第11話 理解
「先ほど人間全体の総戦力が23000と言いましたが、魔族全体の総戦力は680000です。物騒な話ですが、仮に魔族が地上に出れば人間社会を2時間で完全制圧できますし、私一人でも半日あれば充分制圧可能です。でもご安心下さい、皆さんが無条件降伏して我々の支配を受け入れて下されば絶対にそんなことにはなりません」
アーサーの魔王軍投降は人類への裏切りなどではなく正しい選択だった。
勇者隊の動向次第では地上の人類は危機に晒される。
「誤解の無いよう捕捉させてください。私たち魔族は人間を支配下に収めるからと言って、決して人間の皆さんを酷使したりするような事は予定していません。衣食住を保証し、なるべくストレスなく平和や苦楽を共にしたいと思ってます。でも種の違いとパワーバランスがある以上、対等な関係というわけにはいきません。皆さんもワンチャンや猫ちゃんをペットとして飼うことがありますよね。明確なパワーバランスを人間側も動物側も理解したうえで支配関係が成り立っています。支配してるからと言ってペットをぞんざいに扱ったりしないはずです。愛情もわきますし、死なれたときにはすごく悲しくなると思うんですよ。その一方、いかに下位の種であっても危険な場合は飼育が難しいですよね?クマとかライオンは個人では簡単に飼育できません。我々が人間の皆さんに無条件降伏をお願いしているのもそれと同じ感覚なんです」
力ずくで人間制圧もできるがそれはせずに共存を目指している。
支配というと聞こえは悪いが優れた指導者による統治と言っても通るかもしれない。
ルシアン勇者隊一行は魔王の提案が案外悪いものではないのではないかと感じ始めていた。
「まずは魔王討伐などと称して今回不躾に乗り込んだ非礼をお詫びします。そのうえで、圧倒的な戦力差にも関わらず人間を丁重に扱って下さるという公約があれば、魔族と人間の共存は不可能ではないと思います。人間はこれまでの地上の支配者としてのプライド高い生き物なので支配されることに抵抗や拒否の声は必ず上がります。しかし現実的な戦力差への理解が進めばそう言った意見も減っていくと考えます」
反抗=死
自分たちのみならず人類すべてにこの可能性が及ぶ以上、降伏以外の選択肢はない。
まして納得しうる最低限の条件提示まであるのだ、魔族の傘下による庇護で人間社会が盤石になる可能性すらある。
かくして、魔王軍ロイヤルガード ルシアンが誕生した。




