第十六話 ザダル・ラ・ニハク(成長期XⅢ)
【これまでのあらすじ】
宇宙船が旅立ち約500年が経った頃、ダフィタス人が住める環境にある星を見つけた。
星が見つかった!との報告で国民が歓喜に湧いている頃、各国の代表者と室内に置かれたリアルタイムで話すことが出来るスクリーンを通して首脳会議が行われた。
ニハク国の代表者はザダル・ラ・ニハクという人物。
幼少期から青年期、ザダルという人物を形成するのは何か?
~SIDE バイデル・レオ・ロハク~
俺は『レ家』の分家レオ家の長男だ。
妹がひとり居るが、9歳下で俺が学園に入園する少し前に産まれた。
だから、あまり構ってやれず抱っこすると泣かれる。
赤ちゃんの妹は可愛いのだが、泣かれるとどうしたらいいのか分からなくなるから、抱っこもしないようにしている。
だからか、あまり懐いてはくれない。
母親は妹にかかりっきりだ。妹の世話で大変だろうし仕方ないと思うが、少し寂しいと思う。
俺は、分家に産まれたことが無性に嫌だと思っている。
父親は、本家のヤツらに良いように使われていると、毎日のように愚痴っては母親に当たっている。
母親が父親の帰宅時間が遅いと言えば、本家のヤツらに仕事を押し付けられたからだ!と言ってはケンカしているし、休み返上で仕事に行くことになったと休日も仕事に出かけてしまう。
母親が妹の世話で疲れていても、俺も仕事で疲れていると言っては家で酒を飲んで寝てばかりだ。
こんな父親も俺が小さい頃は、優しくてカッコイイ人だった。
父親の仕事はシステムエンジニアだ。
その頃の父親は
「バイゼル、いいかよく聞けよ。父ちゃんはな、この仕事を誇りに思ってるんだ!この宇宙船を維持していくためには必要な仕事なんだぞ。昔にこの宇宙船を作った人はレ家の家系の人なんだ! だから父ちゃんは、その人のようにお前達がもっと過ごしやすい環境を作っていく仕事をしてるんだ。 凄いだろ!」
って俺を抱き上げて、ニカッと笑いながら頭を撫でてくれた。
俺は、そんな父ちゃんが大好きで、父ちゃんの後ろをついて歩いてた。
俺の尊敬する父ちゃんだ。
ついて歩く俺を父ちゃんは、抱き上げて散歩をしたり一緒に遊んでくれた。
そんな父ちゃんが、段々変わっていってしまったのは、本家のヤツらのせいだっていうじゃないか。
でも、その本家のヤツらにも頭が上がらないのが『ラ家』『リ家』『ル家』のニハクが家名につく家だ。
俺は、絶対に登ってやる。
俺が政治の中枢で活躍したら、分家じゃなく本家になれるかもしれないだろ?
俺がレ家本家当主になってやるんだ。
たとえ家柄は変えられなくても、世間に認められるたなら………そうしたら、父ちゃんを…………優しかった父ちゃんをこんな風にした奴らに頭を下げさせることができるだろ?
都合が良いのか悪いのか分かんないけど、レ家当主の息子のターフィー・レ・ロハクが俺の幼なじみであり、同じ歳だ。
物心ついた時から、ロ家当主の息子ユーグルと3人で遊んでいる。
母親同士が仲がいいということもあり、息子同士で同じ歳ということで、しょっちゅう連れ立っては遊びに行っていた。
近所の公園で遊具で遊んだり走り回ったりしてた。
はじめは遊び友達で何とも思ってなかったんだ。
ずっと幼なじみとして付き合っていけると思っていた。
だけど、俺だけ分家ってことで母ちゃんも他の大人達も、ターフィーやユーグルより前に出るなとか、かけっこしてても負けるように!とか言い出して………なんでだよ!って意味が分からなかったよ。
けど、父ちゃんもそうだったのかもなって思ったんだ。
仕事で父ちゃんが頑張っても、父ちゃんじゃなく本家のヤツらの手柄になっていったんじゃないか?って思ったんだ。そしたら、父ちゃんが酒を飲んで寝てるのも仕方ないって思えた。
頑張ってるのに報われないなんて、そんなの嫌だ。
けど、ほんと大人って馬鹿だよな。
ターフィーは競走するの苦手なんだよ。ひとりっ子ってのも影響してるのか知らないけど、競走して俺に勝って1番になるってのより、一緒に走ってることが楽しいみたいだ。
前に1度、わざとターフィーより後ろを走ったんだ。
そしたら、立ち止まって俺を待って「どーしたの?具体悪い?」って聞いてくる奴だぜ?
自分が1番になるより俺の心配する奴なんだよ。
ユーグルなんて、かけっことか興味ないってハナから走らねーし。それよか花とか虫とかの絵を描いてるし………俺とターフィーが遊んでるところを書くのが楽しいから、勝手にどーぞなんて言い出す奴だぞ?
