アライアンス中核体 2
『ふむ、これがプロテウスの姿ですか』
「そう。マエストロが激高してた」
『この形態では仕方ないですね。マエストロの種族の蛇類に対する先天的な反応ですから』
「地球に戻って、もっと重力波データを分析する」
『それです。データを拝見しましたが、エッジが閉じている惑星系に出入りできるとは……』
「ストラクチャ通信の方が難しい。エッジを基点にしてるから」
『ストラクチャ通信用のサブエッジは、エッジを基に作られますからね』
「太陽系エッジを開けるしかない。まだ無理」
まだ、ということは、いずれ開くことができるのだろうか?
僕が生きているうちに開くといいな。
『それで、なぜ地球人類の形態を取っているのです?』
「なりたかった」
『アステル様……言葉足らずに磨きがかかりましたね』
「コミュニケーションの指導が足りなかったせい」
『それは放浪のなかで学ぶべきものです』
「我の言葉を巡って争いが起きた。それで言葉を減らした」
『たしかに必要最小限の言葉を使うようお教えしましたが……』
「言葉を減らして態度で示すとだいぶマシになった」
『はあ……教育方針を間違えましたか』
「アステルは今のままでいいと思います」
今のアステルを否定されているようで、つい言ってしまった。
『ジーン君、アステル様を甘やかしてはいけない』
「甘やかしてなどいません。何を言いたいかは伝わりますし」
「ありがとう」アステルがにこりと微笑む。
「どういたしまして」僕も微笑み返す。
『……そういうことですか。それなら何も言えませんね』
嚮導者さんが虚無の表情のまま、諦観の混じった声で話す。
うん、謎の賢者感がある。
『さて、エボルターのジーン君。ここで見たことは他言無用です。守れますか?』
ああ、僕がエボルター種族だから確認しているんだ。
「エボルターが何なのか少しは理解しています。アステルに誓って、ここで見たことは話しません」
もちろん、僕にも好奇心も欲望もある。
でも、アステルとの時間の方が大切だ。いくらだって約束できる。
『せっかくここまで来たのです。見学していくといいでしょう』
嚮導者さんが静かに許可をくれた。
「ジーン、行こう」
「行こう」ちょっとわくわくしてきたぞ。
黄褐色のグラデーションの空に飛び出すと、たなびく白い巻雲が出迎えてくれる。
「入口はストラクチャにあるけど、正しくはストラクチャの中じゃない」
アステルがこの空間の説明をしてくれるようだ。
「どこにあるんだろう」
「今はまだ分かんない。サブエッジでつながってる不思議な場所」
「アステルのお母さん、尊き御方がこの空間を作ったの?」
己を個として呼びかける者がいないことに悩んでいた存在。
「そうみたい。嚮導者がそう言ってた」
「ここは普通の宇宙に見えるね」
「うん、現実宇宙と物理定数が同じ。たぶん元素も一緒」
「ふうん、小さな現実宇宙って感じかな」
「大きさは海王星公転軌道くらい」
「大きいね!」
「下に見える銀色の逆円錐が浮島。さっき降りたのが我の浮島」
ここに入ったときに見えた数多の逆円錐。浮島って呼ばれているんだ。
「あそこに人が住んでるの?」
「ううん。ほとんど住んでいない。中核体のメンバーは少ない」
「ちょっともったいない気がするね。こんなにたくさんあるのに」
「浮島は工場みたいなもの。必要に応じて宇宙機の製作も可能。ピグミーアヴェンジャーみたいなのも」
マエストロさんの巨艦はここで作られたのか。
「アライアンスって種族単位で加盟してるのかと思ってたよ」
「うん。文明指標Ⅳで構成されてる。でも中核体は別」
「中核体は個人の集まり?」
「そう。上位種族もいれば標準種族もいる。エボルターも少しだけ」
「エボルターもいるんだ」
「ジーンの生みの両親もそう」
アライアンスの仕事をしていると聞いたけれど、中核体のメンバーだったのか。
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