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第十一話 ザダル・ラ・ニハク(成長期Ⅷ)

【これまでのあらすじ】

宇宙船が旅立ち約500年が経った頃、ダフィタス人が住める環境にある星を見つけた。

星が見つかった!との報告で国民が歓喜に湧いている頃、各国の代表者と室内に置かれたリアルタイムで話すことが出来るスクリーンを通して首脳会議が行われた。

ニハク国の代表者はザダル・ラ・ニハクという人物。

幼少期から青年期、ザダルという人物を形成するのは何か?

ザダルがマーサと話した後、ザダルは体調を崩した。

久しぶりに熱を出したのだ。


ぼーっとする頭で、何も考えることができない。

ただマーサが言った言葉が、まるで目の前に浮かびあがるように思い出される。

幻覚でも見ているような気分だった。


『自分が楽しく居たいから、落ち込んでる人には寄り添いたいし。嫌な気分な人には笑顔になってもらいたい。そうしたら、俺も幸せだし、楽しいだろ?』


『思ってることって、雰囲気とかそーゆーのに出てるんだよね。それと、なんだか悲しそうだったのも感じたんだ。それでね、笑ってほしかった。人を笑したり楽しい気持ちにするには、自分が笑ってないとね! でも、それは俺のためだから!』


何度も何度もマーサの言葉が目の前に浮かび上がって消える。

そのうち、体が求めるように睡眠へと誘う。

そんなことを繰り返していると、頭もだいぶスッキリしてきた。


ふと、サイドテーブルを見れば、いつでも飲めるように水差しが用意されている。

温かさを保つ保存器の中には、スープもある。

ライドが用意してくれたことが、すぐに分かる。


首脳である父の専属補佐をしているライドの兄に、ライドはファンタジーライドの貸切をしたいと何度もかけ合ってくれている。

何故か許可が下りないのだと珍しく顔を歪めて怒りを顕にしたライドを思い出し、少し笑ってしまう。


あぁ。そーゆーことか…………


僕は、僕の悪口を言われて悲しくて悔しくて嫌な思いをして腹も立って。

そして、どうせ分かってもらえないとか、どうせ僕のこと嫌いなんでしょとか諦めて。

だけど、それは自分で自分のこと諦めるってことなんだ。

でも、それがやっぱり悲しくて悔しくて………心の中で悪口言って………なんだ、アイツらと僕は一緒じゃないか!


マーサは真っ直ぐなんだな。

悲しんでいる人には寄り添い。嫌な気持ちを抱えている人には笑って楽しい気持ちになってもらいたい。

でも、それは自分が楽しく生きていたいから………

誰かのためとかじゃない。自分がそうしたいからしてるんだと………

マーサはヤ家の者だ。

本来なら、あのグループではマーサが皆に気を使われて当たり前の立場にある。

学園という枠の中では、身分はさほど影響しないと言っているが、表面上言ってるだけだと嫌と言うほど実感している。

あのグループ内では居ないけど、周囲の者の中には、いつもふざけている様に見えるマーサのことを、自分より下に見る者も出てくるだろう。

そういった者の態度や言葉をマーサなら感じてしまうのだろう。

だけど、それさえも『自分がしたくてやってること』だと言うマーサは、強い人だ。

1人きりの時に、本来のマーサになるのだろう。

強くて……… なんて素敵な人なんだろう。

やたらと絡んできたり、すぐに肩を組んできたりと距離感は近すぎるけど、それもマーサなら許してしまう。


ライドは、僕のために怒ってくれている。

今も、時間を作ってはファンタジーライドの貸切許可を貰おうと頑張っている。

そんなライドを見ていると嬉しくなる。


けど、僕の怒りは?

僕はただ、僕が悲しかったから。悔しかったから怒っていただけだ。

そして、そんな自分と向き合うことも諦めて、心の中で悪口を言ってる。

僕、僕、僕。全部僕のためだけど、全くかっこよくない!!

あーーー、なんて小さいヤツなんだ!

恥ずかしい。

と、顔を両手で塞ぎ、羞恥心に悶えていると、ライドが部屋に入ってきたらしく、素早く駆け寄ってきた。


「ザダル様、大丈夫ですか? 」

と冷静な物言いは変わらないが、少し慌てているようだ。

そんなライドに

「なんでもないよ。体調は良くなったよ。」

と、応えるのだが、ライドが疑いの目を向けてくる。


「本当に体調は回復されているのですか?」

と、手首につけられた体調管理装置を確認するライド。


「体調は大丈夫。熱も下がったと思うけど、どう?」


「はい。熱も下がりましたし、脈も正常です。………先程はどうして顔を塞いでいらしたのですか?」


「たまたまだよ。別に意味はないよ。」


「そうですか……」


納得はしていないが問い詰めることをしないライドを有難く思う。

ザダルも心の機微を話すなんて恥ずかしいと思うお年頃になっていたのだ。



~SIDE マーサ~

僕は寂しがり屋だ。

末っ子の僕は、いつも兄の後を追いかける。

お兄ちゃんが大好きだ。

優しいし、ちょっとした僕のワガママだって文句を言いつつも最後には聞いてくれる。

「まったく………」と言いながら頭を撫ぜてくれる優しいお兄ちゃんだ。

僕は親の機嫌が良いとか悪いとかを見極めるのが上手い。

だって、親の機嫌でお兄ちゃんと遊べる時間が多くなったり減ったりするんだ!

