第8話 謁見
魔王の間の扉が開かれた。
ルシアン一行が広い室内を進む。
一人の少女がパタパタと本棚のホコリを落としていた。
魔王軍にさらわれた人間の少女だろうか?
メイドとして労働させられているのかもしれない。
「こんにちはお嬢さん。だいじょうぶ?ひどい事されてない?きみをここに連れてきた魔王を探してるんだけどどこへ行ったか知らない?」
ルシアンは心配そうに彼女に近づいた。
「慎め!魔王様に対してなんという口の利き方か、無礼者!」
顔を真っ赤にしてアーサーが怒る。
「魔王様、わが同胞が無礼な口上で大変失礼しました……どうかお許し下さい」
「アーサー、気にしないで。あなたたちだって私と初対面の時はこんな感じでしたよ」
魔王と呼ばれた少女は笑顔で答える。
「申し訳ございません、お恥ずかしい限りです」
アーサーは静かになった。
掃除を中断して、少女は丁寧にお辞儀をして名乗った。
「魔王を務めさせていただいてます、エレノアと申します。初めまして、人間の皆様」
ルシアンには信じがたい光景だった。
魔王を倒すために国の代表としてこの場に足を運んだのである。
元来の魔王という言葉に付随した仰々しいイメージも当然あった。
それがどういうことだ。
どう見てもただの礼儀正しい華奢な少女にしか見えないこの存在を、我々は討伐しに来たのか?
当初のイメージと現実のギャップに大きな違和感を覚えるのだった。




