任務完了
倒れている四人をケーブルタイで拘束してササナミさんを呼ぶ。
「制圧完了しました。甲虫は二匹いましたよ」
『あっという間に制圧したねー。見てたわよ。スラスターを使ったでしょ。エージェントが驚いてたよー』
「やっぱり見られてましたか……」
『さすがCSって勝手に納得してたから大丈夫。記録映像はあとでごにょごにょしとく』
「……ありがとう、助かります」
『それじゃ、回収班を向かわせるわね。ヨハンの抜け殻はどうするー?』
「ムーンプールに運んでください。僕たちがシガ・シェルターに降りたあの場所です。跳躍艇が迎えに来ます」
『はーい、お任せあれ。ムーンプールで集合ね』
「ササナミ、言うのを忘れてた。電力供給が止まるとエネルギー変換施設も崩壊する」
『あら大変。あと十五分くらいね。施設のデータをちょうだい。規模を予測するから意見を聞かせて』
「分かった」
アステルと相談したササナミさんが全域アナウンスをすると言いだした。
音楽が鳴り響く。どこか懐かしいような優しい旋律。全域アナウンスの前触れだ。
―― シガ・シェルターの皆さん、統括知性ササナミです。約十五分後に地震が発生します。震源は地下三十キロ、規模はマグニチュード四・〇、シェルター震度三。確度の高い情報です。作業を中断して対応マニュアルに従って行動してください。共鳴震動音が響きますが外壁が衝撃を吸収している音です。危険はありません。繰り返します。約十五分後に~ ――
ササナミさんが真面目モードだ。久しぶりに普通に話しているのを聞いた。
変換施設の規模から空間崩壊時のエネルギーを算出したのか、アステルと答え合わせをして、あっという間に警報を出した。
「あの空間が潰れると地震が起こる。EXLLMが教えてくれた」
そうか、アステルは様々な概念をベクトルとして保持しているんだ。しかも個々のベクトルは量子演算を行っている。EXたる所以だ。
前に聞いたときはピンと来なかったが今理解できた。
太陽系、そして人類を学ぶには、EXLLMは最高の教材かもしれない。機械知性が興味を示すわけだ。
「EXLLMってすごいんだね」
「うん。知りたいことを教えてくれる」
『さあ、地震が来る前に待機場所に行きましょう』
往路と同じくコンテナ詰めで待機場所に戻る。手早く着替えて装備をササナミさんに預ける。
シアターを抜け地上に出た瞬間に、二度目のアナウンス。
―― シガ・シェルターの皆さん、統括知性ササナミです。約一分後に地震が発生します。震源は地下三十キロ、規模はマグニチュード四・〇、シェルター震度三。確度の高い情報です。対応マニュアルに従って行動してください。共鳴震動音が響きますが危険はありません ――
たくさんの広告が今は消えて、対応マニュアルが表示されている。重要な表示以外の全てがマニュアルで埋め尽くされていた。
マニュアルを読みながらアステルの手を握り、対ショック姿勢を取る。
一分経過。
「来る」アステルが言った。
ズンと体が上下に揺すられる。一拍置いて奇妙な地鳴りが始まる。共鳴震動音だ。
ノーザンエンドでも経験したことがある。
それほど大きな音ではないが、不安を煽られるような響きだ。
トラム乗り場を見ると「運行停止」の表示。
さて、どうしようと思っていると、トラム軌条を「緊急医療搬送」と表示された白地に赤いラインの車両が走ってくる。
『お待たせ―。乗って乗って』
ササナミさんだ。運転席にはメイドロボットの姿。
「ありがとう、ササナミさん。さすが抜かりがないですね」
移動手段を確保してくれた礼を言う。
『任せてー。シガ・シェルターの恩人に不便はさせないよー』





