第二十一話 スキンシップ(後半)
私はいきなり旦那様と相合傘をすることになって、ちょっとドキドキした。でも旦那様はすでに、目の前に広がる畑に感心していた。
「な、何という広さだ……。そう言えば私は、この畑を初めてちゃんと見たような気がする……」
するとリーナは、私と旦那様の前に進んで告げた。
「それではこれから、私がこの畑を案内させていただきます」
とリーナは、左右に黄金色に実った小麦の間にある小道を歩きながら説明を始めた。
「もう小麦は、収穫の時期です。早ければ、明日から収穫する予定です。やはり小麦は主食のパンの材料になるので、この畑の大部分を使って栽培しています。更に小麦は、パスタの材料にもなるので」
私と旦那様が、なるほどと頷いているとリーナは付け加えた。
「ちなみに、この畑で収穫される小麦でタクト王子やレコア様、つまり王族の方々と私たちメイドのパンやパスタを賄っています。つまり小麦に関しては、自給自足になっています。他国から買うという方法ももちろんありますが、他国での小麦の収穫が減るとまず買えなくなるので。やはり自国のパンの材料になって、私たちは買えなくなるので。なのでこのお城では昔から、小麦を自分たちで栽培、収穫しています」
それを聞いた旦那様は、うんうんと頷いた。
「そうですね。やはり食料に関しては、自国で賄うのが理想ですね。自給自足ですね。他国に依存するのは、避けたいですね」
そうして三人で小道を進んでいると、明らかに栽培されているモノが変わった。緑色の植物が、栽培されているエリアに入った。私がふと見てみると、イチゴを見つけたので思わず声を上げた。
「あ、イチゴだ! きっと、最近食べたモノだ!」
するとリーナは、頷いた。
「はい。本来イチゴの旬は六の月ですが、今年は育つのが遅くて七の月になってようやく収穫できました。その間、水やりをしたり肥料を追加したり色々苦労しました。でもその甲斐があって、タクト王子とレコア様に美味しいと喜んでいただけるイチゴになりました」
そっかー。今年はイチゴを作るのに、リーナたちは苦労したんだー。そしたらこれからも、感謝して美味しく食べなきゃー。そう考えていると旦那様も、うんうんと頷いていた。
「そうですか。育成不良でも、ちゃんと収穫できましたか。さすが農業大国と言われる、我がミスマ王国のお城の畑です。見事な栽培技術です」
それを聞いたリーナは、旦那様に軽く頭を下げた。
「お褒めいただき、ありがとうございますタクト王子。さて、それではもう少しこのエリアの説明をさせていただきます」
とリーナは、更に小道を進みながら説明した。
「ここでは夏野菜のトマト、キュウリ、ナス、トウモロコシなどを栽培しています。もうじき、収穫できるでしょう。そしてそれらを使って、お食事を作らせていただきます」
へー、なるほどと思いながら、私は畑を見回した。確かにそれらの野菜が、順調に育っていた。これはこれからも美味しい食事が期待できるなと思っていると、私はスイカを見つけて思わず声を上げた。
「あ! スイカだ! 美味しそう!」
するとリーナは懐中時計を取り出して、時間を確認して提案した。
「ふむ。そろそろ午前一〇時ですか。それならば、ここで少しスイカをいただきながら休憩いたしましょうか?」
私は右手を高々と挙げて、賛成した。
「いいわね、それ! こんな美味しそうなスイカ、ぜひ食べて見たいわ!」
すると旦那様も、頷いた。
「はい。確かに、美味しそうなスイカですね」
私たちがリーナの提案に賛成したので、リーナはナイフを取り出すと慣れた手つきでスイカを切り分けた。「少々お待ちください……」
そして八分の一に切ったスイカを、私たちの手渡した。
「どうぞ、お召し上がりください」
なので私は、早速スイカに噛り付いた。するとジューシーで十分な甘さが、口の中に広がった。私は思わず、声を上げた。
「お、美味しい! な、何これ?! 私、こんなに美味しいスイカ、食べたことない!」
それを聞いたリーナは、説明した。
「そうですか、美味しいですか。それは良かったです。実はこのスイカは、病気や水不足にも耐えられるように品種改良したモノなんです。今年初めて収穫するんですが、どうやら合格のようです」
するとスイカを食べながら、旦那様は頷いた。
「ふむ。病気や水不足にも耐えられて、しかもこの美味しさ。これならば、十分他国に売ることもできるでしょう」
そう言われたリーナは、やはり旦那様に軽く頭を下げた。
「お褒めいただき、ありがとうございますタクト王子。実は他の野菜も病気などに強く、またたくさん収穫できるように品種改良をしているところです」
それを聞いた旦那様は、満足そうに頷いた。
「そうですか、それは良いですね。上手くできたら、一般の農家にも広めましょう」
「はい」
そうして満足した私たちは、城に戻ることにした。やはり旦那様にもリーナにも、これから仕事があるからだ。良く晴れて夏の暑さが心地いい畑の小道を歩いていると、何と私の左を歩いていた旦那様が私の手を握った! 私は驚いて、声を上げてしまった。
「だ、旦那様! わ、私の手を握っていますが大丈夫ですか?!」
すると驚いた旦那様は、手を離してしまった。
「あ、す、すいません! どうにもこの広い畑での解放感と、心地いい夏の暑さを感じていたら無意識に手を握っていました!」
そ、そうなのか……。でも、これは良い傾向だ。旦那様は女性が苦手なので私たちは今、白い結婚をしているが、それから抜け出せる傾向だからだ。なので私は、力説した。
「い、いえ。これで良いと思います、旦那様! 私たちは夫婦なので、こういうスキンシップは大事だと思います!」
するとそれに納得したようで、旦那様は再び私の手を握った。うんうん、これでいいんです。私たちはこうやって、白い結婚を抜け出すんです……。と私が嬉しく思って歩いていると、旦那様は聞いてきた。
「あれ、レコアさん? 今のは、レコアさんの負けでは?」
「は? 負け? 何がですか?」
「さっきレコアさんは、スキンシップと言いました。なので『スキ』と言ったので、レコアさんの負けでは?」
それを聞いて、私はハッとした。た、確かに……。でも私は、それでも良かった。負けても良かった。なぜならこうして、旦那様と手をつないで歩いているんだから。と私が負けたのに喜んでいると、旦那様は提案してきた。
「レコアさん。良かったら今日の昼食も、一緒に食べませんか?」
「え?」




