第二十二話 一緒に昼食も食べましょう
私は旦那様との畑デートを終えて、自分の部屋に戻った。そして、少し混乱していた。旦那様が、昼食も一緒に食べましょうと提案したからだ。どうして急に?……。
今日の午前の畑デートで、私と旦那様は手をつないだ。私としては、これだけでも嬉しかった。お城の畑でとはいえ、旦那様とデートができたからだ。そして何と、手をつないだ。それで私は『スキンシップ』と言い、『スキ』と言ってしまったので勝負には負けた。
でもそんなことは気にならないほど、私は嬉しかった。私と旦那様の心の距離が更に縮んで、この形だけの白い結婚からまた少し抜け出した気がしたからだ。と喜んでいたら何と旦那様が、昼食も一緒に食べようと提案してきた。私はもちろん嬉しかったが、同時に『なぜ?』と混乱している。
旦那様は一人で食事をする方が気楽だと言って、今まで私と別々に食事をしてきた。私は食堂で、旦那様は自分の部屋で。朝食も、昼食も、夕食も。でも数日前、旦那様は朝食を一緒に食べようと提案してきた。私はもちろん喜んで、旦那様と一緒に朝食を食べることになった。
と思ったら旦那様はさっき、昼食も一緒に食べようと提案してきた。それはもちろん嬉しいが、私はやはり『なぜ?』と混乱している。なぜ食事を食べるのは一人の方が気楽な旦那様が、朝食だけでなく昼食も私と一緒に食べる気になったんだろう? うーん、分からない……。
でも、混乱していても仕方が無い。分からないことを、いくら考えても仕方が無い。なので私は、決めた。これから旦那様と一緒に昼食を食べるが、その時にどうして私と一緒に昼食も食べたいと思ったのかを聞こう。よし、そうしよう。そう決心して私は、昼食にどのドレスを着ていくか考えることにした。
いつも着ている、赤いドレス? それとも明るい雰囲気の、黄色のドレス? でも私は結局、今着ている黒く体のラインが強調されるピッタリとしたドレスを着ていくことにした。ひょっとしたら旦那様は、このドレスを気に入ったのかも知れない。だからこのドレスを着た畑デートで、手をつないだり私と一緒に昼食も食べようと提案したのかも知れない。よし、これだ。これで行こう!
こうして私は昼食の時間に、食堂に向かった。するとすでに旦那様は、テーブルについていた。なので私も旦那様と向かい合って、テーブルについた。
私は初めて旦那様と一緒に昼食を食べるので少し緊張していたが、旦那様はリラックスした表情だった。そして旦那様は、聞いてきた。
「おや、レコアさん? なんだか少し緊張しているようですが、大丈夫ですか?」
そう聞かれた私は、正直に答えた。
「は、はい。こうして旦那様と一緒に昼食を食べるのは、初めてなので……」
「そうですか。まあ、言われてみればそうですね。でもまあ、リラックスしてください」
「は、はい……」
と私が何とかリラックスしようとしていると、食事担当のメイドのリーナが昼食を持ってきた。旦那様にはミートソースパスタとスープとイチゴを。私にはミートソースパスタとスープとサラダを。やはり旦那様は野菜が苦手なので、リーナは旦那様に野菜の代わりにイチゴを用意したのだろう。
そうして私と旦那様は、一緒に昼食を食べ始めた。私はまずはミートソースパスタを一口食べてみたが、やはり美味しかった。パスタの硬さは絶妙なアルデンテで、旨味がある挽肉とソースがよく絡んだ。さすがにリーナが用意する食事は美味しいと感心したが、私は食べることを止めた。
確かに食事は美味しいのだが、それ以上に気になった。どうして旦那様が、私と一緒に昼食も食べる気になったのか。それが気になって、せっかく美味しいパスタも食べる気が無くなってしまった。なので私は、思い切って旦那様に聞いてみた。
「あ、あの、旦那様!」
「はい。何でしょう?」
「あ、あの旦那様は、どうして私と一緒に昼食も食べるつもりになったんですか?!」
すると旦那様は、少し考える表情になった後に答えた。
「うーん……。やっぱり、楽しいからでしょう」
「た、楽しい?! い、一体何が楽しんですか?!」
「やっぱり、レコアさんと一緒にいることです」
「え?……」
そうして旦那様は、話し出した。
「さっきの畑デートは、楽しかったです。なので私は、考えました。どうして女性が苦手な私が、デートを楽しいと思ったのか。それはやはり、レコアさんと一緒にいるからではないかと考えました。レコアさんは今まで私が見てきた女性とは、違うんです。今まで私と、どちらが『スキ』と言うかの勝負をしてきた女性はいませんでした」
そして、フフフフと微笑んだ旦那様は話を続けた。
「あ。誤解しないでもらいたいんですが、私は決してあなたをバカにしている訳ではありません。むしろ、貴重だと思っています。私にこんな風に接してくれるレコアさんは、貴重です。そしてレコアさんと一緒にいると、楽しくなってきました。なので畑でデートをしたり、手をつないだりしたんです。こうすることで、もっと私自身が楽しくなるのではないかと思ったので」
それを聞いた私は、衝撃を受けた。私といることが楽しいって、それはもはや告白では?!




