第九話 ザダル・ラ・ニハク(成長期 VI)
【これまでのあらすじ】
宇宙船が旅立ち約500年が経った頃、ダフィタス人が住める環境にある星を見つけた。
星が見つかった!との報告で国民が歓喜に湧いている頃、各国の代表者と室内に置かれたリアルタイムで話すことが出来るスクリーンを通して首脳会議が行われた。
ニハク国の代表者はザダル・ラ・ニハクという人物。
幼少期から青年期、ザダルという人物を形成するのは何か?
とある部屋で、2人の男の話し声がする。
「で、何があったんだよ。」
「ふふっ。教えてほしいですか?」
「お前、マジムカつく! いい加減にしないと………」
「いい加減にしないと何です?」
「…………なんでもねーよ。」
ニハク家の玄関ホール横にある隠し部屋。
ライドとマルサのやりとりである。
護衛長のマルサだが、幼なじみのライドにはどうしても勝てない。
腕っぷしではライドより強いのだが、ライドとの手合わせとなると、最後の最後には負けてしまうのだ。
体は細いくせに、タフで素早しっこいライド。どこにそんなエネルギーがあるのか?いつも不思議に思う。
以前、ライドにそのタフさは何なのか?と聞いたことがある。
「そーですね。愛情の差ですかね?」
と、はぐらかされたが最近では、あながち間違いじゃないと思うようになった。
「………で、ザダル様の雰囲気が変わったというか、大きく見える気がするんだが、何があったんだ?」
「そーですね………帰宅されてから、ザダル様に部屋に来るよう手招きされましてね。そのお姿が可愛いことといったら………あっ!すみません。また自慢してしまいました。それでですね…………」
ライドは昨夜のザダル様とのやりとりをマルサに話した。
ファンタジーライドに行くために小遣いを貯めると話されたこと。
ご自身が護られる立場であることが、スッカリ頭から抜けている危険性を感じたこと。
だからこそ厳しいようだが、美術館や博物館では貸切にしたことを話したこと。
それを聞いたザダル様は、自分やマルサ達をワガママで振り回していると思われたこと。
それは違うと話したこと。
そして、ザダル様が泣かれたことを話した。
「ライド………またザダル様を泣かせちまったのか。お前の立場もほんと辛いもんだな。」
「…………マルサ。貴方が幼なじみで本当に良かったと心から思いますよ。」
「なんだよ、気持ちわりーなー。」
「それで、ザダル様の目が今朝腫れていらっしゃって………さすがにあのお顔では学園に行かすことはできなかったという訳です。」
「なるほどなー。」
「そしてですね。その学園に行くまでの時間に、ザダル様より話があると呼ばれましてね。お部屋に入るなり座るように言われました。そしたら、頭を下げられたんです。今までありがとうと………解雇通告かと思いました。」
「解雇通告だな。うん!」
「ふっ。違いましたよ。ザダル様は、私達の役割を知りたいとおっしゃられたんですよ。」
「どーゆーことだ?」
「奥様が不在がちなこと。そのために私に負担がかかっているのではないか? 他のみんなは、どんな役割でザダル様達についていてくれるのか?と知らないから教えてほしいとおっしゃられて。」
「説明したのかよ? そんなの知らなくってもいいことじゃないか? まだ子どもなんだ。護られていて当たり前じゃねーか!」
「ザダル様ですよ? 5歳の頃から勉学や体術に剣の修行とお忙しい中、弟君達との時間をやり繰りなさるほどのお方です。その方が、我々に興味を持って頂いたのですよ。知らないから教えてほしいと。」
「………そうだな。お兄ちゃんだから弟達を守るんだ!って体術も剣も、泣きながらも訓練を辞めなかったお人だもんな。部屋の明かりも夜中までついてた。ザダル様、根性あるからな。」
「そうです。だからこそ、きちんと説明しました。もちろん、話せないことは話していません。」
「そうか。それで、あの落ち着きとひと回り大きく見えた訳だ。」
「あの学園長が、遅刻の謝罪に行った時によ。ザダル様に何が良いことでもありましたか?なんて聞いてたぞ!」
「あー。相変わらずですね。全てを見通している感じの………見通してるんでしょうが、食えませんねぇ。それで、ザダル様は何と?」
「僕にとって良い学びの時間を頂きました。って答えていらした。なんか、大人みたいでよ。ちょっと寂しくなっちまったよ。」
「そうですか。成長されるこもは嬉しいことですが、確かに寂しくもありますね。」
「んで、兄貴とは話せたのか?」
「今日は都合つかないとのことで、明日の夜に会うことになりました。夜の警護をよろしくお願いします。」
「承知した。」
「そこで聞いてるラックも、明日の夜は特に警護をお願いしますね。」
「承知」
「ラック居たのかよ! 教えろよ!」
「暗部の者は顔を出しませんよ。いい加減覚えてください。」
「ほんと、リ家は怖ぇーよ。」
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最近のザダルは、昼休みにクラスメイト達と過ごすことが多くなった。
食堂で、サプリメントと日替わりスープなどを食べながら、街で流行っている雑貨屋やカフェの話。
数少ないペットを飼っている子も居たり、弟や妹が居る子とは、どんな所に遊びに行くのか?など色々な話が聞けた。
ザダルは、心の中でだが楽しい時間を過ごしていると思っていた。
顔は相変わらずの無表情だが、クラスメイト達は、そんなザダルを気にする訳でもなく気ままに色んな話をしている。
それをザダルは聞いているだけで楽しかったのだ。
(学園生活満喫してるー♪)
と思っていた。
しかし、ザダルの無表情が気に食わない者も居るのだ。
ザダルの前では朗らかに話しかけ、楽しいひと時を過ごしているように振る舞うが、ザダルが居なくなれば
「楽しくないなら、俺らに付き合わなくてもいいのになっ。」などと言い出し、
「あの整った顔で、じっと見られると怖いよな。」
「やっぱり何考えてるか分からないから、話が続かないんだよね。」
など、誰かが切り出すと不満が次々にと出てくるのである。
それを聞いている3人組がいる。
(バイデル:俺はアイツらと変わらないからな。何も言えないわ。俺もザダル様に取り入って、自分にとって良いようになることしか考えてないからな………)
(ターフィー:ザダル様は無表情だけど、話しかけたら答えてくれるし、とっても優しい人なのになぁ。怖いなんて、どうして思うんだろう?)
