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第二十話 ザダル・ラ・ニハク(成長期XⅤII)

【これまでのあらすじ】

宇宙船が旅立ち約500年が経った頃、ダフィタス人が住める環境にある星を見つけた。

星が見つかった!との報告で国民が歓喜に湧いている頃、各国の代表者と室内に置かれたリアルタイムで話すことが出来るスクリーンを通して首脳会議が行われた。

ニハク国の代表者はザダル・ラ・ニハクという人物。

幼少期から青年期、ザダルという人物を形成するのは何か?


久しぶりのザダル視点です。

それは突然だった。


学園の授業も終わり帰る準備をしていると、いつものように女学生達がやってくる。

そこには、クラスメイトも居れば別のクラスの子たちも居る。

相変わらず、僕と話してて何が楽しいのだろう?と思う。

だって、僕は相槌しかしてないし……こちらから話しかけることなど無いに等しい。

たまに弟たちと出かけるにちょうどいいと思えるような情報があったりする時は、それとなく聞き出したりもするが……それ以外は興味ない。

だって女の子達の笑顔が……………………怖い。

あわよくば首脳夫人って思ってるのかな?

けどさ、僕も分かってきたんだよ。

首脳である父は忙しく家にさえ帰って来れない。

そんなことを知らないかもしれないけど、この国のトップってだけで幸せになれると思ってるのかな?

本当に僕が家に帰って来れなくても……それでも僕のこと思ってくれる?

そうやって思うと、女の子達の笑顔が嘘っぽくて……なんだか嫌なんだ。

僕だって、できれば……夫婦仲良くしたいし、仲の良い家庭を築いていけたらと思う。

そんなこと願ったらいけないのかな?

なんて頭の中で考えながら、女の子達の話をいつものように聞き流していたら


「ところで、ザダル様はご存知ですわよね?」


なんて不意に聞かれた。


「ん? なんのことだい?」


と笑顔は崩さず応えると


「私の幼なじみのリーリアと、ザダル様の護衛でいらっしゃるマルサ様がお付き合いしているようですの。」


なんて言い出すじゃないか!


その言葉をキッカケに、クラス内が騒然となる。


いや、僕も目が点だしな!

さすがに顔の表情は崩さなかったけど、思わず後ろのマルサを見ちゃったよ。

マルサはも目を見開き驚いていることは分かった。だが、そのすぐ後に『しまった』って顔を一瞬したんだ。他のみんなは気づかないかもしれないけど、僕には分かる。

これは何かあるのだろう………

けども、マルサは僕の目を見てゆっくりと首を左右に振る。


「マルサは違うと言っているが、どうしてそう思ったのかな?」


と優しく……だけどしっかりと問い詰める。


「昨夜、リーリアのお家から出てくるマルサ様を見かけましたの。その時に、とても浮かれたご様子だったので、つい…………。

あぁ、リーリアがまだ学園に通われてる年齢ということもあり、隠しておきたかったのかしら? 私としたことが、考えもせず話してしまいましたわ………」


と項垂れ、申し訳ないという顔をする。

そんな顔をした彼女を、さすがにこれ以上問うことはできない。

クラスの中は収集がつかないほど、あちらこちらでその話題で話しているし、発言をした彼女は見るからに項垂れ、他の女学生達が慰めている。


これはどうしたものか?とクラス中を見渡すと、女学生の視線がとある令嬢に集中していた。

その視線はとても冷たく見てる僕でさえ痛いと感じるほどのものだった。


あー、彼女がリーリア嬢なのか………

僕は、初めてリーリアを認識した。

彼女は俯き、これでもかと体を小さくして僅かに肩が震えているようだった。


「とにかく、マルサは違うと言っている。あくまでも個人の意見というだけだ。みんなも安易に噂を広めないでほしい。」


と僕は少し大きめの声でクラスメイト達に言う。


その時は騒然としていた場が落ち着いて見えた。

突拍子もないことを言い出した女学生、名をミユリと言ったか?は、幼なじみであるリーリアに声をかけ、そそくさと帰って行った。

その後ろ姿を見ながら、ふと僕は思ったんだ。



『幼なじみと言うならば、リーリアに話す前に何故僕に言った?』



とりあえずマルサと話さないとな!と僕も帰宅することにしたのだった。


僕は初めて知った。

噂話というものは一瞬で広がるものだと………なんとも怖いものだと後日、改めて実感するのだった。



~SIDE リーリア


いつものようにミユリから一緒に帰るなり、先に帰っててと言われるなり声がかかるのを本を読みながら待っていましたの。

それが、ミユリが急にあんなことを言い出すなんて思ってもいなかったのよ。

初めはビックリしたわ。

確かに、マルサ様のことを好きなのね!なんて勘違いされてはいたけど………

それをハッキリと否定できなかったけど………

でも、あんな風にクラス中に聞こえるように言わなくていい話じゃないの?って思ったの。

確かにマルサ様は家に来たわ。けど、それはそーゆーことじゃなくて………でも、どういうことなのか?って聞かれたら話せないことで………なんだかどうしたらいいのか分からなくてパニックになってしまいましたわ。

