第二十話 スキンシップ(前半)
朝。私は目が覚めると、シルクの寝間着のままクローゼットに向かった。そしてクローゼットの扉を開けると、今日は何色のドレスを着ようかと悩み始めた。今日は、大事な日だ。何と言っても今日は、旦那様と一緒にお城の畑を見に行く日だ。そしてそれは、一種のデートだからだ! なので私は今日着るドレスを、慎重に選ばなければならない。
私はまず、黄色のドレスを私の前面に当てて全身が映る鏡を見てみた。うーん、何だか子どもっぽいなあ……。なので次は、青いドレスで試してみた。うーん、何だか似合わないなあ……。そして次は、黒いドレスを試してみた。お。これは何か、良い感じだ。そう言えば黒は、女性を引き立てると言う話を聞いたことがある。よし、これにしよう。
だが私は、ふと考えた。鏡に映っているは、フワフワの黒いドレスを私の前面に当てている私だ。うん。確かに落ち着いた感じで、良く似合っている。でも何か、物足りない。今日は旦那様と、初めてデートっぽいことをする。だから、もうちょっと攻めたい。でもそのためには、どうしたらいいのか?……。
すると、ふと思い出した。クローゼットの中にはフワフワのドレスだけではなく、体にぴったりとして体のラインを強調するドレスもあったことを。クローゼットを探してみると、確かに黒色で体にぴったりとフィットするドレスを見つけた。私はそれを着て、鏡に全身を映してみた。
すると体のラインが強調された私が、映っていた。うん、これだ! 私は、スタイルにも自信がある。出るところは出て、締まっているところは締まっている。ふふふふ。私と旦那様との初めてのデートっぽいことで、いきなり私のスタイルの良さを旦那様に見せつけてやろう。ふふふふ。これぞモテ女の、あざといテクニック!
着るドレスも決まったので、私は食堂に急いだ。するとすでに旦那様は、テーブルについていた。でも私を見ると、ハッとした表情になった。なので私は、聞いてみた。
「どうですか、旦那様? このドレスは?」
すると旦那様は、ハッとした表情のまま答えた。
「何と言いますか……。いつものレコアさんよりも、落ち着いて素敵な大人の女性に見えます……」
それを聞いて私は心の中で、ガッツポーズをした。よし! 旦那様の掴みはオッケー! やっぱりこのドレスにして良かったー! そうして私もテーブルについて、旦那様と向かい合った。すると早速、食事担当のメイドのリーナが私たちの前に朝食を持ってきた。
それを私と旦那様は、無言で食べ始めた。いつもなら私と旦那様は、軽く世間話などをするのだが今日は違った。何だか旦那様は、そわそわしている。でも、何も話さない。なので疑問に思った私は、聞いてみた。
「どうなさいましたか、旦那様? いつもと様子が、違うようですが?」
すると旦那様は、そわそわしながら答えた。
「え、ええ……。何だかレコアさんがいつもと違う雰囲気なので、ちょっと緊張しています……」
「あ。そ、そうですか……」
なので私は、少し不安になった。これから旦那様とデートっぽいことをするのだが、旦那様がこの様子で上手く行くのかと。旦那様は女性が苦手だから、今までデートをしたことが無いのかも知れない。うーん、どうしたものか?……。と考えながらも、私は朝食を食べ終えた。ふと見ると、旦那様も朝食を食べ終えたようだ。でもこれから、どうする?……。
と私が不安になっていると、私と旦那様にリーナが近づいてきた。そして、提案してきた。
「タクト王子、そしてレコア様。朝食を召し上がったようなので、これからお城の畑を見にいらっしゃるのでしょうか? それならもし良かったら、私に案内をさせていただきたいのですが?」
それを聞いて、私は動揺した。え? つまりそれって、私と旦那様とリーナの三人でデートっぽいことをするっていうこと? い、いや。それは困る。そんなことをしたら、デートっぽくないからだ。なので私はリーナに顔を近づけて、小声で聞いた。
「ちょっとリーナ、どういうつもり? それじゃあ、デートっぽくないじゃない?」
するとリーナも、小声で答えた。
「確かに、そうですね。でも、このままお二人で畑に行っても、上手く行かないような気がします。タクト王子が、あのご様子では……」
そう言われて見てみると、旦那様はやはりそわそわしていた。確かにこれでは、デートっぽいことはできないような気がする……。と私が考えていると、リーナは再び提案した。
「なので私は、お二人をフォローしたいと思います。なので私に、任せていただけませんか?」
うーん、確かにその方が良いような気がする……。そう考えた私は、旦那様に確認してみた。
「どうでしょうか、旦那様? ここは一つ、リーナに案内してもらうというのは?」
「え? ええ、そうですね。そうしましょう……」
するとリーナは、頷いた。
「それでは私は、お二人の食器を洗ってしまいます。それからお二人を、畑にご案内いたします。なのでそれまで、少々お待ちください」
そしてリーナは私たちの食器を持って、キッチンに向かった。でも私と旦那様は、無言だった。旦那様は相変わらずそわそわして、私と話をする余裕はないようだ。なので私は、リーナが私たちをフォローすることになって助かったと一安心した。
そして少しすると、リーナは再び私たちに近づいてきた。
「それではお待たせいたしました、お二人とも。早速、この城の畑を見に行きましょう」
なので私と旦那様は立ち上がり、リーナについて行った。リーナはこの食堂から隣のキッチンに移動したので、私と旦那様は後をついて行った。するとリーナはキッチンの右側にある、ドアを開けた。そしてまず、私たちが先に出るようにと促した。なので私は、キッチンから外に出た。
するとそこは七の月の中旬の、ギラギラとした太陽がすでに昇っていた。なので私は、この太陽の元で日焼けをしないか心配した。するとリーナは、一本の日傘を旦那様に差し出して告げた。
「タクト王子。日焼けを防ぐための、日傘をどうぞ。そしてレコア様も、それにお入りください」
なので私は言われた通り、旦那様が差した日傘に入った。そして、気づいた。な、こ、これは相合傘では?! ふと振り返ってリーナを見てみると、リーナは無表情で右手の親指を立てていた。さすがリーナ、グッジョブ! こうして私と旦那様の、デートっぽいことが始まった。




