第十五話 スキンケア(後半)
フフフ。旦那様に、『スキ』と言わせる勝負を仕掛けるのは今だわ! なぜなら旦那様は、『スキ』と言わせる勝負は午前一〇時のお茶の時間だけだと思っているハズ。なぜなら今まで、そうしてきたから。確かに『スキ』と言わせる勝負は、私も『スキ』と言ってはいけないルールになった。
でも、この朝食の時間にしてはいけないというルールもありませんわ。フフフ……。さて、どうしようか? どうやって旦那様に、スキンケアと言わせようか? 旦那様にスキンケアと言わせれば、それは『スキ』と言ったことになって私の勝ちになるのだが……。すると旦那様は、疑問の表情になった。
「おや? どうしました、レコアさん? 何か、ボーっとしているようですが?」
「え? い、いえ。な、何でもありません……」
マ、マズイ。つい、どうやって旦那様にスキンケアと言わせようか考えていたら、ついボーっとしてしまった。き、気づかれたか? 私が旦那様に、『スキンケア』と言わせようとしていることが気づかれたか?! と私は、ちらりと旦那様の表情をうかがった。
だが旦那様は、満足している表情だった。きっと大好きな果物のイチゴを食べて、満足しているのだろう。よし。まだ気づかれてはいないようだ。私が旦那様に、どうやって『スキンケア』と言わせようか考えていることは気づかれていないようだ。
だから、今がチャンスだ! 今ここで旦那様に、『スキ』と言わせてやる! でもそのためには一体、どうすれば……。おっと。危ない、危ない。また私がどうやって旦那様に『スキ』と言わせるか考えてボーっとしたら、また旦那様が疑問に思うだろう。そして今度こそ、私がどうやって旦那様に『スキ』と言わせるのか考えていることに気づいてしまうかも知れない。危ない、危ない。
だから私はまず、旦那様と話をすることにした。そうすれば私が旦那様に、『スキ』と言わせようとしていることは気づかれないだろう。さて、何の話をしようか……。と考えた私は、ひらめいた。こ、これだ! これでいこう! 私は旦那様に、質問してみた。
「旦那様。私たちは今度一緒に、畑を見に行くんですよね? 嬉しいです。なので私は、今から楽しみです。そこで催促するようで申し訳ないんですが、いつくらいに畑を一緒に見に行けますか?」
すると旦那様は、考える表情になった。
「うーん、そうですねえ……」
よし、今度は旦那様が考える番になった。それにしても、これは名案だ。こうして旦那様が考えていれば、私が考えていても気づかれないだろうからだ。更に私は、旦那様と一緒に畑を見に行くことはある意味デートではないかと考えている。私はもちろん、この畑デートにぜひ行きたい! でもそれには、旦那様がその気になってくれる必要がある。
でも今旦那様は、その畑デートをいつにするか考えてくれている! こうして旦那様が考えて、私が考えても気づかれない、更に畑デートのことを考えさせて一石二鳥だ! て、天才? こんな質問をした私って、もしかしたら天才?! お、恐ろしい。自分の才能が、恐ろしい……。と私が自分の才能に恐れていると、旦那様は答えてくれた。
「そうですねえ。今抱えている仕事は、あとニ、三日で終わりそうなので、それが終わったら時間ができると思います。そうしたら一緒に、畑を見に行きましょう」
それを聞いた私は、もちろん喜んだ。
「ありがとうございます、旦那様! 私は今から、楽しみです!」
すると旦那様は、微笑んだ。
「そうですか。それでは、楽しみにしていてください」
私は思わず、心の中でガッツポーズをした。よっしゃー! 旦那様との畑デート、ゲットだわ! て、天才? やっぱり私って、天才?! と再び自分の才能が恐ろしくなったが、それどころではないことに私は気づいた。畑デートは、もちろん外に出る。でも今は、夏真っ盛りだ。つまり、日焼けが怖い。私は今まで、自分の白い肌を保つために日焼けをしないようにしてきた。あまり夏には、外出しないようにしてきた。でも、今度ばかりは仕方が無い。何と言っても、旦那様と初めての畑デートだからだ。でも私は、つい不安を呟いてしまったすき。
「旦那様と一緒に畑を見に行けるのは嬉しいんですが、少し日焼けが心配ですわ……」
すると旦那様は、ニッコリと微笑んだ。
「はははは。やっぱり女性は、日焼けを気にするんですね。確かにレコアさんの肌は白くて美しいですが、私は日焼けした小麦色の肌も健康的で良い思いますよ」
な、何だと?! 今、言ったよね! 確かに言ったよね! 私の白い肌が美しいって! ああ。私って、やっぱり罪な女。肌とは言え、旦那様に美しいと言わせるとは……。と自分に浸っていると、ひらめいた! こ、これだわ! 私はさりげなく、呟いた。
「でもやはり私は、旦那様が美しいと言ってくれた白い肌のままでいたいですわ。そのために、手入れをしたいですわ」
すると旦那様は、頷いた。
「なるほど。スキンケアと言うやつですね」
それを聞いた私は、旦那様を右手の人差し指で指した。
「はい、言いましたー! 今、『スキンケア』って言いましたー! つまり、『スキ』って言いましたー!」
「え?」
そうして旦那様は、少し考える表情になった後に答えた。
「な、なるほど。確かに私は、『スキンケア』と言いました。つまり、『スキ』と言いました……。なるほど。確かにどちらが『スキ』というかの勝負は、お茶の時間だけというルールはありませんからね。しかもレコアさんは、一言も『スキンケア』とは言ってませんからね。負けですね。今回は私の、負けですね」
よっしゃー! 勝ったわ! 今回の勝負は、私が見事に勝ったわ! と喜んだ私だが、ふと不安になった。畑デートがきっかけで勝負に負けた旦那様が気を悪くして、畑デートは中止にしたりしないか。でも旦那様は、ニッコリと微笑んだ。
「それでは私はこれから、レコアさんと一緒に畑を見に行く時間を作るために一生懸命に仕事をします」




