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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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115/127

アライアンス中核体 1

※タイトル変更、2話に分けました。(2026/05/02)

光が収まるとそこには暗闇が広がっていた。

「入れた」

アステルがほっとしたように言う。

「ここが?」

太陽系がストラクチャから切り離されて約百五十年。

全球凍結の地球に住まうもので、ここを訪れたのは僕が初めてだろう。

「うん、ストラクチャの深層」

アステルが答える。

「何も見えないね」

感慨深いのだが真っ暗で何も見えない。


「ここには光子が存在しない。現実空間とは違う物質で満ちてる」

そりゃ見えないわけだ。

「そうなんだ……残念だね」

(われ)が見ている光景を映す」

突如、全天球ディスプレイが光で満たされる。

幻想的に揺らめく光のカーテン。まるで、白一色のオーロラの中を漂っている心持ちだ。

「これがアステルが見ているストラクチャの姿なんだね」

「うん」

「きれいだ。すごく神秘的というか……」

淡く輝くベールが織りなす、光のページェントを二人して眺める。


「ノワールからエッジ識別パターンをいくつか聞いた。どこに行く?」

ウィンドウが開き、リストが表示される。

フェリシア、シミラ、バウル、エンテ、プロキシマ・ケンタウリ……。

聞きなれた惑星系のほかにもいろいろな星がある。

「……そうだ! アライアンス中核体に知らせないと」

「そうだった。忘れてた」

「中核体ってどこにあるの?」

「ここ」

「ストラクチャの中に!?」

「そう。(われ)の母たる存在が作った。干渉を避けるため」

なんと、ストラクチャの中に拠点があるという。

「想像がつかないや」

通常の物質が存在しない場所でどうやって物を作るのだろうか。


「口うるさいのがいるけど気にしないで」

「ひょっとして……嚮導者(きょうどうしゃ)って人?」

「ジーン、すごい。なぜ分かった?」

「嚮導者って響きかな。前に聞いたとき、アステルの教育を担当した人だろうなと思ったんだ」

「当たり」

「どんな人なの?」

「中核体で一番の古株。ジーンが見たら顔と声のギャップで笑う」

うん、すごく気になる。


「それじゃ行く」

「了解」

光のカーテンをくぐり抜けアエティアは進む。

遠くに光点。近づくと金色の円盤のように見える。

「これが中核体」

「ただの円盤だね……」

「ここは入口」

さらに接近すると大きさが実感できた。雛琵琶(ひなびわ)くらいはありそうだ。

「入る」

円盤にぶつかりそうになって、思わずのけ反る。

だが、何の衝撃もなく金色の表面を通り抜けた。


そこに広がるのは、黄褐色のグラデーションに染まる空。まるで木星のようだ。白い巻雲(けんうん)も見える。

雲の隙間から逆円錐の構造物が見え隠れしている。

その一つにアエティアは近づき、上部の鈍い銀色の表面に着陸。

「嚮導者、帰った」

アステルが通信で素っ気なく言う。

『Zrrrrrrrrt……Zrrrrrr……』

軽やかな機関砲の発射音のような音が響く。

アライアンスのデジタル通信フォーマットだ。アステルが初めて呼びかけてきたのもこれだった。

EXLLM(拡張大規模言語モデル)を送る。これで話して」


『おお、星の遺児(いじ)よ。よくぞ戻られました。そのお姿は……?』

数十秒の間を置いて(あで)やかな女性の声が響く。

「アステル」

『それが、御名(おんな)にございますか?』

「そう」

『アステル様。無事に放浪を終えたのですね』

「まだ途中。伝言を伝えに来ただけ」


『伺いましょう』

「プロテウスの形態が分かった。データを送る」

『調査に向かったマエストロからでしょうか?』

「うん。太陽系、地球にいる」

『アステル様! エッジが閉じた惑星系から来たのですか?』

「説明が面倒。データを見て」

『あなた様は……相変わらずですね。それでそのお姿は?』


「あとで話す。ジーンを紹介する」

いきなり話を振られた。

「初めまして、嚮導者さん。ジーン・タキザワです」

『これはご丁寧に。嚮導者にございます』


ここで初めて嚮導者の姿が表示された。

んぐっ。吹き出そうになるのを全力で(こら)える。


その顔はチベットスナギツネに瓜二つだった。

色香漂(いろかただよ)声色(こわいろ)でその顔立ちは反則だ!

毎日、23:00に更新しています。

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激動への序章 ~来訪者~

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