(ユーグル:どうでもいいですね。美しい者を認められない者達とは話が合いません。)
とそれぞれ思うことはあるけれど、ザダル様と本当に仲良くしてるのは自分達だ!!きっとそうだ!!と自分に言い聞かせ、なかったことにするのだった。
そんな日々が数日続いたある日、ザダル様が
「今日のお昼ですが、ご一緒できますか?」
と、わざわざ自分達の教室にまで来てくれ、誘ってくれたのだ。
その時のクラスメイト達の驚愕の顔とザダル様が去ってから自分達と交流を深めようと話しかける者の多さに愕然とするのだった。
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ザダルは、バイデル達にファンタジーライドに行くには時間がかかりそうで、もし良ければ一緒に違う場所に行かないか?と話してみようと思ったのだ。
それで、バイデル達と一緒にランチでもと誘ったのだ。
「ファンタジーライドは、調整が難しく時間がかかりそうで………もし、みんなが良ければですが、他のところに一緒に行くのはどうでしょう?」
(うわぁー、人を初めて誘っちゃった。断られたらショックだなぁ。緊張するよー)
「いいですね! 弟君達もご一緒ですか? みんなが楽しめる場所がいいですね。」
(バイデル:ザダル様から誘ってくるなんて思ってなかった。いい流れだ!このまま取り入ることができそうだ!)
「うん!そうしましょう! 僕は皆となら何処でも楽しいと思うから、弟君達が行きたい所を聞いてみて決めるのはどーかな?」
(ターフィー:わぁ!ザダル様に誘ってもらえて嬉しいなぁ。弟君達が喜んでくれる場所って何処だろう?)
「是非、弟君達もご一緒に。場所は、ターフィーと同じで弟君達の行きたい所を聞くのがいいと思いますが、ファンタジーランドではなくても、近場の遊園地とかでもいいんじゃないですか?」
(ユーグル:ザダル様と弟君達が遊園地で遊んでいる景色は、きっと綺麗で楽しそうだ!)
「みんな、弟達のことを気にしてくれて、ありがとう。そうだね。弟達に、行きたい場所を聞いてみるよ。けど、どんな所があるか弟達は知らないんだ。だから、遊園地はどうか聞いてみようと思う。」
(バイデル:どんな所があるか知らないってどーゆーことだ?)
「ザダル様、どんな所があるか知らないとは?」
とターフィーが質問した。
(バイデル:ターフィー、ナイス!)
「恥ずかしい話なんだけど。僕もそうだったのだけど、家から出たことがなかったんだ。遊びに出かけることがなくて……… 僕が学園に通いだしてから、周りの人達が話してるのを聞いて、美術館や演劇鑑賞というものがあることを知ったんだ。それで、楽しそうと思って弟達にも見せてあげたくてね。一緒に出かけるようになったんだ。」
(バイデル:えっ?!)
(ターフィー:遊びに出かけたことがない………遊びに連れて行ってもらったことがないってこと?)
(ユーグル:深く聞いてはいけないヤツ!)
「そーだったんですね。なら、これから一緒に色んな所に行きましょう。」
と、言ってくれたターフィーの言葉に、ザダルは無表情ではなく心からの笑顔でうなづいた。
(バイデル:うっ………)
(ターフィー:笑った! 僕も嬉しいーーー!!)
(ユーグル:なっなんと! 笑うと可愛いのか! 破壊力がスゴい!!!!!)
場所が決まり次第、連絡すると話してその日は終わったのだが。それから、なかなかお互いの都合が合わなかった。
ザダルはクラスメイト達からのお誘いと弟達とのお出かけと祖父母との面会などで忙しく、バイデル達も他の学友達からのお誘いが立て込んでいたのだった。
バイデルは、自分が人気者になった気がして鼻高になり………
ターフィーは、せっかく誘ってもらったからと断りきれず、ズルズルと付き合い………
ユーグルは、まったく誰も相手をせず………
三者三様なのだが、みんなが揃った方がいいと、なんとなくザダルは考えていたため、遊園地に行くこともなく、学年末を迎えた。
学年が上がり、2学年になり………
ザダル、バイデル、ターフィー、ユーグルは別々のクラスになった。
全員が別々のクラスということもあり、話す機会も減り………
お互いがお互いのクラスメイト達とランチをしている姿やユーグルがひとりでランチをしている姿を相変わらずだなぁと見かけたりしながら、時が過ぎていく。
たまに、お互いひとりの時(ザダルの後ろにはマルサが居るが)に、時間があれば立ち話をしたり、すれ違う時などアイコンタクトは取っていたのだが、『みんなで』ゆっくりと話せる時間はなかった。
バイデル達は幼なじみということもあり、学園外ではそれなりに付き合いがあるようで、ザダルは羨ましかった。
それからも時は過ぎ、ザダルが15歳を迎える歳になった頃、ザダルの周りには、令嬢達が群がっていた………
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