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第15話 出発前夜


「ありがとなセレア。愛してるぜ」


「私だってツテ当たるの大変だったんだからね」


 疲れた顔をして帰ってきたセレアはなにやら得意気な顔をしている。あのセレアがここまで頑張るとは余程重要な情報なのだろう。


「私のお得意さんからの情報なんだけどね。フローリアの北東部の森に住んでるらしいわよ。」


「お姉ちゃんそれなんの話?その森に誰が住んでいるの?」


 セレアはなんの話をしているんだ。それにアンズーはセレアに何を頼んだんだ。

 なにも状況が飲み込めていないが、セレアとアンズーの表情からなにか重大な情報だということは見当がつく。特にアンズーは深刻な表情をしている。


 さっきまであんなに動き回っていたおねばが空気を察したのか大人しくなった。


「2人ともなんの話をしてるの?なんかあったの?」


「いいかツカサ。落ち着いて聞いてくれよ。」


 アンズーがこんな空気を纏うなんて。俺はこの雰囲気を知っている。俺が初めてアンズーに出会ったあの日。あの時の俺を敵視するあの表情に凄く似ている。いったいなにがアンズーをここまでさせたのだろうか。


「ツカサ。ネクロマンサーの居場所を突き止めたぞ。」


「ねくろまんさー?ってなんなのよ」


「ーーなんで突然ネクロマンサー?」


 ネクロマンサー……なんとなく聞いたことはある。霊とかを操る人ってイメージだ。

 でもネクロマンサーのなにが重要なんだ。


「アルシア、ツカサ。お前らを昨晩襲撃したそのスカルトロールは骸骨だったんだよな?」


「確かそうだったはず。夜だったから俺の見間違いかもしれないけど…」


 アンズーの視線が痛い。嘘を付いていないかを確かめるような視線だ。


「そうか。それで充分だ。」


 アンズーは深く頷くと会話を続けた。


「いいかツカサ。骨だけの生物なんてのは俺の知る限りこの世界には存在していない。となると考えられる可能性は…」


「誰かが意図的に造り出したってこと?」


 アルシアがアンズーの会話を遮って話す。アンズーは会話を遮られて不服そうな顔をしている。

 横で聞いていたセレアが口を開く。


「その造り出せる人間がネクロマンサーってことよ。」


 あのスカルトロールに一歩近づいた。しかし、なぜアンズーとセレアはここまで協力的になったのだろう。

 そう考えているとアンズーが怒りを含んだ声色で話す。心なしかアンズーのタトゥーが輝いた気がした。


「アルシアをここまで傷つけられて黙っていられるわけがない。すぐにでもネクロマンサーに話を付けたい」


 アンズーが拳を握りしめる。その拳には血管が浮き出ていてアンズーが本気なことが伝わる。


「店はどうするの?それに北東部の森って結構距離あるわよ?」


 アンズーはニヤリと口角を上げた。


「そう言ってくると思ってすでに水牛車を手配してあるぜ」


 アンズーの発言に対してセレアが目を丸める。


「ちょっとアンズー。そんな金誰が持ってるのよ。ただでさえうちの店人来ないのに」


 実際俺もここに来て1週間経つがお店に来た客は片手で数えられるほどだ。


「まぁまぁそこは飲み込んでくれよセレア。それでツカサ。明日の早朝から出発するぞ」


「え、私は連れていってくれないの?」


 アルシアが頬を膨らませてアンズーを見つめている。アンズーが子犬でも眺めるような目でアルシアを見つめ返す。


「そんな怪我してちゃ連れていけねぇな。それに、俺はお姫様を冒険に連れていくタイプじゃないんだよ」


「ちょっとそれどう言うこと!?」


 アルシアがおちょくられたと思って聞き返す。しかしアンズーは笑いながらいなす。気がつけば少し空気が軽くなっていた。


「で、ツカサ。お前は準備万端か?」


「俺は大丈夫だよ。」


「ギャギャギャッ!」


 俺に話しかけられたはずなのに、おねばが行く気マンマンの返事をした。もちろんおねばも連れていくつもりだ。


「私はアルシアと店に残るわ。それで良いわね?アルシア」


 セレアがアルシアの方へ目をやる。アルシアは縦へ首を振ったがどこか不満そうだった。突然ではあるが、いよいよスカルトロールの正体に一歩に近づける。家に帰れる方法がわかるかもしれない。


 その夜は変に緊張して、よく眠れなかった。

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