↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/39

第二十一話 スキンシップ(後半)

 私はいきなり旦那様《だんなさま》と相合傘《あいあいがさ》をすることになって、ちょっとドキドキした。でも旦那様はすでに、目の前に広がる畑に感心《かんしん》していた。

「な、何という広さだ……。そう言えば私は、この畑を初めてちゃんと見たような気がする……」


 するとリーナは、私と旦那様の前に進んで告げた。

「それではこれから、私がこの畑を案内させていただきます」

 

 とリーナは、左右に黄金色《こがねいろ》に実《みの》った小麦《こむぎ》の間にある小道《こみち》を歩きながら説明を始めた。

「もう小麦は、収穫《しゅうかく》の時期です。早ければ、明日から収穫する予定です。やはり小麦は主食《しゅしょく》のパンの材料になるので、この畑の大部分を使って栽培《さいばい》しています。更に小麦は、パスタの材料にもなるので」


 私と旦那様が、なるほどと頷《うなづ》いているとリーナは付け加えた。

「ちなみに、この畑で収穫される小麦でタクト王子やレコア様、つまり王族《おうぞく》の方々と私たちメイドのパンやパスタを賄《まかな》っています。つまり小麦に関しては、自給自足になっています。他国から買うという方法ももちろんありますが、他国での小麦の収穫が減るとまず買えなくなるので。やはり自国のパンの材料になって、私たちは買えなくなるので。なのでこのお城では昔から、小麦を自分たちで栽培、収穫しています」


 それを聞いた旦那様は、うんうんと頷いた。

「そうですね。やはり食料に関しては、自国で賄うのが理想ですね。自給自足ですね。他国に依存《いぞん》するのは、避《さ》けたいですね」


 そうして三人で小道を進んでいると、明《あき》らかに栽培されているモノが変わった。緑色の植物が、栽培されているエリアに入った。私がふと見てみると、イチゴを見つけたので思わず声を上げた。

「あ、イチゴだ! きっと、最近《さいきん》食べたモノだ!」


 するとリーナは、頷いた。

「はい。本来《ほんらい》イチゴの旬《しゅん》は六の月ですが、今年は育つのが遅くて七の月になってようやく収穫できました。その間、水やりをしたり肥料《ひりょう》を追加したり色々苦労(くろう)しました。でもその甲斐《かい》があって、タクト王子とレコア様に美味《おい》しいと喜んでいただけるイチゴになりました」


 そっかー。今年はイチゴを作るのに、リーナたちは苦労したんだー。そしたらこれからも、感謝して美味しく食べなきゃー。そう考えていると旦那様も、うんうんと頷いていた。

「そうですか。育成不良《いくせいふりょう》でも、ちゃんと収穫できましたか。さすが農業大国と言われる、我がミスマ王国のお城の畑です。見事な栽培技術《さいばいぎじゅつ》です」


 それを聞いたリーナは、旦那様に軽く頭を下げた。

「お褒《ほ》めいただき、ありがとうございますタクト王子。さて、それではもう少しこのエリアの説明をさせていただきます」


 とリーナは、更に小道を進みながら説明した。

「ここでは夏野菜《なつやさい》のトマト、キュウリ、ナス、トウモロコシなどを栽培しています。もうじき、収穫できるでしょう。そしてそれらを使って、お食事を作らせていただきます」


 へー、なるほどと思いながら、私は畑を見回《みまわ》した。確かにそれらの野菜が、順調に育っていた。これはこれからも美味しい食事が期待できるなと思っていると、私はスイカを見つけて思わず声を上げた。

「あ! スイカだ! 美味しそう!」


 するとリーナは懐中時計を取り出して、時間を確認して提案《ていあん》した。

「ふむ。そろそろ午前一〇時ですか。それならば、ここで少しスイカをいただきながら休憩《きゅうけい》いたしましょうか?」


 私は右手を高々と挙《あ》げて、賛成した。

「いいわね、それ! こんな美味しそうなスイカ、ぜひ食べて見たいわ!」


 すると旦那様も、頷いた。

「はい。確かに、美味しそうなスイカですね」


 私たちがリーナの提案に賛成したので、リーナはナイフを取り出すと慣《な》れた手つきでスイカを切り分けた。「少々お待ちください……」


 そして八分の一に切ったスイカを、私たちの手渡《てわた》した。

「どうぞ、お召《め》し上《あ》がりください」


 なので私は、早速《さっそく》スイカに噛《かじ》り付いた。するとジューシーで十分な甘さが、口の中に広がった。私は思わず、声を上げた。

「お、美味しい! な、何これ?! 私、こんなに美味しいスイカ、食べたことない!」


 それを聞いたリーナは、説明した。

「そうですか、美味しいですか。それは良かったです。実はこのスイカは、病気や水不足にも耐《た》えられるように品種改良《ひんしゅかいりょう》したモノなんです。今年初めて収穫するんですが、どうやら合格のようです」


 するとスイカを食べながら、旦那様は頷いた。

「ふむ。病気や水不足にも耐えられて、しかもこの美味しさ。これならば、十分《じゅうぶん》他国に売ることもできるでしょう」


 そう言われたリーナは、やはり旦那様に軽く頭を下げた。

「お褒めいただき、ありがとうございますタクト王子。実は他の野菜も病気などに強く、またたくさん収穫できるように品種改良をしているところです」


 それを聞いた旦那様は、満足そうに頷いた。

「そうですか、それは良いですね。上手《うま》くできたら、一般の農家にも広めましょう」

「はい」


 そうして満足した私たちは、城に戻ることにした。やはり旦那様にもリーナにも、これから仕事があるからだ。良く晴《は》れて夏の暑さが心地いい畑の小道を歩いていると、何と私の左を歩いていた旦那様が私の手を握《にぎ》った! 私は驚《おどろ》いて、声を上げてしまった。

「だ、旦那様! わ、私の手を握っていますが大丈夫ですか?!」


 すると驚いた旦那様は、手を離《はな》してしまった。

「あ、す、すいません! どうにもこの広い畑での解放感《かいほうかん》と、心地《ここち》いい夏の暑さを感じていたら無意識に手を握っていました!」


 そ、そうなのか……。でも、これは良い傾向《けいこう》だ。旦那様は女性が苦手なので私たちは今、白い結婚をしているが、それから抜《ぬ》け出せる傾向だからだ。なので私は、力説《りきせつ》した。

「い、いえ。これで良いと思います、旦那様! 私たちは夫婦なので、こういうスキンシップは大事だと思います!」


 するとそれに納得したようで、旦那様は再び私の手を握った。うんうん、これでいいんです。私たちはこうやって、白い結婚を抜け出すんです……。と私が嬉《うれ》しく思って歩いていると、旦那様は聞いてきた。

「あれ、レコアさん? 今のは、レコアさんの負けでは?」

「は? 負け? 何がですか?」

「さっきレコアさんは、スキンシップと言いました。なので『スキ』と言ったので、レコアさんの負けでは?」

 

 それを聞いて、私はハッとした。た、確かに……。でも私は、それでも良かった。負けても良かった。なぜならこうして、旦那様と手をつないで歩いているんだから。と私が負けたのに喜んでいると、旦那様は提案してきた。

「レコアさん。良かったら今日の昼食も、一緒《いっしょ》に食べませんか?」

「え?」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。