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第十一話 一緒に朝食を食べましょう

 朝。眠っていた私は、メイドがドアをノックする音で目が覚《さ》めた。

「失礼します、レコア様。朝食の準備ができました」

「はい」


 と私は自分の部屋のベットから出て、シルクの寝間着《ねまぎ》から赤いドレスに着替《きが》えた。そして鏡台《きょうだい》の前で、念入《ねんい》りに化粧《けしょう》をした。なぜなら今朝《けさ》は、初めて旦那様《だんなさま》と一緒《いっしょ》に朝食を食べるからだ。それにしても、と私は考えた。それにしても旦那様は、一体《いったい》どういうつもりなんだろう? 一体どうして、私と一緒に朝食を食べる気になったんだろう?


 私と旦那様の結婚は、形だけのいわゆる白い結婚だ。そして旦那様は今まで、一人の方が気楽《きらく》だからと朝食など食事は自分の部屋で食べていたのに。それなのに、一体なぜ?……。といくら考えても、私にはその理由は分からなかった。なので私は、決心した。いくら考えても分からないことを、気にしても仕方《しかた》が無い。とにかく、旦那様と一緒に朝食を食べようと。そう決心して私は、食堂に向かった。


 食堂に入ると、何と旦那様が先にテーブルについていた。そして爽《さわ》やかに微笑《ほほえ》みながら、挨拶《あいさつ》をしてきた。

「あ。おはようございます、レコアさん」

「あ、は、はい。おはようございます、旦那様……」


 と私もテーブルについて、旦那様と向かい合った。すると早速《さっそく》食事担当のメイドのリーナが、私たちの前に朝食を用意した。それを確認すると旦那様は、「いただきます」と朝食を食べ始めた。なので私も、「いただきます……」と朝食を食べ始めた。


 旦那様は美味《おい》しそうに朝食を食べていたが、私はやはり疑問だった。なぜ急に、私と一緒に朝食を食べる気になったのか? なので私は思い切って、旦那様に聞いてみることにした。

「あ、あの……」

「はい。何ですか、レコアさん?」

「あ、あの。どうして今朝は、私と一緒に朝食を食べるつもりになったんですか?」

「ふーむ……」


 と旦那様は、考える表情になった。そしてその後《あと》に、話し出した。

「ちょっとレコアさんと、こうして話をしてみたくなったんです」

「え? 私と話を? それは一体、どういったお話ですか?」

「例《たと》えばですね……」


 と旦那様は、話し出した。

「最近、ちょっと悩《なや》んでいまして。私はこの王国の内政《ないせい》を担当《たんとう》していますが、最近我(わ)が国の工業品《こうぎょうひん》が売れなくなってきたんです。我が国ではこれまで、ランプや農機具《のうきぐ》などの工業製品を作って売ってきました。でも人件費《じんけんひ》が上がったことによって、それらの値段《ねだん》も上がりました。なので他国《たこく》の値段が安い工業製品が買われるようになって、我が国の製品は売れなくなっているんです……」


 うーん、なるほど。旦那様は今、そういうことで悩んでいるのか。ならば、私が力にならなければ! 私は貴族令嬢《きぞくれいじょう》で、それにふさわしい教養《きょうよう》を身に着けた。なのでそれらの教養をフル回転させて、私は答えを出した。

「旦那様。それならば、我が国の芸術や文化などを売ってはどうでしょう?」


 すると旦那様は、食《く》いついた。

「え? 我が国の芸術や文化を売る?! それは一体、どういうことですか?!」


 なので私は、説明した。

「はい。私はこれまで、多くの我が国の芸術や文化に触《ふ》れてきました。それらは他国の芸術や文化に、負けていないと思います。なので我が国の絵画《かいが》や音楽、演劇《えんげき》や文学などを売ってはどうでしょうか? また我が国には歴史がある建物《たてもの》や、美しい自然もあります。なのでそれらを、観光地《かんこうち》にするのはどうでしょうか? 更《さら》に我が国でしか栽培《さいばい》できない農産物《のうさんぶつ》や、それらを使った美味しい料理などもあります。なのでそれらを、売るのはどうでしょう」


 すると旦那様は、真剣な表情で呟《つぶや》いた。

「なるほど、確かに……。確かに我が国には他国に無い、素晴《すば》らしいモノがたくさんありますね。だから、それを売る。うーむ、なるほど……」


 そして旦那様は、爽やかに微笑んだ。

「貴重《きちょう》な意見を、ありがとうございますレコアさん。このことは、もちろん参考にさせていただきます」


 旦那様にそう言ってもらえて、私はホッとした。どうやら私は、旦那様の役に立ったようだからだ。そして一安心《ひとあんしん》した私は、美味しい朝食を食べ始めた。すると旦那様は、ポツリと呟いた。

「どうやら私がレコアさんと結婚したのは、正解だったようです……」

「え?」

「今まで私に近寄《ちかよ》ってくる女性と言えば、私に興味《きょうみ》があるのではなく第三王子の妃《きさき》という立場《たちば》に興味があるのが見え見えでした。なので私はそんな女性たちに興味が無くなり、結果的に女性や恋愛が苦手になりました……」


 なるほど。旦那様が女性や恋愛が苦手なのは、そういう理由があったのか。そしてその気持ちは、私にも少しわかる。私はこの首都《しゅと》で一番裕福(ゆうふく)な貴族の令嬢だったから、お金目当《かねめあ》てで近づいてくる人たちがいたからだ。あれは確かに、ツラかった……。すると旦那様は、再び話し出した。

「でも、レコアさん。あなたは違った。あなたは私に、興味を持ってくれた。そして私に、『スキ』と言わせようとがんばっている。ふふふふ。そんな女性は今まで、一人《ひとり》もいませんでしたよ。なので私はあなたに興味を持って、一緒に朝食を食べて見ようと思ったんです」


 なるほど。旦那様が私と一緒に朝食を食べようと言い出したのは、そんな理由があったからなのか。そして私は、嬉《うれ》しくなった。旦那様が私に、興味を持ってくれたので。よし。私がやっていることは、ムダじゃない。これからも続けて、必ずこの白い結婚から抜《ぬ》け出して見せるわ! なので私は、言い放《はな》った。

「旦那様。今日も私は必ず、旦那様に『スキ』と言わせて見せますわ!」


 すると旦那様は、ニッコリと微笑んだ。

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