再びのアライアンス中核体
「奴らの母星が判明したか!」
会議室にマエストロが文字どおり飛び込んできた。誰かが連絡したのだろう。
「落ち着いてください、マエストロ。そちらにお掛けください」
ノワールがマエストロを着席させる。
「ひとまず定例会議は中断します。プロテウス対策緊急会議を始めましょう」
ササナミが真面目モードだ。
「悪いが訓練生のみんなは外しとくれ」
コハクの指示で、ヨハン、ヨーゼフ、カミーラの三人が席を立つ。
「さて、プロテウスの母星のあるセクターを表示します」
テーブルの上に立体投影されたセクターマップ。タグを読むとかなり近い。
太陽系から四百光年程度の距離だ。
「ハンター七五。ハンター太陽天文台が発見した恒星です。その後、ハビタブルゾーンに三つの惑星が見つかっています」
マップが拡大されハンター七五b、c、eの三つの惑星が表示される。
「この惑星系で最後に発見された惑星です。ここがプロテウスの母星です」
恒星に一番近いハンター七五eがクローズアップされる。
「分光観測ではカルスト地質の可能性が示唆されています」
「蛇野郎が好みそうな惑星であるな」
マエストロが不機嫌そうに唸る。
「この宙域は、知的種族共同体アウトノーマの影響圏内にあります。マエストロ、アライアンスから要請を出していただけますか?」
「うむ。プロテウスの形態と母星の位置を伝え、奴らをリフトアップした主族を特定するのだな?」
「そうですそうです。その主族に、プロテウスの侵略行為の阻止を求める旨、アウトノーマから勧告させてください。加盟種族のバウルが被害者ですので正当な主張です」
「問題は、主族が蛇どもを御せないケースと、プロテウスがエボルターだった場合だな」
マエストロが懸念を示す。
「上位種族を挑発するような連中です。主族が手を焼いてる可能性はあります。それに」
「エボルターの線も捨てきれんか……」
「主族が弱腰ならアウトノーマから軍を派遣。エボルターの場合は……」
最後まで言い切らずにノワールが口ごもる。
「ふむ」
「アウトノーマはエボルターを偶像化している種族が大半を占めています。軍を出すか微妙なところです」
「それが問題だな」
「どちらにしろ、アウトノーマへの要請が先決です」
「アステル、マエストロをアライアンス中核体に送ってくれるかい?」
コハクがアステルに依頼する。
「分かった」
「アステル様、ピグミーアヴェンジャーに留守の間の指示を出して参ります。一時間後に静止軌道で合流しましょう」
「了解。ジーンも来て」
「ああ、一緒に行こう。出発前にアエティアの内装を決めようか」
「うん、そうする」
「こっちをアステルの寝室にして、僕は隣の部屋に……」
「いや。ジーンと一緒の部屋がいい」
僕たちは今、発着場のアエティアの中で、にぎやかにレイアウトの相談をしている。
「やっぱりコックピットとか展望室みたいなのがあった方が……」
激論(?)の末、展望室を兼ねたリビングダイニングと、二人で一つの寝室、レストルームと浴室のシンプルな構成に決定する。
跳躍艇のように家具類は床から自在に生み出せるようだ。
「満足」
アステルがにこりと笑う。
マエストロとの合流時間が迫っているので、皆にしばしの別れを告げ、静止軌道まで一気に上がる。
姿を隠し待機しているピグミーアヴェンジャーのハッチにぴたりと寄せ、触手状のマニピュレータを伸ばす。
太く変形させればトランスファー・トンネルにもなる優れものだ。
「おお、これが御身を分かたれたアエティア様でございますな」
白いマニピュレータを抜けて、リビングダイニングにマエストロが姿を現す。
「そう。宇宙機の名前はアエティア」
アエティアを紹介しながら、アステルは三つのシートを作り出す。
真ん中がマエストロ用、その左右に僕とアステルの席。
マエストロ用のシートは、体形を考慮した前傾姿勢で体を支えるタイプ。
「これはいいですな」
マエストロはシートの座り心地にご満悦のようだ。
「それじゃ行く」
光があふれる。
瞬きの間に、光のカーテンが揺らめく幻想的な空間にいた。ストラクチャ深層だ。
「急ぐ」
その一言に合わせるように黄金の円盤が眼前に出現。
円盤を突き抜けると、そこは木星を思わせる空。
あっという間にアライアンス中核体の拠点に着いた。
前回は、二人で幻想的な景色を楽しむために、わざとゆっくり進んでいたのだろう。
「嚮導者、いる?」
アステルが呼びかける。
『アステル様、お戻りになられたのですね』
相変わらず艶のある声だ。
その姿が映し出されているウインドウからそっと目を逸らす。
ごめんなさい。虚無の表情と声のギャップに耐えられそうにありません。
「ううん。マエストロを送っただけ。すぐ地球に帰る」
『さようですか……。マエストロ、浮島に降りたら連絡しなさい。用件を聞きましょう』
「了解だ、嚮導者よ。アステル様、今迎えが来ます」
眼下に並ぶ逆円錐の一つから何かが飛び立つ。
あれ、マエストロにそっくり?
見る見るアエティアに接近してくるメタリックなそれは、マエストロを巨大化させた姿をしていた。すごく大きい。
「脳波共鳴型機動兵装ビッグフットだ」
マエストロは僕に向かってにやりと笑った。





