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第14話 突然の事情聴取

 路地を歩いて数分、アンズーのバーが見えてきたがなにか様子がおかしい。店の前にはガッチガチの鎧騎士が2人立っていた。


「すいません、何かあったんですか?」


「君、この店の関係者?」


「バッカお前、ここはバーだぜ?こんなちんちくりんがこの店の関係者なわけないだろ。」


 2人の鎧騎士はそう言うと俺をまじまじと見つめた。なんて答えれば良いんだろう。大人2人にまじまじと見られると緊張してうまく声がでない。


「お、ツカサが戻ってきたぞ。おいツカサ、ちょっとこっち来てくれないか?」


 店の窓から俺を呼ぶアンズーが見える。その横にはアルシアが座っている。角度の問題なのかセレアさんは見えない。


 そして一番気になるのは肩に鋼の肩当てをつけている白いロングコートの男。顔はよく見えないが汚れた窓からでも伝わる白いロングコート。それには一切の汚れがなく、青い花のデザインが特徴的だ。

 腰には剣が携えてある。


 俺は店の扉に手を触れる。その扉はいつも以上に重く感じられた。


「……彼がツカサ?」


「そうですが…どちら様ですか?」


 目の前の男は気だるそうに答える。


「……王国騎士団のセリアス・トリスタン」


 王国騎士団を名乗るその男は綺麗な制服には似合わないほど疲れた顔をしていた。目は半開きで濃いクマがついている。紺色の髪に所々水色のラインが入ったボサボサの長い髪で片目が隠れている。


「……えっと、その王国騎士団がいったいなんの用でここに?」


 その男、セリアス・トリスタンは面倒くさそうにテーブルにおかれた資料を指差す。まるで自分の口からは説明したくないから自分で読め、と言っているように感じる。


 俺はテーブルに置かれた資料に目を通す。


「モヒリート殺人事件…?まずモヒリートって誰?」


「なんでも昨晩、うちの店の前の路地で殺人事件があったんだとよ。で、その血痕にアルシアの血痕も混じっていたから事情聴取にきたってわけよ。」


 アンズーが説明してくれた。普通そういうのは、このセリアスって人が説明することなんじゃないのかなと思う。


「……君なんか知ってる?」


 昨日の夜と言えば俺とアルシアがスカルトロールの襲撃にあった。そのことなら話せる。


「昨日の夜はアルシアと帰宅中に路地で骸骨の魔物に襲われました。怖くてアルシアを担いで必死に走っていたのでよく覚えていません。それに、そのモヒリートって人に関しては本当に知らない人です」


「骸骨の魔物…」


 セリアスの雰囲気が変わった。足を組み、口に手を当てて考え込んでいる。


「…特徴は?」


 多分骸骨の特徴について質問されているのだろうが違うかもしれない。なにより事情聴取なんて人生初だからあやふやなことは話していいのかわからない。


「…それは骸骨の魔物の特徴ですか?」


「……逆にそれ以外になにがあるの?」


 この人はすごく話しにくい。なんか冷めているというべきか、初対面のアンズーとはまた違う苦手意識がある…。


「……よく覚えていないんですけど、骨の小人って感じでした。すごく動きが速かった……あ、あとは声が渋いです。」


「……なるほどね。」


 セリアスが椅子を引いて立ち上がると出口の方へ歩いていった。猫背で歩いていて本当に王国騎士団なのかと疑ってしまう。


「……なにか思い出したことがあれば王国騎士団の方へお願いします。それでは。」


 バタンと静かに扉が閉められる。セリアスが店から出ると、店内は静寂に包まれた。この静寂の中で最初に発言したのはアルシアだった。


「ちょっとアンズーさん。あの人なんなの?王国騎士団とか言って押し掛けてきて、しかも全然喋らないの。」


 アルシアがご立腹だった。確かに俺もあの人は苦手だ。初対面という事もあるんだろうけど。


「…ところでツカサ、その背中のカバンはなんなの?なんか葉っぱが飛び出ているわよ?」


 アルシアが俺のカバンを指差す。セリアスの事情聴取で説明するのが遅れてしまった。俺はカバンを降ろして説明する。


「これ、おねばが選んだカバンなんだ。」


 中を覗くとおねばが縮こまっている。頭の葉が力なく垂れている。さっきの騎士たちが怖かったのだろう。


「おねば…ってツカサ、もしかしてマンドラゴラに名前つけたの!?」


 アルシアが驚いたような目で俺を見る。カバンを開けているとおねばがカバンの外へ飛び出す。


「ギャッ!」


「きゃっ!ちょ、なんなのよツカサ!?」


 おねばがドテドテと葉を揺らしながら走り回っている。アルシアがビックリした様子でおねばを目で追っている。


「ギャギャッ!」


 おねばが俺に飛び付いてきた。あまりの勢いに俺は倒れ込んでしまう。おねばが俺に頬を擦り付けてきた。すごく癒される感覚がある。


「ツカサ、お前マンドラゴラを手懐けたのか!?すげぇな……」


「マンドラゴラじゃなくて『おねば』だよ、アンズー。」


 そう言うとおねばは得意気に葉を揺らした。


「マンドラゴラって言葉通じるの!?」


 アルシアがまじまじとおねばを見つめる。


「マンドラゴラって精霊でもあるんでしょ?あの中古屋のお爺さんが教えてくれてさ。だからマンドラゴラじゃなくてちゃんとした名前を付けてあげようと思って。」


「にしてもツカサ。『おねば』ってのは可愛すぎやしねぇか?なんというか威厳がねぇな」


 アンズーに突っ込まれた。確かに深く考えずに付けたけどそこまで言わなくても…


「でも見てアンズー。叫ばなければちょっと可愛いかもよ?」


「アルシアちゃん……なにも可愛いけりゃ良いってもんじゃ……」


「ギィィ……」


 名前を馬鹿にされたと思ったのか、おねばがアンズーを物凄く睨み付けている。アンズーがマジかよみたいな顔をして、それを見てアルシアが笑っている。思わず俺も吹き出してしまった。


「あれ、そう言えばセレアはどこ?もしかしてまだ気絶中なの?」


「安心しろツカサ。セレアには今、とある重要な頼み事をしている」


 ーーその時、店の扉が開く


「ただいまぁ~。しっかりと情報を掴んできたよ。」


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