侵略者の技術レベルの謎
ササナミさんが操るメイドロボットに導かれ、ムーンプールがあるウェットドックに向かう。
道中、隠れ家の制圧後の状況を聞いた。
『グローバル・ハーモニーと終末の審問官の関係を示す証拠が山ほど出てきたー。これで追い詰められるわね』
「よく証拠隠滅されませんでしたね」
『ザルヴァを先に拘束できたのがよかったわ。典型的なトップダウンの組織みたいねー』
「トップがいないなら自分で考えればいいのに……。他に何か分かりました?」
『やつら、隠れ家にいろいろ隠し持っていたわよ。押収品の目録を送るねー』
バイザーを装着。データを読む。
「結構ありますね。灰色の甲虫の製造システムもですか」
『甲虫の製造システムは再現できないレベルね。地球人の技術を超えてる感じ。ノワールに渡しとくね。お土産って』
「たぶん上位種族のテクノロジー。侵略者は何かちぐはぐ」
「ベイブ、跳躍艇に戻ったら皆に相談してみよう」
「分かった。そうする」
会話しながら歩くうちにウェットドックが見えてきた。
『着いたわよー。停滞カプセルはそこのコンテナに入ってるよー』
ウェットドックに到着。停滞カプセルの入ったコンテナはすでに届いている様子。
ササナミさんの声と同時にムーンプールに忽然と現れる白く輝く跳躍艇。
表面に穴が開いて、そこから顔を覗かせるのは機械狼。アルだ。
「ジーン、アステル。おかえり」
「ただいま、アル」
「ただいま」
白い触手によって艇内へと引き込まれる。
僕とアルがいつも使っている、高級ホテルの一室のような部屋で皆が出迎えてくれた。
「おかえり。よくがんばったね」
コハクさんを皮切りに皆から声をかけられた。
ああ、短い任務だったけれど、いるべき場所に帰ってきたんだと思う。
「ただいま。侵略者の思考機械の場所が分かったよ」
「ノワール、座標を送る」
アステルがノワールさんに思考機械の場所を伝える。
「なるほどなるほど。シガ・シェルターから北へ四十キロ、地表から三十キロの地下にあるのですね」
「そう。エネルギー供給が止まって休眠状態だと思う」
『エネルギー伝導シャフトが崩壊した今、シガ・シェルターからのアクセスは不可能ですね』
あれ、ササナミさんがおすましモードだ。
「ササナミ、また猫かぶってる」
『……気のせいです』
「まあまあ。とりあえず侵略計画は困難になったでしょう。侵略者の思考機械には興味がありますが」
「ノワール、侵略者の技術体系がおかしい」
「というと?」
「金星L4で見つけた灰色の甲虫を組み立てた立方体。プラントの耐圧フィールド。この二つは異質」
アステルが指を折りながら説明する。
「ふむふむ。上位種族の技術ですか」
「そう思う。甲虫の製造システムはノワールにお土産だって。あとで調べて」
「それはそれは。ササナミ、ありがとうございます。感謝します」
『……シガ・シェルターのためですから』
ササナミさん、どうしちゃったの?
「生体アンドロイドの性能は普通だった」
教祖ザルヴァを無力化したときのことだ。
僕たちは天井を破って集会所に降り立った。
それを見ていたザルヴァは、天井を抜けての脱出を図った。
だが、基礎ブロックの躯体に阻まれて、逃げ切れずに反撃に転じたのだ。
アステルが躯体の真下に誘導したせいだ。
僕はアステルと情報を共有していたので躯体の位置が見えていた。
スラスターを全開で使うはめになれば、床を踏み抜く恐れがある。それで注意を払っていたのだ。
躯体とは基礎ブロックの骨格である構造体のことだ。
ザルヴァには天井の先にある躯体が見えていなかったらしい。
「侵略者は文明指標Ⅲ上位だが、Ⅳ相当の技術をいくつか持っているということか」
アルが確認をする。
「Ⅳカテゴリーの下位技術ですね。あまり洗練されていないようです。どこで手に入れたのやら」