だったら、楽しい気持ちになってもらってお兄ちゃんと沢山楽しく遊べた方がいいに決まってる。

それでも、お兄ちゃんが学園に通い出してからは遊べる時間が減り、駄々を捏ねてはお兄ちゃんを困らせたな。

そんな僕も学園に通うようになった。

同じ学年に次期首脳が居るとクラスメイトは盛り上がってた。

僕もそのことは両親から聞いていたし、ヤ家に生まれた以上、今後関わっていくのだと聞かされていたから自然と目がいった。

次期首脳のザダル様は、容姿が整っているけど笑顔はなく、なんとなく近寄り難い感じだ。

体格のいい護衛が常に後ろに居るのも、近寄り難いのを増幅してる。

けど、なんだか寂しそう………と僕は思ったんだ。

だから、たまにザダル様を見かけると気になっちゃて、知らず知らず目で追いかけてしまうことがあった。

ザダル様にも仲の良い学友ができたようで、無表情だけど、楽しそうな雰囲気が伝わってきて関係ないけど嬉しいと思ってたんだ。

僕も僕で、楽しく過ごせるように場の雰囲気を楽しくしたり………と色々やってみたんだ。

そしたら、僕のことを馬鹿にするような目で見てくる人や、あらか様に下に見る人も出てきて………悲しかった。

ザダル様の様に、毅然とした態度の方が良かったのかな?って悩んだこともあった。

けど、ザダル様が陰で色々と言われていることも僕の耳に入ってくる。

僕のように楽しい雰囲気の場を作っても、ザダル様のように毅然としていても、結局は色々と言うヤツは居るんだなって思った。

そう思ったら、なんだかふっ切れたんだ。そしたら、僕のそういう思いを分かってくれてる(と勝手に思ってる)学友達だけが常に周りに居てくれるようになった。

僕が馬鹿をしても、ただ楽しく居るだけで馬鹿になどしない。

「ここは居心地いいよー」って言ってくれた時、「だよね~」って軽く応えたけど、本当は泣きそうなほど嬉しかったんだ。

それでも、たまに落ち込むことだってあるんだ。

そんな時はどうしても笑顔になれなくて………ひとりクラスに残って風景を見たりしている。

どうしてだったか忘れちゃったけど、ザダル様が僕たちのグループと関わるようになった。

その時ビックリしたんだ。ザダル様の雰囲気がものすごく暗いし、とっても荒れてたから。

「どうしたの?」なんて聞けないし、僕のやり方でザダル様も楽しく過ごせるように沢山ふざけてみたりしたけど、きっとあの時は僕のこと嫌いだったと思うんだ。そんな雰囲気してたし………

嫌われたと思ったら悲しかったんだけど、ずっとウジウジじゃなくてグダグダかな?暗い雰囲気のザダル様を見てたら、どうしてもほっとけなくって。

頬っぺたムニムニしちゃったんだよね。

僕がお兄ちゃんと遊べなくて拗ねてる時に、お兄ちゃんがしてくれた必殺技なんだ。

だから、ザダル様にも効くかも!って思ってさ。

そしたら効果てきめんだったね!やっぱり僕のお兄ちゃんは凄いよね!!

あと凄いのは、ザダル様の笑顔だったよ。

すんごい可愛いの。ビックリしてその場を離れちゃたよ。勿体ないことしたーーー!

けど、それからザダル様は僕達のグループでは、よく笑うようになった。

みんなと楽しく話したりしてて、雰囲気も楽しそうで………僕も気持ちが上がる。

そんな時、ふと思っちゃったんだよね。

ザダル様って、とっても素直な人なんじゃないか?って。

次期首脳だとか、学年代表だとか、そーゆー付属のもののせいで色々言われてさ。

けど、ザダル様自体は、ほんとに気のいい可愛らしい人でさ。

なんか切ないなぁって。

ひとり、そんなこと考えてる時にザダル様がクラスの前で立っててビックリした。

そして、ザダル様からの問いかけにも驚いたよ。

「なぁマーサ、教えてくれないか? どうしてマーサはいつも笑ってるんだ? みんなを笑わせているんだ?」

なんて、どストレートに聞いてくるんだから。

その時のザダル様は、ほんとに真剣で………いつもふざけてる僕なのに、ちゃんと聞こうとしてくれる態度が嬉しかった。

そして、本当にちゃんと聞いてくれたんだよね。

受け答えも「そうか……」とか、ほんとカッコイイんだ。

だから、僕もちょっとカッコつけて話しちゃったんだ。

だから、僕のワガママでしてるんだ!って最後にはフォロー入れたんだけどね。

話した事に嘘は言ってないよ。

いつもふざけてる僕の話を真剣に聞いてくれたこと、本当に嬉しかったんだ。

だから、ありがとうってお礼を伝えたら、ザダル様もテレた顔してて………


実は僕、ザダル様のファンになっちゃったかもしれない。

役者さんや歌手の人のファンの気持ちって、こんな感じなのかな?って思ってさ。

この人に笑顔で居てもらいたいって思うのかな?って。


「やっぱり、ザダル様は笑ってた方がいいよ。ザダル様の笑顔を見ると、なんだか分かんないけど安心する。」


僕の気持ちだよ。

ザダル様が笑顔だと僕も嬉しいよ。

あっ!やっぱり僕のためだね。



読んでくださりありがとうございます。


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