けどね、私、だんだん腹立ってきましたの。

ミユリは、私を使ったのね………そう思ったら、悲しくて悲しくて………幼なじみであり友人だと思っていたのは私だけだったのだと分かったのです。

ザダル様に取り入るためなのか知りませんが、ミユリは私を使った。

そう思ったら、悲しみと同じくらい腹も立ってきましたの。

腹が立って体が震える。

初めての経験でしたわ。


ミユリが項垂れつつ申し訳ないという顔をしながら「一緒に帰りましょう」と声をかけてきた時、その顔の向こうに歪んで醜いミユリの笑顔が見えたような気がしたの。

私も負けじと俯き、ミユリに寄り添うようにクラスを後にしましたわ。

ミユリも私も動揺してて、これ以上の攻撃は来ないはず………

心の中ではミユリのことを、いつ蹴ってやろうかと思ってましたけどね。

ミユリにはバレるでしょうね。なにせ幼なじみですし? お互い負けず嫌いなのも知ってる仲なのですから………本当に悲しくて淋しいですわね………もう友達ではないのですね。


ミユリの背中を見ながら頬をつたう涙をさりげなく拭いました。

私もザダル様のように貼り付けた笑顔を覚える時が来たのですね。

ザダル様のあの腹立つ笑顔………あれは仕方なく覚えたことなのだと、やっと分かりました。

殴りたいなんて言ってごめんなさい。ザダル様。



~SIDE マルサ


思いっきり殴られたような衝撃だった。

俺のことはいい。どうとでもなる。

けど、リーリア様まで巻き込んでしまった。

リーリア様は未来の首脳夫人となるお方なのだ。

そして、昨夜、気持ちを素直に話してくれたのだ。それなのに………また………こんな俺と噂話だなんて………どれだけの迷惑と心労をかけてしまったのか。


あっ!ザダル様の雰囲気が怖い………ヤバい。

そして、今夜きっとザダル様はリーリア様との関係を知ることになるのだろう。

俺はなんてことをしてしまったんだ!!

頭を抱え逃げ出したくなるのを必死に抑える。

堂々と……かつ、周囲に目を配り護衛に徹する。

今夜のことは考えない!!

考えたら崩れる………ライドの顔が浮かぶ。

……………………………………逃げたいよぅ。



~SIDE 幸美


幸美は、前を歩くミユリの背中をずっと見つめていた。

リーリアちゃんが、前を歩くことを許したのは「私が守ってあげる」と言ったミユリのことを好きだから。


幸美もリーリアちゃんの中で、幼いミユリの笑顔を見ていたのだ。

笑い合い庭を走り回るリーリアとミユリ。

ふたりは本当に楽しそうに笑っていたのだ。


ふと、ため息が出る。

幸美にとって女同士のゴタゴタなんて遥か昔のことだった。

けど、規模は違えど幸美にも経験はある。

ただ、リーリアちゃんはこの国の首脳となる人の許嫁だ。規模が違う。

それに、リーリアちゃんは大人しい女の子ではない。

優しい子ではあるけれど、お転婆で負けず嫌いな女の子だ。

ただ、教養のことで悉く自信がなくなっちゃって……人の後ろに居ることで、これ以上傷つかないように今は自分を守っているだけ………幸美はそう思っている。

そんなリーリアちゃんのことを、いつかまた、ミユリちゃんと笑い合える日が来るといいね!って思っていた。


恋は盲目というけれど……友達を傷つけちゃうまで盲目になるもの?……ザダルくんに近づくためなら、子どもの頃に遊んでたリーリアちゃんまで……悲しいわぁ………

ただねぇ……ミユリちゃん……リーリアちゃんを見誤ってないかい?

リーリアちゃんは……やる時はやる子なんだよねぇ………












読んで頂き、ありがとうございます。


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