不貞腐れた様子を見せつつ奥の部屋へ入っていった。

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