そんな3人で、自然と俺がまとめ役みたいになってるのに、前に出るな!なんてムリだろ………はぁ。
ターフィーは本家の長男だけど、幼なじみとして好きだよ。
だけど、俺は俺の父ちゃんを苦しめたヤツらを見返したい。
父ちゃんを苦しめることで、母ちゃんまで泣いているんだ。
だから俺の家族をバラバラにしたヤツらを許さない。
だから、ごめんな………ターフィー。
俺、何がなんでも偉くなってやるんだ!
名誉も金も女も最高を手に入れてやるんだ。
そして、父ちゃんを苦しめたヤツらを見返してやる。
だから父ちゃん。
俺が偉くなるまで待っててくれ。
ザダル様とはじめてカフェで会った時、ほんとに『やった! ザダル様と仲良くなって、そのツテでチャンスが得られるかもしれない』って思ったんだ。
ザダル様を利用するつもりだった。
けど何度か話してる時に、学園に入学するまで出かけたことなかったって聞いて不思議に思ったんだ。
俺はてっきり、ザダル様のような立場の人達って何不自由なく過ごしてて、贅沢の極みっていうのかな、そーゆー事を当たり前のようにしているムカつくヤツらだと思ってたんだよ。
だから、利用することを何も思わなかった。
周りのやつらがザダル様のこと悪く言ってても、俺もそーだしなって思ってた。
ザダル様の無表情なんて今に始まったことじゃねーだろ!って思ってた。
それより、ザダル様と仲良いって思われて、クラスメイト達が俺をチヤホヤすることの優越感の方がたまらないくらい気持ち良かった! 最高!!って思ってた。
ターフィーやユーグルとクラスが離れても、俺に擦り寄ってくるヤツらを見てると気分が良かったから、はじめは何とも思わなかったんだ。
だけど、何故か段々虚しくなっていった。
その虚しさを誤魔化すために、休みの日には幼なじみ達となるべく会うようになった。
アイツらと居ると、自分に戻れた感じがして安心できた。
そこでやっと思い出したんだ。
ザダル様と会ってまだ間もない頃、恥ずかしそうに「出かけたことがなくて……学園に通い出してから周りの人達の話を聞いて知ったんだ」なんて言い出したことを。
一緒にファンタジーランドに行こうって言えば、嬉しそうに笑顔で頷くし……
そして、いつも無表情なのに笑ったら、本当に可愛いんだよ。しかも、心から喜んでるって分かる笑顔でさっ。ものすごく驚いたことを思い出したんだ。
だから調べてみたんだ。
首脳のスケジュールなんて、調べてみたら簡単に分かるんだな。もちろん過去の分だけだけど。
それ見たら、いかに家に帰ってないか分かったよ。
護衛が怖いしザダル様には直接聞けなかったけどな。
それに、ザダル様と話してても出てくるのは弟達と祖父母の話だけなんだよ。父ちゃんも母ちゃんも出てこないんだ。
だから、学園に入る前まで出かけたことないって本当なのかもしれないって思った頃、ターフィーが悲しそうな顔して教えてくれたんだ。
ザダル様とふたりで話してる時に、学園に入る前までは何をして過ごしてたの?って聞いたんだと。
ザダル様の好きなことってなに?って知りたかったから聞いたって言ってたな。ターフィーらしい。
そしたら「家庭教師が居て、ずっと勉学と護身術やら剣術の稽古で弟達と過ごす時間さえなかった」って「僕が学年代表なのは、5歳の頃から勉強してるからで、本当は頭良いわけじゃないじゃないんだよ」って、こっそり教えてくれたって。
俺はあ然としたよ。
5歳なんて、俺やターフィーやユーグルなんて公園で遊具や走り回って遊んでたし……
勉学なんてものの存在さえ知らなかったよ。
あんなに弟達を可愛がってるのに、弟達と遊ぶことさえできないくらい勉強して、体鍛えて………それが上に立つ者の当たり前なんだ。
無表情にもなるわ!って思った。
同じ歳のヤツらが遊んでる時に、努力してきてるんだ。
たかが無表情ってだけで、なんで文句言われないといけないんだ?
頑張ってきたことが報われないって俺が1番嫌いなことじゃねーか!
ザダル様は頑張ってきた人だ!
そんな人を悪く言うなんて……最低だ!
そんな人を利用する俺は、ほんと最低だ!!
俺は最悪な奴だ…………
ある日の帰りがけ、ユーグルが「とうとうザダル様がご自身の悪口を聞いてしまった」って……「それで、涙を流していらした。その涙が本当に美しくて………はぁ。」と、最後の方は、相変わらず意味不明だけど言ってきたものだから、慌ててクラスを飛び出した。
けどザダル様の顔を見たら『こんな最悪な俺がザダル様に何を言える?』ってもう1人の俺に言われた気がして………何も言えなくなった。
だけど、涙が出るくらいショックを受けてるザダル様を励ましたかった。
ザダル様の肩を叩くことで精一杯だったんだ。
ザダル様の顔をそれ以上見れなくて………そのままザダル様から離れてしまった。
けど、ザダル様と仲が良いと思われてる俺が下を向くのは、ザダル様にとって悪影響になるんじゃないか?って思って、人の目がある所では胸張って歩くくらいしか俺には出来ることがなかったんだ。
この頃から、自分が本当はどうしたいのか?どうしたらいいのか?分からなくなっていったんだ………
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