第三十八話 スキレット(前半)
朝。朝食を食べ終えた私は、食堂でぐったりとしていた。私は昨日旦那様に、好きと告白した。そして私と旦那様は、相思相愛であることが確認できた。なので私はキスを期待したが、結局旦那様はキスをしてくれなかった。もー! 相思相愛ならキスくらいしてくださいよ旦那様ー!
そうして私は、考え始めた。今日のお茶の時間は、旦那様とどう接しようかと。そうして私は、ずっと考えていた。だが良いアイデアは、全然出なかった。するとこの食堂の隣のキッチンで、カチャカチャと音がし出した。
ああ、もうすぐ午前十時か。なのでメイドのユリーが、紅茶セットを用意しているのだろう。ちなみに食事も担当しているメイドのリーナは今、畑仕事をしているのだろう。そこで私は、ふと思いついた。ちょっとユリーに、相談してみようと。なので私は早速、キッチンに入った。すると予想通りユリーが、紅茶セットを用意していた。キッチンに入った私に気づくと、ユリーは私に挨拶をした。
「あ、おはようございます、レコア様。もう少々、お待ちください。もうすぐ、紅茶セットの用意ができますので」
「あ、いいの、いいの。そんなに慌てなくて。あなたはいつも通り、美味しい紅茶が飲める紅茶セットを用意してくれればいから」
「は、はい。ありがとうございます」
うんうん、ユリー。今日も、期待してるわよ。美味しい紅茶が飲める、紅茶セットを。でも、と私は考えた。今日はそれよりも、相談に乗って欲しい。どうしたら男性から、キスしてもらえるか。ハッキリ言って、ユリーにはあまり期待していない。どう考えてもユリーは、男性とキスをしたことが無さそうだからだ。
ユリーは、確かに可愛い。でもそれは、子どもっぽさが残る可愛さだ。だから私にはユリーが男性と付き合ったり、キスをすることが想像できない。でも、それでも良いと思った。いや、そんな男性経験がないユリーだからこそ、今の私の話し相手にちょうど良いと考えた。そう考えた私は、早速ユリーに質問してみた。
「ねえ、ユリー。ちょっと聞いてもいい?」
するとユリーは、紅茶セットを用意する手を止めて私を見た。
「は、はい。なんでしょうかレコア様?」
「あ、いやいや。紅茶セットを用意しながら、聞いて欲しいの。まあ、ちょっとした世間話を私はあなたとしたいの」
「は、はあ。そうですか……」
とユリーは、再び紅茶セットの用意を続けた。なので私は、聞いてみた。
「私はあなたに、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
するとユリーは、紅茶セットの用意をしながら答えた。
「は、はい。何でしょう?」
「あなた、キスをしたことはある?」
「え? キ、キスですか?」
「そう、キス。あなたは、したことある」
「え、えーと……」
とユリーは、少し考えているようだ。いいのよ、ユリー。あなたはきっと、男性と付き合ったことも無ければキスをしたこともない。でも、それでいいの。私は今、そんなあなたと話をしたいの。するとユリーは、アッサリと答えた。
「えーと……。ありますよ、キスをしたこと」
それを聞いて、私は驚いた。
「え? ええええ?!」
あ、あるの、ユリー?! あなた、キスをしたことがあるの?! と動揺した私は、ユリーに迫った。
「だ、誰?! あなたは、誰とキスをしたの?!」
「は、はい。幼馴染とです」
「お、幼馴染?」
「は、はい」
そう聞いて、私は全身から力が抜けた。な、なーんだ。幼馴染とキスしたってことは、子どもの頃の話か。子どもの頃に、幼馴染とキスをしたのか。なーんだ。でもそれは、微笑ましいわ。ユリーらしいわ。なので私は、ユリーに確認した。
「なるほど、なるほど。つまりあなたは、子どもの頃に幼馴染とキスしたってことね?」
「いえ、違います。最近ですと、この間のお城での仕事が休みの時です。その時実家に帰って幼馴染と会って、キスをしました」
「な、何ですとー?!」
つ、つい最近?! つい最近、キスをしたの?! うーん、やるわねユリー。でもきっと、それが初めてのキスね。つまりユリーは、まだ一回しかキスをしたことがないのね。ふふふふ、私の勝ちね。何と言っても私は、旦那様と二回もキスしたんだから! なので私は、余裕でユリーを労った。
「なるほど。つまり、それが初めてのキスだったのね。おめでとう、ユリー」
するとユリーは、とんでもないことを答えた。
「え、いやあ。初めてじゃないですよ。もう何度もその幼馴染とキスをしたので、何回キスをしたのか憶えてません。てへ」
な、何ー?! 何回キスをしたのか憶えてなほど、キスをしただとー?! い、いたよ。こんなに身近に、キスのマスターがいたよ! 聞こう、このキスマスタ―に聞こう! どうすれば男性と、キスできるのか?! あ、でもさりげなくね。そして私は、ユリーにさりげなく質問した。
「あ、そ、そうなの。ふーん……。ま、まあ私も、キスくらいしたことがあるんだけどね。ま、まあ。それはともかくとして、あなたはキスをする時、どんなことに気を付けてるのかしら?」
するとユリーは、少し経ってから答えた。おそらく、考えていたのだろう。
「えーと……。やっぱり、ムードですかね。キスをしやすい、ムードですね」
ム、ムード?! なるほど、ムードね! よし。私はこれから旦那様の執務室に行って旦那様に会うが、その時にムードを作ろう。キスをしやすいムードを! そのためには……。ふふふふ、アレだわ。アレでキスをしやすいムードを作って、今日こそ旦那様と三回目のキスして見せるわ!




