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第4話 フローリア王国

 そこにドアがあったであろう場所からは生い茂る木々が姿を見せ心地よい日の光が木の床を照らしている。周囲を舞う赤い粉とホコリが光に照らされている。


「ーーカサ!」


 誰かが俺を呼んでいる。あの後どうなったのだろうか。俺はカレオトキシンに顔を舐められて…それで…

 そうだアルシア。アルシアは無事だろうか…全くなんでこんなことになってしまったんだ…


「ーーツカサ!」


 ハッと目が覚めるとそこには心配そうに見つめるアルシアがいた。目立った外傷は特になかったが、アルシアの首元には少しアザが残っていた。


「ツカサ大丈夫なの!?私心配したんだから!ちょっと名前覚えていないけど…あいつはどうなったの!?」


「ーーあぁ、大丈夫。カレオトキシンなら今回は手を引いたよ。それより、巻き込んでごめん。ケガは大丈夫?」


 自分の家が壊されてそれどころではないだろうに、俺を心配してくれるなんて。

 なんてことを考えているとあの尻の痛みが再び襲ってきた。徐々に痛みがこみ上げてくる。


「ーーッ…」


「ツカサ、そのケガで立てるわけないでしょ?少し安静にしてて」


 なんでアルシアはここまで俺に気を遣ってくれるのだろう。俺のせいで敵に襲われ、被害もでているのに…


「ーーアルシアごめん。俺のせいで君にすごい迷惑をかけた。介抱してくれてありがとう。」


 ーードタッ…

 痛みに耐えながらもおぼつかない足でなんとか立ち上がろうとするも、やはりまだ立てない。ほふく前進がいいとこだ。


「ツカサ、その状態じゃどこにも行けないでしょ?それにケガのことならいいの。たいしたケガじゃないし。」


「俺は君になにもしてあげられない。それに一緒にいると君にまで火の粉が…」


「いいツカサ。よく聞いてね。あなた、なにか勘違いしているようだけど別にツカサのために私が介抱しているわけじゃないのよ?私がやりたくてやっているの。だからツカサはそういうの気にしなくていいから。わかった?」


 何がアルシアをここまで動かしているのだろう。第一印象から最悪なはずなのに。


「とりあえずドアは壊れちゃったしここもそこまで落ち着けない。いい場所を知っているから少し移動しましょ?肩貸してあげるから。」


 そういってアルシアは俺の肩に腕を回した。高校生にもなって、しかも女子に肩を貸してもらうなんて恥ずかしすぎる。

 思えばこの世界に来てから、俺はなにもできていない。被害を出してばかりだ。


 アルシアの家はフローリア王国の中にあるが都市中央の住宅密集地帯にあるというわけではないらしい。あの騒ぎがあっても誰1人として野次馬が来なかったのもきっとこれが影響している。


 アルシアの家の周囲は自然豊かな森。少し歩けばポツポツと他の家が見える。簡素な柵が並ぶ土の道を進むと粗い石畳の敷かれた道にでた。


 ここに来ると人通りも増え店も多くなる。中世ヨーロッパを彷彿とさせるような街並みだ。オレンジ色や薄い青色、暗めの黄色や白色など様々な色の壁の家が並んでいる。しかし屋根は統一してレンガでできていた。

 

 ーー道行く人が皆、俺を見ている気がする…


「ーーアルシア、ちょっと恥ずかしいんだけど、まだその目的の場所にはつかないの?」


「何がそんなに恥ずかしいのかしら?はじめて見たツカサのほうがもっと悲惨な姿していたわよ?」


 それを言わないでくれと思いながら必死に恥ずかしさを堪えていると路地に入った。


 路地裏は人通りが全くといっていいほどなく、さっきまでの通りと比べると静かだ。

 たまに人を見かけるがボーッとしていたりなにか本を読んでいたりと、1人になりたい人が集まっているように感じた。


「ツカサお疲れ様。身体は大丈夫?まだ歩けそう?」


「別にそんな心配しなくていいよ。ーーありがとう。」


 そんなことを話しているとどうやら到着したようだ。


「ついたわよツカサ。ここが私のお姉ちゃんの経営するお店。見た目はおんぼろでもしっかりとお店なのよ。まぁ客が来るかといわれればなにも言えないけど…」


 それは確かに他の家と比べれば少し古びて見える。しかし特別おんぼろ屋敷という感じではなく、ちょっと年期があるかな程度だった。


「らっしゃ~い…ってなんだアルシアかよ…客が来たと思ったのにガッカリだぜ。で、なんのようだ?まさかその横の男がボーイフレンドで自慢しに来た感じか?悪いがお前の姉貴は留守だ。出直してきな。」


 そこにはオールバックヘアーで襟足が長く、目付きが鋭い。上裸に黒いズボンを穿いていて胸にはライオンとワシのような動物の刺青がしてある。

 そしてジャラジャラと金属の鎖をズボンにつけていて、見るからにガラの悪そうな男がカウンターに立っていた。

 ここはバーのような店らしい。使い古されたカウンターや椅子、テーブルが並び天井には蜘蛛の巣が張られていて、カウンターやテーブルにはホコリがたまっている。とても掃除が行き届いているようには見えなかった。


「ちょっとアンズーさん!また掃除サボってたでしょ!?あれだけ掃除しなさいって言ったのに…」


「そんなカリカリすんなよアルシア。かわいい顔が台無しだぜ?」


 見るからにチャラチャラしたそのアンズーという男。ちょっと苦手なタイプだ。


「で?そのアルシアが肩を貸しているボーイフレンドはどちらさんだい?」


「俺は小崎司って言います…今はそのお尻をケガしていて歩くことが難しいから肩を貸してもらってます…」


 少し萎縮してしまう。もともとこんなタイプの人とは関わらないようにしていたからうまく言葉がでない。

 スカルトロールとかカレオトキシンとは違う、もっと人間的に苦手って感じだ。


「ツカサか、よろしくな!…でアルシアちゃんはいったいなんの用事でここに?また姉貴の健康チェックか?」


「ちょっとお姉ちゃんとアンズーさんに協力してほしいことがあって…」


 アルシアは今までのことを手短に話した。


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