表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ショートストーリー集 ~百合好きなのでさまざまなジャンル・シチュエーションの百合を描いていきます~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

791/1280

第789編「Pump & Love」(鍛えた身体も、愛する気持ちも、誰にも負けない)

 ジムの鏡張りの壁に、自分たちの姿が映る。トレーニングウェアに包まれた引き締まったボディ、汗の滲む肌、力を込めた腕のライン。


「よし……今日はベンチプレス、自己ベスト更新しよう」


 そう意気込んだのは美玲みれい。肩までの黒髪をポニーテールにまとめ、黒のスポーツブラとレギンスを身に着けている。均整の取れた筋肉はしなやかで、ベンチプレス台に寝そべる姿勢からも、普段のトレーニングの成果がうかがえた。


「ちゃんとフォーム気をつけてね。私が補助するから」


 隣に立つのは杏奈あんな。ハーフアップの茶髪が軽く揺れ、タンクトップから覗く肩の筋肉がなめらかに光る。彼女はパーソナルトレーナーの資格も持つほどの本格派で、美玲のトレーニングのサポートを欠かさない。


「いつも通り、肩甲骨を寄せて、グリップは肩幅より少し広め……」


「うん、わかってる!」


 美玲は深呼吸をし、ラックにセットされたバーベルを持ち上げた。今日は50kg。これまでの自己ベストは48kgだった。


「1回目……いいよ、その調子」


 杏奈が上から見守る中、美玲はゆっくりとバーベルを下ろし、胸の上ギリギリで止める。そして力強く押し上げた。


「っ……!」


 2回、3回と繰り返すうちに、腕と胸の筋肉が震え始める。しかし、美玲の表情にはまだ余裕があった。


「あと2回、いける?」


「いける……!」


 4回目、杏奈の声が優しく響く。


「ナイスコントロール。最後、しっかり押し切って!」


 5回目、腕が限界を訴え始める。しかし、美玲は歯を食いしばり、最後の力を振り絞って押し上げた。


「っしゃあ!更新!」


 バーベルをラックに戻し、深く息を吐く。腕はパンパンに張っていたが、それ以上に達成感があった。


「すごいよ、美玲!自己ベスト更新、おめでとう!」


 杏奈が嬉しそうに微笑みながら、手を差し出す。美玲はそれを強く握り返した。


「ありがとう、杏奈がいたから頑張れた」


「当然でしょ。だって、私の大事なパートナーだもん」


 汗に濡れた肌を撫でるように、杏奈の指が美玲の腕を辿る。トレーニング仲間として、そして恋人として、お互いの身体も心も支え合ってきた。


「次は杏奈の番でしょ?」


「うん。でもその前に……ちょっと水飲んで、一緒にストレッチしよ?」


 二人はタオルで汗を拭きながら、ジムの片隅に移動した。


###


「やっぱり、ストレッチも大事よね」


 美玲はマットに座り、太ももの裏をじっくりと伸ばす。


「筋トレだけじゃなく、柔軟性も鍛えないと怪我しちゃうからね」


 杏奈はそう言いながら、美玲の背中に手を当て、ゆっくりと前屈をサポートした。


「よし、そのまま……うん、ハムストリングス、ちゃんと伸びてる」


「杏奈の手、気持ちいい……」


「ふふ、でしょ?」


 優しく触れられる感触に、美玲の頬がほんのり熱を帯びる。トレーニング中はストイックな二人だが、こうして触れ合う時間には、少し甘えたくなる気持ちが芽生える。


「杏奈の背中も伸ばしてあげるね」


 美玲は杏奈の後ろに回り、そっと彼女の肩を押した。杏奈の背筋は美しくしなり、しっかりとストレッチされる。


「……美玲の手、温かいね」


「杏奈の身体も、すごくしなやか」


 二人はしばらく静かに呼吸を合わせ、ストレッチを続けた。


###


 トレーニングが終わり、プロテインドリンクを片手に帰り道を歩く。


「ねえ、今日のご褒美は何にする?」


 美玲が尋ねると、杏奈は少し考え込む。


「うーん……焼き肉?」


「タンとハラミ、食べたい!」


「じゃあ決まりね。高たんぱく、低脂肪。筋トレ女子の正しいご褒美ディナー!」


 二人は笑い合いながら、駅へと向かった。


###


 食事を終え、シャワーを浴びた後、ベッドに並んで横たわる。杏奈の肩に頬を寄せ、美玲はそっと囁いた。


「杏奈……今日はありがとう」


「何が?」


「一緒に頑張ってくれるから。こうやって支えてくれるから」


 杏奈は微笑み、美玲の頬にそっと触れる。


「私も同じ気持ちだよ。美玲がいるから、私ももっと強くなりたいって思える」


「……これからも、ずっと一緒にトレーニングしようね」


「うん。そして、もっと鍛えて、もっと強くなって……ずっと、美玲のそばにいる」


 その言葉とともに、杏奈の唇が美玲のものに重なる。


 トレーニングも、愛も、決して妥協しない。二人の心も、身体も、これからも強く輝き続けるのだから——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